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☆☆☆王家の紋章番外編4☆☆☆

1 :ムーラ:02/10/01 13:22
ここは細川先生の少女漫画・「王家の紋章」が好きな人のためのスレッドです。
今までの経緯やここでのお約束は>2以降のあたりにありますので、そちらもご覧下さい。

前スレはこちら:
☆☆王家の紋章番外編☆☆
http://salad.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1002235184/

☆☆☆王家の紋章番外編2☆☆☆
http://ex.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1014698074/

☆☆☆王家の紋章番外編3☆☆☆
http://ex.2ch.net/nanmin/kako/1023/10239/1023957614.html




2 :ムーラ:02/10/01 13:23
<今までの経緯>
☆キャラネタ板→難民板と流れてきました。理由は主にこの2つです。
・キャラネタ板はキャラになりきって交流するスレのため、スレ違いを指摘されたこと
・住人の中から、作品への感想をなりきりで書くのは辛い、という声が挙がってきたこと
 移転先としていくつか候補があった中から、マターリできそうなところということで、
 ここ難民板を選びました。難民板の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

3 :ムーラ:02/10/01 13:24
<お約束>
・sage推奨でお願いします(メール欄に半角文字で「sage」を入れる)。
・ここは社交場ですので特に形式は決めません。質問・雑談・作品発表ご自由に。
・作品がほのぼの系なので、あまり殺伐とした雰囲気はご勘弁を。
 あとは常識的マナーの範囲で。

4 :ムーラ:02/10/01 13:25
<作品掲載について>
・非公式ファン交流広場なので、原作者及び出版元とは一切関係ありません。
・王家を愛する作家さんたちの創作も大歓迎です。ジャンルは問いませんが、
 極端なエロや中傷など確信犯的な作品はご遠慮くださいね。
・作家さんは名前欄に作品のタイトルをお願いします。
 連載の場合は巻頭に通しb書き、「>○○」という形で前作へのリンクを
 貼ってもらえると助かります。
・18禁作品にはタイトルにΨ(`▼´)Ψを記入して下さい。

5 :名無し草:02/10/01 14:23
ムーラさま、乙カレー。
作家様達も早くここ見つけてくれれば良いんだが。

6 :名無し草:02/10/01 15:08
ああ〜ん、新スレアッター!
良かったー、今朝見ようと思ったらいきなりなくなってたんだもん。
ムーラさま、乙カレー。

7 :名無し草:02/10/01 15:10
え?スレまだ残ってますよ。

8 :名無し草:02/10/01 16:58
>>7
え?過去ログ倉庫に入っていたけど・・・?
スレたくさん残っていたし、連載ものもあったからどうしたのかなーと思ってたよ。
ちなみに過去ログ倉庫はこちらね。
http://ex.2ch.net/nanmin/kako/1023/10239/1023957614.html

いずれにせよ、連載の続きが読めればワタシは満足。
作家サマ、早く〜。

9 :7:02/10/01 17:18
あ、本当だ。
Part3はまだちゃんとあるのに。さっきあげておきました。
物語の続きもありましたよ。

10 :名無し草:02/10/01 22:22
とりあえず皆さんが気がつくように1回あげ

11 :名無し草:02/10/01 22:31
ムーラ様。スレ立てありがとうございます。
ムーラが立てて、ナフテラが換気する、・・ぱーふぇくとで
ごじゃいます。

12 :名無し草:02/10/01 22:33
あるよ両方。両方とも連載継続中
☆☆☆王家の紋章番外編 Part3☆☆☆
http://corn.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1023957614/l50
O家別室ーキャロル2年後ー
http://corn.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1016380697/l50

13 :名無し草:02/10/01 22:56
前スレはそろそろ容量一杯になるのでこれから長編連載しようと思う人は
ここから始めたほうがいいかも。

14 :名無し草:02/10/02 01:21
ex鯖からcorn鯖に鯖移転しただけだったのに、
せっかちさんが新スレ作っちゃったのね。
近いうちに使うことになるだろうから、まあ結果
オーライってとこかな(w

15 :名無し:02/10/04 17:53
前スレいっぱいになったみたいです。
でも誰とは言わないけど男の都合だけの4級ポ@ノみたいな強@ネタだけは
やめて欲しいなあ。
ここほとんど女性でしょ?自分たち貶めるようなもんだと思うんですが皆さんは?

16 :名無し草:02/10/04 19:42
移転、急だね。
ムーラ様の先見の明にありがとう。
>>15
そうだね。でも私は少女コミック読んで某漫画家のマンガ読んでるんで、アレに似てると思っただけだったりして。
まぁ、あれも屈折したレディコミネタっつーことで脳内スルー。

17 :生への帰還Side Story彼の見る夢:02/10/04 21:51
前スレ >>605

その日警護担当に命じられたフナヌプ将軍は小さな騒ぎに目を留めた。
河で誰かが溺れていたのを救助しているらしい。手早く手当てと搬送の手順を指示した。
王は生来の癇症に拍車がかかり娟介さ気まぐれな苛烈さは古くからの側近であるウナス将軍でもほぐせない。
行列が滞れば自分だけでなく兵士たちも何らかの処罰が下るだろう。
当然事故にあって溺れていたのであろうその人間も。
警護の指示に戻ろうとしたとき部下から呼び出しがかかった。
「何事だ?このようなときに」
「実は溺れていた男なのですが異国の者で荷物を調べたところ訳の分からぬものが多数。」
暗殺者か間者か?にしては間抜けだが、そんなものが近づいたというだけで今の王は兵士たちにまで処分を広げかねない。
神殿勢力もほぼなりを潜め、ヒッタイトも皇位継承にかかわる内紛で疲弊し、財政を充実させ力を蓄えたエジプトには諸外国の干渉も寄せ付けない状態で、
政治的にそんな必要は無かったにもかかわらず、王は苛烈さで国内外で恐れられていた。
対外的にはともかく国内でも恐れられるというのは、王が代替わりしたときに貴族達の反動で混乱を招くのではないかとも思うのだが、
実際に働く兵士は貴族・官僚階級ではなく庶民出身が多いから首謀者をはぐらかして存外大きなことにはならないかとも思う。
上の騒ぎなど所詮コップの中の水を掻きまわしている様なものだ。
この考え方はかっての上司からの影響だと少し懐かしく思う。
孤独で大変に依怙地なところがあって、そのくせ人恋しさは人一倍だった少年。
彼は無事に母の故郷にいけたのだろうか?いや、こんな感傷に浸っている場合ではない。
薬を与えて眠らせて虐待せずにおくように指示し、警護に戻る。
式典が無事に終わってその眠らされた不審者の顔を見たフナヌプは思わず大声を上げた。
「イ、イアン。イアン・ムスタファ・ガマール隊長。いや将軍!」


18 :名無し草:02/10/05 06:06
>>前スレ614
お節介ですが・・・
イスラム教では女子の割礼(性器削除)は認めていません。
よく割礼賛成が「コーランに書いてあるから」なんて言ってますが、
そんなことは一言も書かれていません。
よく宗教的なものとしてとらえられるが、それは間違いです。
女性性器切除は、昔から貞淑、男性への隷属の象徴として行われてきて、
男性の割礼(包皮削除)が衛生目的で行われてるのと意味がことなります。
今は上流家庭になるほどやってません。
ついでに言うと手術は麻酔無しでやります。
しかもやるんだったら多分外性器全部の切除でしょうな。

参考
ttp://www2.neweb.ne.jp/wd/waaf/guideto1.htm


19 :名無し:02/10/05 06:43
>>18
とはいっても同じムスリム圏でも女子に対する割礼はさまざまだったと思います。
外性器の切除からそれこそ男と同じ程度(皮を半分切り取る)まで。←これは東南アジア辺り
エジプトの僻地やアフリカ西部で行われているのが外性器全部の切除であったと思います。
これは特に反対と禁止運動が起こっていたと思います。
アラビア半島付近でのスンナ割礼は陰核と包皮の半分を切除する程度のものであったかと。
本で読んだことの受け売りなので違うところもあるかもしれませんけど。
気を悪くなさらないでください。



20 :名無し草:02/10/06 02:07
>>15
一応聞かれてるから答えるけど…
私は「男の都合だけの4級ポ@ノみたいな強@ネタ」はここにはないと思う。
私の答えは「今連載中の全部の作品、このまま読み続けたい」です。


21 :名無し草:02/10/06 09:01
>20
同意。私も作品の続きを待ち望んでいるひとりです。

22 :名無し草:02/10/06 23:29
んでは私も。
前スレ613-614のアフマド×キャロルは、ただのポルノ
小説だと思った。
キャロルの側に立って読むと、身体や心が痛くなる。

「割礼」の話も、いい加減な知識で書いてるしね。
女性に対する性器切除(←敢えてこの言葉に)が
行われているのは、処女性を尊ぶ考えから。
セクースした後で女性にする風習とは全然違うよ。

女性を痛めつけるものなら、性器切除だろうがそれ以外
のものだろうが、何でも良かったのかもしれないけど。

23 :名無し草:02/10/07 00:10
>>20
ほぼ同意見
このスレはいろいろな話が読めて楽しい

24 :名無し草:02/10/07 01:09
>>22
禿同。
強姦の後、麻酔無しで性器切除?
ひどすぎる・・・
拷問に近いような気がします。
「たしなみ」としてそういう常識の中で育って来たのなら
ともかく、いきなりそんな目にあったら絶対トラウマになりそう。

本編の強引だけど思いやりのあるアフマド結構好きなんで
ちょっとショック〜

25 :名無し草:02/10/07 01:28
女性の苦しみに共感できる人なら、作家や楽しみにしてる読者の気持ちにもさりげなく気を使ってくれるよね。頼んだよ〜

26 :名無し草:02/10/07 03:23
>22 >24
私もあれは酷いと思いました。
ああいうのを読んで楽しかったりコーフンしたりする人もいるのかもしれないけど、
私にはおぞましかっただけです。

27 :名無し草:02/10/07 04:19
少し前、有閑スレにもああいう話を書いたヤシがいた。
何のフォローもない強姦話。
他の作品とは全然違ってて、凄く唐突なUP。
ここに書いたのも、多分同じヤシなんじゃ?
一種の愉快犯でしょ。

28 :18さんのカキコに加え...:02/10/07 06:27
女性器切除について
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Cassiopeia/8640/fgm.html
http://www.bekkoame.ne.jp/~allan/index2.html
http://www.alc.co.jp/com/talkworld/chikyujin/0004/column.html
http://www.ngy1.1st.ne.jp/~beck/html/fe.html
http://www01.vaio.ne.jp/tunjung/fgm.htm

The Female Genital Mutilation Education and Networking Projectの
アフリカにおける女性器切除施術率のデータ
http://www.fgmnetwork.org/intro/stats.html

有吉佐和子翻訳「最後の植民地」書評
http://www3.ocn.ne.jp/~ariyoshi/sawako/Deta/saigo.htm

女性器切除被害者であるモデルの自伝『砂漠の女ディリー』
武者圭子訳/草思社/1999.10.25/334p/ISBN:4794209207

「ファウジーヤの叫び」紹介
http://www5e.biglobe.ne.jp/~hirocafe/book/cry/cry.html

29 :28:02/10/07 06:28
前スレのアフマド×キャロル書いた人が女性だったなら、無神経過ぎ&不勉強過ぎ、
それに男の視点に影響されすぎだと思います。フランス書院の本かなんか読みすぎた
んじゃないの?
一方作者がもしも男だった場合は、このページ見て自分の男根がこうされる所を想像
すること(w
http://japan.pinkserver.com/dita/eunuch.html

ところでこのページの「女性器取扱管理責任者」コラム前後編は面白いですよ。
特に、なぜ初夜の出血にそれほどこだわるか、という部分が(w
http://www.ummit.co.jp/love/kubosato/colum_main.html

番外編小説をきっかけにジェンダー問題やフェミニズム、宗教、因習、社会問題などに
思いをめぐらすのもまた一興かってことで。

30 :名無し草:02/10/07 08:45
唐突なUPといえばいま自分がこれ書いて、”書き込む”ボタン押したら唐突なカキコと責める?
全部読み終えての感想ならまだしも、完結してないうちから書いた人を無神経とか決めつける
のは如何なものかと思う。FGMの問題の深刻さを説く作品であり、酷いと思う人と同じ考え
で書かれてるかも。何れにせよ反響の大きい作品だけに是非続きを読みたい。

31 :30:02/10/07 08:47
失礼致しました、さげ忘れ逝きます。

32 :名無し草:02/10/07 09:36
しかし気分が悪くなった人がいるのも事実…
私も正直嫌な気持になったよ。アフマドが割と好きだから余計に。

33 :名無し草:02/10/07 10:42
アフマド×キャロル作品はまだ途中だからね。
今の時点ではただのエログロ小説かどうかはまだ分からないや・・・
とりあえずエログロは苦手なほうなので今は続きは読まないでおきますが、
最終回まで読まれた方の感想を参考にしてから読ませてもらうかも。

34 :名無し草:02/10/07 10:52
ってゆーかもう書く気なくなったんじゃないの。>アフマド×キャロル作者さま

35 :名無し草:02/10/07 10:53
う〜〜ん生への帰還もそうだったから(初めはもにょもにょ)
今は私は傍観中

36 :名無し草:02/10/07 11:09
生への帰還もそうだった、に目覚めた。そうだった!30の意見も頷ける。
苦手なヒトに終わったら感想書くからさ、読ませとくれよ〜

37 :名無し草:02/10/07 14:17
>>35
あれは結果としてレイプになったけど、
セックスしてる瞬間のキャロルは幸せな気持ちでいたし、
感じてもいたから、今回のとはチョト違うような・・・
今回みたいに最初から痛み全開のでは、読者はついてこない

38 :名無し草:02/10/07 14:22
前スレ611より
24
「アイシス、率直に言います。私はメンフィスとの婚儀なんてまっぴらです。
そんなことになればヒッタイトとエジプトの間に戦が起こり、多くの人命が失われます。
それだけじゃない。他国の王子妃を拐かして自分の後宮に入れ、寵姫にするなど・・・」
ここでキャロルは一度、言葉を切った。わざと「後宮」「寵姫」などといった刺激的な言葉を使ったことに嫌悪を覚えもしたし、急速に自分の話に引き込まれていっているアイシスに興味を引かれたからだ。
「・・・慰み者にするなど、王者のする事ではないわ。国内の信望も失せましょう。メンフィスにとって非常に好ましくないことが起こるでしょう。
・・・たかが女のことで偉大なメンフィスの治世に傷をつけていいものかしら、女王アイシス?
あなたはご夫君がそのような愚行に走られるのを黙認いたしますの?」
怜悧な口調。相手の心理をずばりと衝いてくる話し方。アイシスの女としての心に揺さぶりをかけ、そして為政者たる女王の心をも揺さぶるやり方。
(このような話し方をするほどの娘であったか?珍しい容姿と、後先考えぬ優しさだけしかない頑是無い子供であったのに!
・・・イズミルが年の離れた妃を、大切に慈しみ育てるように寵愛したとか言う間者の報告・・・嘘ではなかったということか!なんとまぁ・・・)
アイシスは薄く笑みを浮かべた。
「なるほど・・・。そなたを女ギツネ呼ばわりする者もあるゆえ、私も身構えていたようじゃ。
さて、キャロル。いいえ,ヒッタイト王子妃キャロル。そなたはまこと、メンフィスのものになるつもりはありませぬのか?世界に冠たる大エジプト王国のファラオに望まれているのですよ?清らかな乙女でなくとも良いとまで、男に言われているのですよ?」


39 :名無し草:02/10/07 14:22
25
アイシスの挑発に一瞬、キャロルの顔が歪んだ。アイシスがよく知る世間知らずの小娘だった頃の表情。
だが次の瞬間、キャロルは気高い女王の表情になった。いかなる侮辱、中傷も傷つけ得ない気高い貌。
「二度とは言いません。私はヒッタイト王子イズミルに愛と忠誠を誓った身、ヒッタイトの未来に仕えようと決心した身です。
あなたはエジプトの王妃として、私をヒッタイトに帰してくださるべきです。
エジプトの民の上に立つ女王として、夫君を愛する妻として、メンフィスを止めるべきです」
二人の女はじっと見つめ合った。
長い沈黙。凍り付いた時間。
「・・・天晴れじゃな。私の挑発にも乗らず、見事!褒めてやろう」
先に沈黙を破ったのはアイシスだった。
「ふふ、そなたを見くびっていたようです。許されよ、王子妃殿。
・・・そなたに請われずともメンフィスの暴走は止めましょう。そして・・・エジプトの女王、共同統治者、第一王妃として責任を持ってそなたを保護いたしましょう」
「・・・分かっていただけると・・・思っていました。女王アイシス」
アイシスは、この自分を圧倒した小柄な娘に軽く会釈すると部屋を出ていった。
キャロルはへたへたと座り込んでしまった。張りつめていた心が解れ、涙が浮かんでくる。
「王子・・・。私、ちゃんとできたわ。私、アイシスに負けなかった。・・・怖かった・・・。でも・・・ちゃんと帰るから。待っていて。そして・・・褒めて。よくやったって・・・」

「姉上がそなたの部屋に来たのかっ!」
荒々しい足音と共にメンフィスが居間に入ってきた。侍女が告げ口したのだろう。
「何があった?何を言われた?嫌な目にでも遭わされたか!」
メンフィスは乱暴にキャロルを確かめた。傷を負わされていないか、酷い言葉にひどく傷つけられてはいないか。待ち望んだ最愛の娘を目の前にして、メンフィスはアイシスの真摯で哀しいまでの深い愛にすら気付かなくなっていた。

40 :黒い嵐:02/10/07 14:31
すみません。またタイトル入れるの忘れました。
>>38>>39は「黒い嵐」です。

41 :名無し草:02/10/07 14:45
∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
                    (\(\_/)   /はい、換気ですよー。痛い小説書いた人意見として謙虚に聞いてねー。
参考リンク張った人も粘着にはならないで(\ヽ( ゚Д゚)′<
ねー。やりすぎは逆効果よ。      (\ (ナフテラ)つ .\_______________________________________
                      (____)        .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
.∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+            ∪∪
                             .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
            .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+  



42 :流転の姫君:02/10/07 15:27
前スレから引っ越して参りました。
お目汚しですがご容赦ください。

31
騒ぎになる事を危惧したイズミル王子には他の者には内密にルカに怪我の手当てをさせながらも、
寝所からキャロルを離すまいと、未だショックで身体の震えの治まらないキャロルを側に置いていた。
王子の手当てが済み、ルカが姿を消してからようやっと王子は口を開き問いただした。
だがキャロルは自分が王子を傷つけた事に対して、呪文のように謝罪の言葉を呟くばかりであった。
「このような傷などかすり傷にもならぬ、心配せずともよい。
 そなたの方こそ、見せてみよ。」と王子が改めてみると、キャロルの左腕には自分で傷つけたものがあるのを見、
酒を吹きかけて手当てをした。
確かに王子に傷つけてしまったことはショックでも合ったが、どうもそれだけはあるまい、と王子は見当をつけた。
ルカからはメンフィスとは決別せざるを得なかった事情も聞いていたが、
アッシリアに連れ去られてしまっても、城を崩壊させて逃げる英知と勇気をもつ姫である。
不運に見舞われていても、自分の命を絶とうとするほどのことなどはなかった。
それなのに、アイシスとの会見がキャロルを死に追いやるほどのものであったとは・・・・。
女人の扱いには慣れていた王子であっても、キャロルのように多分に子供っぽい部分を持ちながらも繊細な少女にはどのように応対すればいいのか
正直戸惑っていた。
キャロルの身体に手を伸ばすとビクっと震えるのが伝わっていたが、あえて子供のように膝に抱きかかえ
小さな子供を慰めるように背中を軽く叩き安心させるような王子の仕草にキャロルは不思議そうに王子の顔を見上げた。
「辛い事があったのであろう?泣き虫のそなたが泣くに泣けないことが。
 私の前では泣いても構わぬぞ、そなたの泣き虫は分かっているのだから。」
思いもしなかった王子からの優しい言葉に、やっと自分の身体の感覚や感情がキャロルの身体のうちに戻ってきたようだった。
それからのキャロルは自分が何をしたのかは定かではなかったが、王子の衣装が湿るほどに泣き続けていたのは確かなようだった。


43 :流転の姫君:02/10/07 16:10
32
規則正しく聞こえる何かの小さな音と温かさを感じて、キャロルは自分が何をしていたのか思い起こそうとしてみた。
トクントクンと聞こえるのは心臓の鼓動だ、とまだ重たい瞼を開けようとして気がつき、ぼんやりと目を開いた。
誰かの温かい手が背中を優しく撫でている、その手の感触に思い当たった時、
その本人の凛々しく端整な顔立ちと、優しい琥珀の瞳が自分を見つめていた。
「・・王子・・私・・」
「昨夜はそなたは泣き疲れて私にしがみ付いたまま寝入ってしまったゆえ、そのまま宿居したに過ぎぬ。
 泣いている子供に手を出すほど私は不自由しておらぬぞ。」
クスリと微笑んだ王子にキャロルの頬は恥ずかしさのあまりかあっと燃えるように熱くなった。
「もうそろそろここを移動せねばならぬ、ちゃんと食事をとるようにな。」
王子は悠々と身なりを整えると、キャロルの方をみて少し微笑んで寝所から出て行ってしまった。
いまだキャロルは夢の中のような心地さえしていた。
優しい声音で自分を慰めていたのは夢ではなかった・・・とキャロルは気付いた。
夢うつつで聞いた言葉は、そなた一人を一生涯愛そう、私と共に生きよ、私が居るゆえ、そなたは一人ではない。
だから死ぬなどは申してはならぬ、そなたを愛している・・・・。
思い切り泣いたせいか、王子のおかげかは分からないが、キャロルには朝の光も昨日よりはるかに美しく感じられた。
バビロニアは今アイシスが嫁す事が正式に公布され、国を挙げての祝いをしているようで
国内国外を問わず遠来の客も多いように見えた。
イズミル王子はその様子を見て、国王に報告をするため帰国する事に決め、キャロルに告げた。


44 :名無し:02/10/07 22:56
>>35わたしはあまりに痛い小説があったから自分をフォローするために書いたんです半ば。どんどん話が長くなりましたが。
一番最初の(むにゃむにゃの)話はわたしじゃないんです。
>>17  2
あっちこっち体が痛く頭も重い。どうやら薬を飲まされたようだ。
病院か?にしてはベッドのスプリングが悪い。誰か大声で騒いでいる。
早くアレクサンドリアに行かなくては。
重い目蓋をこじ開けて周囲を見回す。視界に入ってきた中年男の顔を見て思わず毒つく。
「目覚めて見るのがお前の顔だとウザったいと言っただろうフナヌプ。えらく老けたな。」
フナヌプ?そんなのいたっけ?帰ってからはいない。帰ってから?何処から何処へ?
15年分の記憶が急速に復活し激しい頭痛と混乱を引き起こした。
苦しみだした自分を見て目の前のかっての部下があわてている。
鎮静剤を飲まされるようだ。あの様子だとすぐに命をとられることはなさそうだ。と、どこかで冷静な自分がささやく。
だがいったいどうなっているんだ?ここは何処だ?
思考を集中させようとしても分解され闇に落ちた。
さっきより随分感触のいい寝台に寝かされているようだ。目を開けるとさっきと同じ顔が入ってきた。
そして浅黒い肌の豊満な美女も。知った顔の男が何か言い出すより早く彼女の口から辛辣な言葉が吐き出された。
「お久しぶりですね、兄上。でも今更何故ここにお戻りに?
あれほど無責任にこの国も父上も放り出していかれたのに。」
そんな非難をされるのは心外だ。だが表には出さず不思議そうな表情で問い返してみる。
「僕に父や妹はいませんよ。誰かとお間違えでは?僕はライアン・Jr.・リード
至急カイロの伯父と連絡を取りたいのですが電話のある場所は?」
怒鳴ろうとした女性を制して中年の男が静かに言った。
「あなたにしてはお粗末ですな。ごまかそうとしても無駄です。
さっき俺の名を言ったでしょう。イアン・ムスタファ・ガマール将軍。
いえ、その左目があなたが誰であるかの何よりの証拠でしょう。ラージヘテプ王子。」


45 :名無し草:02/10/07 23:10
>44「生への帰還」作者様
文章の「手」が違ったから、違う人だとすぐにわかりましたよ。
続編もいつも楽しみにしています。

46 :35:02/10/07 23:23
44作家様
そうだったんですか〜〜。
(私の中で)あまりひどい系はスルーして、斜めに読むものですみません、
気がつきませんでした。ごめんなさい。

私個人の意見としては、どんなにエロがあってもスルーできるし、
んなもんを読んでドウコウなる年齢をとっくに過ぎておるので、
どうでもいいのですが、それによってスレにもっとイヤな荒らし君がくるのが
いやです。なにせ、ここに来る経過をずっと追ってますから。
・・・・オバ厨のひとりごとだす。


47 :名無し草:02/10/07 23:52
>22
ここは王家ネタのポルノ小説を読みたい&書きたい人間が
集うスレだと思ってたが。
気持ちいいのはOKで痛そうなのはNGって事かな?

48 :生への帰還Side Story彼の見る夢:02/10/08 00:25
すいません
44の題は生への帰還Side Story彼の見る夢の2です。

49 :名無し草:02/10/08 05:15
>>29
まあまあ、少し深呼吸でもして気分転換してみてはどうですか?
人生はたしかにつらいことの連続だけど、貴女はとても頭が良いのだし
これからいくらでも良いことがありますよ。
お願いだから社会学者のイメージ落とすようなことはしないでね。
正論だけで人は感動させられないし、貴女の専門は違うでしょ。

50 :49:02/10/08 05:23
すごくえらそうなこと言ってごめんね。
でも私たぶん貴女のおかあさんと同じくらいの年なので
おばさんが何か言ってると思って許してね。

51 :名無し草:02/10/08 06:25
わたしが許します

52 :難民:02/10/08 06:28
<お約束>
・sage推奨でお願いします(メール欄に半角文字で「sage」を入れる)。
・ここは社交場ですので特に形式は決めません。質問・雑談・作品発表ご自由に。
・作品がほのぼの系なので、あまり殺伐とした雰囲気はご勘弁を。
 あとは常識的マナーの範囲で。

<作品掲載について>
・非公式ファン交流広場なので、原作者及び出版元とは一切関係ありません。
・王家を愛する作家さんたちの創作も大歓迎です。ジャンルは問いませんが、
 極端なエロや中傷など確信犯的な作品はご遠慮くださいね。
・作家さんは名前欄に作品のタイトルをお願いします。
 連載の場合は巻頭に通し?を書き、「>○○」という形で前作へのリンクを
 貼ってもらえると助かります。
・18禁作品にはタイトルにΨ(`▼´)Ψを記入して下さい。


53 :黒い嵐:02/10/08 13:05
>>39
26
キャロルは無言で目をそらした。
「どうした?何を黙っている?申してみよ。そなたを傷つける輩は私が許さぬ!姉上は何をしたのだっ?」
「・・・何も。アイシスは・・・あの・・・式の話をしに・・・」
「嫉妬に狂って・・・そなたを苦しめるとは許し難い・・・。たとえ姉上でも・・・!」
苦し紛れの言葉に騙されるメンフィスではなかった。
「本当にっ!何でもないの!メンフィス、アイシスはあなたのお姉さんで、妻でしょう?お妃でしょう?どうしてそんな言い方するの?アイシスはあなたのこと・・・きゃっ!」
キャロルの唇をメンフィスのそれが塞いだ。
「私の妃はそなただけだ。優しいのは構わぬが、そのような気遣いは無用。私は・・・そなただけしか要らぬ。そなたを諦めようと・・・国主の務めを果たそうと妃を娶り、側室を召しだした。でも今はそなたがいてくれる。そなたが私の血を引く和子を産んでくれる。
私はそなたしか要らぬのだ。・・・わかっておろう?」
メンフィスの唇はいつしか恐怖にひきつるキャロルの首筋に移動していく。
「分かっておろう?このように物狂おしい気持ちは初めてだ。
遠くヒッタイトの地にあるそなたを・・・イズミルめの許にあるそなたを想うたびに気が狂いそうだった。私が愛するのは天にも地にもそなた一人なのだ。
他の女などいらぬ!」
真摯な黒の瞳がキャロルを射抜く。初めて愛を知り、人を愛おしむことを知り、誰かに愛されたいと熱望する若者。でもその想いは決して相手には届かない。
メンフィスの唇はキャロルの白い肌に紅薔薇を咲かせ、手はいつしか胸元に伸びていった。
「嫌・・・です。やめて・・・」
やっとキャロルが口にした拒絶の言葉は、先ほどとは打って変わった恐怖と悲しさに満ちており、メンフィスの燃える心を一気に冷やした。
「すまぬ・・・つい。我を忘れた。怖がらせるつもりはなかったのだ。だから嫌がったりしないで呉れ」

54 :黒い嵐:02/10/08 13:05
27
メンフィスは似つかわしくない優しさで手を差し伸べた。
「広間に商人どもを召しだしてある。そなたの婚儀の品を揃えねばならぬゆえな。さぁ、参れ!」
「え・・・?」
「嫌なのか?」
メンフィスの声がにわかに不機嫌の色を帯びる。
「いえ・・・。あの、でも首筋・・・。見られるのは嫌です」
「ああ・・・そうか。恥ずかしがり屋なのだな、そなたは。首飾りをして隠せばよい」
メンフィスは侍女に命じてキャロルに幅広の首飾りをつけさせた。黄金と宝石を連ねた見事な品だ。
キャロルは黙ってメンフィスに従った。

奥宮殿の広間には多くの商人が、荷を広げて待ちかまえていた。美しい布地、装飾品、小間物、香料、化粧品、花・・・。極彩色の渦だ。
「さぁ、望みのままに選ぶがよい。私も選んでやろう」
メンフィスはベールをつけ、顔を隠したキャロルに上機嫌に言い放つと商人達の中に入っていった。商人達は新しいお妃に夢中らしい若いファラオに如才なく品物を勧める。キャロルは物憂く自分の膝においた手を眺めていた。

その時。
「姫君。この品はいかがでございます?あなた様にこそ相応しいお品かと存じます」
聞き覚えのある声と共に目の前に差し出されたのは、ヒッタイトで自分が身につけていた腕輪・・・!
「! ルカっ?!」
押さえた声でキャロルは叫んだ。
「あなたなの?」
「しっ、お静かに、姫君。遅くなりましたがお助けに参りました。もう安心でございます。王子もすでにこの地にお入りです。私が先遣として参りました。
必ずお助けいたします。どうかお心をしっかりと・・・」
キャロルは素早く腕輪を握りしめると目立たぬように頷いた。
「キャロル?気に入ったものがあったのか」
「ええ・・・。この腕輪が。とても美しいわ」
「ファラオ、お妃様はお目が高い。こちらは異国の珍しい品。黄金に銀の象眼、宝石をあしらい、華やかな中にも上品さを失いません。いかがでございましょう?」
メンフィスは初めてねだりごとをしたキャロルに有頂天で、すぐにその腕輪を買い上げた。
「・・・姫君、腕輪の中を後ほど・・・」
ルカはそう言って下がっていった。

55 :流転の姫君:02/10/08 13:33
>>32

33
なんとなく気恥ずかしさを感じながらもキャロルはイズミル王子と一緒に馬に乗り出立する事となった。
馬に揺られながらも王子は穏やかな物言いでキャロルに約束させた。
「そなたはもう帰る場所はないと失望し、死すらも望んだな。
 もうそのようなことはないであろうが、この先別れるようなことがあっても
 私はいつでもそなたのためにこの胸を開けておこう。
 だから約束してすると申せ、帰る場所は私のところだと思い、希望を失う事はしないと。」
キャロルがあれほどに切望している帰るところ・・・。
それはキャロルが愛し、キャロルを愛してくれる人のところである。
今は何もかも失ってしまった自分に、イズミル王子は少しでも生きるための希望の光を与えようとしていることに気がついた。
愛しているかどうかはわからないが、王子のことも嫌いではなかったし、何より王子の思いやりが嬉しかったキャロルは
「約束します.この先何かあっても死を選ぶような真似はしないわ。」と静かに答えた。
「いい子だ、では約束の証にこれをあたえよう、持っているがよい。」
そう言うと王子は身に付けていた腕輪を外し、キャロルの手首にはめた。
ヒッタイト王家の紋章の入った高価なものであるが、キャロルには大きすぎた。
憮然としているキャロルをくすくす笑いながら、キャロルのしている腰帯の先に結びつけると、
同行している士官が王子を呼んだので、ルカにキャロルを渡すなり離れていった。


56 :名無し草:02/10/08 13:38
ををっ!新作が〜。
何があっても新作をアップして下さる作家様がこのスレの清涼剤です。
どうかこれからもよろしくお願いします。

@以前のスレでナフテラAAを張ったことのある者より(はぁと)

57 :流転の姫君:02/10/08 13:55
34
一行は小休止を取っていた。
「ねえ、ルカ、この近くに遠くからでも見える大きな塔はないのかしら?」
少し元気の出たキャロルにはまた生来の好奇心が戻ってきたようだった。
「ございますが・・・?」とルカの返答を聞くなりキャロルは大喜びで言った。
「ねえ、お願い!どうしてもそのバビロンの塔が見たいの!離れていても構わないから
 連れていってもらえないかしら?」
「ですが・・姫君・・・。イズミル王子がなんと仰られるか・・・。」とルカが答えを濁していても
「ねえ、ほんの少しでいいの、すぐここに戻ってくるから!」と言い張り、少しだけ皆離れる事となってしまった。
少し馬を走らせるとなにやら大きな塔が見えてくる。
建設中らしく大勢の人が働いている様子を、キャロルはみて感激していた。
「本物のバビロンの塔なのね・・・。」
キャロルがあまりにも歓んでいるのを見てルカの頬もほころんだその時、突然兵隊たちに取り囲まれ
二人は逃げるに逃げられなかった。
「姫君!お逃げください!」とルカが剣を振り払い戦おうとするが、ルカの足には既に槍が突き刺さり
首には剣の刃が当てられていた。
「やめて!ルカ!ルカを殺さないで!」とキャロルがルカにしがみ付いて懇願すると
リーダー格の男が目配せし、ルカもろともキャロルを連れて行こうとしている。
「乱暴はやめて!これ以上に私達に手を出すのは許しません!あなたは誰なの?」
気丈に振舞おうとするキャロルにその男はにやりと唇の端を曲げて見せた。
「我が名はラガシュ、バビロニアの国王ぞ。」
その言葉を聞いたキャロルの口から悲鳴が迸った。
「王子!」
キャロルの頭の中にはイズミル王子に助けを求める事しか思い浮かばなかった。

58 :名無し:02/10/08 17:37
>>流転の姫君
キャロル、最初に罠にかけたのは王子なんだけど忘れてない?
拉致→キスマークつけて誤解させる→流転なんだけど。
落とし前は付けさせとかなきゃと思う私は不幸な状態の王子が好き!

59 :流転の姫君:02/10/08 21:45
>>57

34
女の悲鳴が聞こえたような気がして、イズミル王子はキャロルの姿を慌てて探して見た。
「姫はどこぞ!何処におる!」
王子の命令に兵達を動かし、やがてルカとキャロルが塔を見るためにこの場を離れたとの報告が入った。
少し前に見慣れぬ小隊がバビロンの都へ大急ぎで向かっていた。
その中に怪我をしたルカに付き添う小柄な影が居た、と・・・。
もっと早く我が手に戻す予定が狂ってばかりで、油断した、と王子は悔いた。
メンフィス王とカーフラ妃を見、潔癖なキャロルならばメンフィスの下などには戻る事もなく
ルカに誘導させ自分の腕の中に戻らせる予定であった。
予想以上にメンフィス王は王子がつけた愛撫の跡に激昂し、キャロルを拒否したのに
その後も何かと邪魔が入り、なかなか自分の下へと戻ってこなかったのだ。
自らの迂闊さを責め、一体キャロルはどこへ連れ去られたのかと思い巡らせていると来訪者の報告があった。
「これは・・ラガシュ王。このような場でお目にかかるとは・・。」
目立たぬ服装をしたバビロニアのラガシュ王である。
ラガシュ王は愛想よく、バビロニアまで来ていてるのなら是非王宮へ参られよ、と王子を誘った。
丁度婚儀があり我が国は今国を挙げて祝っておる最中である、是非に・・・と申し出をされてしまえばそう断われるものではない。
「それに・・・黄金の姫のことなども内密に・・・。」と王子にしか分からないようラガシュ王は囁いた。
イズミル王子は端整な顔を密かに強張らせていたが、その琥珀色の瞳には冷たい怒りの光があった。
「詳しいことは我が王宮で・・・。歓待いたしますぞ。」
「喜んで参ろう、是非祝いを申し上げねばなりませんな。」
表面上は穏やかな二人の男であった。

60 :名無し草:02/10/08 21:47
>35
「生への帰還」作者は、他の作者さんの後を誰かまた他の作者さんが引き継いで、
それを「生への帰還」作者ともうおひとりが分岐して繋げた・・と思うが。
(この展開にはびっくらしたもんだが、今となっては面白かったと思うM様ファンなワタシ)

今の作品が終わったら、初めからあなたのものによる作品が読みたいです、「生への帰還」作者さま。


61 :名無し草:02/10/09 00:45
part3はもう落ちるのをまっているのかな?


62 :名無し草:02/10/09 00:50
書き込めないからね

63 :黒い嵐:02/10/09 13:47
>>54
28
「婚儀の日が楽しみだな。小間物の整理が済んだら私の側に参れ、よいな」
メンフィスはそういうと部屋を出ていった。
「まぁ、姫君!見事なお品ばかり。こう申してはなんですけれど、アイシス様やカーフラ様に勝るとも劣らないお扱い。いいえ、お二方の時はメンフィス様御自ら品定めをなさることなんてなかったですわ!」
侍女は上機嫌で囀った。
「あの・・・少し一人になって良いかしら?何だか人中に出たのは久しぶりで・・・のぼせてしまったわ。そうそう、お水も後で持ってきて下さいな」
キャロルの言葉に侍女は素直に下がっていった。婚儀を間近に控えた姫君の初々しい様子、とすっかり思いこんでいるようだった。
(やれやれ・・・優秀な侍女をつけてもらったこと)
キャロルは腕輪に填め込んだ宝石をぐっと押して隠された空洞を露わにした。果たして中には丸めたパピルスが。
―3日後の新月の夜に―
ただそれだけ。無事か、とも待っていてくれ、とも書いていない。でも紛う事なき愛しい人の筆跡だ。
(王子・・・!)
キャロルはその小さい小さい紙片に頬ずりして涙を流した。
拐かされた女には悲惨な運命が待っているのが当然のこの時代、ひょっとしたら自分はヒッタイトの体面を汚す存在として黙殺されるのではないかと、覚悟してもいたのだ。
王子の心を疑うことはなかったけれども、それでも為政者として自分の感情を殺してしまう強さを持った王子の悲しい心を一番理解しているキャロルは、自死を当然のように覚悟していた。
(あの人は来てくれる・・・!新月の夜に・・・!)
紙片を大切に大切に元の場所に収めるとキャロルはゆったりと長椅子に座り直した。

64 :黒い嵐:02/10/09 13:50
29
人払いをしたファラオの居間では。
「さて、姉上。婚儀は7日後だ。キャロルに禊ぎの儀式なども受けさせたい。姉上、私の王妃として、ネフェルマァト王の血を引く最高神官の一人として、私の婚儀を祝福して欲しいものだな。
・・・昼間のような勝手な真似は謹んで貰いたい」
メンフィスは王妃であるアイシスを未だ姉上、と呼んでいるようだ。
アイシスの表情は硬く、抗うように口を開こうとした。が、キャロルの哀願する眼差しを思いだし咄嗟に女王の仮面をつけた。
「私は王妃の、最高巫女の義務を心得ています、弟よ。いいえ、愛しい夫よ。
・・・ヒッタイト王子妃を娶るにあたっては・・・それなりの覚悟はしているのでしょうね。諸外国はどう思いましょう?民はどう思いましょう?」
「黙れ、黙れーっ!姉上、何という雑言だ!キャロルは女神ハピの娘、私の妃!断じて他国の王子妃などではない!姉上はこの婚儀に反対なのかっ!」
メンフィスは激昂した。
「・・・いいえ。メンフィス。反対賛成など関係ないでしょう。そなたはもう決断してしまっている。今更・・・。
ただそなたに覚悟のほどを聞きたかっただけです」
「覚悟か・・・。私は私の全てをかけてキャロルを望む。それだけだ」
アイシスを目の前にしてメンフィスは残酷に言い放った。アイシスは黙って目を伏せた。もし昼間、キャロルと話していなかったらきっと彼女は弟とキャロルを手に掛けていただろう。



65 :黒い嵐:02/10/09 13:51
29.5
「キャロル、さっそく腕輪をつけているのだな」
メンフィスが陽気に言った。ファラオの個人的な広間。キャロルの訪れにあわせて山海の珍味が整えられ、客人の席にはアイシスが座っている。召使い達はいない。
「キャロル、ここに来い。そなたも我が妃ではないか」
メンフィスを刺激しないように慎重な如才なさで対応するキャロルの笑みのない瞳。アイシスはキャロルに言った。
「キャロル。ファラオのお心のままになさい。メンフィスの妃になるならば、そなたは私の大事な妹です」
アイシスは決意した。メンフィスと共にある自分の幸せを、未来を守るためにキャロルを守らねばならないのだと。

その時。にわかに部屋の外が騒がしくなった。
「お待ち下さいませ、カーフラ様!ファラオはただいまお人払いを命じておいででございます」
「お黙り!私はファラオの妃ですよ!アイシス妃だけが召されて私はテーベなど許されるわけがない!」

66 :名無し草:02/10/09 14:27
おー、女3人揃い踏みっすか。
メンフィスって天河のカイルとか、イズミル王子みたいに器用そうじゃないからシュラバかしら(ワクワク)

67 :名無し草:02/10/09 15:29
私はただただ新作の嵐がうれしゅございまふ・・・・・・(涙)

68 :名無し草:02/10/09 17:54
>>66
それじゃギャグだって(藁
「きいっ、わたしというものがありながらっ!カーフラ、そなたデブでバカな色気虫じゃと巷の評判じゃ!」
「お黙り、年増ババァ!そなたこそ陰険、根暗で有名じゃっ!」
「やめて、二人とも」
「お前が諸悪の根元じゃ、このカマトト放浪娘っ!!!」

69 :名無し草:02/10/09 18:27
あとチョットで王子が助けにくる〜はやくきて〜〜>黒い嵐作家サマ

70 :名無し草:02/10/09 19:58
>68
そんなギャグな展開も面白いだろうなー。

71 :名無し草:02/10/09 21:48
(´-`).。oO

72 :名無し草:02/10/10 01:07
>68
受けました!!
ふと疑問に思う。カーフラ様って年いくつだろ?

73 :名無し草:02/10/10 17:04
続きが読みたくてソワソワでつ作家さま〜。

74 :黒い嵐:02/10/10 17:47
>>65
30
カーフラ王女は凄まじい目つきでキャロルを睨み付けた。
「召使いどもが噂していたのは本当だったのね。・・・またお前の顔を見ることになるとは!
メンフィス様っ、これはどういうことでございます?ヒッタイトの売女など・・・きゃあっ!」
メンフィスがカーフラ王女を打ち据えた。
「口を慎まぬか、カーフラ!キャロルは我が妃ぞ。無礼は許さぬ!それにそなた何故に勝手にテーベを出た?そなたなど召してはおらぬ!」
凄まじい怒りの白い炎がメンフィスの全身から吹き出していた。気圧されたカーフラ王女は一言もなく、部屋を出ていった。
「不快だ・・・っ!」
メンフィスは吐き捨てるように言った。
「私・・・下がらせて下さい。メンフィス。今日はもう・・・」
「それがよいでしょう、メンフィス」
アイシスも言葉を添え、素早くキャロルの傍らに立つと耳元に囁いた。
「ヒッタイトの王子妃殿、そなたを助けましょう。必ずそなたを脱出させます。今は心殺して・・・。私はそなたの味方です」
それは女らしい自分勝手な心が言わせた言葉であったかも知れないが、アイシスの本心でもあった。
この嫉妬深い哀しい女王の心のどこかに・・・自分が古代に引き込んだ娘への負い目があったのかもしれない。かつて20世紀で実の妹のように錯覚することもあった娘。
キャロルは無言で会釈すると部屋を出ていった。
アイシスも退出し、一人残されたメンフィスは無言で酒杯を傾けた。思うに任せぬあらゆる事柄に関する腹立ちと苛立ちが、血気盛んで傲慢な若者の心を煮えくりかえさせた。
「キャロルの部屋に行く」
メンフィスは唐突に立ち上がった。
「え?この夜更けに?姫君は・・・お休みかと・・・」
「かまわぬ!妃の許に夫が行くのだ、眠っているなら起こすだけ」

夜更け、突然のファラオの来訪に宿直の侍女達は驚いたようだった。姫君はお休みでございますがお起こししますか、という問いははっきりとした声になることはなかった。
メンフィスの激しい視線の前に侍女達は、守るべき女主キャロルを捨て早々に下がっていった。

75 :黒い嵐:02/10/10 17:48
31
(キャロル・・・)
常夜灯にほのかに照らし出された寝台にキャロルは眠っていた。眠りの内に憂いはないのか、その寝顔はひたすら穏やかであった。
薔薇色が透けて見える白い頬。濃い影をそこに落とす長い睫毛。艶やかな唇。
(しばらく見ぬ間に美しくなった)
メンフィスはそっと頬に触れてみた。暖かくしっとりとした吸い付いてくるような肌。
別れた日はもっと子供子供した娘だった。愛らしく初々しかった蓮の花の咲き初めのような娘。確かに美しくはあったけれど、今のような複雑な陰影に満ちた繊細な美しさはなかったとメンフィスは記憶していた。
それが今はどうだろう?話し方や立ち居振る舞いは押さえた優美さや華やかさが加わり、元々の素質が丹精され美しく磨き上げられ、洗練されたのが分かる。
(キャロルは美しく・・・大人の女に開花した)
メンフィスは唇を噛んだ。そうしてやるのは自分だったのだ。自分の花なのに丹精し大輪の花を咲かせる心楽しい作業は他の男の手に任せねばならなかった。
(でも、もう・・・。キャロルは私のものだ。私の腕の中で過去など忘れさせてやる!)
「キャロル・・・。私だ」
ぎし、と寝台が軋んだ。メンフィスは小柄な体の上に乗りかかるようにして耳元に熱い吐息を吹きかけた。

「う・・・ん」
安らかな眠りの帳が急速に失われていく。耳元に誰かが熱く囁きかける。求愛の言葉を。
―こんなことを私にする人は一人しかいない。
キャロルは夢うつつの状態で考えていた。眠っているキャロルを昼間の顔からは想像もつかない好色さで起こし、求めるのは・・・。
―王子。私、夢を見ていたの。怖い夢。嫌な夢。でも良かった。夢だったんですもの。王子がいてくれるんですもの。
キャロルは目を瞑ったまま、探るように手を動かした。愛しい人はきっと手を握ってくれるはずだ。接吻で覆ってくれるはずだ。さぁ、目を開けて・・・。
「・・・きゃあっ!誰?! いやあっ!」
「キャロル、静かにいたせ。妻が夫を拒むのか?」

76 :名無し草:02/10/10 18:23
きゃあっ!メンフィスったらー。
王子は寸止めだけどメンフィスさまはどうなのかしら(どきどき)

77 :名無し草:02/10/10 21:10
>眠っているキャロルを昼間の顔からは想像もつかない好色さで起こし、求めるのは・・・。
この一文がツボですた。
昼はクール、夜は情熱的な王子に萌え〜

78 :流転の姫君:02/10/10 21:55
>>59

35
キャロルとルカはどうやらバビロニアの王宮のどこかに連れ込まれたらしい。
薄暗い一室だが何処かしら女性の部屋らしい趣の部屋で、牢に閉じ込められると思っていたキャロルやルカに余計に不信感を抱かせた。
屈強な兵が部屋周りを警護してるのは分かっている。
「怪我の手当てをしたいの、薬や布を用意して!」と言ったキャロルの言葉にも
怪訝な顔をしながらも要求をのんだところをみると、早急に殺されるわけでもなさそうである。
「姫君、申し訳ありません。」
ルカの傷は深手ではなさそうだが、普段どおりに動くのは無理なようだ。
「私が頼んだせいなのだから、気にしないで。それより少しでも体力をつけて逃げられるようにしましょうよ。
 だから二人でがんばりましょう、ルカ」
二人でアッシリアの広から逃げ出した時の事を思い出して、少し微笑んだ。
「居心地はいかがかな?黄金の姫よ。」
扉の開く音がしてラガシュ王が静かに入ってきた。
「私に何の用です?断わっておきますけど、今の私はエジプトとは何の関係もないし、何の価値もないわ。
 ここに連れ込んだだけ無駄というものよ。」
キャロルは気丈に振る舞い、背筋を伸ばし、青い瞳は臆することなくラガシュ王を真っ直ぐに射た。
自分では分からなかったが、凛とした気品の溢れるその様子はラガシュ王や兵達にますます女神のような印象を与えていた。
ラガシュ王は面白そうに顔を歪めていた。
「エジプトのことならば、そなたなど必要とはせぬ。だがそなたに何の価値などないというのは大きな誤解だ。
 ・・・ここにその証もある・・・。」
ラガシュ王の指した先には、キャロルの腰帯に結び付けられたイズミル王子の腕輪があった。
「ヒッタイト王家の紋章の腕輪を持つ姫に、何の価値もないとは笑止な。」
その言葉にキャロルの身体から血の気が引いたように感じた。


79 :流転の姫君:02/10/11 14:51
>>78

36
今の自分にはもう何処の国とも何の縁もないと思っていた・・・。
既に自分をエジプトと結ぶものなどなく、この古代に一人きり。
イズミル王子が帰る場所をキャロルに提示して見せたのは、単に自分に対する思いやりだと思っていた。
だが王子はこの腕輪をキャロルに与える事によって、キャロルを「ヒッタイト皇太子妃」と身分を明確にし
キャロルを自分が守ろうとしたのだ、と今になって気がついた。
古代でこんな小娘一人、いつでも浚われるなり殺されるなりするのはいかにも容易い。
危険が多すぎることを危惧したのもあるのだろう。
今にも気を失いそうなキャロルだったが、ぐっと唇をかみ締め、お腹に力をいれて背筋を伸ばした。
「今はアイシスとの婚儀で何かと忙しないが、ここでおとなしくして頂こう。
 その様子では動こうにも動けまいがな。」
自信に満ち溢れた笑い声を響かせながらラガシュ王は立ち去った。
「姫君、姫君。お気を確かに!」
キャロルの真っ青な顔色を見てルカが必至に呼びかけた。
「・・・私・・・どうすればいいのかしら?王子は頭の切れる人だわ。
 でも私の所為でヒッタイトとバビロニアとの間に戦なんて起きないなんて保証はないわ。
 王子となんとか連絡がとれたらいいのに・・・。」
キャロルは床にぺたんと座り込んで、震えの止まらない身体を両手でなんとか押さえつけようとしていた。
何か方法を考えなければならない、ここから脱出する方法を。
アッシリアの時にはルカとハサンが力を貸してくれたが、今ルカは怪我をしているし、外からの助けなどはない。
王子、ごめんなさい・・・。
薄暗い中でも輝く腕輪を手にとりながら、キャロルは胸の内で呟いた。

80 :名無し草:02/10/11 15:48
>>75
32
「メンフィス・・・っ!」
キャロルは必死にのしかかってくる体を押し返した。酒臭い吐息、荒々しい、優しさのかけらもない仕草。
「嫌っ・・・!何をするの?誰か・・・助けてっ・・・!」
今は心殺し、メンフィスを拒まず気を持たせて油断させ、脱出しようと考えていたキャロルだが、こんな真似までされれば話は別だ。
だがキャロルの拒絶はメンフィスを余計に煽っただけのようだった。酒の匂いをさせながら愛しい女の肌に口づけ、耳朶に真剣な愛の言葉を囁く男。

―愛しているのだ、愛しているのだ。そなたを私だけのものにしたい。そなたを私の妃にしてしまいたい。拒むことなど許さぬ。そなたは私の妻だ。
拒まないで呉れ、お願いだ。怖いのだ、そなたは我が腕の中にいるのにいつも消え失せそうな不確かな感じがして心が苛まれる・・・!―

(メンフィスは真剣だ・・・っ)
キャロルは一気に奈落に落ちていくような恐怖を感じた。
狂気じみた愛。一途に過ぎるメンフィスの愛。もう何も目に映らない激しすぎる感情。
姉弟の愛の表し方はあまりにも似ていた。受け取る相手さえいれば、これほどに美しく深い誠意に満ちた愛もなかろうに。それなのに狂気と気味悪さを帯びるのは何故?

キャロルはメンフィスを拒みながら、必死に考えた。どうしたら身を守れる?どうしたらメンフィスを止められる?
キャロルは強引に自分を求める男の耳朶に囁いた。
「お願い、メンフィス。やめて。私はあなたの妻になる身です。でも婚儀が終わるまでは清らかでいたいのです。
本当に私を愛してくれるなら・・・やめてっ・・・!」
メンフィスは、はっとして動作を止めた。見おろせば勿忘草の青の瞳が涙に潤み、自分を見つめている。

「・・・・・・許せ・・・よ」
メンフィスは激情を恥じるように身を離した。
「そうだ、そなたは私の妻、愛しい娘だ。何故、そなたを辱めたりできよう?
・・・許してくれ・・・」
メンフィスは哀しそうに微笑むと寝台から降り立った。
「もう・・・休め。私も休む。・・・・・そなたの口から・・・私の妻になる身だと聞けて嬉しかった・・・」

81 :黒い嵐:02/10/11 16:27
>>80
33
「キャロル・・・。昨夜は済まなかった」
メンフィスに呼ばれて午前中の庭に出ると、いきなりエジプトのファラオその人が謝罪の言葉を口にした。
昨夜はあれから恐怖と混乱で眠ることもできず、朝になればなったで侍女達の好奇と労りの視線が鬱陶しくて、不快であったキャロルは驚いて目の前の長身の男性を見つめた。
「そのような目で見るな。昨夜は酔っていたのだ」
メンフィスは手を振って召使い達を下がらせた。
「私の妻になる決心をしてくれているそなたを疑い、辱めるような真似をしたのは本当に悪かったと思っている・・・」
(メンフィスが私に謝っている?! 嘘でしょう? この傲慢なファラオが!)
メンフィスはキャロルの手を取って、細い指に何かを填めた。
「きゃっ?! 何?」
思わずメンフィスの手の中から、自分の手を引き抜いたキャロルが見たのは自分の瞳と同じ青い宝石を填め込んだ美しい指輪。
「そなたに持っていて欲しい。そなたが我が腕の中に戻ってきたなら渡してやろうとずっと持っていたのだ。妻に・・・夫として贈りたかったのだ」
「メンフィス・・・」
我知らず赤面し、黒い瞳の呪縛から逃れられなくなったキャロル。
「早くそなたを本当の妻にしたい。そのためならなんでもしよう。私はもう待ち切れぬ」
その時、カーフラ王女のけたたましい声がメンフィスを呼び、短い逢瀬は終わりになった。メンフィスはキャロルに素早く接吻すると、我が儘で少しも愛していない妃を罰するべく宮殿に戻っていった。

「・・・姫君・・・」
呆然と一人立ち尽くすキャロルにそっと声を掛けたのは庭師に身をやつしたルカであった。
「ルカ・・・!来てくれたのね!ね、何か王子から連絡はあって?」
「はい。王子はテーベにお入りで、姫君をお助けする準備を着々とお進めです。姫君、いよいよ明晩真夜中に決行です。お心づもりを。それからご寝所にはお一人でいていただきたいのですが・・・」
「大丈夫よ、私が眠れば侍女達も次の間に下がります。寝たふりをするわ」
キャロルは喜び勇んで答えた。先ほどメンフィスが立てた心のさざ波はもう静まっていた。愛しい王子が来てくれるのだ!

82 :彼の見る夢3:02/10/12 00:02
形も喋り方も格段によくなったフナヌプを見てライアン・Jr.・リードは深々とため息をついた。
「その様子だとあの後うまいこと切り抜けて出世したみたいだな、フナヌプ
この目は伯父がいろいろ手を回して整形・治療してくれたんだ。
視力はかなり低いから眼鏡かコンタクト・レンズが手放せないが。かえってあだになるとはね。
カルナックに・・・いや、ここではイベト・スウトか、にいくべきじゃなかったな。
そういえば母の2度目の行方不明はあそこに行った時だった。
けど言っておくが帰ってきたのは僕の意思じゃないよ。セベクネフェルウ。
帰還方法探さなきゃいけないから神殿へ戻るよ。早いとこ帰らないと面倒なことになるから。僕の荷物何処だ?」
セベクネフェルウが苦い顔で問いかけた。
「この国の状況は気にならないんですか。仮にもあなたは王子なんですよ。」
とたんにイアンの顔が冷たくなった。
「ラージヘテプが『王子』だったことがあるのか?
父親は誰だかわからないといったのはお前の母親だ、セベクネフェルウ。
おかげで12そこらで殺されかけた。
それにおまえ自身言っただろう『私生児に王位を与えてやる私に感謝し言うことをきけ』と
7歳そこらでこれだ。後生恐るべし、だね。誰と結婚したのか知れんがそいつはまったく気の毒だ。」
王女の美しいといっていい顔がゆがんだ。
「私はそんなことを言ったのですか?私達の所為ですか?私や母がもっと・・・
でもあなたの『戦死』後あなたと引き比べられて私がどれほど・・・。
露骨にわたしの方が亡き者になるべきだったと・・
そうなっていればあなたはここに残り、父上はあのような苛烈さだけの存在にならず国民も安心して・・・
あなたのお母様を父上に会わせてあげて下さい。父上は今もあのあなたの母君を忘れていません。」
泣き出した王女にイアンはただ冷笑を浮かべた。


83 :彼の見る夢3:02/10/12 00:03
「君の愚痴を聞いてる暇なんてありませんよ。今更邪魔だといわれるならなおさらです。
あの男がどうなったかなんて聞きたくもない。ましてや母に会わせるなんてね。
そんな戯言はあの昏主の魂ごとアメミット(最後の審判の後悪人とされた魂を喰う怪物)に喰わせろ!
僕は僕を待ってくれてると思える人のところへ帰ります。僕の荷物は?」
ひたすら冷淡な兄にフナヌプはさすがに苦い声をだした。
「離れてから20年経ったんです。情を掛けろとは言いませんが冷静に見てやろうという気はないんですか?
この方は17年私の妻としてよくやってくれたし、王族として政治にも祭祀にも努力してこられました。
王だってしょうがなく義務で子供をつくった後は女っ気無しです。」
「これは驚いた。あの血筋と王女の地位でふんぞり返るしか能がなかったセベクネフェルウがね。
お前に免じて答えは出しておくよ。フナヌプ
セベクネフェルウがどうあれあのときの僕の決断は変わらなかったさ。
今になって分かったことだけど僕も僕の母も本来ここに干渉してはいけないんだ。特に母はね。
だから僕が去ったことに関しては君は悩まなくていい。
それとあの男に必要数の子供が成人したのなら、
後は作らないほうがいいという程度には分別がついたのは驚きだな。」
「それが仮にも父王に対する言い草ですか!セベクネフェルウだって子供だったんですよ!」
かっての上官の冷淡な物言いにフナヌプは思わずめったに戦場以外では出さない大声を上げた。
「僕だって子供だったはずだ。でも5歳のときにそれは許されなくなった。
それにしょうがなく子供をつくったて?その子供の母親の感情は?子供へのケアは?
ここの女が地位やら権力やらが欲しくてあの男の子を産みたいというならそれもいいだろう。
それはその女の意思だ。
だが母はそうじゃなかった。ここにいるはずもない存在でもあった。
アイシスによって引き込まれて必至に帰還の方法を探していた。なのに!」
その言葉をセベクネフェルウは聞きとがめた。
「アイシスとは誰です?それにどうやってあなたは生まれる前のことを?
ウナスやミヌーエたちが話すとも思えません。」


84 :名無し草:02/10/12 23:23
>彼の見る夢
フナヌプ結婚してたのね。
ということはイアンも結婚しててもいいということかな。

85 :黒い嵐:02/10/15 13:26
>>81
34
(明日は王子が来てくれる・・・!)
そう思うとキャロルの顔からは自ずと憂いの色が取り除かれ、頬にも薔薇色が差してくる。
その心弾みは、自分でも気付かぬ美しさをその花の容(かんばせ)に添えているのだ。
そんなキャロルを見つめる二人の女性・・・アイシスとカーフラの二人の妃。
(キャロル・・・何かあったのか?脱出の算段でも立てたのであろうか?無茶をせねばいいが。いずれにせよ、明日以降にあの王子妃を無事、ヒッタイトに送り届ける算段はせねばな・・・)
アイシスは国益を考える気高い女王の顔でキャロルを見やった。
(憎いあの女!他国のすでに王子妃でありながらメンフィス様に熱望される邪魔な女!どうだろう?あの色香は?憎い・・・憎い・・・。
見ておいで、誰がお前をメンフィス様の妃になどするものかっ・・・!)
嫉妬に狂った女に成り下がったカーフラ王女。リビアの王女であるという以外、これといって誇れるもののないこの女性は政務にも参加させてもらえず、ただメンフィスの王子を産むことのみを念じて生きるようになっていた。

「メンフィス様のお出ましでございます」
召使いの声が響き、エジプトのファラオ メンフィスが広間に現れた。アイシスとカーフラはエジプト風に跪いて王であり夫である男性を迎え入れた。キャロルはヒッタイト風の立礼で異国の王に会釈した。
メンフィスは迷わず、キャロルの傍らに立ち耳元に囁きかけた。
「早くそなたがエジプトの風儀に慣れればよいのに。私を苛立たせる気か?」
「・・・・・!・・・・・」
「よい。婚儀を終えれば私が早くそなたがエジプトの風儀を思い出せるよう昼も夜も教えてやろうほどに」
メンフィスは素早くキャロルに接吻した。そしてファラオを迎えた内輪の宴が始まった・・・。

その夜更け。キャロルの寝室に続く廊下をひそやかに歩む人影があった。
カーフラ王女である。
短剣を懐に忍ばせたカーフラ王女は音もなく寝室の扉の内側に滑り込むと憎い女の寝顔を凝視した。
(この女が生きている限り、私の未来はない!すでに人の妻である身でありながらメンフィス様のご寵愛を受けるこの姦婦を誅してくれるっ!)
カーフラ王女は短剣を振り上げた・・・。

86 :人形姫:02/10/15 13:52
1 キャロル
あの人は私に手を差し伸べてくれた。一緒においでと。
あの人は私をあそこから連れだしてくれた。ここにいては辛いだけだろうと。
あの人は私に言った。私がそなたを望むのだよと。

どうして私に拒めたの?熱すぎる太陽の照らすあの国はキライだった。
メンフィスもアイシスも・・・怖かった。ただ怖かった。考えるのも嫌。思い出すと身が震えるほど。

あの人は言った。
そなたを引き取るのは私の一存だ。でも心配することはない。何も不自由せぬよう取りはからってやる。嫌なことは何もせぬ。少なくとも今よりは幸せにしてやれるぞ?

差し伸べられた大きな手。選ぶことのできない未来が差し出された。
イズミル王子。はしばみ色の髪、琥珀色の瞳。整った顔立ち。いろんな事を知っている。兄さんに雰囲気が似ていると思った。
好きだ・・・と思った。好きになって欲しい・・・と思った。

だから・・・私はあの人の手を取った。

長い長い旅。
あの人は私にいろんなことを教えてくれた。星の見方。水脈の辿り方。道がどこに続いているのか。道の向こうにどんな国があって、人々はどんな生活をしているのか。これから行くヒッタイトはどんな国か。
旅路の果てのヒッタイト。城壁に囲まれた都市。
あの人は言った。これが堅固な城塞都市ヒッタイト。何人たりとも勝手に出ることは叶わぬ。決して!
思わず身震いした私。これから先、私は決して一人きりにはなれないだろう。私は囚われて決して逃れることはできないだろう。そんな予感がした。

城壁に囲まれた宮殿の中の豪華な一室。
あの人は当然のように私を抱いた。怖くなかったといえば嘘になる。嫌でなかったといえば嘘になる。迷いが無かったいえば嘘になる。
でも。
あの時、この人とならばいいと思ったのも本当。イズミル王子と呼ばれる年の離れた男性がとても好きだったのも本当。
先に何の保証もない結びつき。一時の気まぐれかも知れないと思った。醒めた覚悟が私の躰の芯を冷たくした。
でも。
誇りも慎みも何もかも忘れ果て、私は自分から堕ちていこうと思った。あの人の数ある愛人の一人でもいいとまで思い詰めて、泣きながら・・・。

87 :人形姫:02/10/15 13:53
2 イズミル
娘は泣きながら眠ってしまった。
細い躰。頼りない躰。幼い心。愛しい、愛しい、愛しい・・・。

私を頼ってきてくれた娘。初めて見たときの衝撃は未だ忘れられぬ。
金色の髪、青い瞳、白い肌。幼く頼りなげな様子ながら・・・私は一目見ただけでその娘に男の欲望を覚えた。
そのような欲望を抱く自分に嫌悪を覚えさせるほどの様子であるのに、その娘の中には確実に男を狂わせる女の部分も隠れていた。
その女が私を捉えたのだ。

私は娘に手を差し伸べた。娘が私を拒めぬのは分かり切ったこと。
私が彼女を望んだのだ。何故、この無力な存在に私を拒めよう?
私は彼女を胸に抱き、大切に慈しみ導きながらヒッタイトに帰城した。娘は私を兄のようだと言って笑った。
その時、確かに私はこの無垢な存在を愛していると確信した。いや、私はもう絡め取られてしまっていたのだ。金色の髪の魔性に・・・。

無垢な娘。世間知らずの娘。醜いことも、さもしい駆け引きも何も知らぬ。神の英知と子供の心を併せ持つ優しい娘。手折ってはならぬ永遠の蕾。
謀略と血、裏切りと別離、冷徹な政略の中で生きてきた私。
私は汚れている。手には血がこびりつき、高い身分と引き替えに孤独を得た。
だから。

愛しい娘を私だけのものにしたかった。ただ眺め、憧れるだけの女神ではなくて、私と同じ存在にしたかった。
純粋なものを汚す喜び・・・・・・。
私は娘を抱いた。真実愛しているから。手放したくなかったから。
自分の身に何が起こっているのか理解し切れぬような娘を。
私は悪魔だ。愛しい娘を二度と母女神の許に帰れぬような躰にした。

そして。
娘は私のものになった。私はひとりではなくなった・・・・・・。

88 :人形姫:02/10/15 13:55
3 ムーラ
王子が初めてご自分のご寝所に女人をお入れになったのはエジプトより帰国なされたその日の晩。
これまで王子はそのようなことはなさらなかったのに。
これまであまたの女人方があの方のお側に召された。でもご寝所にお入りになった方はなかった。
いつもいつも王子のほうから女人方のお部屋においでになられた。そして暫しの快楽に日常の憂さを忘れられる・・・。
それが私のお育てした王子のなさりようだった。

でも。
あの金髪の小さな姫君に対するなさりようなこれまでとは正反対。
ご自身のお部屋の一角を形ばかり仕切って姫君のご座所となさり、旅装を解かれた姫君がおくつろぎになるのもろくろくお許しにならず、私にご入浴の介添えを命じられた。
あの女になどお心をかけられることのなかった冷たい方が!この私にじきじきに姫君のお世話を命じられた!

浴室で拝見した姫君のお躰。白く頼りなく、痛々しいほど。これまでのお相手とは全く違う。

―この幼い方はこれから王子がご自身に何をなさるか充分にごぞんじなのかしら?王子はずいぶんと酷いことをなさるのではないかしら?
思わず、心配してしまったほどの小さな異国の姫君。

それでも私の口から出たのは、私が全身全霊を込めて大切にお育てした王子を思う言葉。
―何事も王子のお心のままにお仕えなされますように。これからは王子ただお一人があなた様がお頼りになり、大切にお慕い申し上げるべき方です。

89 :人形姫:02/10/15 13:55
3 ムーラ
姫君は同性の私の口から出た冷たい言葉をどう思し召したやら。
毅然とただ無言で頷かれ、私が手をお引きするままに王子の御許に向かわれた。

翌朝、日もすっかり高くのぼり・・・。
王子と姫君は仲良くご寝所からお出ましになった。
王子のご機嫌は麗しく、どこでお覚えになったやら手ずから新床のお勤めを無事、お済ませになられた姫君のお世話をなさる。
これまでにない王子のなさりように目を丸くする侍女達を窘めつつ、私はご両人にお仕えする。
私だって驚いていたのだ。王子が・・・私のお育てした王子が・・・たかが女人にここまで優しく気遣いを示されるとは・・・!

王子が姫君に新婚の贈り物(!)をなさったとき、不覚にも私は息を呑んで取り乱した様を露わにしてしまった。
王子が姫君にお贈りになったのは・・・指輪。
金と宝石でできたそれは・・・母王妃様が王子に贈られた逸品。いつか正妃となる女人に贈るようにと・・・・。

90 :名無し草:02/10/15 15:12
休み明けは作家様も休み明けらしいので嬉しいっす。
でも自分は今日は有休で休みなんだよーん。

91 :流転の姫君:02/10/15 16:19
>>79
37
ルカとキャロルに味方は射ないと思っていた矢先、思いもかけない者が二人の目の前に現れた。
エジプトでキャロルに仕えていたウナスであった。
ウナスは連日キャロルの行方を追う事をメンフィスから命令されていたが、
ある時から急にメンフィスの機嫌が悪くなり、キャロルの名を出す事も禁じ、
国中に出していたキャロルの探索も打ち切りとなってしまった。
あれほどにまでキャロルを熱愛していたファラオなので納得しかねるウナスは、
丁度アイシスがバイビロニアへ嫁す事になったのを聞き、キャロルの探索も兼ねて護衛に名乗りを揚げたのである。
アイシスの婚儀が終わり落ち着けば帰国の予定だったが、バビロニアの王宮の中で
アイシスに仕える者がちらりとキャロルらしきものを見た、という話が密かに伝わってきたのもあって確認しにきたのであった。
だがファラオの様子を知っているウナスはキャロルにエジプトへの帰国も薦められないうえ、
キャロル本人にも全くその気はない事も、そしてキャロルの身分がヒッタイトに属するものとなっている今では同手を貸していいのやら見当もつかない。
アイシスに助けを求めようにも、アイシスはキャロルを憎んでいるのでそれもならない。
イズミル王子は今この王宮内に、祝賀の客として滞在していると聞いたキャロルは何か思い立ったかのように顔を上げた。
「ではこれを王子に渡してくれるだけでいいわ、お願い。」と王子から貰った腕輪に手紙を忍ばせてウナスに渡した。
「私がここにいることで、戦が起こるなんて事は何としてでも避けたいのよ。」
戦を嫌い、心の優しいキャロルを知っているウナスに断われるはずもなかった。


92 :名無し草:02/10/15 16:45
>流転の姫君作家様
続きが気になってたまりましぇん!結局キャロルは誰と幸せになるのでつか?

>黒い嵐作家様
いよいよ「明晩」でしょーか、王子が来るのは?あっさりとキャロルを奪還できるのか一波乱あるのか楽しみでつ。

>人形姫様
何か耽美な話っすね。好き嫌い別れるかも知れませんが自分的にはツボです。

93 :黒い嵐:02/10/16 12:01
>>85
35
動物的勘、とでもいうのだろうか?
首筋に不吉な電流を感じたように思ってキャロルが目を開けたのはまさに王女が短剣を振り下ろさんとしたその瞬間だった。
「きゃあぁぁっ?!」
反射的に身を避けるキャロルの長い金髪がざっくりと切り取られた。枕に飛び散る金色の髪の毛。
「おのれっ、ナイルの姫!我が君のお心を惑わせしはこの髪かっ!」
カーフラ王女は散乱する金髪と、キャロルのうなじにうっすらと滲んだ血に逆上して狂気じみた凄絶な笑みを浮かべた。
そのまま、寝起きの身体の強ばりと恐怖に強ばるキャロルの髪を鷲掴みにすると、ざくざく鈍い音をたてながら金色の細糸を切り落としていった。
イズミル王子があれほど大切に愛で、切ることを許さなかった腰まである長い髪があっという間に顎あたりまでじゃきじゃきに切られていく。
「いい気味だ!何と醜い女!これでメンフィス様のお心も目が覚めるでしょうっ!」
カーフラ王女は短剣を振り降ろした。鋭い切っ先は、庇うように白い顔の前に差し出された左腕をざっくりと切り裂いた。
「やめてーっ!だ、誰か!」



94 :黒い嵐:02/10/16 12:02
36
その声に、引き寄せられるように暗い窓の外から侵入してくる人影。
ルカだった。
ルカは無言で短剣をふるい、カーフラ王女の右腕を切り裂き凶器を奪った。
「ひっ?!ひぎゃあぁぁっ・・・!」
噴き出る血潮と痛みに驚いたカーフラ王女は、手負いの獣が逃げるようにして部屋の外に逃げていった。
「ル・・・ルカ!来てくれたの・・・」
「姫君!申し訳ございませぬ。窓の外にて宿直を勤めさせていただいておりましたが何たる不覚・・・。お詫びの言葉もございませぬ・・・」
ルカは素早く怪我の程度を改めながら詫びた。女主の怯えきった蒼白の顔、むごたらしく切られた金髪が忠義者の胸を苛んだ。
(おお・・・。私がついておりながらこのような不祥事!王子に何と申し上げたものか・・・!)
その時、キャロルの寝室の扉の外がにわかに騒がしくなった。王女が逃げ出すときに大きな音を立てたので兵士や侍女が押っ取り刀で駆けつけてきたらしい。
「ルカ、逃げて!人が来るわ。このままではあなたが捕まってしまう!」
「でも姫君・・・」
「お願い、王子は明日来てくれるのでしょう?ヘタに騒ぎを大きくしたくないの。私は大丈夫よ。あなたに何かあったら私、王子に何と詫びて良いか分からない。・・・・・これは命令です」

95 :流転の姫君:02/10/16 13:18
>>91
38
イズミル王子は不本意ながらも、どこかしら得体の知れないラガシュ王を警戒しながら
バビロニア王宮に滞在していた。勿論表向きは祝賀の客である。
婚儀も終わり妖艶なアイシスが晴れやかな顔してラガシュ王に媚びる様を見るにつけ、
王子の心は以前のアイシスを思い出し、嘲笑するしかないのだ。
アイシスが姿を消すとラガシュ王にキャロルのことでの駆け引きを強いられるが、
ラガシュ王は決して本音を漏らすことなくのらりくらりと交わしてしまう。
ラガシュ王はキャロルが非公式だが、イズミル王子の妃ということを暗にちらつかせ
それを元に自国に有利に展開しようとしているであろうと思われた。
王子が王宮の長い回廊を通っていると一人のエジプト兵とすれ違った。
その時「これを落とされました」と手渡されたのは、自分がキャロルに渡したあの腕輪である。
王子以外には聞けないような囁き声で「どうかあおのお方をお守りください・・。」と言うと
その兵は姿を消した。
人払いをし、腕輪を改めると小さな紙片が仕込まれており、王子はそれを読み終えると
周りに控えていた将軍や仕官が驚くほど笑って見せた。
「ふふん、あの姫を見くびっておったわ・・・.この私に指示を出すとはな。面白い姫だ。」
キャロルが寄越した紙には流麗なヒエログリフでこれからするべき指示しか書いていなかった。
捕らわれの身ともなれば救いを求めたりするような事を書くであろうに、端的に具体的な指示のみであった。
小柄で子供のような純粋な心をもつキャロルのまた違った一面を見せられた王子は
自分でもそれと気付かないうちに、すっかりキャロルに魅せられているのである。
「では早く姫を救い出し帰国せねばならぬ、名実共にわが妃に・・・。」
イズミル王子はキャロルの指示を兵達に伝えた。



96 :流転の姫君:02/10/16 13:38
39
手紙が上手くイズミル王子に渡ることを祈っているキャロルの元へラガシュ王が突然訪れた。
「何の用なのです?」
ルカを庇うようにキャロルは立ちふさがり、凛とした声で問いただした。
「そなたは予見もできるとか聞いておる。試させてもらおう。」
ラガシュ王はキャロルの腰と首を掴むとうっすらと笑みを浮かべた。
「・・や・・やめて。私に予見なんてできない・・・。」
「ではこれではいかがかな?」
ラガシュ王の合図と共にルカが床に押し付けられ、剣が突きつけられた。
「姫君!どうか私の事は構わず・・!」
「ルカ!・・今はザクロス山中の山岳民族を討伐する時期だわ!早くしないと被害が拡大する。
 それしかわからないわ!だから早くルカを放して!」
「それでよい、素直にしておれば危害など加えぬ。」
答えを聞いたラガシュ王はキャロルを締め付けていた手を緩めた。
首を捕まれた事で涙ぐみながら咳き込むキャロルはルカに介抱されながらもラガシュ王を睨み付けた。
「流石は神の娘ですな・・・。」
幾人かの兵を従えラガシュ王はさっさと出て行ってしまった。
「姫君、お加減は?」
ルカの心配そうな声を聞きながらも、キャロルは作戦の一段階が終わった事に安堵の溜め息をついた。
王子なら・・・王子なら分かってくれるはずよ。
キャロルの心の内には王子に対する信頼が揺るぐ事はなかった。

97 :名無し草:02/10/16 16:41
新作嬉しい!

98 :名無し草:02/10/16 17:22


99 :黒い嵐:02/10/17 13:30
>>94
37
「暗くて・・・賊の顔は見えませんでした。悲鳴をあげたら逃げていったのです」
メンフィスの顔をまっすぐ見返しながら、キャロルは言った。
メンフィスは苦り切った顔をして包帯を巻かれた白く細い腕を、むごたらしく切り取られた金髪を見つめていた。
大事な娘がもう少しで殺されるところだった。自分の命より大切な存在を傷つける許し難い曲者があった。何たる失態だろう!
それなのに目の前の娘は存外、冷静である。メンフィスとしては自分の胸で泣きじゃくり、恐怖に強ばった心を癒して欲しかったのに。
「だからといって!何も覚えていないことはあるまい!少しでもよい、手がかりとなることを思い出せ!でなくば私はそなたの仇を討ってやることもできぬ。
よいか、キャロル。私の妃となるそなたをこのような目に遭わせた不埒なる輩は必ず殺してやる!だから思い出せ、何でも良いから!」
「本当に何も思い出せないの。怖くて、夢中で・・・。気がついたら私、怪我をしていて、皆が来てくれて・・・」
キャロルは答えた。今ここで騒ぎを大きくするわけにはいかない。でなければ明日の計画に差し障る。
「メンフィス様、姫君はお怪我をなさりかなり消耗しておられます。そのように尋問のように厳しく問いただされては・・・」
侍医が遠慮がちに言上した。
「ちっ・・・!」
メンフィスは忌々しげに舌打ちすると、兵士らに厳しい犯人探索の命令を重ねて出した。そして長剣を持ってこさせると、キャロルの横たわる寝台の傍らの椅子にどっかりと座を占めた。
「何という顔をしている?私がそなたを護衛してやる」
メンフィスは戸惑うキャロルの唇を自分の唇で塞いだ。

100 :黒い嵐:02/10/17 13:31
38
ろくに眠れぬままにキャロルは脱出決行当日を迎えた。
怪我と心労と発熱のため、身体は重く、動くのも億劫だった。でも心だけはあやしく騒ぎ、落ち着かない。
そんな様子を見てメンフィスや医師、召使い達はキャロルが暗殺未遂の恐怖と、怪我の痛みでひどく消耗しているのだろうと考えたようだった。喉ごしの良い軽い食事を勧められ、鎮静剤を処方されてしまった。
「さぁ、キャロル。これを飲め。医師は今は眠って体力を快復するのが先決と申しておる。私のために飲んでくれ。私を安心させてくれ」
「でも・・・」
(そんなもの、飲めるものですか!ああ、どうしよう?しっかり起きていて今夜の算段をしなくては!何とかして一人になって・・・。王子が来てくれるのだから!)
駄々をこねるキャロルを見てメンフィスは何を勘違いしたのか。優しく黄金の髪に触れてきた。メンフィス手ずから綺麗に顎の当たりで切りそろえてやった絹の細糸。
「髪の毛のことを悲しんでいるのか?」
「え・・・?」
「そなたが自慢に思っていたであろう金色の髪。賊はそなたの髪を切り落とし、辱めた。でも、それが何だ?私はそなたが無事で、私の腕の中に居てくれることこそが嬉しいのだ。髪の毛のことくらいで私がそなたに興ざめするような男とでも思ったか?」
真摯な愛の言葉に思わずキャロルは戦くようなときめきを覚えた。この人は真実、私のことを愛していてくれる・・・!恐ろしい!

そこにアイシスの訪れが知らされた。彼女は病平癒の護符を持ってくることを口実にキャロルの様子を見に来たのだ。しかしそこで目にしたのは、あまりに睦まじげな男女の姿。
アイシスはキャロルと言葉を交わすことを許されず、部屋を出ていった。しかし嫉妬と悲しみに身悶えながらも、理性を失わぬ聡明な女王は今一人の妃カーフラの居室に向かったのだった。

101 :人形姫:02/10/17 15:37
>>89
4 ミラ
王子が新しい女人を召し出された。
そんな噂が耳に入っても私はいつものように余裕のある微笑を浮かべるだけの筈だった。
王子は素晴らしいお方。お身のまわりにあまたの女人があるのはご身分柄当然。お忙しい方なのだから憂さ晴らしの女人は必要でしょうし。
でもいつだって一番、愛されるのは私。
お部屋に王子をお迎えする回数が一番多いのは私。
王妃様お気に入りの私。王子は母妃のご意向を重んじる方。私を愛していつか正妃の位に昇らせてくださるのは当然。
私はあの方を誰よりも愛している。あの方は私のもの。
香をたき、紗を纏い、あの方の愛を受ける私。あの方は激しく私を愛し、私を夢中にさせて下さる。

新しい女人はいつ自分の房を賜るのかしら?いつ私に挨拶にくるかしら?どうあしらって身分柄と立場を教えてやろうかしら?
そんな思いはあっさりうち砕かれた。
新しい女人―エジプトのナイルの姫―は王宮にやって来たその日に、王子のご寵愛を受けた。
王子は女は誰も入ったことのないご自分の寝室にに姫を置き、信厚いムーラに世話をお任せになっているという。
あの王子が!あの王子が!他の女を・・・いいえ、私を差し置いてそんな真似を!

今まで見下していた他の女達の視線が私の誇りを踏みにじる。
一歩も王子のお部屋を出ず、王子のご寵愛を専らにしている憎いナイルの姫。

初めて憎い女を見ることが叶ったのは冬の大祭の宴で。
小さな姫は王子に手を引かれていた。その手には王妃様ゆかりの指輪。王子に並び立つ女人にのみ許される逸品が輝いていた。
・・・・私の目は屈辱に曇り、周囲の風景は真っ赤に染まった・・・・。

102 :人形姫:02/10/17 15:38
5 王宮侍女
ええ、そりゃ驚きましたとも!何がって、あなた冬の大祭の宴のことですわ!
あの日、初めてイズミル王子様がナイルの姫を公にお披露目なさいました。
兼ねてから噂になっていた姫君ですよ。エジプトだかどこだかの神の娘で、王子のご寵愛を専らにしてるって。
賢くて美しくて心映えも良くて。慎ましやかな蓮の花のような方。
何ですか、本当にそんな男に都合のいい娘なんているのって随分と私たちも意地悪く取りざたしたものですわ。

でも本当にいるんですねぇ。男の心を捉えて、私たち女までうっとりしてしまうような容姿の方って。
いえね、妖艶とかいう類の美貌じゃないですよ。まるで子供。固い蕾みたいな、もっと意地悪く言えば神殿にある像みたいにキレイすぎて嘘っぽい感じ。
でも如何にも、子供っぽいおぼこな感じがきっと王子のお気に召したのでしょうねぇ。ご寝所からお出しにならなかったのでしょう?
王子の父君様も女人にはちょっと変わったお好みがあるようですし。ふふふ。

姫君はお指に、王妃様譲りの指輪をしておいででしたよ。それを見たときのミラ様のお顔!
あの指輪はただの指輪じゃありませんよ。言ってみれば王子妃の印。

皆、驚きましたよ。その上、ミラ様ったら王子が席を外されたちょっとした隙に姫君におっしゃったのですよ。その指輪を私にお渡しなさいってね。
姫君は驚き、戸惑われたようです。王子のお許しがなければ指輪は外せないっておっしゃいましてね。ミラ様は傍目にも分かるくらい逆上なさいましたよ。
でもねぇ、皆はもっと驚いたんですよ。戻られた王子はおっしゃったんです。
冷たい冷たいお声でねぇ。

―姫、少し指輪を貸してやれ。ミラ、これで満足か?って・・・・。

103 :流転の姫君:02/10/17 16:23
>>96
40
ザクロス山近郊に仕える仕官がラガシュ王に接見を求めてきたのは、キャロルの予見を聞いてから半日ほど経った時であろうか。
山岳民族の残酷な仕打ちに民は惨たらしい目にあい、至急軍隊で制圧するよう必死に訴えた。
軍隊を派遣するとラガシュ王が応対するが、それだけでは治まらぬ状況だと直も訴える仕官に
ラガシュ王も自ら軍隊を率いて向かう事に決めた。
ラガシュ王が決断したのには、キャロルの予見が大きく影響したのもあるのだろう。
新妻となったアイシスに断りをし、ラガシュ王は大勢の軍隊を率いてザクロス山へと向かった。
祝賀の客も暇を告げ始め、ちらほらと出立する様を見せ、王宮はざわめきながらも静寂を取り戻そうとしているようだった。
キャロルがいたのは王宮の北の方で兵の警護も厳重だった。
だが南や東の方で突然爆音が響き渡り、王宮内は王の不在も相まって騒然とし、悲鳴や怒号が治まらなかった。
キャロルの部屋を開いて手助けしたのは、キャロルにもルカにも想像のつかない人間であった。
それはアイシスに仕える為エジプトからやって来ていた女官や仕官達であったのである。
アイシスがキャロルを嫌っている事は周知の事実であったが、それとは別にキャロルは民衆にとって神であった。
女神ハピがエジプトに賜りし、心優しく英知溢れるナイルの姫。
急にファラオがその存在を口にはしなくなったが、彼らの心は以前と変わらず守り神として慕っていた。
如何に同盟国であっても我らの神の娘を幽閉させてはおけない、とアイシスには内密に救出の機会を覗っていたのであった。
「私はもうエジプトには戻れないのよ、私はヒッタイトへ行くのです。」
キャロルがそう言っても「ナイルの姫がここで幽閉されてることなんて、私達には我慢できないのです。」と
女官がキャロルに布を被せながら外への通路を促した。
思いもかけない味方に罪悪感と感謝を感じながらキャロルはルカと共に脱出を急いだ。

104 :流転の姫君:02/10/17 17:06
41
アイシスは頑なに自分の出入りを禁ずる王宮の北に疑問を抱えていた。
厳重な警備を敷き、妃の自分すらもラガシュ王はのらりくらりと交わして決して明かそうとはしない。
丁度留守にするという機会に調べてみるつもりでもあったが、そこへ腹心の部下のアリが驚愕する事実を耳打ちした。
キャロルがそこに幽閉されている、と。
バビロニアに嫁す途中にキャロルには会ったが、もう何の力もない小娘、どこぞで野垂れ死にしているであろう。
キャロルが甘やかされた生活でないと生きていけない事くらいは承知している。
だからもう夜盗にでも浚われたか殺されたかと思い、アイシスは晴れやかな顔をしていたのである。
通路の途中でアイシスは憎いキャロルを見つけた。
「おのれ・・まだ生きておったか!この手で引導渡してくれよう!」
「やめて!アイシス!」
キャロルに向かって短剣を振りかざしたその時、大柄な影がアイシスの腕を捕らえた。
「どのような者であれ我が妃に傷つけるものは許さぬ。」
イズミル王子がキャロルを救出しに来たのである。
「そなたに内密に我が妃を幽閉するとはな、ラガシュ王に問いただしてみるがよい。
 我らは帰国するゆえ、ラガシュ王に伝えよ。」
キャロルを抱き抱えるとアイシスに冷たく侮蔑に満ちた眼差しを投げかけ、イズミル王子はルカや兵を従え姿を消した。
騒然とするバビロニア王宮を後にイズミル王子は帰国する為に馬を駆けさせた。
その胸に愛しいキャロルをしっかりと抱きしめて。
「私絶対王子が助けにきてくれるって分かってたわ。そうは手紙に書かなかったけど」
キャロルが王子を見上げながら自らも王子にしがみ付いた。
「そなたはただラガシュ王を誘き出し、南と東で小さな火を起こせとしか書いていなかった。
 黒い水を扱う時の注意と。
 だが私にはわかっていた、そなたが騒ぎの隙に救出してくれと呼びかけていたからな。」
「・・信じてたわ、王子。」
王子の胸にそっと顔を埋めたキャロルの温かな身体を、もう二度と放すまい、と決意をしたようにもう一度力強く抱き寄せたのであった。

105 :名無し草:02/10/17 20:39
うぅ・・・感涙。
作家のみなさまが競うように新作を出してくださるので
嬉しい限りです。

106 :名無し草:02/10/17 23:56
人形姫・・・
王子様って冷たいお方やなー。
一度なりとも情をかけた女にあんまりな仕打ちやで〜。
でも、自分がキャロなら嬉しいかも。

107 :名無し草:02/10/18 09:23
人形姫の王子って冷血漢?
もしそうなら、冷血漢王子が結局、周りの女全員から見捨てられる話キボーン(藁。

だめですか?顔はいいけど性格が災いして嫁取りができなくて、真実の愛を求めて彷徨っちゃう王子の話。

108 :名無し草:02/10/18 09:28
>>102
6 キャロル
私は先に宴の席を退出した。
宴に出る前に王子が私に着けさせた指輪が今はない。金色と青色の綺麗な指輪。あの人が初めての夜が明けた朝に贈ってくれた指輪。私に填めさせてくれた指輪。

―大切にいたせよ。決して無くしてはならぬ。決して外してはならぬ。

私は黙って頷いただけだった。
でも嬉しかった。差し出した左手の薬指にあの人が填めてくれた指輪。
私はただの弄び者かもしれない。気まぐれに抱ける人形でしかないのかもしれない。あの人は私に心があると知っていてくれるかしら?そんな迷いと悲しみを抱いて、王子のものになった私。
王子の行為は私を乱れさせ、私は屈辱と喜悦にむせび泣きながらあの人に縋った。あの人の胸の中で永遠に失われた20世紀を忘れようと思ったのかも知れない。
―愛しい・・・。そなたはまこと乙女であったのだな。ああ・・・こんな想いは初めてだ・・・。そなたが何よりも愛しい・・・
そう言ってくれたと思ったのは夢だったの・・・?

指輪はあの人の心の証だと勝手に決めていたのは私の愚かさ?
窮屈なほど私を大切にしてくれたあの人に、いつの間にか私は心傲っていたのかしら?
指輪をくれたあの人が、私から指輪を取りあげた。あの人の数多い愛人の一人の気まぐれを叶えるために。

思い詰め、黙り込んだ私の許にあの人はしれっと秀麗な顔で戻ってきた。
私は古代に来て初めて心がいきいきと動き、波立つのを実感した。

―どうして私の指輪を取り上げたの?あれはあなたが私に贈ってくれた大切なものだったのに!あなたはどうでもいいのね、私の事なんて!あなたなんて大嫌いっ!

気がつけば私は泣き叫んでいた。昔、まだ兄さんの小さい妹だった頃のように。

109 :人形姫:02/10/18 09:30
7 イズミル
私は苛立っていたのかもしれぬ。宴の席で思わぬ騒ぎがあったゆえに。
私が姫に贈った指輪。姫が頬を染め、嬉しそうに私に微笑みかけた贈り物。
それをミラが見咎めて欲しがったのだ。私が姫にと贈った指輪を。
金の台に碧の宝石。母が私に贈った品。いつか我が正妃となる女人に贈れと。

私は姫を愛していた。
姫が私に是非もなく抱かれ、身も世もなく涙し、躰を撓らせても、心の深い場所は私に捧げることをよしとせず頑なで潔癖な乙女、いや子供のままであると分かっていたから・・・我が心の証として当然のように指輪を与えた。
私を信じよと。
私だけを信じ、愛し、縋り、忠誠と貞節を捧げるはそなたの義務。それに疑問を挟むことはそなたには許されておらぬ。そなたはただ私だけのもの。
指輪は私の心の証、姫への頸城(くびき)。

だが指輪は所詮、指輪にすぎぬ。ただのモノに不相応な深い意味合いを持たせるなどとは愚かしいこと。
折に触れ、抱いて戯れたミラが指輪を欲しがった時、私は呉れてやればいいと思った。たかが指輪だ。聡明な姫とて私と同じ考えであろうと思っていた。
指輪はミラの手に渡った。愚かな女は滑稽なまでに喜んでいた。

だが姫は。私が指輪を取り上げたといってひどく怒った。泣き叫んで。感情を露わにして。私を罵って、大嫌いとまで言い切った。この私を!
私は怒りに我を忘れた。小さな躰を怒りに震わせて泣く姫、小生意気な子猫!
私は苛立っていたのかもしれぬ。
私は乱暴に姫を押し倒し、幾度も罰した。何故、我が心が分からぬかと。たかが指輪などで何故、我が心を測ろうとするかと。
姫を思いのままにする冥い歓びが私の理性を曇らせた。

110 :人形姫:02/10/18 09:30
8 ムーラ
姫君は床から起き上がって来られなかった。
冬の大祭の宴の翌日のこと。
王子は常の通り、お起きになって政務のために表宮殿にお出ましになった。
王子は感情の全く伺えぬ深い光を宿した瞳で私をご覧になった。あるいは私はひどく取り乱した様で王子を見ていたのかも。
だって、昨夜のことは全く王宮中で姦しく噂されていたから。
・・・王子のご寵愛を誇るミラ様が、姫君から王子妃の証の指輪を取り上げられた、と。いえ、王子が姫君に指輪を渡すようお命じになったのだと。

この私がいつの間にか、あの子供のような姫君贔屓になっているとは我ながら笑止なこと。
でも畏れ多いことながら、実の御母君以上に親しく王子のお側にお仕えしてきた私が、いつの間にか王子の心と一体になって、あの方の好まれるものを好むようになるのはある意味、当然かもしれませぬ。
私は姫君をお気の毒に、とお思い申し上げたのですよ。そして初めて育ての君のなさりように腹立ちを覚えたのです。

そう、宴でのなさりよう。そしてご寝所にお戻りになってからのなさりよう。
ええ、宿直の侍女達は皆知っていること。閨の中で王子が怒りにまかせて姫君になさったことを。

いつもより余計に小さく儚げに見える姫君をお湯にお入れして、私は・・・私は・・・未だ持ったことがなく、これからも持つことはないであろう自分の娘にするように、あの方の小さいお躰を抱きしめて泣いておりました。

女は哀れなものでございます・・・・・。

111 :流転の姫君:02/10/18 14:47
>>104
42
バビロニアを抜けヒッタイトに向かうイズミル王子の一行は今宵の宿を設え食事をとった。
キャロルの身体を気遣い何くれとなく世話を焼く王子にキャロルの表情も和らいでいる。
夜が更け二人になった時、キャロルはおずおずと王子に口を開いた。
「私・・・まだあなたにお礼すら言ってないわ。ありがとう・・・。」
恥ずかしげに王子の頬に柔らかな唇が触れる。
色事になれた王子にはその仕草が如何にも物慣れず初々しいものであるか、かえって新鮮に目に映った。
頬を薔薇色に染めて自分と目を合わせるのも恥ずかしげにしている小柄な娘・・・。
「こちらへおいで、姫。そのような話は離れてするものではないゆえ」
「え?いいわ・・ここで。きゃっ!」
自分を慕っていることを隠せないキャロルに王子は傲慢ともいえる仕草で抱き寄せ、
自分の膝に座らせた。
「あのような状況で私に指示をするなぞそなたしかおらぬわ。私が指示に従わなければどうするつもりだったのだ?」
灯りの光を受け輝く黄金の髪は美しい、と王子は満足げに目を細め口元には笑みが浮かんでいた。
「信じていたわ、きっと王子ならしてくれるって。必ず私を助けにくるって、私にはわかっていたの。」
澄んだ青い瞳には王子に対する無垢で純粋な信頼が見て取れ、王子はまずまず満足感を感じ入る。
「私にもそなたが通路にこいと囁いているように感じていた。やはりそなたは特別な女人なのだな・・・。
 この先もずっと私の側に居らねばな。さあ、参ると申せ、愛しい姫よ。そなただけが私の妃だ。」
「・・ええ・・。連れていって・・・。あなたと共に行くわ・・・。あなたが好きです・・。」
囁きが漏れた時の歓喜はいかほどのものだろう。
決して慣れてはいない、不器用にすら思える口付けも王子には喜びにしか感じられなかった。




112 :黒い嵐:02/10/18 14:52
>>100
39
「あ、アイシス様!どうかご遠慮あそばして!カーフラ様はご不例にて臥せっておいでです!」
「下がっておりや!私はカーフラ妃にだけ用があるのです。よいな、ファラオの正妃たる私が人払いを命じたのです!」

アイシスの思った通りだった。カーフラ王女は腕に血の滲んだ包帯を巻いて、土気色の顔色をして寝台に横たわっていた。薬の匂いと血の匂いが、どんよりと暗くした室内に立ちこめていた。どんな香料だってこの匂いを誤魔化しきることはできないだろう。
カーフラ王女も伊達に長くアイシスとの鞘当てを演じてきたわけではない。アイシスの厳しい表情を見て全てを悟ったのだろう。手を振って乳母を下がらせる。
「で・・・どうしたいのです?」
カーフラはふてぶてしく問いかけた。
「表では大した騒ぎらしゅうございますわね。何ですか、金髪の女奴隷が殺され損なったのですって?」
アイシスは彫像のように硬質な冴えた美貌を、怒りや嫌悪の情で崩すことなく、自分の下の第二王妃に言った。
「ヒッタイト王子妃殿は落ち着かれたようです、とりあえずはね。今は犯人探しが佳境です。
・・・・あなたも傷を負われ、医師の手当も満足に受けてはおられぬよう。今なら医師はすぐに召し出せる場所にいるのですから、手当を受けてはいかが?
これほど出血しているのに、ろくに手当もしていない。手当をさせれば何か不都合なことがあるのですか?見れば傷は刀傷・・・」

カーフラは痛みも忘れて起き上がり、アラバスターの杯をアイシスに投げつけた。しらばっくれて自分もキャロルを襲ったのと同じ下手人に刺されたのだとでも居直ればいいものを、それをする頭さえないらしいのがアイシスの憐憫を誘った。
傷の痛みと闇雲な怒りに顔を醜く歪めながら、アイシスに罵詈雑言を投げつけるカーフラは図らずも自分の罪を告白する仕儀となった。

アイシスは愚かな第二王妃に冷たく宣告した。
「もはや、そなたはエジプトのファラオに相応しき女人ではありませぬな」

113 :流転の姫君:02/10/18 15:18
43
メンフィスは夜の闇を縫って馬を駆けさせていた。
キャロルのことが、あの河での別離がどうしても脳裏から離れないのである。
妃となったカーフラは姉アイシスをバビロニア王妃にさせる手はずを整え送り出し、
宮殿で女王として君臨し高笑いの日々である。
自分に向ける媚びた表情が、仕草が全てがわざとらしく癇に障る。
キャロルが居た頃の王宮は和やかで女官達も笑みの絶えないものであったのに、
今や女官長のナフテラさえもどこかしら余所余所しい。
傲慢なカーフラを見るにつけ、キャロルの優しい心根を比較してしまう。
自らがキャロルを捨て、捜索命令も打ち切ったのに、いつまでも胸に突き刺さるこの思いは何なのだろう。
キャロルは嘘が嫌いだったし、あの時も「違う」と必死に言っていたのに、それを退けたのは早計ではなかったか?
キャロルに対する恋慕が途切れない今、バビロニアから帰国したウナスからの報告はメンフィスに嫉妬の炎を呼び起こした。
キャロルはバビロニア王宮に幽閉されていたが、王妃アイシスに殺されるところをヒッタイトのイズミル王子が救出していった、と・・・。
キャロルを疎ましく思っているのは知っていたが、まさかアイシスが殺そうとしたなどとは信じたくはなかった。
しかもイズミル王子がキャロルを救出していったなどと許せないことばかり。
ウナスにイズミルが嫌がるキャロルを連れて行ったのだろうと問いただしてもウナスは答えを濁すだけ。
きつく問いただせば「いいえ、姫はイズミル王子に手を差し伸べていらっしゃいました、待っていらっしゃったのです。」との答え。
「ナイルの姫はイズミル王子の妃となられるようです、証拠の品をお持ちでした。」
そして王子は姫を連れて帰国している最中なのだ、とウナスは締めくくったのである。
メンフィスには信じられなかった。キャロルは自分を愛しているのだ。
カーフラでなく、やはり正妃にはキャロルを据えなければならない。
これはファラオの意思、そして我がエジプトの民の願いなのだから。
ならば急げばよい、ヒッタイトに入る前に我が腕にキャロルを連れ戻す。
嫉妬に狂った少年王に疲れなどは感じなかった。

114 :名無し草:02/10/18 15:18
>人形姫
ムーラの独白にホロリ。そーだよね、彼女は一生独身で王子一筋だもんねー。

>流転の姫君、黒い嵐
毎日の新作に瀑布涙〜。本誌の休載中もここがあればダイジョーブ!

115 :名無し草:02/10/18 16:44
>流転の姫君・黒い嵐
どっちも揃ってカーフラはいい目を見られない役柄なのかあ。可哀想な気もしたりして。
でも幸せで誰からも好かれてるカーフラってのも変だ。

>人形姫
一人称語りが新鮮です。王宮侍女とか、名もないキャラの語りのほうが好きっす。

116 :名無し草:02/10/18 20:52
>114
>本誌の休載中もここがあればダイジョーブ!
 ・・・・・ワロタ。・・・・・・・・・・・・・

でも、泣いた。


117 :彼の見る夢4:02/10/18 21:53
>>83
ライアン・jr.は明らかに失態を悟った顔をした。
「確かに君は変わったね、セベクネフェルウ。昔はこんなふうに話そうなんて思える雰囲気は持ってなかったよ。
でも母が何であんなふうになったかそれを君に話していいとは思えません。
お互い僕がここにいたことを知っている人間は少ないほどいいはずだ。荷物を返せ。神殿に行く。」
起き上がり歩き出そうとしてよろめいた。体に思ったより負担がかかっていたようだ。
「2・3日静養したほうがいいと医者が言ってましたよ。
その間言い合いでも何でもいいからセベクネフェルウと話して行ってください。
今の俺は彼女の気のすむようにさせてやりたいんです。
あなたも言わずに溜め込んでいたことを吐き出してしまったほうがよさそうです。」
穏やかに言うフナヌプに顰めっ面で了解の仕種をとった。
仕方ない、逃げ出すにしても体力は回復させないと。
「分かった。僕のことはライアン・ジュニアと呼ぶようにしてくれ。もう一回寝かせてくれないか?
僕のことは外にだしてないんだろ?」
表面平静なライアン・jr.に安心したのか異母妹夫婦は出て行った。
ちょっとした休暇のつもりだったのにとんでもないことになった。あの男には絶対会いたくないし、
早いとこ帰らないとゴシップ誌を賑わすのはごめんだ。


118 :彼の見る夢4:02/10/18 21:56
>>117
滞在費もどうにかしたいな。
荷物の中身が無事なら妻にと買った金細工が有効か。
しかし仮にも王族の邸宅に居候で間に合うかね。
考えるのも面倒だ。命とられることはなさそうだから一回寝てしまおう。
しかし1時間ほどにして早く抜け出さないとね。あいつが気を変えるかもしれないし、
あいつの下の妹なり弟やその配偶者の一族が俺の存在をしれば邪魔に思って消そうとするだろう。
荷物にはこだわっていられない。
商人の用心棒の口でも見つけられるかな。ストレッチは続けているから筋力は落ちていない。
扉を閉じてしばらく歩いてからセベクネフェルウは夫にすがりついた。
自分は子供だったとはいえ言ってはいけない事を言って兄を傷付けていた。
だがあの人は才能・国民の支持を自力で手に入れた。
なにより自分と弟が欲しくて仕方のなかった父の情愛を受けていたのに、そんなものはいらないと切り捨てた。
自分達はどちらからもそんなものもらえなかった。
あの人の母と父にはなにがあったのだろう?引退したミヌーエの病気見舞いを口実にして聞き出さなくては。


119 :名無し草:02/10/18 22:35
>彼の見る夢
充実した後日談ですね。
人間関係のその後がとても気になります。

120 :名無し草:02/10/19 23:11
ああそうか、きょうは土曜日なんだよね。
毎日の楽しみになっているから土日はさみすぃ・・・
作家様いつもありがとう。

121 :黒い嵐:02/10/21 11:41
>>112
40
アイシスは冷たい視線で心根卑しい女を見やった。
「そなたの不例をファラオにご報告いたさねば。王家は血の汚れを忌みますゆえ、それなりの清めをいたさねばなりませぬ。どのようにファラオにこたびの不祥事をご報告申し上げるか、熟慮するように。
・・・・・リビア王家に生まれた者としての矜持がおありなら、それに相応しく行動されるもよし!
あなたのお怪我が、あなたの理性や誇りまで損なう類のものでなかったことを祈ります。
カーフラ王女、かつては私の下でメンフィスの第二王妃と呼ばれていた方。せめて王族としてのそれなりのご覚悟は示していただきたいものです」
アイシスは暗に自決を促してきびすを返した。その背後に縋るカーフラ王女の情けない声。
「リビア王女たる私に何かあればメンフィス様がお困りになります。私は怪我をして苦しんでいるのに何故、そのような言われなき侮辱を受けねばなりませぬの?ナイルの姫などより私のほうがエジプトには重要ですよ!」
アイシスは思わず振り返った。
(・・・・今のメンフィスに、メンフィスの支配するエジプトに、キャロル以上に重要なる存在などありはせぬのに。それを分からぬ女人。愚かな・・・でも何と羨ましい・・・)

「カーフラ王女、ではファラオに申し上げ、エジプトにとって重要な女人たるあなた様がお怪我で苦しんでおいでゆえ、お見舞いを賜るよう言上いたしましょう。よろしいな?」
カーフラ王女は返す言葉もなく寝台に倒れ込んだ。メンフィスの眼力があれば自分のした罪などすぐに暴かれ、過酷な罰を受けるだろう。
カーフラを無慈悲に見おろすアイシスの目。メンフィスと同じ苛烈さ、メンフィス以上の冷ややかさを持った女王の目。
「やめ・・・て・・・。それだけはイヤ」
王女は恥も外聞もなく、言った。この瞬間に彼女はエジプトのファラオの妃の冠を事実上失ってしまったことになる。


122 :黒い嵐:02/10/21 11:42
41
「アイシス様、メンフィス様がお召しでございます。あの・・・ナイルの姫君のお部屋においでくださいませ」
侍女がアイシスに言いにくそうに告げに来た。
「何?メンフィスが?すぐ参ります」
アイシスはキャロルの居室に急いだ。高ぶった神経が、自分を呼んだのはメンフィスではなく、むしろ「ヒッタイト王子妃」キャロルであろうということを告げていた。

「おお、姉上。待っていた」
キャロルの寝台の横に置かせた椅子に座っていたメンフィスが、立ち上がって手を差し伸べた。
「キャロルの・・・怪我の具合はどうなのです?先ほど病平癒のための護符を持ってきたのですが。・・・キャロル、どうです?」
すがるような目をしたキャロルが口を開くより前にメンフィスが言った。
「うむ。恐ろしい思いをしたらしい。それで襲われた直後だというのに一人になりたいだとか我が儘を申す。
・・・それに・・・怪我をして髪まで切られた故、婚儀は挙げられぬなどと!」
苛立ちの炎がメンフィスを内側から輝かせた。
「アイシス女王、私は今一人で静かに休みたいのです。お、男の方が側にいては落ち着かなくて。それに、怪我をして血を流して髪まで失ったのだからしばらく潔斎しなくては神殿には参れません。
それにファラオが不浄の私の側にいるのはきっとよくありません!」
キャロルは必死だった。とにかく今は、今夜を控えた今はメンフィスにだけは側にいて欲しくない!
「ああ・・・・なるほど。キャロル、そなたのいうことはいちいちもっともですね。メンフィス、確かにキャロルは潔斎しなくてはならぬ身。そなたも控えておりなさい。
何て顔をしているのです、メンフィス。女人は繊細なもの。ましてやキャロルは女の命とも言うべき髪を失ったのです。察してやりなさい。とにかく今は望みを叶えてやるのですね」
アイシスはキャロルの感謝の視線、侍女達の怪訝そうな目、メンフィスの怨みがましい視線を感じながら滔々と述べ立てた。

123 :人形姫:02/10/21 14:44
>>110
9 ミラ
私の指に誇らしげに輝く指輪。金色と碧色が冬の朝日に冴えた光で煌めく。
美しい品。またとない一品物。宝石(いし)は水のように透明。水底には王家の紋章が透けて見える。

私の心は晴れない。いえ、どんどん深く暗い淵に沈み込んでいくよう。
侍女達が指輪を褒めて見え透いたお追従を繰り返す。
今まで物の数にも入れていなかった女達が、指輪を手に入れた私の運の良さを褒めそやす。
―ほんとうに見事な指輪でございますこと!王子はミラ様のお望みなら何でも叶えて下さるのですねぇ!お羨ましいこと!

嘘。そんなことは嘘。嘘ばっかり。
皆、知っているくせに。私だって知っているのに。
この指輪は・・・この指輪は王子の冷たい怒りそのもの。私への絶縁状。
あの方はナイルの姫を選ばれた。私に指輪を下さったときの冷たい声音。
―呉れてやる。だからもうこれ以上、私を、姫を煩わせるな。
王子のお声は、お目はそう告げていた・・・・。

あの方は私を愛された。夜毎、私を抱きに見え、私を夢中にして下さった。目を閉じて恍惚境を彷徨う私を、満たして下さった。
いいえ。違う。
あの方は私を愛でられただけだったのだ。目を開けてあの方の醒めた琥珀の瞳を一度、見たことがあったっけ。一度だけ・・・・ただ一度だけ。
それがあの方のまことのお心だったのだと・・・今になって気付くなんて!
私はあの方のお心を、我がものにできなかったのだ!

金髪の姫が憎い。碧い瞳の姫が憎い。憎い、憎い、憎い・・・・・。
愛され、美しく磨き上げられ、傅かれ・・・・。
王子は美しいものがお好き。姫が美しいから、珍しいから、愛されるのかしら?
そうに決まっている。そうですとも。そうでなければおかしい!

私は自分の為すべき事を悟った。

124 :人形姫:02/10/21 14:46
10 警備隊長
いやはや、王宮に奉職して20年になりますがあれほど驚かされたことはなかったですな。
長いお勤めの間には色々なことがあり、まぁ、少々のことでは驚かなくなるほど図太くなったのが警備隊長たる私の自慢でした。
国王様と側室の君の修羅場を収めたこともありました。
暗殺者を膾斬りにしたこともありました。
輝かしく誇らしく思えること、凄惨なこと、哀れを誘うこと、・・・色々とありましたぞ、本当に。

しかしですなぁ。昨日のあれは本当に・・・・。

夕暮れのことでした。王宮中が何となく慌ただしく、後宮も賑やかな火灯し頃を迎えておりましたな。
いつも通りの夕暮れだ、と私は配下の間を油断なく巡回しながら考えておりました。
ところが。後宮のテラスで何やら人が争う気配がしたのです。気配を消して近づいてみれば、そこにおわしたのはミラ様と、最近
後宮に上がられた金髪のお方でした。
私はこう見えても後宮の女人方の人間模様には通じているほうでして。宴でのもめ事も耳に入っておりましたゆえ、すぐに動けた
わけです。こういう時は騒ぎを表沙汰にはせぬよう、女人方に恥をかかせぬよう、王子のメンツを第一に事を処理するわけですな。

だが今回は間に合いませんでした。ミラ様は私が驚くほどのすばしっこさでナイルの姫君の金髪をじゃきじゃきと切り落として
しまわれたのです。姫君も必死に抵抗しておいででしたが、女人というのはあれですかな、一度危害を受けてしまうと茫然自失
になるのか、もうあとは黙って為されるがままで。

姫君は私がミラ様を取り押さえている間に、どこかに走っていっておいでになりました。後に残ったのは残照に輝く金の髪・・・。

125 :名無し草:02/10/21 16:26
週明けは嬉しい私だー。
仕事中にコソーリ読みに来る自分に反省しつつ、FDに落としてコソーリ印刷までしてる(藁


126 :名無し草:02/10/22 18:07
あれー、今日は作家様いないのかー。
寂しいよん。

127 :流転の姫君:02/10/22 19:53
>>113
44
ヒッタイトへの道程はキャロルにとっては喜びでもあったが、不安が付き纏う。
いくらイズミル王子と相思相愛の仲となっているとはいえ、
以前自分がヒッタイトの王宮に居た時点での自分の態度は王子に対しては決して好意的なものではなかった。
あまつさえ自分はルカの手を借りて脱出を果たしたのだ。
以前とは状況が違うとはいえ、王子の乳母のムーラなど一体どんな心持でいることだろう。
果たしてちゃんと王宮で暮らしていけるのか。
キャロルの心許無さそうな表情を見て、イズミル王子は微笑みながら力づけた。
「私が決めた私の妃だ、そなたを粗末に扱う輩は成敗してくれる。
 ムーラには分かっていることだ。私がそうさせぬ。
 ではこうしよう、そなたは私をアッシリアで救った命の恩人だと話そう、それなら無下にもできぬゆえな」
「もう!王子ったら!私は本当に困っているのよ、そんな風にからかうなんて!」
腕の中で拗ねるキャロルに優しい口付けを繰り返す。
「そう拗ねるでない、姫。そなたが私を救ったは事実ぞ、堂々として居るがよい。
 そなたこそが我が正妃、誰にも文句は言わせぬ。」
王子のきっぱりした口調にキャロルも腹をくくるしかないのだ。
「・・・分かったわ・・王子。」
「いい子だ、姫。何があろうと私がそなたを守る。」
今では一番安心できるイズミル王子の胸の中でキャロルは様々な不安を飲み込んだ。
もう随分とヒッタイトに近づいたせいか、気温が低い。
あと山を一つ超えればヒッタイトに入る。
「明日の朝は霧が出るやもしれぬ。出歩けば危険だからおとなしくいたせ。」
「失礼ね、ちゃんと言う事をきくわよ、王子。」
「私の子猫はすぐふくれるな、こまったものよ。」
睦言を交わす恋人には他に心配事はないように思えた。



128 :流転の姫君:02/10/22 20:10
45
イズミル王子の言ったとおり霧深い朝となった。
ほんの少しの先も霧に拒まれているかのようだ。
霧が晴れるまでは出発も延期である。
キャロルはほんの少しだけと思い、寝所の外に出てみた。
ひんやりした冷気の中、キャロルは身震いした。
「姫君、お体が冷えます、早くお戻りください。」
ルカの声がするが、少し離れてしまっただけでもう設えた寝所がわからない。
「わかったわ。すぐ戻ります。」
「姫、おとなしくいたせ」
王子の声にキャロルも「すぐ戻るわ!」と返事をした。
「・・キャロルか?そこにいるのか?」
王子ではない男の声。その声には聞き覚えがあり、キャロルは驚愕し、霧の中を見えるわけではないのに凝視した。
私をキャロルと呼ぶのはただ一人しかいない・・・まさか・・・?
「王子、王子どこなの?」
「キャロル・・私だ」
潜めた声の調子が余計にキャロルの恐怖を募らせる。
「やっとみつけたぞ、さあエジプトへ帰るのだ。」
キャロルの右手首を掴んだ満足げなメンフィスの顔がそこにあった。


129 :名無し草:02/10/22 20:43
流転の姫君はエジプトにも行くんだ・・
ァ!!現代にも流転するのかなぁ??

130 :名無し草:02/10/22 21:44
ヒイィ〜〜ッ!出た〜めんひす〜!!
まるでバケモンが出たよう・・・。
王子っ、早く助けてあげて!


131 :名無し草:02/10/22 21:55
ここだとメンフィスがダ〜クだなぁ、本誌のへたれっぷりはどこへやら。

132 :名無し草:02/10/22 23:04
流転のきゃろるはどこまでも彷徨ってね。
ひとりのモノにならなきゃいけないワケでなし。
この際、水戸黄門のごとく諸国漫遊しちゃって!

133 :黒い嵐:02/10/23 14:22
>>122
42
キャロルは垂れ幕を降ろした寝台の中でまんじりともせず目を開けたままでいた。今夜は新月の晩。イズミル王子がやって来てくれるはずの晩。
窓の外は漆黒の闇。しかし、そこここに松明が灯され、闇を明るく切り取って見せている。
暗殺者―もといカーフラ王女―に襲われたキャロルを心配したメンフィスが、常よりも警備を厳重にしたのだ。怪我をして、自慢の金髪をむごた
らしく切り刻まれた彼女をメンフィスが心配するのは当然である。
そして。キャロルの寝室の扉のすぐ外にはメンフィスがいる。大エジプトのファラオたる彼が今宵は愛しい妃のために寝ずの番を勤めるという。
同じ部屋で休むと言って聞かなかった彼を何とか説得できたのは、キャロル自身の控えめながら強硬な拒絶と、アイシスの巧みな説得があったか
らである。

(王子・・・・。いよいよ今夜は決行の時。でもこんなになってしまって・・・)
キャロルは常夜灯のもとで涙を流した。きっと王子は自分を助けてくれると信じて疑わなかったが、それがために危険に晒されると思うと心が凍り付いた。
それに切られて短くなった金髪。王子がこの上なく愛し、決して切ることを許さなかった髪。王子と過ごした幸福な年月を物語る金の糸。王子自ら編み上げ
てくれることもあった。王子との閨で、枕の上にはしばみ色の髪と混じり合って広がる自分の髪をキャロルは内心ひどく誇らしく思っていた。
(私・・・私・・・醜くなってしまった。王子は醜い私をどう思う?)
涙が寝台の上に小さくシミを作った。

その時。不意に大きな音がして、新月の夜の暗闇が明るく照らし出された。
「火事だあぁぁっ!」
人々の悲鳴が王宮の夜の静寂を切り裂いた。窓から見れば、厨房や、食料倉庫のある宮殿の一角が赤々とした炎に包まれている。
「油倉庫に火がっ!」
浮き足立つ人々。警備兵は足音も高く火元に駆けつけていく。侍女の悲鳴が遠く近く聞こえる。
(王子だわっ!)
キャロルは反射的に立ち上がると、自室の扉に鍵をかけた。今、メンフィスやお節介の侍女達に入ってこられたくはない。

134 :名無し草:02/10/23 16:28
ああっ、いよいよ決行!
作者様、メンフィス様と王子の対決を期待して良いですかっ?わくわく

135 :名無し草:02/10/25 12:31
>「流転の姫君」作家さま、「黒い嵐」作家さま
片やメンフィス登場!片やイズミル王子参上!
どちらも続きが楽しみです〜!作家様。

>「人魚姫」作家さま
独白でつづられる小説ってあんまり無いですから新鮮です。好き。

136 :黒い嵐:02/10/25 14:17
>>133
43
キャロルは窓際により、常夜灯をかざした。
(私はここよ、私はここ!)

「王子っ、あれに灯りが。姫君のお部屋でございます!」
「おお・・・!あの様子では姫は部屋に一人か」
ルカは黒装束に身を固めた王子に指さした。商人に身をやつして王宮に潜り込み、真夜中まで待ってから要所要所に火を放ったのは王子だった。
慌ただしく人々が行き交う中、王子とルカの主従は配下の兵から離れてキャロルの待つ奥宮殿に向かった。
途中、出くわした不運なエジプト人は声を出す間もなく手際よく殺された。
王子は返り血の生暖かさを意識しながら逸る心を必死に押さえて、愛しい妃の待つ部屋に急いだ。
(姫、姫。待っておれ。今行ってやる!長く待たせた。だがもう苦しみは終わりだ)
新月の夜の暗闇の中で、ひそやかに踏みしだかれる草の音だけが響いた。

キャロルは暗闇の中に必死に目を凝らした。王子が来てくれている!と思うとそれだけで体中の血が逆流しそうなほどの興奮を覚えた。
(早く、早く、早く・・・!)
キャロルはいつか作ったロープを出し、興奮に湿った手の中には小振りなナイフを握っていた。今は動かないほうがいいと思いながらも体は窓の外に飛び出しそうだった。
その時。
心臓が凍るような大音響が部屋の中に響いた。施錠された扉を荒々しく苛立たしげに叩く音。
「キャロル!キャロル!どうしたのだっ?!ここを開けよ!私だ!」
扉の外で熱愛する娘を守っていたファラオ メンフィスの声であった。
(! メンフィス! どうして?! 火元に行ったのではなかったの?)
そして、窓際で青ざめて動くこともできないキャロルの耳に紛う事なき懐かしい声も飛び込んできた。
「姫! 私だ!」
声の主は軽々と壁を登り、キャロルの側に降り立った。
「・・・王子・・・!」
だが感動の再会劇はお預けだった。王子が入ってきたのとほとんど同時にメンフィスも扉を破ってしまったのだった。

137 :流転の姫君:02/10/25 15:31
>>128
49

138 :流転の姫君:02/10/25 15:58
>>128
49
「キャロル・・・そなたこそが我が正妃だ。帰ろう、エジプトへ」
歓喜に満ちたメンフィスの表情。
望んでいたものがやっと我が手に入った子供のような様子。
だがキャロルは黙ったまま、右手首を握られたまま、何の反応も示さない。
「国の為とカーフラを娶ったは間違いだった、我が民の願いぞ、キャロル。」
メンフィスが話せば話すほど、キャロルのメンフィスに対する思いはだんだんと哀れみのようなものい変化していた。
自分が必死にヒッタイトから逃げ出してメンフィスの元へ行ったときの態度を覚えていないのだろうか?
私の気持ちなど考えず、カーフラ妃だけが我が妃と言ったその同じ唇から
私のことを捨てたのに、何故今更こんなことを言い出すの?
メンフィスに惹かれていると思ってた自分だったけど、愛してると思ってたけど
今こそはっきりとメンフィスの本当の姿が見えたような気がする。
ないものねだりの我侭な子供・・・。
愛することの反対は憎しみなのかと思ってた。
でもそうじゃない、この人は憎むほどの価値はない、ただただ無関心なだけなのだ。
私には王子がいる、私が愛し、私を愛している王子が。
「・・なにを黙っている?怒っているのか、キャロル。長い間放っておいてすまなかったな。
 だがもう放さぬぞ。」
機嫌をとろうとしてりうのか、妙に労わり深そうな声音。
「放してください、私はヒッタイトの皇太子妃です。私の居るべきところはイズミル王子のところです。
 早く放さないと兵を呼びます。」
キャロルのきっぱりした物言いにメンフィスは眉を吊り上げた。
「何を申すか!そなたが何と申してもエジプトへ連れ帰る!あれほど私を愛していると申していたではないか!」
「その私を河で見捨ててカーフラ妃を選択したのはあなたです。
 どんな理由であれ、あなたはカーフラ妃を選んだのです、あの時で私とあなたの縁は終わりました。
 今の私は身も心もイズミル王子のものです。他の誰でもない、イズミル王子のものですわ。」
いくら怒ろうともうメンフィスには哀れさしか感じなかった。


139 :流転の姫君:02/10/25 16:21
50
「キャロル!」
怒りに身を任せたメンフィスがキャロルに掴みかかろうとした時、
キャロルは咄嗟に身を低く屈め、メンフィスの帯刀していた剣の柄に手を伸ばして抜き取り
刃先をメンフィスに向けて身構えた。
「キャロル、そなたに私を傷つけることなどできぬ。さあ、剣を渡せ」
笑みを浮かべてを伸ばすメンフィスに、キャロルは必死になって剣を振り回した。
「今の私なら何でも出来るわ!生きて王子と幸せになるためになら!」
刃先が何かをかすめた感触はあったようだが、キャロルには分からない。
「そうまでしてこの私を拒むというのか!ならば・・。」
「姫、こちらへおいで。」
イズミル王子の声と共に霧の中から温かい腕が回され、キャロルは剣を投げ捨て王子の胸に飛び込んだ。
「王子!」
「兵が周りを囲んでいるゆえ、逃げ場はないぞ。ここでミタムンの敵を取るもよかろうよ。」
落ち着いたイズミル王子の声にキャロルも振り返ってメンフィスの居た辺りに目を凝らしたがもう姿はなかった。
「・・我はラーの子、我が意思は我が民の意思・・・。諦めぬぞ・・・。」
霧の中の囁きを王子もキャロルもはっきりと聞き取ったが、もうそこにメンフィスの気配などは微塵もなかった。
「一刻でも早く帰国せねばならぬな、そなたの申すとおり、身も心も私のものとせねばな。」
口元に笑みを浮かべキャロルを抱いた手に力がこもった。
「やだ!聞いてたの?」
キャロルは恥ずかしさのあまりに頬が紅潮するのを感じた。
「私がどれほど嬉しいかそなたにわかるまいよ。」
王子の口づけにキャロルの言葉は絡めとられてしまった。
かすかな不安を残しつつ、一行はヒッタイトへと帰国するため出立となった。

140 :人形姫:02/10/25 17:37
>>124
11 イズミル
姫の姿が見えぬという報告をもたらした侍女と兵士を私は思わず怒鳴りつけた。
そなたら一体何をいたしておったのかと。
いつも私の手の中にあった宝石のような姫。いつも私だけを慕い、待っていてくれた姫。私だけを見ているように、私自ら教え込み仕込んだ娘。
その姫が姿を隠したという。
私の脳裏に昨夜来の光景が蘇る。

姫に与えた指輪を、私はミラを黙らせるためだけに取り上げてしまった。
姫に大切にいたせと命じ、姫もまた嬉しそうに填めていた指輪を。
姫は私のやり方に初めて感情をむき出しにして怒った。私を罵り、初めて私の顔色を窺いながら喋る人形であることを止めてみせた。
いきいきとした感情の迸り、輝く瞳に燃える強く激しい意志の煌めき。優しくたおやかな如何にも男好みの飾りモノのような女には決してない強い個性。

・・・・私はそんな姫を初めて見た。そして何よりも美しく愛しいと思った。
だが私は身勝手だ。姫が私を大嫌いだと罵ったことで、完全に理性を捨てた。
愛しい姫に謝罪し、事の次第を言い聞かせるより前に、彼女を荒々しく扱った。生きている姫を、再び私の人形に戻そうとした私の醜悪さ。
・・・・私は酔っていた。しかし本当にそれだけであそこまで醜く振る舞えるのだろうか?

警備隊長は私に切り取られた長い金髪をもたらした。そして内密にミラのことも告げてきた。
激しい怒り。ミラに対する。世間智の長けた警備隊長の目の奥に宿った微妙な光に対する。そして・・・そして今回の騒ぎを招いた己自身に対する。
私は姫を捜せと命じた。私もまた底冷えする冬の夜の中に出ていった。

私は初めて感じた。私が愛し求めているのは人形の姫ではなく、生身の、私を罵って大嫌いだと叫んだ娘なのだと。

141 :人形姫:02/10/25 17:37
12 ルカ
姫君がおわしたのは王子の西宮殿の奥庭だった。常緑の木々が濃い影を落とす、奥庭の特に人気のない場所。夏にはその涼しい木陰を求めて人々が集うが、冬の今となっては全く忘れられた寒々しい場所。
ほのかな、しかし冴えた月明かりが探し求める小さな姿を照らし出していた。真夜中もだいぶ過ぎた時刻であった。

小さな姫君は思い詰めた顔をして、小さな泉をのぞき込んでおられた。背を丸めしゃがみ込んだ姿勢で一体どれほどの時間を過ごされたのやら。
―ありがたい、姫君はご無事だ―
私は強い緊張が一気に解けるのを感じながら、姫君のお側に行き、お声をかけようとした。後宮の女とは感情の赴くままに何でもしてのける不貞不貞しい強さがある。ミラ以外の女が、尻馬に乗って姫君を害するという最悪のことだって十分考えられたのだ。

だが。
私が近づいても微動だになさらぬ姫君のご様子は狂気じみた鬼気迫るものを感じさせ、この私をして側近くに近づき得なかったのだ。王子の影として、今一人の王子として、主君のご意志を実行することに慣れたこの私が!

無惨に切り刻まれた金髪に縁取られたお顔は、僅かな光の中でもそれと分かるほど白かった。ただ御目だけが青白い、凄みのある光を宿している。引き結ばれた口元。思い詰めた表情。握りしめたお手。固く緊張した背中の線。
ミラは姫君に何をしたのだろう?何を言ったのだろう?

―姫君、ご無事でございましたか。王子が・・・ご心配でございます。さぁ王子の御許にお連れいたしましょう―
私はやっと声をかけた。その途端、姫君を捕らえていた沈黙の呪縛は溶けたらしい。
姫君の御目から涙が一筋こぼれ・・・姫君は首を横に振られたのだった。

142 :名無し草:02/10/25 23:31
人形姫のキャロル、これからどうなるんでしょう。
う〜、気になります。


143 :名無し草:02/10/28 08:55
下がりすぎなので上げてみる。続きが楽しみです。

144 :黒い嵐:02/10/28 14:27
>>136
44
イズミル王子は咄嗟に常夜灯をたたき落とした。
ほのかな灯りは消え、キャロルの居間は真っ暗になった。
「キャロルっ?!キャロル?どうしたのだ?」
メンフィスが苛立たしげに叫んだ。明るい廊下から暗い部屋に入ってきた瞬間に、常夜灯も消えてしまったのだ。暗さに慣れない目には全てが不明瞭だ。

どうしたものかと冷や汗をかくキャロルの肩を王子は力強く抱いた。もう大丈夫だ、と。
キャロルは息を吸い込むとメンフィスに声をかけた。
「わ、私は大丈夫です。メンフィスこそ・・・こんな所にいてもよいの?すごい騒ぎです。アイシスやカーフラ王女は大丈夫なのかしら?」
「ああ・・・キャロル。急に灯りが消えたゆえ驚いたぞ。そなたは無事なのだな?早くこちらに来い。そなたは何も心配せずにただ私の胸の中にいればよいのだ」
部屋の外の灯りを背に、大柄なメンフィスの影が部屋の中に入り込んでくる。それほど広い部屋ではない。じきメンフィスはキャロルに・・・イズミル王子にしっかりと抱きしめられたキャロルに触れてしまうだろう。

(ここはエジプト王宮。ああ、よりにもよってこんな時にメンフィスが来るなんて!王子がいることがばれれば・・・いくら王子でもひとたまりもなく殺されてしまうわ。そんなことは絶対にイヤ!)
キャロルは震える指先で、自分の胸元に回されたイズミル王子の力強い腕を解きにかかった。
(王子、今は逃げて!あなたに何かあったら私はどうすればいいの?)

「キャロル?どうしたのだ?早くこちらに来い。・・・さぁ、一体どうしたのだ?まさか何かあったのか?」
メンフィスの声が徐々に苛立ちと不安の色合いを濃くする。
なんでもありません、とキャロルが答えようとしたとき。
イズミル王子の声が暗い室内に響いた。
「我が妃を返しにもらいに来たぞ。メンフィス王」

145 :名無し草:02/10/28 14:49
ああメンフィスと王子の対決勃発!
黒い嵐作家様。愛しております。

146 :名無し草:02/10/28 15:09
やっと対決だー。
他の作品の作家さまのご降臨もお待ち申し上げております(アリポーズ)

147 :名無し草:02/10/28 15:19
待ってました! 王子VSメンフィス!
あーん、キャロルになりたいよ〜

>143
上げると荒らしを呼び込むことがあるから、
sage進行のほうがいいと思うけど・・・

148 :名無し草:02/10/28 15:20
>144
宣戦布告する王子、カコ(・∀・)イイ!

149 :名無し草:02/10/28 21:51
>144
ぬおおおお、王子サイコー!!
顔がにやけてしまいました。次回が楽しみでつ。

150 :流転の姫君:02/10/28 22:47
>>139
51
帰国したイズミル王子は皆が喜びに沸いていた。
だが国王は周辺諸国の視察の為留守であった。
王子はキャロルの部屋を自分の王宮の一角に、すぐ目の届くところに据え置くようにムーラに言いつけ
帰国の挨拶を母である王妃にキャロルを連れて行った。
鋭い観察眼を持つ王妃はキャロルと王子の関係が、以前とは違う、心の通い合うものになったのを見て取り
表には出さなかったが喜んだ。
だが婚儀は国王の居ない今はできないと残念そうに溜め息をついた。
王子も王不在の間は国王代理として政務を司らなければならない。
今しばらくは婚儀の準備をして待つようにと言い渡され、二人は王妃に暇を告げた。
以前のことがあるので、ムーラも女官たちもキャロルの身辺は煩いほどに気を配っている。
キャロルは自分がしてしまった事の代価なのだと諦めた。
それになんと言ってもメンフィスの事もある。
警戒する事は必要なのだ。
あのメンフィスがそう簡単に諦めるとは思えなかった。
そしてメンフィスだけが自分の敵でないこともキャロルの表情を曇らせた。
無事に逃げては来たが、アッシリアのアルゴン王やバビロニアのラガシュ王だって
自分の歴史の知識が目当てだったのだ。
他に自分の敵が居ないなどとは考えられない。自分は「神の娘」と言われているのだから。
勿論イズミル王子だって自分を守ってはくれる。
だがそれだけではいけない、とキャロルは決意を固めていた。
人払いをし、二人になった折、キャロルは切り出した。
「どうか私に武術を教えて!自分の身が守れるように!」

151 :流転の姫君:02/10/28 23:04
52
何を言い出すのかと思えば、武術を覚えるだと?
唇の端に笑みを浮かべながら王子は尋ねた。
「そなたは私が守る、ルカもいつも側にいよう、必要あるまい」
だがキャロルの青い瞳には怒りのようなものが見え、王子は笑うのをやめた。
「私がどれほどくやしいか、あなたにはわからない。
 いつもいつも翻弄されるばかりなんて嫌!自分の身は自分で守れるようになりたいの。」
確かにキャロルの美貌と英知はいつもどの国にとっても、咽喉から手が出るほど得がたいもの。
キャロルが怒りに白い肌をうっすらと紅く染めているのを見ながら、王子もひとりごちた。
「別に相手を殺そうとしているわけじゃないわ、でも相手の言いなりになるなんてもう我慢できないの!」
優美な外見からは見て取れない、キャロルの負けん気に王子の口元も知らず知らず緩んできた。
「あいわかった、では私が手解きいたそう。私が見てやれない時にはルカがな。
 ではそなたの手に合ったものを用意するとしよう。」
「有難う!」キャロルの喜びようは大きかったが、王子はそうは続くまいと内心踏んでいた。
剣はキャロルに大き過ぎ重過ぎた。短剣くらいなら持てるが、それでは負けてしまう。
何が向いているか様子を見ていた王子は、キャロルに意外な才能があるのを見て取った。
弓矢である。
「これとはちょっと違うけど、学校の授業で少しやったことがあるの。」
原始的な弓矢と、キャロルが授業で使った弓とは大違いだが、なんとかものになりそうなものは弓であった。
王子が幼い頃使った弓に、キャロルの腕の長さに合わせ矢を作り、キャロルは必死に稽古を始めた。

152 :名無し草:02/10/28 23:37
>「流転の姫君」作家様
今日はもう読めないのだと寂しく思っていました。
深夜のうp、感激です〜!

153 :名無し草:02/10/28 23:44
武術をするキャロル!気の強いところがツボ〜

154 :流転の姫君:02/10/29 23:58
>>151
53
弓を引くのに普段は使う事のない部分の筋肉を使い、結構な力が必要だ。
弓を押す力と弓を引く力のバランスがいる。
非力なキャロルだったが必死の稽古にするため、体中に切り傷や青痣ができた。
湯浴みをする時などはなるべく女官やムーラを遠ざけ、一人でするように注意していた。
王子が選んだ見事の衣装の下に、誰がこんなに傷を負っていると思うだろう?
女官たちがキャロルの衣装荷血がついているのに気がつき、ムーラに報告したため、
キャロルが一人で湯浴みをしているところへムーラが確認にきてしまった。
「まあ!姫君!なんということですの?」
白い肌の上に弦が当たった跡だろうか、青痣があちこちにできているし、足には弦が切れた時にでも出来たのだろう、
細長い傷も見えている。
「高貴な女人のお肌とは思えませぬ!皇太子妃ともあろうお方が何故このようなお姿を・・・」
ムーラは王子の選んだ妃なので、非常に慇懃無礼にキャロルに仕えていたが、
この時はさすがにムーラも驚いてしまって、おろおろするばかりだった。
「これは私の意思なの、王子に守られているだけなんて嫌なの、王子と一緒に戦えなくとも、
 せめて自分の敵だけは自分で振り払う為なのだから、余計な口出しは無用です。」
きっぱりと言い切るキャロルには、ムーラが今まで見た事のないような凛とした強い気性が見て取れた。
この方は王子に相応しくなられるために変わられたのだ・・・。
「・・姫君、後ほど傷に良く効くお薬をお持ちいたしましょう、王子も姫君が傷だらけになっていらっしゃるお姿はお困りでしょう。」
キャロルの湯浴みを手伝いながら、ムーラも自分の声音が優しいものになったのを内心苦笑したのだった。
「有難う、ムーラ」
ムーラの目にキャロルの傷や痣はまるで勲章のように映った。


155 :名無し草:02/10/30 00:43
連日の夜中のご降臨うれしゅうございます。
強いキャロルいいでつね。


156 :黒い嵐:02/10/30 13:43
>>144
45
メンフィスの体がぴくりと震えるのが逆光の中で見えた。でもそれは恐れや不安のためではない。
敵の出現を悟ったライオンが、瞬間的に体に満ちる殺気やエネルギーを放出するのにも似たその僅かな体の動き。
キャロルの細い身体は我知らず震えた。メンフィスの殺気に当てられたのだ。その身体を押さえ、守るように腕に力をこめるイズミル王子。その手は油断なく剣の柄に掛けられている。
メンフィスの大柄な影の立つ扉の不吉な明るさ。長く離ればなれであった恋人同士が潜む室内の暗さ。みなぎる緊張感。

先に沈黙を破ったのはメンフィスであった。
「・・・・イズミル、がいるのか? キャロル」
押さえた凄みのある声が、室内の沈黙と闇をより深いものとした。
「答えよ、キャロル。そなたは我が妃となる身ぞ。答えよ。あるいは・・・答えられぬような目にあっているのかっ!」
メンフィスがずい、と室内に踏み込んだのと同時に窓の外がまぶしく光った。
火の手が爆発するように大きくなったのだ。
照らし出された室内にメンフィスが見たのは、抱き合う二人の男女。大柄な男の腕は華奢な女の身体にしっかりとまわされて。女は必死に男の胸に縋っている。


157 :黒い嵐:02/10/30 13:43
45.5
「お・・・のれ・・・!」
メンフィスはきりきりと唇を噛んだ。
「そなたの罪を贖って貰うぞ!」
そう言って先に抜刀し、鋭く斬りかかっていったのはイズミル王子であった。
長い長い間、どのような気持ちで愛しい人の身の上を想っていたか今こそ思い知らせようとでも言うように。
自分の腕の中から妻を奪われて、傷つけられた男のメンツを矜持を、贖わせようとでも言うように。

ひゅっと剣が空を切り裂く音がした。すんでのところで身を避けたメンフィスはファラオの黄金づくりの短剣を抜き放つと応戦に転じた。
「おのれ、貴様イズミル!我が妃に何をしたかっ!我が妃への侮辱はファラオたる私への侮辱である、許さぬ!」
「黙れ、メンフィス!我が姫を返して貰おうか。姫は我がヒッタイトの正当なる王子妃。その身を拐かし、幽閉せし罪は重いぞ」
揺らめく火災の光に照らし出された室内で、二人の男が雌雄を決する戦いを繰り広げている。どちらも愛する女を我がものとするために。
だが・・・女の愛がどちらに捧げられているかはすでに明らかである。
「やめてっ、やめて、メンフィス!お願い、王子を傷つけないで!」
捨て身で王子の懐に入り込んだメンフィス。その短剣の切っ先が王子の左肩を切り裂いた。

158 :黒い嵐:02/10/30 15:41
46
王子の肩から血しぶきが飛んだ。
一瞬ひるんだ王子になおも斬りかかろうとするメンフィス。
「神の子たるファラオの手に掛かって死ぬことをせめて名誉と思えっ!」
「だめぇっ!」
キャロルがメンフィスにしがみついた。
「おのれ、キャロル!離さぬか、血迷ったか!」
必死にバランスを取ろうと藻掻きながらメンフィスは怒鳴り、キャロルを突き飛ばした。キャロルは他愛なく床に倒れてしまった。
その隙に王子は体勢を立て直すと、裂帛の気合いと共にメンフィスに斬りかかった。王子の鉄剣がメンフィスの秀麗な顔に深い傷を負わせた。右の眉上から、かろうじて閉じた瞼の上を通り、顎に向かって斜めについた血の筋。
「くそっ・・・!」
メンフィスの視界はにわかに暖かい己の血で遮られてしまった。
「待てっ、キャロルを返せ!キャロルは私のものだ!誰にも渡さぬ!」
なおも斬りかかるメンフィス。王子の鉄剣とメンフィスの黄金造りの短剣が激しくぶつかり・・・鋭い金属音と共に黄金の剣が折れ、薄暗がりの中に消えていった。
「ちいっ・・・!」
メンフィスは短剣の柄を王子に向かって投げつけた。難なくそれをはじき飛ばす王子。
「姫は返してもらうぞ」
王子の冷静な声音にメンフィスの理性は完全に吹き飛んだようだった。
エジプトの少年王は獣のような咆吼をあげると、全身で憎い男にぶつかっていった。
あまりの唐突さにイズミル王子も虚をつかれ、はずみで剣を取り落としてしまった。
メンフィスは怒り狂った手負いの獅子のように、王子に襲いかかった。鉄拳を繰り出し、歯を剥き、急所を狙う。
王子も負けてはいなかった。
「そなたとは、決着をつけねばならぬようだなっ!」
狂ったように襲いかかってくる獅子を、しなやかに迎え撃つ鷹。
拳を繰り出し、蹴り、脚を払い、腕を捻りあげ、胴を締め上げ・・・勝負はいつ果てるともしれなかった。
メンフィスの顔面は血に染まり、王子も又、傷から激しく出血していた。新しい傷の痛みも二人には感じられないようだった。
不意に。組み合いのバランスが崩れ、メンフィスは二本の指をV字型に突き出すと王子の目に狙いを定めた。

159 :人形姫:02/10/30 16:23
>>141
13 キャロル
―私は王子の許には行きたくないのです。あの人の許にだけは行きたくないのです。私はあの人の人形ではありません。ルカ、私はここにいたくありません。私は生きたいのです。城壁の外に出る道を教えて下さい―

毅然とした硬質な声。私の声? そう間違いなく私の声。
ずっとずっと言いたかった言葉。ずっとずっと解き放って楽になりたかった鬱屈した想い。
私は人形じゃない。でも、ここにいる限り人形の呪縛は解けない。私は呪縛をうち砕かねばならない。私は・・・私に戻らなくてはいけない。

契約の指輪は失われた。
王子の許に私を縛り付けていた黄金の鎖は断ち切られた。
私は私の意志と力を取り戻した。

口癖のように私を美しいと言ってくれた王子。私の髪を撫でた王子。
今の私は醜い。髪はざんばら、凍えた肌は蒼白、半ば狂っているのかもしれない。王子が愛した私はいない。男の子のように短い髪。

ルカが困ったように帰りましょう、と繰り返す。私は首を横に振る。
こんなになっても・・・私は王子を愛している。私があの人を愛したように、いつかあの人も私を愛してくれると思っている。
いつか言ってくれると思っている。
―さぁ、人形の姫よ、生きよ。そなたは我が側で人として、妻として生きよと。

愛している。愚かに見果てぬ望みを抱いて。私はあの人を。
でも、だからこそあの人を断ち切らねばならない。私はルカに言う。
―私は王子の許には参りません―

160 :人形姫:02/10/30 16:24
14 兵士
あんな綺麗な人は初めてでしたよ。誰ってイズミル王子様のお妃様ですよ。
お馴染みのっていえば言葉が悪いけど、よくあるらしい後宮の女同士のもめ事で金髪の姫君が行方知れずになったっていうんで、王宮は大騒ぎでした。
交代も済ませて、飯でも食って休もうと思っていた俺の所にも捜索命令が来ましてね。俺は新兵ですから大急ぎで命令に従いましたさ。

寒い夜でした。
知ってます?ヒッタイトの冬の寒さは命に関わるんですよ。
震えながら歩いていた俺は庭の隅でお目当ての姫君を見つけました。いえ、俺が最初に見つけたんじゃないですよ。王子様の信厚いルカ様が先にお見つけになったんです。
しかし雰囲気が普通じゃなかったですねぇ。何てんですか、恋人同士の別れ話の真っ最中ってかんじで。不謹慎だけどホントにそう見えたんですよ。
勿論、そんなことはありえないんですけどね。たとえて言えばってこと。

俺が固まってるのにルカ様はじき気付かれて、俺を手招きしました。
俺は恐る恐る近づきました。
―姫君はひどくお疲れのようだ。宮殿にお運び申し上げる故、手伝え―
姫君はルカ様の声を聞いてびくっと震えられました。でもその唇から何か声が出るより前に、ルカ様は姫君に・・・そのう・・・当て身を喰らわされたんですよ。姫君は他愛なく気を失ってしまわれました。
俺は呆然としてしまいました。だって当然でしょ?王子妃様を捕虜か何かのように扱ったりして、ね。

でも結局、俺は何も言えませんでした。ルカ様の視線はつまるところ絶対的な箝口令に他なりませんでしたから。
思うに・・・姫君は何か駄々を捏ねられたんじゃないですかね。だから言うことを聞かせるためにとりあえず気絶させたっていうか・・・・。
俺は姫君の作り物めいた綺麗なお顔を盗み見しながら王宮に戻っていったんです。

161 :名無し草:02/11/01 22:45
age

162 :彼の見る夢5:02/11/01 23:12
>>118
若くして王位についたメンフィスの側近を長く務め、前宰相イムホテップの引退後は後任も務めた多才で思慮の深さを知られた人物は病床にあり、もう長くないと噂されていた。
今、第一王女とその夫君が迎えられていた。
見舞いの言葉を述べる王女に、衰え見苦しくなったのを断りながらミヌーエは相手の思いつめた顔を怪訝に思い、
何か話があるのかと問うたところ、さりげない人払いを要求された。
何事かと問いかける顔のミヌーエに王女は意外なことを言った。
「イアン・ムスタファ・ガマル将軍、いいえ、ラージヘテプ兄上が帰ってきておられます。」
「なんですと?しかしあのお方は王位に興味もなくこの国自体に・・・」
「そう、あの方にとってもここへの訪れは事故であったようでイベト・スウトから帰るおつもりです。
帰還は外部には漏らしていません。
でも私は知りたいのです。何故あのお方が父上を憎むのか。なにがあの方の母上と父上にあったのです?」
ミヌーエは深いため息をつきながら立ち入ったことは自分にも分からないとした上で、
王がかって「ナイルの娘」を熱愛したが、彼女は拒否し、あるとき王が力で娘を手に入れようとしたのが原因で彼女はヒッタイト王子に騙され、王子と王に弄ばれたようになり、正気を失ってしまった。
と語った。辛いことを語って疲れてしまった宰相に彼女はもう一つ訊かねばならなかった。
「アイシスとは誰です?彼女がしたことは何なのです?おそらくそれこそが全ての鍵なのです。」
ミヌーエは寝台に沈み込んだ。


163 :名無し草:02/11/04 10:57
>>158
47
愛しい娘のすべてを愛で、余すところなく見つめたであろう憎い琥珀の瞳をメンフィスは潰そうとしていた。憎い男の脳裏に記憶された、女の身体の映像を断ち切るために、まずその罪深い目を潰そうとしていた。
「覚悟いたせっ!」
メンフィスは吼えた。
「だめえっ・・・!」
起きあがったキャロルが全身でメンフィスにぶつかっていった。手にはかねて用意の短剣を握りしめて。
「王子を傷つけることは許さないっ!」
非力な女よと侮っていた相手の必死の攻撃は、驚くほど強力なものだった。左肩を刺されたメンフィスはもんどり打って床に倒れた。しかし同時にメンフィスは自分をこれほどまでに露骨に裏切って見せた憎たらしい女の細い手首を掴み、床に引き倒した。
「おのれっ、キャロル、貴様・・・!」
メンフィスの怒り、憎しみが一気にキャロルに向けられた。愛しいと思っていたからこそ、大切に愛おしみ添い遂げたいと願っていたからこそ、自分の想いに答えぬ女への憎しみはより強いものになった。
「殺してやる・・・っ!」

メンフィスの手がキャロルの細首にかかり、一気に締め上げたまさにその時。
メンフィスは強い衝撃を首の後ろに感じ、何が起こったのか正確に把握できぬまま昏倒した。
イズミル王子が傲慢なるファラオ メンフィスの無体に鉄槌を見舞ったのだった。
「姫、しっかりいたせ!目を開けぬか!」
イズミル王子はメンフィスが完全に気を失っているかを確認するのももどかしくキャロルを抱き上げ呼びかけた。我を忘れて軽い華奢な身体を揺すれば、じきに王子を見つめ返す懐かしい青い瞳。
「王子・・・」
「・・・そなたを迎えにきたぞ」
王子は妃を助けて立ち上がらせてやった。
その時。
扉に人影が現れた。様子を見に来たアイシスであった。

164 :名無し草:02/11/04 14:39
各作家様、続きが気になってたまりませぬー。

165 :名無し草:02/11/05 11:12
わたしも!あう〜

166 :名無し草:02/11/05 13:46
>「黒い嵐」作家様
>王子を見つめ返す懐かしい青い瞳
「懐かしい〜」という言葉にグッときた。やっと会えたんだもんね。
アイシス登場でどうなるんでしょう。続きお待ちいたしております。

167 :人形姫:02/11/05 14:08
>>160
15 侍医
姫君がお戻りになったのはもう夜明けのほうが近いような時間でございました。
一目、ご様子を拝見して私は思わず目をそむけたいような気持ちになりました。じゃきじゃきに切り刻まれた髪の毛、蒼白の顔、光の失せた瞳。人形のような力の入らぬ身体。何と酷いことでございましょう。心を、誇りを踏みにじられた人間の有様でした。私は思いました。
・・・・・この方のお心は壊れかけている、と。

ムーラ様からだいたいの事情は伺っておりました。王子が大切に傅いてこられた方がどんなに辛い目にお遭いになられたのかは。
あの王子贔屓の、王子の御為ならば非も是と言い切る強いムーラ様が、王子のなさりようを控えめな言葉遣いながら非難するのにも驚かされましたな。
―姫君はそのお心に深い深い傷を負われたのでございます。今は姫君のお心とお身体を休らわせて差し上げて下さいませ。王子にも・・・姫君には何よりもご休息が必要な旨、お伝え下さいませ。今は姫君はお一人でおられるのがよろしいでしょう。

王子が荒々しく求められた跡も鮮やかなお身体にお薬を塗り、泣きむせぶ力もないほどに憔悴し、疲れ果てられたお身を眠らせる鎮静剤を差し上げ、私は退出いたしました。
王子には診察の結果をお伝えし、今はお一人にして差し上げるよう進言いたしましたが・・・。
私はあんなに恐ろしい思いをしたことはございませんでした。
いつも冷静で、静かな水面のような雰囲気を漂わせた世継ぎの君は、怒りに声を荒げられ私を責められました。
何故、夫たる我が妃を見舞うことが叶わぬのか、と。
私はただただ平伏して、王子の激情が鎮まるのを待つのみでした。王子はじきに落ち着かれました。姫君がご自身を遠ざけられる理由は誰よりもよくご存じでございましたろうから。

私は御前を下がりました。私は幼少の頃から医学一筋の不調法者ではございますが・・・金髪の姫君のお心を思うとただただお気の毒でございました。
狂うにはあまりに怜悧で、王子のご寵愛を得ることに汲々とするにはあまりに賢い、あの世慣れぬ姫君。

168 :黒い嵐:02/11/05 16:15
>>163
48
「メンフィス・・・!」
アイシスは火事の禍々しい光に照らされた室内を見るやいなや素早く状況を理解した。
立ちつくすアイシスを冷たく見返すイズミル王子。その胸の中には乱れた衣装に身を包み、未だ恐怖の情忘れがたいキャロル。

「女王アイシスか・・・。久しいな。見ての通りだ、私は私の妃を救い、我が国が被った恥辱を雪ぐためになすべきことをした。
・・・聡明なる女王よ。そなたに問う。そなたはこれからどのようにするつもりか?」
穏やかな声音。しかし言葉の主の瞳は冷たく光り、いつの間にか髪の中から取りだした鉄剣が目の前の女王の胸元を狙っている。
「答えよ、アイシス。為政者の誇りがあるならば。メンフィスのために恥多き復讐を望むのか?」
「いいえ、王子。いけません。どうか剣をおろして」
キャロルが言った。
「女王アイシス。このような形であなたにお別れを言わなければならないのは残念です。私は夫と共にヒッタイトに帰ります。
・・・メンフィスは私の名誉を踏みにじり、イズミル王子を傷つけようとしました。私たちは身の安全と、名誉のためにしなければならないことをしただけです」
毅然とキャロルは言いきった。それは過日、アイシスに見せた堂々たる女王の貌。

(キャロル・・・そなたはまことに強くなった)
アイシスはふっと視線を下げた。床に横たわる最愛の男性。弟にして夫、決してアイシスとは相愛にはならぬであろう身勝手な男性。いくら愛しても、メンフィスは傲慢にその愛を弄び、食べ散らかし、答えてはくれない。
でもアイシスが愛するのは・・・愛しうるのは天にも地にも同じ血を引く弟たるメンフィスのみ。
(私はキャロルがイズミルを愛するより深く激しくメンフィスを愛している。
だが・・・メンフィスは決して私に同じものを返してはくれぬ!)
アイシスは言った。
「王子妃殿。すべては私の与り知らぬこと。この上は疾く去られよ。こたびのことは私がエジプトの女王として責任を持って処理いたします」


169 :名無し草:02/11/05 22:29
あいしす、やっぱりカッコエエのう!

170 :名無し草:02/11/05 23:31
>人形姫
恋人同士の別れ話の真っ最中に見えたという
ルカとキャロルの関係が気になります
まさか・・・

>黒い嵐
アイシスの哀しさが伝わってきます
メンフィスも罪なオトコよのー

171 :黒い嵐:02/11/06 09:29
>>168
49
「ああ・・・ハットウシャの城壁・・・!なんてきれい!」
青く澄んだ空に映える堂々たる城壁。キャロルは嬉しそうにイズミル王子の顔を見上げた。
あの火事の夜、王子に抱かれてエジプトの王宮を脱出したキャロル。懐かしい故郷へ愛しい人と戻る旅は、メンフィスの追っ手や盗賊・獣を避ける緊張に満ちた旅であったが、イズミルに守られたキャロルはただの一度も不安を感じることはなかった。
イズミル王子は自分の腕の中で微笑むキャロルの顔を優しく見つめ返した。
その白い顔は、異国での苛烈な経験と旅の疲れを滲ませて、未だやつれてはいたが緊張と不安から来ていたきつさは無くなっていた。
「元気に笑ってくれるそなたと再びハットウシャの空を眺められてよかった」
王子は暖かく答えた。感情を露わにしたり、素直な愛の言葉を囁くことに不慣れであった若者は、周囲の人々が驚くほど饒舌になった。
「そなたは帰ってきたのだ。もう何も心配することはない。私が守ってやる。もう二度と恐ろしい思いはさせぬ」

世継ぎの王子夫妻の無事帰還を祝う興奮さめやらぬ広間を一足先に退がることを許されたキャロルは、湯を使いくつろいだ。ムーラをはじめとする侍女たちがキャロルを大切に傅くことはこの上ない。
「皆、ありがとう。私はもう大丈夫よ。さぁ、もう下がって休んでくださいな」
鷹揚なキャロルの言葉に侍女たちは恭しく頭を下げ出ていった。その優雅な気品に彩られた威厳あふれる言動は、自ずと人々の尊敬と・・・確信を勝ち取るものだった。
すなわち。
―王子妃様は、エジプトのファラオにも誰にも辱めを受けてはおられぬ。この方の気品はご自分のお力だけで試練を乗り越えられた方にのみ備わるもの―

父王と母王妃、それに王族に連なる重臣達の前から退出した王子は弾む足取りでキャロルの待つ部屋に向かった。
長く異国の地で囚われの身であった美しい王子妃を巡っては、心配と同時にかなり不愉快な事柄も取りざたされていたようだった。この時代、他の男にさらわれた女性一般に起こりがちであった屈辱的な事柄が、王子妃の身にも・・・というわけだった。
だが帰還したキャロルの振る舞いはあくまで堂々としており、その厭わしい疑いを殆ど一人で払拭してしまった。無論、帰路に王子自身が密かに侍医を立ち会わせ、その身を改めたという事実もそれを補完したが。

172 :名無し草:02/11/06 13:38
続きだー。
黒い嵐 アイシス様の哀れさがイイ!と思う私はアイシス様ファン。
メンフィスも馬鹿だよお、ここまで愛してくれる相手が側にいるんだからさっさと目を覚ませばいいのに。

173 :名無し草:02/11/06 14:08
>黒い嵐作家様
メンフィスの可哀想な役回り。ちと気の毒なほどですが、
やっぱりイズミル×キャロルが無事にヒッタイトへ帰ってきて嬉しい!
という私は王子ファン。


174 :流転の姫君:02/11/06 15:49
>>154
54
キャロルの努力の甲斐あて弓矢の扱いは上達の兆しを見せた。
王子はキャロルの手に合う細身の剣を作らせキャロルに与え、接近戦の際の防御の術なども教えた。
キャロルの日々は多忙を極めた。
武術の鍛錬だけでなく、ヒッタイトでの王宮でのしきたり等を覚え、政の相談なども王子と交わした。
面白くないのはヒッタイト王宮にて媚びを売ることを生業とした女たちであった。
国王不在の折、身体を磨く事のみしかすることのない、暇を持て余した女達。
その昔イズミル王子が情けをかけたこともあったが、今の王子はキャロルしか目に入らない。
表面上は和やかに交流を持とうとキャロルのところまで出向いたが、実際は女同士の陰湿な争いを目論んでいる。
ムーラは一目見てその目論見を見抜き、キャロルに会わそうとはさせないが
食い下がる女達の声にキャロルがムーラを諌め、ほんの少しならと招きいれた。
其々に容貌に自信のある者ばかりだったが、キャロルを見て言葉を失った。
美しく輝く黄金の髪とナイル川を思わせる青い瞳、白く透き通るような輝きの肌を持った華奢な少女。
だがキャロルを取り巻く雰囲気は以前ちらりと垣間見た時のものとは全く違っていた。
滋味深い優しさを以前から持っていたが、その優しさにはまわりに流されそうなどこか脆いものを含んだものだった。
だが今のキャロルには芯の強さを感じさせる、誰もが敬服するような威厳と気品を併せ持ったものに変化していた。
そしてキャロルの弓矢や剣を身に着けた姿に驚愕した女がやっとのことで
「なんですの?そのお姿は。戦でも始められるのですか?」と嘲りを含んで言うのが精一杯。
「そうですわね、王子が望んで下されば何処へなりともお供いたしますわ」
にっこりと微笑むキャロルに勝てるものなど居らず、女達は始めの意気込みはどこへやら、ムーラに追い出されてしまったのである。


175 :流転の姫君:02/11/06 16:14
55
憤りを感じた女達はそのまま王妃の下へと馳せ参じた。
国王に甘やかされて増長していた女達は、王妃が自分達の味方をすると信じて疑わなかった。
姫と呼ばれながら、あのように武術をするだなんて一体何を考えているのでしょう。
この王宮で私達を蔑ろにするだなんて、私共は和やかにひとときをご一緒させていただきたかっただけですのに・・・。
王子様はご存知なのでしょうか?
困ったものだと表情に出しながら呆れて口許に笑みの浮かんだ王妃が、
王子の名前を出した途端にすっと立ち上がり、女達を睨み付けたのである。
「ナイルの姫は王子と共にこのヒッタイトのために戦うと申しているのです。
 姫の携わるは政じゃ、そなたらと格が違う!控えなさい!
 ナイルの姫はイズミルが選んだ妃、その姫を愚弄するは我がイズミルを愚弄するも同じこと!
 そなたらはこのヒッタイト王家を愚弄したのです。
 そのような女を置いておく謂れなどありませぬ、衛兵!この者達を処分なさい。」
王妃の穏やかな口調でありながら、その眼は恐ろしく冷たい。
女達が必死に取り繕うとするのを傍目に王妃は続ける。
「そなたらが居らぬでも困る事はなかろう、代わりはいくらでも居るゆえ。
 陛下には謀反人ゆえ処分したと伝えておきましょう。」
やはりあの冷静沈着な王子の母、侮る事なかれ、と女たちが思い知った時には既に遅かった。
衛兵に取り押さえられ連れ去られる女たちを尻目に王妃はふっと溜め息をついた。
「私ももう少し強ければ戦にお供したやもしれませんわ・・・。」

176 :人形姫:02/11/06 17:11
>>167
16 ヒッタイト王妃
イズミルの愛した姫が、イシュタルの神殿に籠もって、もう三月ほどになりましょうか?ハットウシャの都にもじき春が巡ってくる。

正直言って、かの姫がこれほどまで長く神殿暮らしを続けられるとは思ってもみませんでしたよ。
そうでしょう? 大切な存在を失って俗世に倦んだ女達が祈りを捧げる場所。国王様はじめ身分ある男性の寵を失って絶望した女達が身を隠す場所。
身にまつわる俗世のしがらみ、愛憎の蔓草、そんなものに別れを告げひたすら神に祈る場所。
女であることの哀しさを忘れるために。女であることの罪深さを忘れるために。それは私も含めた女達の悲しみと安らぎの砦。聖なる世捨て人達の郷。

そこでの暮らしは質素なもの。粗末と言い換えてもいいでしょう。贅沢に慣れた女も貧しさの中で慎ましく生きてきた女も、皆、等しく不便不自由と
紙一重の質素に慣れるのです。それすらも魂の安らぎを得られるのであれば何の痛痒も感じぬのでしょうけれど。

それにしても。かの姫は若い身でありながらよくその境遇に馴染めたものだこと。王子が大切に傅き、贅沢に養い慈しんだ子供のようなかの姫が。
あの花のような姫はひとたび外の風に晒されればたちどころに枯れてしまうと思っていたけれど存外、強い心身の持ち主であったと見えまする。
知らせによれば姫は毎日陰ひなた無く働き、落ち着いた暮らしぶりであるとか。
髪を短くして、やつれた顔には不似合いな強い光を宿した目をして、私に神殿行きの許しを請いに来たときの姫は本当に美しく見えました。
あれに比べれば半ば狂って宮殿を下がっていったミラは何と俗な女でありましたことか。
あれに比べれば自分の無体を棚に上げ、神殿に籠もった妃―ええ、私はこの言葉を使います―への恋に悶える息子の何と不甲斐ないこと!

それにしても、もう三月。季節も変わる。季節が変われば若い娘の心も変わりましょう。
私は母として、あの金色の髪の娘を迎えに行こうと思うのです。


177 :名無し草:02/11/06 19:03
>流転の姫君
わーい!お出ましをお待ちしておりました!
王子とヒッタイト王妃はやっぱり親子。似とる。

>人形姫
ちょっと亀レス・・・
―姫君はひどくお疲れのようだ。宮殿にお運び申し上げる故、手伝え―
このあとにキャロルに当て身をくらわすルカに萌え〜

178 :名無し草:02/11/06 19:31
今日は盛りだくさんで幸せです

179 :名無し草:02/11/06 19:38
このスレで王子×キャロルのカップリング好きな人(私もだけど)、王子ファンの人は皆ひそかにムーラと王妃様のファンである率も高い?
いやー、何となくアイシス=哀しみの女王マタハ嫉妬の女王、ムーラ=見上げた忠義者、キャロルのことを本当に思っていてくれる、王妃様=あの王様にはもったいない賢夫人ってゆーイメージできちゃって。

私は「あれに比べれば自分の無体を棚に上げ、神殿に籠もった妃―ええ、私はこの言葉を使います―への恋に悶える息子の何と不甲斐ないこと!」の台詞に感動&大笑いしました。

180 :名無し草:02/11/06 23:38
基本的に王子マンセーだけど
たまにはメンフィスとキャロルメインのお話も読んでみたいかも。
いや、原作のメンフィスは・・・アレだし。

181 :名無し草:02/11/06 23:53
>179
わたしゃ、ムーラは王妃以上の鬼姑になる、というイメージが強いな〜。
やっぱ余裕がなくてこえ〜よ、本編のムーラは。
(別に本編のムーラに似なくてもいいんだけどさ)

182 :愛の名の下に・・・無謀!:02/11/07 15:55
「! メンフィスったら!どうしたの?こんな時間に。明日は・・・」
「申すなっ!」
メンフィスは無遠慮にキャロルの部屋に入ってくると、どさりと籐の寝台に身を横たえた。

20世紀の娘キャロルは古代エジプトの女王アイシスに、新王国時代のエジプトに引き込まれてしまった。弟メンフィスの延命長寿のまじないを成就するために「この世界に属さぬ存在」としてのキャロルが呪物として求められたのだ。
アイシスは愛しい弟であり最愛の夫でもあるメンフィスの命を救い、キャロルを大切な人質として自分の身近で召し使うことにした。
キャロルは高級侍女としてアイシスに大切にされたが、結局は体(てい)の良い人質、囚人であった。彼女の存在がメンフィスの命の保証でもあるわけだから。
ところが皮肉なことにメンフィスはキャロルに恋をして、キャロルもまたメンフィスに恋をするようになった。相思相愛となった二人は、アイシスの目を盗んで密やかに想いあったというわけだが・・・。

「明日、私はファラオとして姉上を娶らねばならぬ。でもその前に・・・本当に愛しく思う女を妻に娶りたいのだ。お願いだ、キャロル。私の妻になってくれ。形式や典礼で娶るのではない、私が心から愛し望む妻として、私のものになってくれ!」
メンフィスの力はあまりに強く、その愛を拒絶するにはキャロルはあまりに彼を愛しすぎていた。
キャロルはその身の中にメンフィスを受け入れ、妻となったのである・・・。

「あ・・・衛兵交代の太鼓の音・・・」
夜明け前の一番暗い時間。キャロルはメンフィスの腕の中で低く呟いた。
「メンフィス、もう行ってくれなくては。あなたは今日、アイシスと・・・」
「行きたくない。ああ、私が只人であったならば、そなたと朝寝を楽しみ新婚の幸せを満喫できたであろうに」
メンフィスはかき口説き、キャロルはまた新たな涙を流した。

エジプトのファラオ メンフィスは異母姉アイシスを正妃とした。幸せに酔いしれるアイシスが自らの哀しい立場に気づくのはまだ先のこと。
キャロルは自らの罪深さにおののきながらもメンフィスを愛し、やがてその息子を身ごもることになる・・・・。

とりあえず終わり

183 :180:02/11/07 19:52
>>182
さ、早速のメンヒス×キャロル小説ありがとうございます!!

つ、続きはないのかしら・・・どきどき

184 :名無し草:02/11/07 23:45
182さま。続きをキボンヌ

185 :黒い嵐:02/11/08 14:37
>>171
50
エジプトのファラオ メンフィスは黙ってナイルの川面を見つめていた。
秀麗な顔には斜めに傷跡が。イズミル王子と争い・・・キャロルを失った屈辱の証。体についた傷は癒えた。だがその傲慢なまでに誇り高い心に負った傷は癒えることなく、いや、日毎に重くなり嫌な熱を持ち、不吉な膿を垂れ流すのだった。
(私は・・・私はキャロルを失ったのかっ・・・!)
メンフィスは握りしめた拳で円柱を撲った。
あれほどまでに欲しいと思い、あれほどまでに愛しいと思った娘。一度は手に入れたはずなのに、気まぐれな小鳥のように手の中からすり抜けていった憎い―愛しい―娘。
イズミル王子の胸の中で、安心しきって、そして自分を哀れむかのように見つめていた青い瞳が忘れられない。

にわかにメンフィスの背後の宮殿の一角が騒がしくなった。そこは今しもファラオの初子を産み落とそうとしている正妃アイシスの産屋。
「ファラオっ、おめでとうございまする!アイシス様、無事、王女殿下をご出産あそばしました!」
ナフテラとアリが先を争うようにして報告に来た。
「そうか・・・・」
メンフィスの返事は驚くほど素っ気なく冷たいものだった。メンフィスはアイシスを嫌い抜いていた。キャロルとの恋路を妨げた嫉妬深い女。イズミルへの復讐を全力で阻止して見せた女。賢く誇り高い女王よと諸国の名望高い姉をメンフィスは少しも愛してはいなかった。
・・・いや、あの火事の日以来、愛せなくなっていた。
「ふん、王女か。神殿に使者を出し、感謝の祭儀を執り行わせよ!祝賀の準備を命じる。エジプト王国の正妃腹の子供だ、相応に祝ってやれ」
メンフィスは言い放つと、産屋とは反対の方向に歩み去った・・・。
(私はいつかキャロルに世継ぎの王子を産ませて見せようぞ!)
野心に満ちたメンフィスの視線の先に高く舞い上がるハヤブサの影があった。まるで何かの予兆か啓示でもあるかのように。

186 :黒い嵐:02/11/08 14:37
51
「姫!よくやった!よく私の子を産んでくれた!」
イズミル王子は初めての出産を終えたばかりの愛妻に心からの感謝の言葉を捧げた。
初めての出産を心配されていた王子妃キャロルだが、その出産は思いの外安産で、しかも産まれてきたのは王子であったので人々の喜びは並一通りではない。
疲労の色濃いキャロルは、しかし誇らしげに夫君のはしばみ色の瞳を見つめ、そして傍らに寝かされた初子を嬉しそうに見つめた。
イズミル王子と同じ、金茶色の髪、はしばみ色の瞳、生まれたばかりだというのに明らかに普通より色白と分かる肌の色。その顔立ちは驚くほど父方の血を濃く引いていることを伺わせる。
「ああ、私がどれほど嬉しいか、どれほどそなたに感謝しているか分かっていてくれるだろうか!そなたは私に、ヒッタイトにかけがえのない息子を、未来を与えてくれたのだ!」
いつになくはしゃいだイズミル王子の饒舌が、母となったばかりのキャロルをこの上なく幸せにした。
(ああ・・・まるで夢のように幸せで・・・。私は、私はこの地で母となり血を残す。ひょっとしたら私はこの世界の異分子ではないのかって懼れた日々こそ今はもう夢。私はこの世界に根を張り、生きていくのね。
・・・神様、感謝いたします)
キャロルは視線を窓の外に移した。どこまでも青く澄んだ空を行くのは何という鳥なのか。
だが悠々と高い空をいくその姿は、キャロルには何か輝かしい予兆か啓示のように思われた・・・。

187 :黒い嵐:02/11/08 14:39
52 最終回
エジプトで、ヒッタイトで同じ時間に空を見やった男女。
空飛ぶ鳥は何を彼らに告げたのか。

イズミル王子がその妃キャロルを熱愛し、彼女所生の優れた子供達を大切にしたことはこの上なかった。
キャロルもまたイズミルを愛し、子供達を愛した。
だが。エジプトから彼女をさらいに来た恐ろしい黒い嵐のようなメンフィス王の記憶は消しがたく。
女王アイシスの機転と叡慮で穏便に処理されたとはいえ、不名誉なかの一件はエジプト・ヒッタイト両国に禍根を残すこととなった。
イズミル王子もまた、常にエジプトの脅威を、いや嫉妬と恋情に狂ったメンフィス王の不気味な執念を常に感じていた。

やがて時が巡り、メンフィス王のエジプトとイズミル王のヒッタイトは戦野で激突することとなる。多くの犠牲と涙を代償としてようやく和平にこぎ着けたこの戦はまだ遙か未来に起こる別の物語。

今は・・・。
ヒッタイトで、エジプトで、新しく生まれた王家の血筋の子供の誕生が寿がれている。太陽が二つの国を等しく照らし、人々は祝い事に熱狂するのだった。

「イズミル王子。ねぇ、私、とても幸せなの。恐ろしいくらい幸せよ。
ああ、ずっとずっと皆が今の私みたいに幸せでいられるように祈らずにはおれないわ!」
産屋のキャロルは初めての乳を初子に含ませながら涙ぐんで最愛の人に言うのだった。

終わり:とりとめもなく終わってしまいました。
これまでおつきあいくださいました皆様に感謝します。痛い駄文と思いつつスルーしてくださった皆様にも感謝とお詫びを。
本当に今までありがとうございました。

188 :名無し草:02/11/08 15:36
>>黒い嵐作家様
お疲れさまでした。UPされる度にドキドキさせて頂きました。
また、素敵なお話が浮かんだら読ませて下さいね。


189 :名無し草:02/11/08 20:42
>黒い嵐作家様
UPされるのが日々の楽しみとなっておりました。
素晴らしいお話をありがとうございました。


190 :sage:02/11/09 08:33
>黒い嵐作家様
長い間ありがとうございました。
いつも楽しみにしていました。

「遥か未来に別の物語』も気になる〜。

191 :人形姫:02/11/11 16:08
>>176
17 神殿に隠棲する女
金髪の娘さんは本当にくるくるとよく動くこと。

冬の夕暮れに扉の前にやって来た時はひどく疲れて老婆のようにも見えていたけれど。髪の毛は男の子みたいに短いし、やつれて目の下には黒いクマ。
―ああ、またお仲間が来たのね―
私は思いましたよ。
―あれは未亡人じゃないわね。後宮の女でしょう。失寵の憂き目を見て、自分の不運と哀れさに涙するしかない類の女かしらね―
ふふ。私もかつては王の寵愛をいただいたことがあるのですもの。ここに来る女についてはかなり正確に見抜けるつもりでいましたよ。
新参者にはね、同情したふりをしてやり、優しく話を聞いてやり、涙と愚痴が枯れ果てた頃を見計らって静かな神殿暮らしの良さを説いてやるのがいいのですよ。
結局、運命を受け入れるのが一番ですからね。

ところが娘さんは並のご身分じゃなかったんですよ。何でもイズミル王子様の思い人。どういうわけか、その王子様を振ってここに自分から、いいですか、止める王子様を振りきって神殿に来たと言うんですよ!自分から!
ええ、言ってみれば「捨てられた」のは金髪の娘さんではなく王子様!

変わった娘さんだと思いました。
落ち着いてくると娘さんは本当に可愛らしい性質でしたよ。結局、人間関係に疲れてたってとこでしょうかねぇ。知っている人もいないこの神殿がかえっていい避難場所になったみたいで本当に楽しそうに働くんですよ。

でも、そんな娘さんを王子様だって放っておけないんでしょう。毎日、お使者がやって来るんですから。もちろん、「姫君」と呼ばれる娘さんは会いはしません。王子自らおいでになったときもですよ!
どうなるんだろう?って心を封印して人形のように無感動な毎日を送っていた神殿の世捨て女達は久しぶりに姦しいうわさ話に興じました。

季節が変わって春になったある日、とうとう王妃様がおいでになりました。
王妃様と娘さんは長いこと話していました。本当に長いこと。
王妃様がお帰りになったあと、娘さんは黙って神殿の回廊を歩き回っていました。何周も何周も・・・。

192 :名無し草:02/11/12 00:21
人形姫作家様
キャロル、すんごく沈みきってたから、いまでも暗く生きてるんかと
心配しとりました。元気になったんだね。ヨカタ〜
続き楽しみに待ってます。早く読みたい!


193 :小ネタ:02/11/12 14:40

「・・・では私はこれで失礼しますわ、ナイルの姫君。
そんな顔なさらないで。これからは一緒にイズミル王子様にお仕えするんですもの。せいぜい仲良くしたいわ」
ミラは気のいい笑みを浮かべて愛想よく言った。目の前のキャロルの青ざめた顔が彼女の優越感を心地よく刺激した。
イズミル王子がエジプトからさらうようにして連れてきたという娘を初めて見たミラ。大切に囲われているその女性は、外見こそ珍しく、その幼さが男心をそそるのだろうけれど、とても自分の競争相手にはならない・・・とミラは見定めた。

(私がイズミル王子様の側室ですよと教えた時の顔ったら!あなたも王子様の愛人なのでしょと言ってやったら卒倒しそうになっていたわ!)
ミラは意地悪く思い返していた。あの世間知らずは自分だけが王子の相手だと思っていたのだろうか?
(イズミル様は世に聞こえた優れたお方。愛人と呼ばれる女性は星の数。でも正式に側室として認められているのは貴族出身の私だけ。私が王子の一番の女性!)

その夜。ミラの部屋にイズミルが訪れた。身体を熱くしていそいそと愛しい男を迎えるミラ。
「こたびの旅はいかがでした?」「お持ち帰りになった宝石の中に欲しい物がありますの。おねだりしてもよろしい?」「従兄弟が厩舎長官の地位を欲しがっておりますのよ。どうかお口添えを」
続けざまの甘い言葉に適当な返答を与えながら王子はミラを抱いた。
ミラの豊満な身体はしっかりと王子を包み込み、ミラはいつしか甘い声を続けざまに放つだけの女になった。
「ああ・・・王子。私はあなた様が欲しい」
「欲しい物は与えてやろう。物でも・・・地位でも・・・お前がその分を忘れなければ。お前は私を悦ばす存在だ・・・」
王子はすっかり馴染んで柔らかくなった身体を幾度も穿った。でもその瞳は冷たく醒めていて愉楽の行為を楽しんでいる最中の男には見えなかった。


194 :小ネタ:02/11/12 14:41

王子はミラとの行為を終えると、眠り込む女を寝台に残して部屋を出た。
真夜中にはいくらか間のある時間。空には冷たく光る三日月がかかっていた。
(他の女と寝た後に自室に帰るようになったのだから私も存外、恋の虜とやら似成り下がってしまったらしいな)
皮肉な笑みを片頬に浮かべて自室に戻った王子を迎えたのは、金髪の髪を幼女がするようにただ髪を梳きながしただけのキャロルだった。
「お帰りなさい」
王子は優しく笑って白い頬を撫でた。キャロルにわざと殊更に幼げな格好をさせているのは王子の好みだった。淡い色合いのゆったりした衣装。薄い化粧。
その幼さのベールを通して立ち上る艶めかしさが王子を喜ばせた。
王子はこの金髪の娘をこの上なく愛していた。他の愛人や側室とは違う、はっきりとした人格や意志を持った心の強い女・・・それがキャロルだった。
だからだろうか?
今宵のキャロルの顔を彩る憂いにいち早く気づいたのは。王子は早々に召使い達を下がらせ、添い寝の床にキャロルを導いた。

「どうしたのだ?」
王子は優しく聞いてやった。
「黙っていては分からぬぞ。何か嫌なことがあったか?心配事でもできたかな?」
長い長い沈黙の後、やっとキャロルが言った。
「子供扱いは嫌。私・・・今日、ミラさんに会ったの」
「何っ!」
「ずっとずっと王子を兄さんみたいに思って甘えていたけど・・・やっと私、王子の側にいるってことがどういうことか分かったの」

195 :小ネタ:02/11/12 14:42

狼狽えたのは王子のほうだった。
「そなたはミラがどのような立場の女か分かっているのかっ?何故、ミラになど会った?ムーラは何をしていたのかっ!」
「ムーラは関係ないわ。私がミラさんをお通ししたの。・・・ミラさんは王子の側室なんだって言っていたわ。綺麗な方だった・・・」
淡々と言葉を続けるキャロル。王子は歯ぎしりして言った。
「そのようなことをして!そなたは自分の立場を分かっているのかっ!そなたは・・・っ!」
「分かっています」
キャロルはまっすぐに王子を見つめ返した。
「私は・・・王子の・・・愛人・・・でしょ?」
こらえきれずに零れる涙。本当なら愛人なんて屈辱的なだけの立場だ。好きな人には自分だけを見ていて欲しい・・・と20世紀に育ったキャロルは思い続けて大きくなったはずだ。
でも古代にやって来て・・・王子を知って・・・いつの間にか、愛しい人の側にいられるならどんな立場でもいいと思うようになっていた自分に気づいたキャロル。
「分かっています。私は・・・王子の愛人・・・の一人・・・」
「違うっ!そなたは何も分かっていない!」
王子はキャロルの細い肩を掴み、がくがくと揺さぶった。キャロルのことを心から愛しく大切に思う自分の気持ちは当然知っていてくれるはずと思っていた自分の甘さに腹が立った。
「そなたは・・・私のただ一人の愛する女だ。只一人の・・・イシュタルの定めたもうた妻だ・・・」
王子の熱っぽい囁きにキャロルはびくっと震えた。
(妻?妻と言った?この人は?私は・・・他の人とは違う・・・の?

196 :小ネタ:02/11/12 14:42

いきなり王子はキャロルを強く抱き寄せた。
「信じられぬか?我が腕の中にいても我が心は伝わらぬか?」
早い鼓動。熱い体躯。突然贈られた貪るような接吻。王子の心が直に伝わってくる。
その直截な情熱が恐ろしくて思わず身体を突っ張らせて離れようとするキャロル。でも王子はそれを許さなかった。
「そなたの幼さを思い、今日まで娘のままにしておいたが・・・もう思いやってはやれぬ。
今宵・・・そなたを我が妻とする・・・!」
王子は素早くキャロルを自分の下に組み敷いた。
「嫌か・・・?嫌なら申せ。でも・・・今宵ばかりはそなたの望みに沿うてやれるか・・・?」
キャロルの瞳から涙がこぼれた。
「私は・・・本当に王子を好きになっていいの?心から?何も心配せずにただただ王子を好きになっていいの?」
「信じさせてやる、私がどれほどそなたを愛しく大切に思っているか信じさせてやる・・・っ!」
王子はいきなりキャロルの紗を破り裂いた。キャロルは目を閉じ恭順の意を示した。
「私は・・・王子を好きになっていいの?本当にいいの?私は・・・この世界の人間ではないのに・・・?」
それ以上、何も言わぬようにとでもいうように王子の唇がキャロルの唇を塞いだ。

イズミルはキャロルを愛した。無垢な身体に自分の刻印を押す行為に彼は今までになく興奮して高ぶった。指先で舌ですべてを探り、その白い身体に自分を染み込ませた。もう他の誰も受け入れられぬように。彼以外の男性を思うことがないように。

197 :小ネタ:02/11/12 14:43

「目覚めたか・・・?」
すっかり明るくなった寝室で、キャロルは目覚めた。王子もキャロルも何も纏っていない。
「ふふん・・・」
恥じらって真っ赤になったキャロルを王子は舐めるように見つめた。
全てを味わって我が物とした女に感じる征服感はいつもより何倍も強烈だった。
「そなたは途中で気を失ったぞ。あのようなことは初めてであったか?」
王子は腕の中に軽々とキャロルを抱き上げ、膝の中に抱え込んだ。
昨晩のことが生々しく脳裏によみがえってキャロルは真っ赤になった。肌を探る王子の指先、口唇。あちこちを馴れ馴れしく味見をするいたずらな舌。身を裂くような甘い痛み。繰り返される睦言・・・。
「そなたは私だけのものだ・・・。私はそなただけのものだ」
王子は囁いた。
「そなたを得たつもりが絡め取られたのはどうやら私の方であったようだ」

198 :流転の姫君:02/11/12 16:35
>>175
56
ヒッタイト王妃の怒りを後宮の女達が買い、粛清された話は瞬く間に王宮中に知れ渡り
性や官位を問わず、あちこちで噂話に花が咲いた。
普段は穏やかで王宮を取り仕切り、国王の補佐をする王妃の怒りを買った原因が
ナイルの姫君にあり、王妃が高い評価を下し後押ししていることも、
結局王妃の揺ぎ無い地位の再確認とキャロルの皇太子妃としての地位を確実なものとした。
以前は王妃に後押しされイズミル王子の妻となる事だけを望んでいるミラにも
容赦なく噂話は耳に入ってきた。
か弱いお体なのに敢えて武術の鍛錬をし、傷だらけになっていらっしゃる姫君に
王子様は毎晩のようにお手ずから手当てをなさるのだそうよ。
将軍や大臣達も姫君の英知には一目おき、ご意見を伺おうとされるのだけれど
決してでしゃばった真似はなさらず、民のためにならと今までにない策を出してくださるとか。
王子様はご多忙の中、武術の手解きもなさり、お体があくとすぐ姫君の元へお帰りになられるそうよ。
女官や召使にもそれはそれはお優しいお言葉をおかけになるとか。
お仕えしてる者は皆率先してお世話をしたがるそうよ。
王子への恋慕とキャロルへの嫉妬でミラは気が狂いそうだった。
キャロルが現れるまではミラが王妃の後押しもあり、時期皇太子妃候補として
王宮でそれなりの待遇を受け、ミラ自身そう思って王妃や王子に仕えてきたのに
肝心の王子はミラの存在すら気にもかけないで、キャロルばかりを離さない。
この思いを何処へ向ければよいのか、ミラはあてもなく歩き回り、いつしか王子の部屋の方へ足を向けていた。
静かな様子に誰もいないのかと中を覗うと、暖かく設えた部屋の中で
ムーラやルカに休養を取るようにさせられて、うとうとと眠り込んでいるキャロルの姿があった。

199 :流転の姫君:02/11/12 17:06
57
長い黄金の髪は少し乱れて波をうち、花のような顔は見るものの心を惹き付けた。
ムーラが細心の注意を払ったのであろう、ヒッタイトの衣装の紅色も
キャロルの透き通るような白い肌を強調し、ますます美しく見えた。
袖が少しずれた細い腕には怪我でもしたのか手当ての後が見て取れ、
噂どおりなら王子がしているはずと、ミラの胸に嫉妬の熱い炎が一気に燃え盛った。
もうミラにはその手当てされた腕が憎らしくて堪らなくなり、いつしか持っていた短剣をキャロルに向け振り下ろそうとした。
「何をするの!」
キャロルの声と自分の右手が痛むのにミラは目を見張った。
細い剣を手に刃先を自分に向けて、キャロルの青い瞳が真っ直ぐに自分を射ている。
「・・あなた・・ミラ、何の真似なの?」
ミラがキャロルに向けた短剣は床の上に転がり、持っていた右手からは血が滴り落ちた。
「・・何故私が皇太子妃でないの?私はもう何年も待ったのに!
 以前私はあなたを逃がしてあげたでしょう?王子様が嫌いだって、いやだって・・・。
 なのにどうしてあなたが王子様の側にいるの!」
それはミラの叫びだった。
「王子様の為なら何でもするのに、どうして私じゃいけないの!」
ミラの鬼気迫る形相にキャロルの顔も青ざめ、足は少しづつ後ずさりをしている。
落ちていた短剣をゆっくりと拾い上げ、ミラはまた持ち直した。
「あたさえいなければよかったのに!」
刃先が肉に食い込む嫌な感触をキャロルは味わった。
「・・王子・・王子・・・どうしよう・・・。ああ・神様!」

200 :名無し草:02/11/12 20:23
200ゲトズサー

201 :人形姫:02/11/13 15:18
>>19118 イズミル
無慈悲に閉じられた扉の前に私はしばし立ちつくした。端から見ればかなり滑稽だろう、今の私は。

母上が会った姫はすっかり落ち着き、大人びた様子であったという。世を捨て神に生涯を捧げる誓いもまだで、神殿の下働きのような地位にいるらしい。
私が贅沢に傅き守った姫が粗末で不自由な暮らしに甘んじているという話は私に手ひどい衝撃を与えた。

―私の側にいるより世間に忘れられた女としての暮らすほうが楽しいのか?―
―そなたを傷つけ辱めたのは私だ。私の心驕りがそなたを滅茶苦茶にした。でも私はそなたが心底愛しい。そなたを気まぐれに抱く人形のように扱ってしまった私はそこまで厭わしいか?―
自問自答。
答えは分かっている。私はかの姫をあの忌まわしい晩に乱暴に抱き、汚した。でもあの姫は気まぐれに抱き弄ばれるだけの人形ではなかった。
私だってそれを知っていた。知っていたのだ。初めて目を見交わした瞬間から!

春のある午後、私は神殿に赴いた。姫は会ってくれなかった。
私は扉の前に立ちつくしている。
―あの者は王子様には会わないと申しております。お引き取りを―
神殿の女達を束ねる女は無表情にそう言った。

母上は愚かな私にこう申された。
―姫をまことに愛するのならばそなたの心の誠を見せよ。かの姫は心閉ざしてはおりますが愚かに頑なな女ではありませぬ。
そなたは償わねばなりませぬ。私もまたそなたが償いを為し、かの姫を連れ戻すのが未来の国首としてのそなたの務めと思っております―
母上が他の女を褒められるのは滅多にないこと。

私は姫を求める。端から見ればさぞ滑稽だろう。だが私は恋の奴と成り下がってかの姫を求めている。あの姫の中に棲む魔性もまた・・・私を求めているのが分かるから。

202 :人形姫:02/11/13 15:18
19 キャロル
この頃、窓の外を眺めやることが多くなった。高い場所に設えられた幅の狭い明かり取り窓の向こうの青い空。春めいた日差しは白に近いほど薄かった空の色を徐々に明るく濃いものに染め上げていく。飛び交う雲雀。暖かな風。
春の光の下で、私を待って立っていてくれるあの人。

―姫、そなたはいつ、そなたの為すべきことを為すために戻ってきますか?―
王妃様がおっしゃってからもう十日。
―私の為すべきこと?―
問い返す私に、私を「娘よ」と呼びかけられた誇り高い大国の王妃は告げた。
―そなたは国を統べる者です。私と同類の女。人形のように愚かな男に翻弄され心閉ざして生きるにはあまりに強く奔放。
人形のふりをするのはやめよ。死んだふりをするのはやめよ。生きよ。生きて本来の居場所に戻られよ。
・・・・・・よろしいな、姫。いえ、王子妃殿?―

私の居場所。
ママや兄さんのいる現代にはもう帰れない。アイシスに這い蹲って元いた場所に帰してと嘆願する?冗談ではないわ。
では、それはどこ?
私は知っている。敢えて考えないようにしていたけれど。心は叫んでいる。
・・・・・・・・・私の居場所はイズミル王子のいる場所。

イズミル王子。
私を弄び、辱めた憎い人。私を人形のように抱き、気まぐれに全てを与え、全てを奪ってみせた人。あの指輪をミラに渡したときに見せたあの人の冷たさ、身勝手さ。
イズミル王子。
頼る人とていないこの世界で私を受け止め、大切にしてくれた人。私を抱き、何も心配することはないんだよと心と身体に信じさせてくれた人。不器用で傲慢で・・・でも私を愛してくれた人。
いいえ。相手が私をどう思っているかなんて関係ないとまで思い詰め、私が心から愛した最初で最後の人。

―もし、あなた。イズミル王子様が今日もおいでですよ。ほら神殿の扉の外にあのように―
神殿に隠れ棲む女性が教えにきてくれた。私は・・・私の為すべきことは・・・。

私は立ち上がった。閉ざされた扉を開けて、生きた私として初めてあの人に会うために。

203 :流転の姫君:02/11/14 21:09
>>199
58
キャロルの細身の剣は深々とミラの鳩尾に突き刺さっている。
キャロルの目にはまるでスローモーションで見るようにゆっくりと
ミラが膝をつき倒れていくように映っていった。
「姫君?何事かございましたか?」
流石に異変を感じたのであろう、ルカがイズミル王子と共に現れ部屋の惨状に目を見張る。
「何があった?姫。」
未だに何をしたのか理解したのかわからないような呆然としたキャロルを引き寄せ
王子は青い瞳と視線を合わせた。
「ミ・・・ミラが・・私が休んでいたら・・急に短剣で・・襲ってきたの・・。
 一度振り払ったから諦めると思ったのに・・・なのに・・・。」
何事かとムーラや女官たちも集まりだし、あまりの事に声も出せない横で
ルカがミラの傷を調べ、目配せで王子にミラが助からない事を告げる。
「誰か医師を!」とムーラが指示しようとするのを王子は押し留めミラを見た。
既に虫の息となりつつあるミラは苦痛にうめきながらも王子にすがろうとする。
「・・王子・・さ・ま・・・・私・・・王子様だけ・・・を・・お慕って・・・・」
王子に手を伸ばそうとしているミラに王子は言い放つ。
「姫を襲うとはな、この謀反者をさっさと切り捨てるがよい。」
その言葉にミラの目が哀しい色合いで見返してくる。
傷口からはとめどなく血が流れ、床には真紅の血溜りが見る間に大きくなっていく。
「・・姫さえいな・・けれ・・・・私・・妃に・・・なれた・・・は・・・ず・・」
キャロルはミラの言葉を聞き、王子を思うのは自分も同じと感じると涙が溢れて止まらない。
だが王子は剣を抜くと無常にも「ではこの私が引導を渡してやる!」とミラの胸に剣をつきたてたのである。

204 :名無し草:02/11/14 22:22
あっ!!ミラがやられちゃったんだ〜〜〜。


205 :名無し草:02/11/15 17:40


206 :名無し草:02/11/15 17:49
キャロルが自分が殺したって思いつめない様に、自分でとどめを刺すとは・・・。
でも、その優しさがキャロルに通じるのかな〜
なんだか「冷徹な人!」って反応しそう・・・不憫な王子・・・。

207 :名無し草:02/11/15 22:10
>>206
私もおんなじ事オモタヨ。
通じてくれますように〜。

208 :名無し草:02/11/15 22:12
>>206
私もおんなじ事オモタヨ。
王子の思いが通じてくれますように。

209 :207:02/11/15 22:14
うげっ。
投稿されてた。スマソ。

210 :彼の見る夢6:02/11/16 08:47
>>162
結局その後ミヌーエは黙り込んでしまいアイシスに関しては何も聞き出せなかった。
セベクネフェルウはこの件に関して自分なりに決着をつけるべく考えをめぐらせていた。
幼い頃から憎悪と憧憬の対象だった兄。憎悪は母から吹き込まれ、周囲からの敵意と蔑視を含んだ視線ではぐくまれた。憧憬は幼い頃からの彼の容姿、伝え聞かされる才能と知略で芽生えた。
兄は異母妹に対して無関心と彼女の態度から生まれた侮蔑しか持たなかったようだ。
フナヌプは何かを思い出そうとしている表情で騎乗していた。彼は自分よりよほど兄と長く深く関わっていた。思い当たることがあるのかもしれない。やはりアイシスという女性が全ての鍵のようだ。
兄は脱け出したりせずちゃんと休んでいてくれるだろうか?
荷物を返したほうが信用してくれるだろう。それに王位更新のセド祭が近いから神殿には容易に近づけないことも伝えておけば無茶はしない人のはずだ。

エジプト王メンフィスの第二王子(兄は誕生前に「戦死」しているので現在は事実上第一王子だが)アンハトホルラーは唯一の安息の場である姉の住む館を訪れようとしていた。
物心付くか付かないかのうちに母は失われ、ヒッタイトの「滅びの予言」成就のためつくられた子供である自分に自然体で接してくれるのは姉とその夫だけだ。
姉が自分の母を妃にするよう進言していたのを知ったのは最近のことで随分衝撃を受けたものだ。
だが彼女はそれを持ち出したことは無いし、顔も知らない異母兄と引き比べることもない数少ない存在だ。近々共同統治者に命ぜられることが決まっているが補助が当てになるのは彼女たちだけ。
訪れた館の庭では甥達が見知らぬでもどこかで見たような男と剣の練習をしていた。
この男が異母兄だと知らされたのはアンハトホルラーが父の幽閉を決断する場となった。


211 :名無し草:02/11/16 14:04
>彼の見る夢
なにやら複雑な展開に……
アンくんの容姿が気になる。

212 :名無し草:02/11/16 19:41
>彼の見る夢
作家様が違うのは重々承知でつが、
あのモニョモニョエロ話からすごい展開になるんだなぁと・・

文才のない一読者のつぶやきです。


213 :名無し草:02/11/16 22:00
ライアンJrの抱き続ける「怒り」、実に現実味があって萌え〜
セベクネフェルウの、兄に対する複雑な感情も(・∀・)イイ!
人物像がとっても深みがありますね。素晴らしい。

214 :人形姫:02/11/18 15:48
>>202
20 イズミル
空の色はずいぶんと濃くなった。空気が暖かくなってきているのが分かる。
春なのだ。

―王子、そろそろ・・・―
ルカが遠慮がちに声をかけてきた。じき執務に戻らねばならない時間だ。
私は無言で頷き、しかし身じろぎもせず再び神殿の扉を見やった。この頑なで愛想のない扉の向こうに私が初めて愛し、今も、そしてこれからも愛するであろう女がいる。
世間のことなど何も知らぬ子供のように無邪気で従順で頑固で愛らしく。
男女のことなど知ろうともせぬ年頃の乙女のように潔癖で恥ずかしがりで男嫌いで。
男慣れした女のように強かで、自分でも知らぬうちに男を狂わせる魔性を発散させる罪深い女が。

命宿らぬがゆえに美しく神秘的な人形のような貌をして。愛されることは知っていても愛することは知らぬ人形のようにも見える貌。
いいや、違う。
私が待っている女は生きている。強い意志と激しい気性。穏やかな優しさ、思いやり。限られた相手にしか見せぬ真の心。普通のつまらぬ女ではない。あれは、あれこそは並ではない強い女。強さと慈悲深さと優美を併せ持った女。
―私はあなたの人形ではありません。あなたなんて大嫌い!―
私の頬を撲った女・・・ナイルの姫・・・キャロル・・・私の妻・・・。
私は待っている。

不意に扉が開かれ、外界と神聖な神殿の空気が混じり合う。二つの空気の混じり合うその場所に立つ女。私の待っていたそなた。
―戻ってきました。あなたが請うてくださるなら私はあなたの許に参ります―
間違いなく生きて、私を求めていてくれる女!

私は手を差し伸べた。私はとうにそなたの聖性と魔性に絡め取られている。


215 :流転の姫君:02/11/18 20:13
>>203
59
キャロルは一人寝台の上で蹲っていた。
自分がとどめを刺したわけではないが、ミラに剣を突き立てたのは紛れもない自分である。
剣が突き刺さった嫌な感触がいつまでも手に残る。
自分がイズミル王子を愛しているのと同じように、ミラも王子を愛していたのだ。
同じ人を愛してしまったのに、どうしてそれがこんな事になったのだろう?
自分はラガシュ王やアルゴン王、メンフィスに翻弄されない為に武術を習ったのだ。
なのに何故ミラを殺すような真似を、いや殺したのだ。
「・・姫・・・少しは落ち着いたか?」
イズミル王子が静かに近寄って、そっと寝台に腰を下ろした。
ふと王子を見やるとそこにはミラを刺したキャロルの剣が、きちんと鞘に収められて王子の手に握られていた。
「もう・・その剣は見たくない!・・ミラを・・殺してしまった剣なんて・・・。」
キャロルは小さな子がするように、首を左右に振って拒絶を示した。
「まだ助かったかもしれないのに・・どうして?どうして王子は・・・。」
「あの傷では助からぬ。とどめを刺したは我が情けよ。
 仮に助かったとしても、ミラも王宮に仕えた女だ、
 死に勝る屈辱に身を任すよりは死を選んだだろうよ。」
王子の声は淡々と何の感情も入っていないような静かな声音だ。
「何故?何が死に勝る屈辱なのよ!」
王子の言葉にキャロルは涙を溜めた青い瞳でにらみ返した。
王子は一つ息を吐くと、琥珀色の目で見つめながら答えた。
「皇太子妃であるそなたを殺害しようとしたのだ、これが反逆でなくてどうするのだ。
 残る生涯を牢に繋がれ罵られて過ごすことになろう、私がとどめを刺したのはただ情けをかけたに過ぎぬ」


216 :流転の姫君:02/11/18 20:40
60
「そんなのってあんまりだわ!ただミラはあなたを愛しただけ!私と同じように!」
キャロルは思い余って叫んだ。
どうして同じように王子を愛したのに、どうしてこんなことを言われなければならないの?
「そなたの優しい心根は知っている、だが殺そうとした者までに情けはいらぬ。
 それに私はそなたを我が妃選んだのだ、ミラではない。
 そなたこそが我が妃、イシュタルに祝福され共に国を統治する者だ。
 今はまだ分からぬかも知れぬ、だが賢きそなたのことだ、必ずわかるであろう。」
王子の瞳には何故だか哀しい色合いを帯びているようにキャロルは見えた。
王子はそっと手を伸ばしキャロルの頬に触れようとしたが
「ミラの血に汚れた我が手は疎ましいか?」と敢えて触れないように手を止めた。
「今宵はまだ目を通す書類がある、そなたは休むがよい」
王子はキャロルの剣を寝台に置くと静かに行ってしまった。
王子の眼にある哀しげな光を自分は知っている・・・・としばらく経ってからキャロルは気がついた。
先ほど王子の話した事は全てが事実であろう。
もしミラが生きていたとしても、自分を殺そうとした咎の為に、やはり処刑されてもおかしくないのである。
分かってはいても感情が許さないのだ。
王子の哀しげな眼は一体何を意味するのか?
ミラを殺したことを悔いているのではないだろう、あの光は自分に関係あるのだ。
どこかで見た事がある、自分は知っている、身近にいた誰かと同じ光・・・。
そうだ、ライアン兄さんだ、とキャロルは思い当たった。
仕事の事を考えている時のライアンの眼と同じ。
パパが亡くなってリードコンツェルンを引き継いで指揮をとるライアン兄さんと同じだ。
ではあれは・・・王の眼なのかしら?

217 :流転の姫君:02/11/18 21:55
61
キャロルは現代にいた頃を思い返してみた。
ライアンはよく一人で、眉間にしわを寄せて難しい顔をして考え事をしていた。
自分が声を掛けると、その時は優しい兄の顔になり笑みを浮かべ、先ほどの王子と同じ眼の光は薄らいだ。
キャロルが懸命にライアンを気遣い、手伝おうとした時に、困ったような笑みを浮かべて
「こればかりはね、いくら可愛いお前にもどうにできないんだよ。」と・・・。
形は違えど王子もライアンも大勢の人間を統治するのだ、その2人に共通なもの・・・。
パパはあんな眼はしていなかったわ、仕事が上手くいかなくてもママといれば大丈夫といつも笑ってた。
・・あれは・・・孤独だ、とキャロルは一気に目が覚めたように気がついた。
王たる者ゆえの孤独なのだ。
どんなに忠実な家臣がいても、それだけではだめなのだ。
国を司り、諸国と渡り合い、戦もせねばならない。国の為に人も殺さねばならないだろう。
冠たる者同士しか分かり合えない孤独ゆえに、王子はミラではだめだと言ったのか。
共に分かち合い理解し合える、その存在だからこそ、王子は自分を求めたのだ。
確かに自分は王子を愛している、だが王子が自分に求めたのはもっと強固な絆だったのだ。
そしてそれをキャロルが受け入れられるかどうか、王子は待っているに違いない。
傷だらけの手は何のためだったのかしら?
王子と生きるために強くなろうとしたのでなかったかしら?
もしあの時王子がミラにとどめを刺さなかったらどうなっていたのだろう。
きっと私がミラを殺したと自分を責め続けるから、罪は王子がかぶろうと私をかばったんだ!
なのに私は王子を責めた・・・。
こんな私を「そなたにはわかる」と待っている!
「行かなきゃ、王子のところへ」
キャロルは寝台から降り、そして自分の剣を手にとった。

218 :Ψ(`▼´)Ψエジプト:02/11/19 11:43

「ふーん・・・。動いてはならぬぞ。よく見えぬではないか」
メンフィスは明るい昼の光あふれる居間の長椅子でキャロルの身体を深く改めながら囁いた。
昼食も済み召使い達も下がらせた二人きりの午睡の時間。でもメンフィスはいささか過ごした葡萄酒のせいか、それとも窓から吹き込む涼しい風に気持ちよさげに目を細めるキャロルの艶めかしさゆえか、いきなり新婚間もない妃を
長椅子に押し倒した。
「あ・・・イヤっ。やめて恥ずかしいわ・・・」
初めて明るい中で自分を見られているという意識が余計にキャロルの羞恥を煽り、そして・・・高ぶらせた。
メンフィスはしっかりとキャロルの細い肢体を押さえ込み、自由を奪った上で押し開き確かめた。キャロルの上半身は美しい王妃の衣装を纏っているのに、下半身はあられもなく剥きあげられ外気に、そしてメンフィスの好色な視線に晒されてしまっていた。
「キャロル、知っていたか?そなたの器官はすっかり強ばって大きくなって・・・皮が剥けてしまっているぞ?こうしてみると女の器官も男の器官と一緒なのだな。そらそら・・・」

219 :Ψ(`▼´)Ψエジプト:02/11/19 11:44

メンフィスは指先で幾度もバラ色の突起を弄び、莢から出し入れして愉しんだ。実際それは小さいながらメンフィスのそれとよく似た形をしていた。
「男はこうされると良いのだが女のそなたもそうかな?」
メンフィスはくりゅくりゅと指先で突起を押しつぶすように愛撫しながら、蜜を滴らせる泉に指を差し込んだ。
(姉上や・・・他の女とはまた違う身体よ)
メンフィスはキャロルを知る以前に抱いた女のことをふと思い出した。若い世継ぎの憂さ晴らしにと次々に送られてくる女達。あのアイシスですら侍女に身をやつし、つれない弟に脚を開いて強請った。王姉の場合は結局、男の視線以上のものは得られなかったが。
「ああっ・・・!」
未だ交わりの時に痛みを覚えるキャロルは、腰をひねって抗った。
だがメンフィスの指はしなやかで繊細で巧みにキャロルを快楽に誘った。蠢く襞を擦られる切なさにキャロルは乱れた。明るい中で強引に弄ばれるように愛されているという状況が彼女を煽る。
「申せ、キャロル。気持ちが良いと。私を愛していると。私にこうされるのが好きだと」
メンフィスは耳朶を甘噛みし、長い指でキャロルの最奥を探りながら命じた。
「あ・・・ああっ!メンフィスっ!私は・・・」
キャロルは弓なりに身体を反らせ、胎内を激しく痙攣させながら達した。
メンフィスは半ば気を失った妻に押し入り、悠然と時間をかけて愉しみながら情熱を迸らせると名残惜しげに離れた。


220 :Ψ(`▼´)Ψエジプト:02/11/19 11:45

キャロルは気がつくと寝台に一人寝かされていた。枕元に粘土板。
「そなたは疲れて倒れたのだ。私が戻るまでおとなしく療養いたせ」
メンフィスの字だった。
「キャロル様?お気づきでございますか?ご気分は?メンフィス様は貧血であろうから侍医は召すに及ばずとおっしゃいましたが・・・」
ナフテラが様子を見に来た。キャロルはしびれるように熱く火照る身体に頬を赤らめた。
「ええ、本当に大丈夫。婚儀からこちら慣れない行事や宴で忙しかったからそのせいよ。心配かけてごめんなさい」
「あの湯浴みでもなさいますか?汗をおかきのようです」
キャロルは承知した。いつも通り召使いを遠ざけ一人、湯を楽しむ。
(やだ・・・なんだか違和感・・・)
キャロルはそっと脚の合わせ目を指先で探った。先ほどメンフィスに激しく愛されたせいかまだ何か入っているようなかんじがする。まるで初めての夜が明けたあの朝のように。
キャロルはおそるおそる指先で自分の中を探った。
(! きゃっ!何、これっ!)
キャロルは自分の中から出てきた滑らかな石でできた円柱を呆然と見つめた。それは細まった先端に球がついた形をしていた。
キャロルはあたふたと湯を出て一人で着替えると心配する召使いを後目に寝台に潜り込んだ。

やがて夕方。
「メンフィス、これは何?ひどいわ、こんなの!」
「何だ出したのか。そなたはあまりに狭隘ゆえ、それを使おうと思うぞ?」
メンフィスはそう言うと王の顔から夜の顔に変わるのだった・・・・・。

をわり

221 :流転の姫君:02/11/19 12:02
62
王子の部屋にはまだ灯りが燈っていた。
ここは王子の私室で積み上げられた書物や粘土板、使い込まれた武具などが整然と並んでいる。
片隅には寝台も設えてあったが、キャロルと共に帰国してからは
毎晩のようにキャロルに宿居をするのがこのところの王子の習慣となっていてここで眠ることはなかった。
キャロルは改めて王子の様子を伺った。
王子の明るい茶色の髪は長く床に流れ、物憂げに書類に目を通す端整な顔は、
キャロルにはあまり馴染みのない表情だった。
「どうしたのだ?眠れぬのか?」
キャロルに気づいた王子は普段どおりの落ち着いた物腰である。
「そのような薄着では風邪を引こう、こちらへおいで」
王子のところへ急いでくる事ばかりを考えて、自分の身仕舞をすっかり忘れていたことにキャロルは気がついた。
薄絹の夜衣のまま、キャロルは剣を手にして王子に近づいた。
そして王子の手を取り自分の頬にあて口づける。
この手がどんなに血で汚れていようとも自分は愛しているのだ。
どのような試練があろうとももう逃げない。
「・・ごめんなさい・・。私・・・もう逃げません。どんなに辛い事があっても乗り換えるわ。
 だからあなたも、私の罪までかぶらないで。あなたの重荷にはなりたくないの。
 ちゃんと自分で受け止めるから・・・。」
王子の琥珀色の瞳は嬉しそうに細められ、手はキャロルを抱き寄せた。
「そなたなら・・・と思うておった。だが無理はせずともよい。その剣も見たくなければ・・・。」
「いいえ、これから先も使います、戒めとして。あなたと一緒なら頑張れるわ、きっと。」
キャロルは剣を床に置くと手を王子の首にまわし、王子に口づける。
「時々泣いたりするだろうけど、でも、頑張るから、強くなるから」
キャロルの言葉に王子は声をあげて笑った。
「あまり強くなられても困る、私の猫は寂しがり屋で泣き虫なのは知ってるいるからな」
形のよい手だが、武術を嗜む無骨な手、だがキャロルに触れる時はいつもこの上ななく優しくなる手。
その手が血で汚れていようと構わない、どれほどの罪があろうとも、私もそれを受け入れよう。
王子の暖かな胸の内でキャロルは呟いた。

222 :人形姫:02/11/20 14:12
>>214
21 求愛
イズミル王子は目の前で慎ましく目を伏せる娘に語りかけた。
いかにもたおやかに儚げに見えるその姿。でも彼は知っていた。伏せられた目の奥に宿る熾火のような強く輝かしい意志と感情を。誠実でしなやかに強い心を。巧まずして人の心を妖しく絡め取る魔性を。
一目見て激しい欲望を感じ、相手が抗えぬ立場であると踏んで抱いた相手に、今や彼は完全に絡め取られてしまっていた。
「姫、私ヒッタイトのイズミルは御身に請う。どうか私の妻として生涯を共に歩んで欲しいと。かけがえのない伴侶として、国を共に治める者として、私を愛して欲しいと」
誇り高い大国の王子は静かに小柄な姫の膝下に跪いた。

キャロルの青い瞳がまっすぐにイズミル王子に向けられた。それは対等の者を見つめる強い光を帯びていた。はしばみ色の瞳もまた白熱する激しい光を帯びてそれに応える。
―この人は変わったわ。気まぐれに抱ける人形としてではなく、間違いなく生きている私全部を・・・知ったうえで求めていてくれる―
―私を・・・。私を認めて・・・私の返事を待っていてくれている?! 強引で傲慢だったこの人が!―
キャロルは震える手をそっと秀麗な顔に伸ばした。恐ろしいほどの幸福感と、畏れに似た感情が渦巻いた。それと同時に初めて味わう激しい征服感!
「姫・・・許しを。今までそなたに為したことに対して。そなたを妻とすることに対して。そなたを求めることに対して。」
キャロルは初めて自分からイズミルの唇に接吻を贈った。
「あなたが心から私を求めてくださるのなら、私もあなたを求めます」


223 :人形姫:02/11/20 14:13
22 初子の王子(最終回)
父上が母上を呼んでおられる。政務の相談事か、それとも他愛ない雑談のためか。母上は嬉しそうに微笑んで父上の声のほうに顔を向けられた。私の勉強など、もうどうでもいいのだ。
「母上、父上が呼んでおられますよ。早くおいでにならないと」
「そうですね、イルダーニ。・・・行かなくては。お勉強は続けるんですよ。後で見に来ます」
私が言うと母上は頬を赤らめて立ち上がった。若い侍女たちが何とも言えないくすぐったそうな顔をして笑いさざめいた。ムーラが睨んで見せたって効果はない。

私だってちょっと気恥ずかしい。本当に・・・母上はもう3人も御子がいて、父上と結婚なさって12年ほどにもなる。それなのに本当に・・・ちょっとしたことでくすくす笑いをして、顔を赤くする若い侍女みたいにみえることがある。父上のことになるとすぐあれだ。
父上も母上にはこの上なく弱く甘い。まじめな相談事も母上相手になさるけれど、たまらなく気恥ずかしいことをおっしゃったり、なさったりもすることを私は知っている。
昔は世の夫婦というのは皆こんなものだと思っていた。でも違うのだ。お祖父様は愛妾やなんかをたくさんお持ちだ。綺麗な女達は私や弟妹達をちやほやする。でも父上は母上しかいない。
これは珍しいことなんだそうだ。私はもう大きいからそういうことも分かってきている。でもまだ小さいディヤルやミタムンはどう思っているか。

父上と母上がこちらに来られる。ぴったり身を寄せて。弟妹達も駆け寄っていく。私も行こう!恥ずかしくて馬鹿みたいと思いながらも私も父上と母上が好きだ。
「おにーさまっ!早くぅ!」
ミタムンが呼んでいる。
私は西日が目映い庭に走り出ていった。父上と母上は笑いながら私とディヤルとミタムンを見ておられる。

私は・・・気恥ずかしいけれど今の家族はなかなかいいものだと思っている。

   終

224 :名無し草:02/11/20 15:03
>人形姫作家様
ブラボー!!!
もう終わりだなんて寂しい気がします。
素敵な作品をありがとうございました!
また新作をお待ちしてますね。

225 :名無し草:02/11/20 15:12
人形姫 作家様お疲れさまでした〜!
最終回に笑いました(笑う話じゃないのかもしれないけど)。
>たまらなく気恥ずかしいことをおっしゃったり、なさったりもすることを私は知っている。
長男は何を見たんでしょう?


226 :流転の姫君:02/11/20 16:05
>>221
63
その夜、イズミル王子とキャロルは契りを交わした。
それはまるで神聖な儀式のようにキャロルには感じられた。
未知を畏れる気持ちがないわけではなかった。
なのに王子はキャロルの腕や足についた青痣や傷すらも、
それが自分と一緒に生きようとする為につけたものだから、どんな小さな傷ですらいとおしいと
口付けされているうちに畏れはいつしか消え去った。
民を統べる者はいつも見えざる敵を抱えるようなものだ、いつ寝返った家臣に寝首を繋られるかわからぬ。
油断はならぬ、隙を作れば死ぬ。だが一人で戦っていればいつか疲れきり戦えなくなる。
だからこそ魂を分かち合う者がいれば、どんな敵にも立ち向かえられる。
私はそなたを得た、そなたを失うこと以外何恐れることはないだろう・・・。
熱い吐息の中にキャロルは王子の今までの孤独を知り、新たな勇気が湧き出してくるのを感じた。
絡み合いもつれ合う茶色の髪と黄金の髪、幾度となく繰り返される抱擁と口づけ。
私ももう迷わない、あなたが罪を犯すなら私も同様に。いつでもあなたと共にありたい。
口付けを受けながらもキャロルも繰り返す。誓いの言葉を。
経験した事のない甘い苦痛を感じながら夜が更けていく。
生まれ変わるのだ、とキャロルは甘美にのたうちまわり呆然とする頭の中でぼんやりと思った。
素肌に直接感じる温もりが酷く心地よかった。
大勢のざわめきが耳に届く頃、キャロルは王子の腕の中で
「国王陛下がお戻りなされました」と報告するルカの声を聞いた。


227 :妖しの恋:02/11/21 15:46
0 これまでのあらすじ(嘘)

エジプト王メンフィスの即位式&アイシスとの婚約発表に出席したヒッタイトのイズミル王子は、ひょんなことから古代に引きずり込まれて難渋しているキャロルと知り合う。

実はキャロルは祝祭のどさくさに紛れて脱出計画のまさに決行中だった。自慢の金髪を黒っぽく染めてターバンにたくしこみ、肌も汚し少年のなりをしたキャロル。
早朝、キャロルは祝祭から一足早く帰国しようとしていた王子の一行にぶつかってしまう。王族の行列を横切ろうとした無礼者よと斬り捨てられるところであったキャロルを救ったのは王子その人だった。
「捨て置け。まだ子供ではないか。このような早朝からいきなり流血沙汰とは気分が悪い」
出発するヒッタイト王子の一行。キャロルは無謀にも王子の一行のしんがりに潜り込む。無論、メンフィスやアイシスの追跡を恐れてのことだ。だが当然、その日の昼過ぎには、さりげなく一行に紛れ込んだ(つもりの)この便乗犯はルカに見つかる。
「お願い、見逃してください。か、家族の許に帰らなければならないんです!迷惑はかけません。しんがりに置いてください。目的地の近くに着いたら離れますからっ!わた・・・僕は騙されてテーベに連れてこられたんです」
自身、戦災孤児として辛酸を舐めたルカはキャロルの話に丸め込まれ、彼女の願いを聞き入れてやる。そして名を尋ねる。キャロルはうっかりと本名、キャロルを名乗ってしまうが古代人には耳慣れぬ名前、女名前とは分からない。
「分かった、キャロル。だが誰にも迷惑をかけるでないぞ」


228 :妖しの恋:02/11/21 15:47

「キャロル、お前の家とはどのあたりなのだ?」
「もうじきです・・・。下エジプトのシュセプ・アンクのあるあたり」
陸路を行くイズミル王子の一行が今日の路程を終え、野営に入った時間。ルカとキャロルは物陰で静かに言葉を交わしていた。
ルカはなかなか面倒見の良い性格のようだった。自身がイズミル王子の信厚い側近で侍従であるらしいのに、キャロルのことも
よく目を配ってくれている。無論、それは新顔のキャロルに対する警戒もあってのことだろうが、ルカの目には13,4歳の子供の
ように映る小柄なキャロルに対する心遣いもあるに違いない。
「ルカ、いつも本当にありがとう。僕、どれだけありがたいと思っているか。本当にどうしてこんなに親切にしてくれるんです?
急に現れて一緒に連れていってくれなんて怪しいとは思わないのですか?」
「まぁ・・・何となくな。それに私は人を見る目はあるつもりだ。私にはお前は世間知らずの良い家の坊ちゃんに見えるな。
暗殺者や密偵であるならなかなか人目を欺くのがうまいということになる」
ルカはキャロルの黄昏の薄明かりの中でも際だって白い、労働や武術と無縁そうな手を見やりながら言った。
「良い家の坊ちゃん・・・ですか。それって馬鹿と同義ってことかな?」
「はははっ!お前はまだ子供だ。しかしどうしてテーベになぞ連れてこられた?」
「・・・言えません。でもそのことであなたに迷惑をかけることはありませんから安心してください」
「ふーん・・・。私はお前と同じ13歳の時に戦争で家族を失った。殺されかけたが今の主君・・・イズミル王子に助けられてな。
以来、お仕えしている。
初めてお前を見たとき、他人事とは思えなかったな」
ルカは遠い目をして言った。キャロルには彼の常日頃の警戒心を解く不思議な雰囲気があるように彼には思える。

229 :妖しの恋:02/11/21 15:48

ルカはアランヤ貴族の息子であった。幼い日、故国はヒッタイトに滅ぼされ、奴隷に落とされた彼はイズミル王子を殺そうと試みる。ところが当然ながら計画は失敗する。
「殺すなら殺せっ!どうせアランヤ戦で死に損なった自分だ。いつ死んでも惜しくはない命!卑怯者のヒッタイト野郎っ!」
返り討ちに合い、血を流しながら誇り高い目の光は失わず、自分を睨み据えるルカにイズミル王子は興味をひかれた。同じ年頃であろう異国の少年は何と強い光をその身から発することか!
イズミル王子は少年に言った。
「よく申した、アランヤの男よ。だが私はそなたを殺す剣は持っておらぬ。どうだ?私に仕えぬか?仕えておればそのうちに私を殺す機会もまた巡ってこようよ・・・?」
ルカはこうして命拾いをし・・・自分の命を狙う若者を侍従にした変わり者の王子に仕えるうちにいつしか心酔し、その無二の忠臣そして友人となったというわけだった。

「ルカ・・・?」
キャロルの珍しい青い目が彼を心配そうに覗き込んでいた。
「何でもない、キャロル」
その時だった。にわかに背後の野営地が騒がしくなった。
「誰かっ!王子がサソリに噛まれたぞっ!」
その声を聞くやルカは立ち上がり、一散に主君の天幕に駆けていった。キャロルは呆然とそれを見送りながらそっとルカがかくまってくれている天幕に姿を隠した。
(すごく心配そうな顔をしていたわ・・・。主君と召使いの関係ってああいうものかしら?ルカはあの背の高い王子にすっごく心酔しているみたいだわ)

夜半過ぎに憔悴し、青ざめたルカが天幕に戻ってきた。
「ルカ!どうしました?ひどい顔色だ」
「王子が・・・サソリ毒のまわりがひどく早くて解毒処置が効かない!くっそう、傷が腫れ上がってもう・・・」
涙ぐむルカにキャロルは後先考えずに声をかけた。
「ぼ、僕、解毒の薬を持っています。どうかあなたの王子に使わせてください!」

230 :妖しの恋:02/11/21 15:56
はじめまして。
お読みいただけた方にはおわかりでしょうが、この話ではキャロルは男の子のふりをしています。
以前、「少年キャロル」作家様が連載しておられた作品と同じような設定で始まるお話です。
作家様、もし読んでおられましたら同じ設定をお借りしてしまったことお許しください。
パクリだと不快に思われた方も、話自体は別物ですのでしばらく見守っていただければ幸いです。

えっとこの話では古代にキャロルがいると知っているのはアイシスだけです。
アイシスはメンフィスの延命の呪術を行うにあたり、キャロルの存在を必要としたのです。キャロルが生きている限り、メンフィスも死なないというご都合主義呪術です。
それからメンフィスの即位式にやって来たのはイズミル王子。彼の妹ミタムンはハットウシャで大好きなお兄さまとそのお土産を心待ちにしています。。。。

どうかこれからもよろしくおねがいいたしまする。

231 :名無し草:02/11/21 16:58
うひょっ新作だ!!
妖しの恋作家様、今後の展開楽しみにしてまつ。
タイトルからして、今後どう転がるのかワクワク・・・
まさかキャロル×ルカなんて・・・(w

232 :名無し草:02/11/21 17:52
流転の姫君、妖しの恋、新作があって嬉しいです!
流転の姫君はヒッタイトのヒヒ親父、もとい国王様に狙われてしまうんでしょうか?
妖しの恋は・・・・・・うーん、まさかヤホヒィ?(ひえええっ、王族乙女の皆様すみませぬー)

233 :名無し草:02/11/21 20:53
毎日毎日嬉しいです。ありがとう。

234 :妖しの恋:02/11/22 15:00
>>229

(どうしてこういうことになったのやら・・・)
キャロルは呆然と眼前に広がる地中海の青さを眺めやりながら、幾度と無く繰り返してきた自問自答の迷宮に沈み込んでいった。

イズミル王子がサソリに噛まれた夜。たまたまライアンに持たされていた解毒剤を差し出したキャロル。周囲の人々は見慣れぬ少年
キャロルの差し出す薬に強い不信感を露わにしたが、瀕死の主君を目の前にして背に腹は代えられぬと投薬を許した。
王子の側近中の側近とも言うべきルカが咄嗟にキャロルは自分の従僕であると言い繕ったのも大きかった。従者兼護衛とはいえルカ
ほどの高級将校になれば身の回りを世話する従僕を置くのは当然だった。

サソリに刺され醜く腫れ上がった脹ら脛に口づけて、はや熱っぽく異臭を放ちはじめた膿を吸いだし、キャロルは王子の口の中に解毒剤
―キャロルは解毒剤と抗生物質だと聞かされていた―を含ませた。そして改めて傷口にも手持ちの塗り薬をつけてやる。貴重な抗生物質入りの傷薬だ。
(ずっと持っていた薬が役に立ったというわけね・・・)
キャロルはそっと腰につけた袋を撫でた。中には20世紀の薬や絆創膏、裁縫セット、濡れタオル、試供品のタルカムパウダー、のど飴、
ペン・・・といった細々したものが入っていた。モノをため込むのが好きなキャロルの面目躍如といったところだ。単に貧乏性だとも言えるが。

幸い、というか当然ながら、というか王子は快復した。薬慣れしていない古代人の体に20世紀の薬は劇的に効いた。
ルカの従僕キャロルは一躍祭り上げられ、王子の看護を任され―彼女の手当はガールスカウト仕込みの手慣れたもので、なによりも兵士が行う医術よ
りもきめ細やかに優しかったのだ―、気がつけばシュセプ・アンクの側などとうに通り過ぎていた・・・というわけだった。

「キャロル、どうした?王子がお召しだ。包帯の交換を頼む」
兵士がキャロルに声をかけにきた。キャロルは無言で頷いて船室に向かった。

235 :妖しの恋:02/11/22 15:02

「包帯の交換をいたします」
キャロルは目を伏せて手短に言うと、王子が楽な姿勢で書見をしていたクッションの脇に跪いた。
「おお、キャロル。頼むぞ」
王子の側に控えていたルカが親しみを込めた声で言った。王子の周りにはルカの他に将軍をはじめとする高級将校達が控えている。
彼らは一様に好意的な目でルカの従僕キャロルを見つめている。

いつの間にやら、巧まずして得てしまった周囲の信頼、好意といったものがキャロルをがんじがらめにしていた。陰ひなた無くよく
動く小柄な従僕。主ルカの威光をや、王子の命を救ったということを嵩に着ることなく目立たぬように振る舞う姿。粗野な所など無く、
誰に対しても控えめで腰が低い。
まぁ、従僕とはよく働いて当然ではあるが、あのルカの従僕であるのだから―ルカがアランヤ貴族の子弟だということは知られていた。
召し抱えられたいきさつまで知っている人間はさすがにいなかったが―いずれ名のある家の子弟かも・・・とは皆が思っていることだ。

キャロルは皆の視線にひどく緊張していることを悟られまいと気持ちを強く持って、王子の傷を改めた。筋肉質の脹ら脛はまるで彫刻か人体模型のようだ。
あれほど醜く赤黒く腫れ上がっていたのが嘘のように、今は綺麗なオリーブ色の肌に戻っている。小さな穴のような赤い点だけが死にかけた傷の名残だ。
キャロルは傷を洗い、残り少なくなった貴重な薬を塗るとまた包帯を巻いた。
「もう・・・痛みはありませんか?痺れるようなかんじは?僕は専門の医師ではないので詳しいことは分かりません。でも見たところ傷は綺麗に治って
きているようです。帰国なさり次第、お医者様に見せてください」
声変わりもまだの少年は、高貴な王子に直接口をきく。最初は皆を仰天させたこの振る舞いも今は当然のものと認められている。何と言っても王子が直に
話すことを許したのだから。
「ふむ。そなたの薬のおかげであろうな。あの毒性の強いサソリに刺され脚を切り落とす羽目にならなかったのは」
深みのある声がキャロルを落ち着かない気持ちにさせた。イズミル王子の声を聞くといつもこうだ。彼女は気づいていないが頬は傍目にも分かるくらい
真っ赤だ。

236 :妖しの恋:02/11/22 15:04

顔を赤らめた少年のいかにも世慣れぬ純朴そうな様子に王子はあるかないかの笑みを片頬に刻んだ。
ターバンといつも控えめに伏せた顔のせいで、顔立ちもよくは見えないが整った顔立ちであることは分かった。
いや整った、では控え目かもしれない。少女じみた繊細さを王子は感じ取っていた。
(ルカはいつこのような心きいた従僕を召し抱えたのやら)
王子は考えた。ルカは王子同様、孤独を好む性癖があった。これまでだって従僕は持たなかった。兵舎住まいではなく、
王子の隠密を勤めることが多かったのでそれでも良かったのだが・・・。
(まぁ・・・いずれこの少年の身元は詳しく調査しよう。あのルカが手元に置いているのだ。胡乱な輩ではあるまいよ。
今のところ、私の手当もまじめにこなしているわけだし・・・)
体調の回復した王子は、小柄でいかにも非力そうな少年を値踏みするように見た。

傷の痛みと高熱に苦しめられている王子を手当したのはキャロルだった。サソリ毒に苦しめられながらも見慣れぬ小柄な
少年を遠ざけようとした王子だが、少年は実に巧みに彼の口の中に不思議な味のする薬を押し込んだ。
そしてそのバラのような唇―バラのようなと気づいたのはだいぶ後になってからだが―で傷口から厭わしい膿を吸い、ひんやりと
心地よい感触の薬を塗ってくれた。
そして実に不思議なことながら手当が済んだ瞬間に王子は・・・心地よい快復への道を眼前に見たのである。無論、熱はあったし
傷のうずきもあった。だが脚の切断や、熱による不愉快で永続的な後遺症といった嫌な予感は霧散したのである。
そして・・・苦しく不快な何日間か目を開ければいつもあのキャロルと呼ばれる少年が付き添っていてくれた。心配そうに王子を
のぞき込み、弱った体が受け入れられるよう食事にも心砕いてくれた。おそらくは貴重であろう薬も惜しげもなく与えてくれたのだ。
珍しい青い目がいつも王子を見守っていてくれたというわけだった。


237 :妖しの恋:02/11/22 15:06

王子もまたキャロルが気に入った。無論、口には出さないがキャロルがまるで女のように細々と王子の世話をするのを好きにさせておいた。構われるのがあまり好きでないこの人にしてはとても珍しいことだった。

王子は順調に快復し、人々はキャロルを自分たちの仲間として扱い始め、旅程は進み・・・一行は上陸しハットウシャを目指す。まだ体調が本調子ではないイズミル王子を気遣いつつ・・・。

「キャロル・・・。私はお前に謝らなくてはいけない。お前は言わないでいるが結局、お前は家族の許に帰れなかった」
「・・・仕方ありません、ルカ。あなたの主君があんなことになったんだ。僕だって放ってはおけなかったわけだし」
ルカの雑嚢を整理しながらキャロルは言った。その声が震えているのを気づかないルカではなかった。
「キャロル。今はまだ王子のお体のことがあるゆえ、お前を帰してやるわけにはいかない。でも王子ご本復の暁にはきっとお前をエジプトに帰してやろう。
そうだ、家族に手紙を出せばいい!」
「・・・・」
「どうした?」
「ルカ、手紙を書いても家族の許には届かないでしょう。僕の家族は・・・この世界の普通の人間には手の届かぬ場所に居て、僕を待っていてくれる。シュセプ・アンクのそばに僕の家が“ある”わけ
じゃないんです。僕はただそこに行けば何か元の世界に帰る手だてが見つかるんじゃないかって・・・」
キャロルは涙ながらに、切れ切れではあるが自分がこの世界とは違う世界から来てしまった人間だということを話した。疲れと心細さが臨界に達していたキャロルは誰かに自分の秘密を話さずには
おれなかったのだ。
ルカはキャロルのいつにない涙と饒舌に驚きながら話を聞いていた。違う世界から来た・・・とは?
「では、お前はエジプト人じゃないのか・・・?」
キャロルはこくんと頷き、ターバンを外した。すり切れたターバンの下から零れた金色の髪の毛をルカは驚いたように凝視するばかりだった・・・。

238 :妖しの恋:02/11/22 15:07

「キャロル、明日はいよいよハットウシャ入城だ。これをやるから今日はもう下がって休んで良いぞ」
ルカは髪を染めるのに必要なクルミの渋の入った小瓶をキャロルに渡してやりながら言った。
「ありがとう、ルカ。あの・・・」
「礼はいい。そんな顔をするな。言っただろう、お前が帰れないのなら私が面倒を見てやるのは当然だ。
お前は私の王子を救ってくれたのだからな」
ルカは淡々と言った。
あの衝撃の告白の夜からもう幾日たったか。旅路の道すがらルカはキャロルから少しずつ身の上を聞き出すのに成功していた。
異世界としか言いようのない世界で生まれ育った「少年」。ルカは未だキャロルのことを金髪の少年として認識している。
話は信じられないことばかりだったがキャロルが袋の中から薬やペンライトといった20世紀の小物を出してみせるに至って、
話を受け入れざるをえないようになっていった。
キャロルはなかなか頭の良い行動力のある人間のようだった。そのキャロルがルカと一緒に話すうちにやっと認めたのは
・・・「自力では故郷には戻れそうにない」ということだった。

ルカはある種の神官や能力者が、神々の世界と呼ばれる神秘な所や遠く離れた場所からモノを引き寄せたり、
取り出したりしてみせることを知っていた。現にヒッタイトの先々代の王妃はそういう力を持っていた半神
であったというではないか。
隠者と呼ばれる人々が神仙界に遊ぶという話も聞いたことがあった。異世界からの客人が人界に恵み、
あるいは厄災をもたらしたといった類の話は本当に身近なものであった。もちろん信じるか否かは別だが。
(キャロルもまたそういう存在なのであろうよ・・・)
ルカはそう結論づけた。少なくとも彼の目にはキャロルは狂人や嘘つき、企みを持った悪人には見えなかった。
(キャロルは私の王子の恩人だ。私と同じ天涯孤独の身だ。王子が私を守ってくださったように、私が彼を弟分にして守ってやろう・・・)

239 :妖しの恋:02/11/22 15:09

「お兄さまっ、お帰りなさいませ!お怪我はいかがですの?」
大広間で国王夫妻に帰国の報告を済ませて奥宮殿に戻って来た王子を嬉しそうに弾む声で出迎えたのはミタムン王女だった。
髪を縮らせ、きらびやかに着飾った王女は芳紀15歳。イズミル王子と同腹の妹で王位継承順位は2位である。
「ミタムン様、もっとお静かに遊ばせ。王女のご身分におわしますのに・・・」
王子の信厚いムーラがそっとこのやんちゃで歳より幼い王女に声をかける。だが9歳も歳の離れた兄に甘やかされ慣れている
王女は頓着しなかった。
「本当に心配いたしましたわ。でも無事なお姿が見られて嬉しいっ!
エジプトはいかがでした?お話を聞きたいわ。私も行きたかったのに連れていってもらえなかったんですからね。
メンフィス王はどんな方?」
王子はにこにこ笑いながらミタムンに手を引っ張られるまま部屋に入った。
「ルカもお入りなさいな。遠慮することないわ。お兄さまの一番の家来はあなたですもの。あなたの土産話も楽しみにしていたのよ。
・・・あら、ルカ、その小さい男の子は誰?」
ミタムン王女はてきぱきとお茶を入れ、兄王子に席を勧めながら賑やかにしゃべった。口も手も同じようによく動く活発なたちの女性らしかった。
「お前は見かけぬ顔ですね。ルカの召使いか何かなの?」
ミタムンは隅に遠慮勝ちに引っ込んでいたキャロルをそば近くに引っぱり出した。
「答えよ、私が直答を許すわ。歳はいくつ?出身はどこですか?ルカに仕えてどれくらいになるの?」
妹に甘い兄とその忠実な臣下はお茶をたしなみながら困った王女を眺めていた。キャロルは、元々恥ずかしがりで人見知りなところもある。
勝ち気な美しい王女は苦手なタイプだ。
「王女様、その者は私の従僕でキャロルと申す者。最近さる伝(つて)を頼って召しだしました。
まだ世慣れぬ不器用な子供でございますゆえ困っております。キャロル、ご挨拶を」
ルカが言葉を添えたのでようやくキャロルは優雅に礼をし、玲瓏たる声で答えた。
「お目通りの栄に浴し光栄でございます、ミタムン王女様。僕はキャロルと申します。エジプトでルカ様のお召しを受けお仕えしております。
まだまだ慣れぬことばかりの若輩者でございます」

240 :名無し草:02/11/23 00:56
>妖しの恋作家様
すっ、すごい!
大量アップで読みごたえタップリ!面白さ倍増でございます!
>ルカは王子同様、孤独を好む性癖があった
本編でもそんな感じする〜。
ルカ好きなので、ルカいっぱい出ててうれしゅうございます。

>人形姫作家様
最終回までドキドキワクワクしながら読ませていだきました。
ご執筆ありがとうございました。

241 :名無し草:02/11/23 01:14
>妖しの恋作家様
今後の展開が激しく気になりますです。

  >ヒッタイトの先々代の王妃はそういう力を持っていた半神
  ってとある漫画で主人公を召還した王妃さまかなぁ

242 :名無し草:02/11/24 17:50
>流転の姫君作家様
そろそろ続きを・・・。ヒッタイト王が出てきてこれからどう展開するか、ドキドキ。
スレ落ち防止のage

243 :名無し草:02/11/24 19:51
最終書き込み時間で足切りされるスレが決まるから無理にageなくても落ちはしないよ

244 :名無し草:02/11/25 12:57
>>239

居合わせた人々は小柄な少年が少女のような声で礼儀正しく話すのにひどく驚いた。ミタムン王女もその育ち故に上品に美しかったが、
キャロルのほの見せた振る舞いからは何とも言えない優雅さが匂い立つのだった。
ミタムン王女もまた驚いて頭を下げて挨拶した少年を見つめた。肩に軽くかかる明るい茶色の巻き毛、浅黒いオリーブ色の肌は庶民的な
育ちを思わせるが、目鼻立ちは相当整っている。ヒッタイト風のゆったりした地厚の羊毛地の上着とレギンス(タイツ状の細身のズボン)
に隠されているが、その体つきもほっそりと優雅であろうことが伺える。
ミタムン王女は無遠慮にこの少年の顔をのぞき込み、驚きの声をあげた。
「まぁ、何てこと!お前の目は青いじゃないの、キャロル!初めて見たわ」
キャロルは大慌てで顔を伏せ、金茶色の王女の瞳を避けた。ルカには金髪を見られ、この元気の良すぎる王女には碧眼だと言いはやされた。
この地では珍しすぎるであろう自分の容姿を自覚しているキャロルは冷や汗をかいた。とにかく目立ちたくはないのだ。
「ミタムン、控えぬか」
イズミル王子の声がした。
「その少年は異国の出身だと申しておるではないか。異国には青い目をした者もいるぞ。キャロルとやら、私もそなたの碧眼
には気づいていた。そなたは北方の出なのではないか?」
「は・・・」
「ミタムン、そのキャロルは私の命の恩人ぞ。まだ子供だ。他の者にするように無遠慮なからかい方をするでない。
見よ、ルカも困って居るではないか」
「まぁ、お兄さまをサソリ毒から救ったのはこの子なのですか・・・」
ミタムン王女は何故か真っ赤になってぼそぼそと言った。
「それは悪いことをしましたね、キャロル。ルカも・・・許してください。悪気があってではないのです」

245 :妖しの恋:02/11/25 12:58
10
「お前は今日からこちらで休むといい」
独身のルカは王宮内の敷地に居室を賜っていた。主の趣味を反映してか質素で高級将校らしからぬ住まいだ。
ルカがキャロルに示したのは、簡単な台所を形ばかり幕で仕切ったこじんまりした一室。すぐ側は居間やルカの寝室だし、壁を隔ててすぐ人の行き交う通路だ。
だがキャロルはようやく部屋が持てたことがありがたく、心からルカに礼を言った。
「何、お前は私の従僕だ。主が従僕の面倒を見てやるのは当然だからな」
ルカは素っ気なく言っただけだった。

翌朝からキャロルの従僕生活が始まった。ルカはもともと自分のことは自分で済ます方が好きな質らしく、性格も穏やかであったので仕えやすい主人だった。
キャロルはルカに給仕をし、洗濯をして、室内の整理整頓・清掃を行い、身の回りの品々を揃え持って彼の行く先々に従った。練兵場、王子の執務室、馬場・・・。
ルカが仕事なり訓練なりを終えるまでキャロルは他の従僕達と一緒に主を待っていた。小柄なキャロルが理不尽にいじめられるようなことがなかったのは、
キャロルの如才のなさと、古代人から見ればとぼけた言動の数々、そしてルカの庇護によるところが大きかった。
一度、大柄で年かさの従僕がキャロルを女のようだと嘲笑って辱めるような真似をしたが彼は怒ったルカに殴り倒され、顎を砕かれた。従僕の雇い主も
常識人であったので、自由人身分らしいキャロルをあざけった奴隷出身の自分の従僕の非を全面的に認め、謝罪した。
この雇い主や他の従僕が、キャロルを逆恨みすることもありえたわけだが、キャロルが顎を砕かれた従僕をこれ以上傷つけてくれるなと庇ったに至って、
その可能性は完全に消えた。
「ちびさん」と親しみを込めて呼ばれるようになったキャロルは皆から面白がられ、かわいがられてハットウシャに馴染んでいった。ルカはたいそう安心した。

246 :妖しの恋:02/11/25 12:59
11
「で・・・。ルカ。そなたの従僕のキャロルだが。どのような身元の者なのだ」
内密の打ち合わせをルカと二人きりで済ませた王子は静かな口調で聞いた。
「エジプトに行く前には見なかったな、確か。どうしたのだ?」
ルカの顔がさっと緊張した。何と言ったものだろう。キャロルは心根の正しい少年だ。その心映えも陰ひなた無い献身ぶりもルカはよく知っている。
しかし、いかんせん・・・キャロルは「異世界出身」。
「何て顔をしている、ルカ。いらぬ疑いを招くような真似は止めるがよいぞ?
あのキャロルが胡乱な敵国の暗殺者や密通者でないことくらい私にも分かる。
・・・もしや、そなたの身内か何かなのか? もしアランヤ出身者であるならば、そしてそなたが望むならあの少年をそれなりに庇護してやろうよ?
私がそなたにしてやったように、な」
「もったいないお言葉でございます」
ルカは感激して深々と頭を下げた。若く優秀で冷静、時に冷酷な主君だが臣下を思いやる心は深い。
「あの者は私がエジプトで召し抱えました。親元から拉致され奴隷に落とされるところであった少年にて、今はもう孤児でございます。
身の上を聞きますに何やら他人とは思えず、側に置くことにいたしました」
「そなたの弟が生きていたら、あれくらいの歳であるのかな」
王子は淡々と言った。ルカも黙って頭を下げる。
「いずれ名のある家の出身であるのかもしれぬな。立ち居振る舞い、博識ぶり。私の傷を見事に治療したのには驚いたな。侍医もキャロルの看護
ぶりを褒めていた。あの子供は誰もが恐れる主席王宮侍医殿と医術や薬品の話をしているそうだ。ちゃんと話し相手になっているらしい」
王子は面白そうに言った。実際、学問を武術と同じくらい重んじる王子は博識な少年にひどく興味を持っていた。
「興味深い少年だ、あのキャロルは。困ったことにミタムンもあの子に興味を持ったらしい」

247 :妖しの恋:02/11/25 13:00
12
「ミタムン様が?一体何故?」
ルカは驚いた声を出した。イズミル王子は面白そうに微笑んだ。妹がこの優秀で将来有望な若い軍人に心惹かれているらしいことはとうに承知していた。
「さぁ、そなたのことを根ほり葉ほり聞いてキャロルを困らせているらしい」
「はぁ?!」
「キャロルはすっかり困って逃げ回っているそうだ。ま、主君の噂話をするような軽薄な輩でなくて重畳だな。もちろん、ミタムンの話し相手もしてやってくれているようだ」
「キャロルがでございますか?何と畏れ多い!」
「良いさ」
王子はあっさりと言った。
家庭教師をまいて脱走した王女が庭先でキャロルに出くわし、キャロルがいともあっさりとミタムンをげんなりさせた幾何の課題を解いて見せたという話はムーラから聞
かされていた。従僕風情・・・と軽く見ていた少年の頭の良さとそれをひけらかさない謙虚さが大らかな気性の王女の気に入ったらしかった。
ミタムン王女は、自分の若い侍女たちも巻き込んで何だかんだとキャロルに構い勝手に面白い話し相手にしてしまった。
キャロルはルカに従って女達の住まう宮殿まで行くことも多かったし―そのルカは妹王女や母王妃のもとに行くイズミル王子に従っているわけだ―、幼い小柄な外見を
喜んだ女官達にちょっとした表宮殿宛のお使いを頼まれることも多かったのだ。
最初、物堅いムーラはミタムン王女がいくら子供じみているとはいえ少年と口を利くのを不快に思った。キャロルが増長するやもと警戒もした。
ところがキャロルのほうがムーラに困り切って相談したことから、ムーラもキャロルに積極的ではないにせよ好意を持つようになった。
「ムーラ様。僕はルカ様の従僕です。ミタムン様のちょっとしたご用をたまわるのは構いません。でもルカ様のおつとめが疎かになるようなことはしたくありません。
正直、困ってるんです。
それに・・・僕は男なわけですし、王女のお側近くにありすぎるのは王女のご評判にも傷が付くのではないかと思うわけです・・・」

248 :妖しの恋:02/11/25 13:02
13
ムーラは少年っぽい潔癖さをむき出しにして、眉間にしわを寄せて訴えるキャロルに安堵を覚えた。この従僕は王女の好意を勘違いして
受け取って増長するような輩ではないらしい。
「そなたの言い分はよく分かりました、キャロル。そなたの方から言い出してくれたので私もミタムン様にご注意しやすいというものです。
まぁ、王宮とはとかく口さがない者の多いところ。そなたも今まで以上に自重してルカ殿にお仕えしなさい。
・・・他の女官や侍女たちにも、そなたに構い過ぎぬよう注意をしておきます。でもまぁ・・・皆、そなたがまだまだ子供だから安心して
気安く使っているらしいことも覚えておいでなさい。特に若い侍女たちは男の召使いには気後れするらしいから、子供のそなたのほうが
親しみやすいのでしょうよ」
(そんなこと言ったって、私は皆の注目を浴びたくないのよ。後宮の女の人ってどうしてあんな風に人をからかうのかしら?むしろ
気後れするのは男の召使いでしょう?)
キャロルは苦々しく思いながらムーラの前を下がった。少年のふりをしているせいでもないだろうが思考まで思春期の
恥ずかしがり屋の男の子じみてきている。

表宮殿に通じる廊下を行くキャロルに明るく声をかける女性があった。ミタムン王女その人である。
「キャロルっ!ちょっとこっちに寄っていきなさい。持っていって欲しいものがあるのよ!」
女主の屈託のない明るい声に唱和するのは、年若い侍女たちの忍び笑いや囁き声だ。
「キャロルったらあんなに赤くなってかわいいっ!」
「あら、新しい上着じゃない?ルカ様のお下がりね。きっと」
キャロルは急ぎ足で王女の許に参上する。
「何かご用でございましょうか、王女様。僕、ちょっと急いでいるのですが」
「これね、出入り商人が持ってきたお菓子よ。お兄さまに差し上げたいの。・・・たくさんあるし・・・もしルカがお兄さまと
一緒にいたらこっちの包みを渡してやってもいいわ。いなかったらお前がお食べ」
王女はキャロルに、砂糖煮の果物と蜂蜜を練り込んで油で揚げた菓子の包みを渡した。何やら頬が赤い。
畏まってキャロルは我が儘な王女のご用を承り、世継ぎの王子の居室を目指した。

249 :名無し草:02/11/25 14:29
新作嬉しいです。
ミタムン王女ってひょっとしてルカが好きなんですか?

250 :名無し草:02/11/25 19:57
>249
>>247の2行目に書いてありますよ。

ルカ×ミタムンっていう組み合わせも新鮮ですね。
これからの展開が楽しみ。

251 :妖しの恋:02/11/26 14:11
>>248
14
王子付きの召使いに王女からの預かり物を渡して、さっさと下がろうと思っていたのだが、王子の居室に行ってみればその部屋の主は
ちょうどルカと打ち合わせでもしていたようだ。
「どういたした、キャロル?」
ルカは茶色に染めた柔らかな巻き毛を無造作にまとめた小柄な少年に声をかけた。
「お仕事中に失礼いたします。ミタムン王女様よりイズミル王子様宛に贈り物でございます」
キャロルが差し出した包みをルカが受け取り、王子に渡した。その様子を観察していた王子はキャロルの手が驚くほど小さく華奢で
あるのに驚いた。激しい労働や武具の扱いに慣れていないことが見て取れる手。あの細い手首はどうだ。
頭が良いのは日頃を見ていれば分かる。しかも何かの拍子にミタムン王女より女性らしいのではないかと思ってしまうことがある。
(馬鹿馬鹿しい。私には稚児趣味などないものを。ミタムンがじゃじゃ馬すぎるだけだ)

王子は妹王女の贈り物に目を細めた。妹が可愛らしくてしょうがないのだ。
「ふふっ、何かと思えば。キャロル、ご苦労だった。
・・・しかしルカの従僕であるそなたを自分の小姓か何かのように使うのは感心せぬな。そなたも困っているだろう」
王子の鷹揚で思いやりのある言葉に我知らずキャロルは赤くなった。
「いえ・・・とんでもないことでございます。困るなどということはありませぬ。王女様はそれはよくしてくださいます」
低い落ち着いた声の持ち主が自分の顔をのぞき込むようにしているのが分かった。細かく砕いた赤土を塗りつけて色を変えた自分の
顔は今、どんなふうになっているだろう?ライアンによく似た男性はキャロルを困惑させる。兄と同じその慧眼で全てを見透かしそうで。
「そうか・・・。そう言ってくれるとありがたいな。
ところでキャロル。今、ルカに命じていたのだが、そなたの主は私の命でちと遠出をしてもらうことになった」

252 :妖しの恋:02/11/26 14:12
15
「王子!何もこのような軽輩相手に御自ら!」
「良い、ルカ。私からも言い聞かせてやった方がいいだろう」
王子は驚き恐れ入るばかりのルカを尻目に、幼子相手にするようにキャロルに言い聞かせた。
「これから申すことは他言無用のことぞ。そなたの主は単独でさる調査を行う。3ヶ月ほどは留守となろう」
言葉を切った王子を静かに見返しキャロルは従順に頭を下げ、次の言葉を待った。
(単独調査・・・。つまりは隠密ってことね。どこに行くのかしら?今・・・エジプトは新王国時代。ヒッタイトは国境問題でエジプトと緊張関係にあるし、 
地中海諸国の動きも目が離せないはず。オリエント方面だって・・・。
でも単独調査ってことなら、そう遠くには行かないわよね。地中海諸国あたりかしら・・・?)
キャロルは自分の知識と、周囲の人々の話からかき集めた情報―ヒッタイト国王はクレタに興味をお持ちのようだ―を動員して考えを巡らせていた。
一方、ルカと王子はそれぞれにそんなキャロルの様子に驚いていた。
無知な従僕であれば、ただ阿呆のように王子の次の言葉を待つだけだろう。
あるいは心細さをむき出しにした顔をしてみせるとか、好奇心を抑えようともせずに子犬のような顔でもしてみせるか。
ところがキャロルは落ち着き払って次の言葉を待っている。ただ待っているだけではなく何やら考えを巡らせているらしいことが見て取れる。
王子は思わずこの少年に、何を考えているのかと詰問したい衝動に襲われた。だが敢えてそれを押さえると話を続けた。
「そなたはルカに付いていくことは叶わぬ」
「えっ!で、でも僕はルカ様の従僕です」
キャロルは今度こそ驚いて目の前の二人の男性を見つめた。

253 :妖しの恋:02/11/26 14:13
16
「そなたは留守居をいたせ」
王子が言い、ルカが続けた。
「旅慣れぬそなたはかえって足手まといになるゆえ、置いていくのだ。だが何も心配することはないぞ。もったいないことながら王子が、私が留守中のそなたの処遇についてちゃんと考えてくださったのだ」
キャロルは落ち着かなげに身体を動かした。これまではルカが守ってくれると思ったからそれなりに落ち着いて暮らせた。しかし庇護者にして彼女が異世界から来たことを知るルカが居なくなったなら?
イズミル王子の声が続けた。
「ルカがおらぬ間、そなたは読み書きを学び、簡単な武具の扱いや乗馬を習え。そなたは兵士がするようなことより、役人がするようなことのほうが向いているようだ。医術の知識は玄人はだしであるしな。
私はそなたがゆくゆくは一人立ちできるようになれば良いと思っている。いつまでも従僕で居るわけにもいくまい。無論、そなたが努力をし、そして私が向いていると思ったならば役人なり何なりのきちんと
した職に就けることもあろう」
キャロルは破格の言葉に目を丸くするばかりだった。留守番の間に勉強をさせてもらえるという!よそ者の、何の後ろ盾もない自分なのに。出自・身分に関わらず優れた者を取り立てるという進取の気質に
富んだ世継ぎの王子がまさか自分にこれほどのことを言ってくれるとは・・・?
生きた考古学の勉強ができる喜びと同時に、恵まれすぎている今の状況が恐ろしいほどの重みでのしかかってくる。
「そなたが自由身分の出身だということは王子に申し上げてある。王子はアランヤ出身のそなたや私のことをもお心にかけてくださる」
「も・・・勿体ないことでございます。でも僕のような者が・・・」
「無論、そなたは貴族の子弟などではない。ただ勉強だけをしていればいいというものではない。
勉強をする以外の時間はムーラの監督下で小姓として働け。ちょうど先任者が辞めて後任の者が欲しかったところだ。そなたは声変わりもまだの子供だし、心映えもよく、ミタムンはじめ、女達の受け
も良いようだ。もちろん同輩の男性ともな。よいな」

254 :妖しの恋:02/11/26 14:14
17
「キャロル、王子のお心遣いをまさか不満になど思っているのではあるまいな。そうなら許さぬぞ」
ルカはキャロルが出してきてくれたミタムン王女の「お裾分け」のお菓子とお茶を口に入れながら言った。
「そんなことありません。でも僕は王子の家来のルカのそのまた従僕にしかすぎない。ありがたいとは思うけれど目立ちたくないというか、どうしてそこまでしていただけるのか分からないし・・・そのぅ・・・小姓をするっていうのも・・・」
ルカは苦笑した。キャロルが女達に面白がられ、あれこれ構われているのは知っていた。退屈して面白いことに飢えている女達は不器用な男や、世慣れない少年を格好の標的にしてからかって遊ぶ。ルカだって昔はそうだった。
「王子には、お前はアランヤ出身で私と同じ孤児の境遇だとお話ししておいた。王子は被征服地やその民との融和というのを非常にまじめに考えておられてな。私もお前も・・・ありがたいことに王子のお目に叶ったんだろう、出世の機会をいただけたというわけだ。
王宮内に、王宮に仕える召使いの子弟や出入りする庶民階級のための学校がある。実務に必要な読み書きそろばんを教わるところだ。お前はそこに行くんだ。貴族はいないから却って居心地はいいだろうよ」
ルカの言葉から血筋にあぐらをかく貴族への反感がほの見える。
「はい。でも・・・小姓は・・・」
キャロルは無遠慮であけすけな宮殿の女達が怖かった。特にミタムン王女のからかいは苦手だった。陰湿な悪意を持つような少女ではないと思っているのだが、明るい気性と我が儘と勝ち気に裏打ちされた無邪気に鋭い舌鋒は、キャロルを困らせる。
「うーむ・・・。お前の言うことも分からぬでもないが。お前のような山出しの子供が様々なことを学ぶのに小姓職は願ってもないお役目だ。とにかく!私の留守中、王子のせっかくのお心遣いを無駄にするようなことのないように」
ルカはそう言って弟のように思っているキャロルに甘い珍しい菓子を分け与えてやった。

255 :妖しの恋:02/11/26 14:16
18
様々な注意と励ましの言葉を残して、ある朝ルカは王子の命を帯びて黒海沿岸の
トロイに向けて旅立った。
ルカの居室に戻ったキャロルはしばらく虚脱したように座り込んでいたが、ルカ
が頼んで置いたのだろう、古参の世話焼き侍女がやって来て彼女を「学校」に追い立てた。
「さぁさぁ、いってらっしゃい。学校にやってくださるなんて、やっぱりルカ様ほどの
ご身分になると違うこと。あなたの恥はルカ様の恥ですよ。しっかり勉強しておいで!
学校が済んだら遊び歩かずにまっすぐ戻って来るんですよ、いいですね!」

「学校」はイズミル王子の住まう宮殿の敷地内にあった。大きなものではないが書籍や
教授陣は整っているらしかった。
「お前、新入りだな」「どこから来た?」「親は何をしてるんだ?」
あまり数の多くない生徒達はキャロルに声をかけに来た。皆あけすけで、妙な気取りがない
ところがキャロルを安心させた。ずっと年上の人々に囲まれてきたキャロルは同年代の人間に
久しぶりにくつろいだ気持ちを覚えた。
キャロルは請われるままに、自分は孤児でルカの従僕をする傍ら学校にもやってもらえるよう
になったこと、学校が終わったら他の仕事をしなくてはならないこと―さすがに小姓だとは
いいだしかねた―などを話した。
商人の子弟や王宮召使いの子弟達はそれを聞いてキャロルを蔑視することはなかった。
学校が済んだ後、遊べるような身分の子は例外だったからだ。むしろイズミル王子付きの
高級将校ルカの従僕をしているキャロルの立場に羨望を感じたらしかった。

キャロルの学校生活は順調な滑り出しだった。ヒッタイトの文字は初めて習ったが、
計算や外交語アッカド文字については20世紀の知識が多少なりとも役だった。
午前中だけの授業が終わり、ルカの居室に帰ってみれば世話焼き侍女がキャロルを
待ちかまえていた。キャロルに身体を拭かせ―生意気盛りの少年を育てた経験のある
彼女はキャロルが一人で身体を拭けるようにしてくれた―こざっぱりした服に着替えさせ、
昼食を食べ終わるまでを監視すると、くどくど細々注意をしてキャロルを新しい職場
―ミタムン王女の許に(!)―送り届けた。

256 :名無し草:02/11/26 15:25
大量ウプ感謝です、作家様。
「妖しの恋」ってひょっとしてキャロルのことを男だと思ってる王子×男のふりはしてるけど心は女の子なキャロルのカップリングってことっすか?!

257 :名無し草:02/11/26 15:33
ルカ好きにはたまらんですハァハァ
胸躍らせて続きをお待ちしてます

258 :名無し草:02/11/26 20:01
>妖しの恋い
た、たまにはルカ×キャロルもいいかも・・・と
おもってしまた〜〜!!


259 :妖しの恋:02/11/27 15:48
>>255
19
「キャロル、よく来ましたね」
年若い侍女たちに囲まれて,華やかに着飾ったミタムン王女は面白そうに目を輝かせながらキャロルに声をかけた。
ムーラに付き添われて緊張して伺候したキャロルは恭しく頭を下げ、新任の挨拶をした。子供っぽい甲高い声の
キャロルが一人前にしきたり通りに口上を述べる様子に侍女たちは笑いさざめいた。この新しい小姓は何て可愛らしいんでしょう!
ミタムン王女はそんな侍女たちを窘めるどころか、面白そうに微笑んでいる。ずっとずっと気になっていた少年だ。
ルカの話もじっくり聞きだしてやろう。ルカはいないし、もう私に逆らわせたりしないんだから!
「さぁ、楽にしなさいな。そうだわ、これをあげる。ひとつお取り」
15歳の王女は、自分より年下だと思っている新任小姓に小鉢を差し出した。
「おいしいわよ」
鉢の中には砕いた木の実を混ぜ込んだ小さな焼き菓子が山盛りにされていた。クッキーのようなものだ。
戸惑うキャロルに王女は侍女たちと一緒になって熱心に菓子を勧めた。ムーラはいつになく気前の良い王女に内心驚いたが、
キャロルの遠慮が過ぎるのも無礼になると思ったのだろう。言葉を添えた。
「今日は特別です、キャロル。せっかくの思し召し、ありがたくちょうだいなさい。・・・王女様、キャロルは
小姓なのですから、お手飼いの小鳥や猫と同じように扱ったりしてはなりませぬよ。よろしいですね」
「分かっているわ、ムーラ。さぁ、キャロル。お前くらいの歳の男の子はいつもお腹が減るのでしょう?前の小姓もそうだったわ」
キャロルは恭しく頭を下げ、香ばしい菓子を一つ摘み上げた。その途端!
「あっ?!」
鉢の中から季節はずれの大きな蛙が跳びだした。茶色っぽい緑色の生き物に驚いた拍子にキャロルはバランスを崩し、
側にあった小卓の角に思い切り頭をぶつけた。
「やったわ!引っかかった、引っかかった!驚いた?」
手を叩いて笑いさざめくミタムン王女とその侍女たちの声はじき立ち消えた。
頭からぼたぼた血を流しながらキャロルは床に倒れ伏したままだったのだ。


260 :妖しの恋:02/11/27 15:50
20
ミタムン王女の居間は大騒ぎになった。すぐに医師が召し出され、ちょうど妹の様子を見に来ていた兄王子も頭から盛大に血を流す少年を目の当たりにして色を失った。

「もう大丈夫です。お騒がせいたしました」
起きあがろうとするキャロルを王宮主席侍医は厳しく叱った。
「頭を強く打ったばかりだというのに何事じゃ!しばらくは安静にしておれ!」
頭をぶつけた瞬間、気を失っていたらしいキャロルは気が付くと医師や王女、王子に囲まれて傷の手当を受けている最中だった。金髪であること、白人であること、
何よりも女であることがばれては一大事と焦るキャロルを宥めて静かに手当を受けるよう命じたのはイズミル王子その人だった。ミタムン王女と侍女たちは
泣きじゃくって手当を見守っていた。
「傷は小さいが深かった。念のため二針ほど縫っておいたぞ。しばらくは傷を水に触れさせぬこと、強い酒で消毒洗浄すること、それから薬を忘れぬように
飲むことじゃ。ああ、血が多く流れた故、栄養も取るように。前頭部の傷はとかく血が多く失われるものじゃ」
侍医は顔見知りの少年キャロルにてきぱきと指示を与えた。
「若いし大丈夫だとは思うが発熱、嘔吐、激しい頭痛、手足の痺れ・麻痺などの症状が出たら危険じゃ。せめて今夜は誰かに付き添ってもらうのがいいのだが・・・」
「キャロルは今夜はこちらに泊まります。客人用の部屋があるわ。ムーラ、いいでしょう?お兄さま、お願いです。私の度の過ぎた悪戯を許してください!」
「私に謝って何とする!そなたはキャロルにひどいことをしたのだぞ。悪ふざけにもほどがある。ましてやキャロルは、ルカに仕える身であるに!
身分ある者が、目下の者をましてや臣下の忠実な従僕たる少年を傷つけるとは何事かっ!
そなたの行い、とうてい王女の身分にある者のそれとは思えぬっ!この短慮者めが!」
兄王子の厳しい叱責にミタムン王女は震え上がった。根は善良なお姫様なのだ。今回のことだって軽い気持ちで物慣れぬ恥ずかしがりの新任小姓を手荒に
歓迎しようとしただけのこと・・・。

261 :妖しの恋:02/11/27 15:52
21
泣きはらして真っ赤になった目をしてミタムン王女は嘆願した。
「キャロル、どうか許してね。こんなことになるとは思わなかったの。悪気はなかったのよ。本当にごめんなさい。
あなたにひどい怪我をさせるつもりなんてなかったのよ。悪戯のつもりだったの」
キャロルが口を開くより前に「歩く権威・威厳」といった風情の主席侍医が厳しく言った。
「王女、あなた様ももう大人の王族としての振る舞いを身につけていただきたいものです。ひと一人にかくもひどい
怪我をさせておいて、悪戯のつもりだったとは!
たまたま傷が髪の生え際だったから良いようなものの、一歩間違えば失明の危険もあったのですぞ。後頭部を同じよう
に強打していたら死んでいたかもしれない。よろしいですか、死んでいたかもしれないのですぞ!」
王女とその悪戯仲間は心底震え上がった。歓迎儀礼の悪戯が殺人未遂・・・?
この愛らしい容貌の小姓が、飼っている小動物のようにあっさり死んでしまうところだった・・・?自分たちの手にかかって・・・?
女達の泣き声がひときわ派手にあがった。陰湿な確信犯的悪意もない代わりに、思慮もあまりない無邪気なお嬢さん達の集団なのだ。
特にミタムン王女の泣き声は悲痛だった。
(キャロルを殺すところだったなんて!こんな可愛い小姓を、私が!
もし本当に死んでしまっていたらルカはきっと私を許してくれないし憎むでしょう!お兄さまだって私のこと嫌いになってしまわれる!)
「王女様、どうかお泣きにならないでください。僕は大丈夫ですから」
キャロルは起きあがろうとするのを、大きく暖かなイズミル王子の手に阻まれながら言った。
気のいいキャロルは、今まで苦手だった我が儘な王女が心からの後悔と反省の涙を流して謝罪してくれていることを素早く見て取った。
「僕、普段なら蛙くらい平気なんです。ただ今回は驚いてしまってよろけたんです。本当に僕は大丈夫ですから、泣かないでください。
手当もちゃんとしていただきました。あの・・・みなさん本当にありがとうございました。お世話をかけました。僕、もう戻らないと。
調子が悪くなったら隣の人に言いますから。男の僕がここに泊まるなんてとんでもない!」

262 :妖しの恋:02/11/27 15:53
22
「ふん、意識も定かでない怪我人の子供が何を申すか」
イズミル王子はいきなりキャロルを抱え上げた。
「奥宮殿にも召使い部屋はある。今宵はそこに休むように。ムーラ、済まぬが怪我人の面倒を見てやってくれ」
恭しく頭を下げるムーラを後に王子はキャロルを抱えたまま廊下を進んだ。緊張と驚きでキャロルは汗びっしょりだった。
王子はといえば腕の中に抱き上げたキャロルの身体の華奢さ、軽さに驚いていた。本当に男なのだろうか?これくらいの歳の
―王子はキャロルをせいぜい12,3だろうと見ていた―少年で痩せている子は本当に骨ばかりにしか見えないのは知っていたが、
この骨の細さはどうだろう?まるで小鳥だ。
ふと覗き込んだ少年の顔は、困り切って涙ぐみ、心細げに細い眉根を寄せているせいかどきりとするほど色っぽく見えた。
(どうしたというのだ、私は!こんな子供相手に!女日照りの情けない兵士風情のように)
王子は自分を叱咤して、無意識に足を早めた。

「さて今宵はここで休むがいい」
王子はそっとキャロルを寝台に横たえてやった。奥宮殿に出入りする人々の召使い達のための部屋だが、宿泊するのは女の
召使いを想定している部屋なので、ルカの部屋を見慣れているキャロルにはたいそう女性好みの小綺麗な部屋に見えた。
「あ・・・あの王子。どうしてこれほどまで親切にしてくださるのですか?
僕は本当に大丈夫です。手当もしていただきました。この上、こんな綺麗な所に泊めていただいて他の人のお手を煩わせる
なんて罰が当たります。どうか・・・」
「遠慮はいらぬ。そなたはこのような扱いを受けて当然だ。奴隷ではあるまいし、もっと堂々としておれ。怪我を侮ってはならぬぞ。
・・・そなたは私のために良い薬を使ってくれたようだが、自分用のはもうないのではないかな?」
王子はキャロルに布団を掛けてやりながら言葉を続けた。
「そなたには私の妹が本当に申し訳ないことをした。詫びを申す」

263 :妖しの恋:02/11/27 15:54
23
「そっ・・・そんなこと!止めてください。詫びだなんて!」
驚いて起きあがろうとするキャロルはまたしても王子に押さえ込まれてしまった。
(何てことかしら、ヒッタイトの世継ぎともあろう男性が臣下の従僕風情に詫びですって?騒ぎを揉み消すどころか丁寧に手当までしてくれただけでも破格の扱いだと思ったのに!)
キャロルは驚いて秀麗な顔立ちの大柄な青年を見つめた。
この時代、身分の高い人間は目下の者を虫けらと同じように見なし、かつ扱っていたのではないか?まともな人権意識などあるはずもない野蛮な時代。現にアイシスはキャロルを
人間扱いしてくれなかったし、メンフィスは気に入らぬ奴隷を一刀のもとに斬り殺した。いつぞやキャロルを苛めた従僕だって奴隷身分出身のせいもあってルカに顎を砕かれても文句を言えなかったではないか。
「僕は従僕ですよ・・・?」
「そなたの身分など関係ない。私が許せぬのは戯れに抵抗できぬ立場の者を傷つけたミタムンの思慮のなさ、それを止めなかった侍女たちの至らなさだ」
王子は厳しい声音で言った。
「そなたは小姓である故に卑屈になっているのかもしれぬが、今回のことは全面的にミタムンが悪い。
身分高い立場にあるミタムンが、何の罪もない人間に一歩間違えば死んでいたやもしれぬ怪我を負わせて何が王女か!目下の者を思いやり気遣うどころか、たちの悪い悪戯をしかけるとは言語道断である。
私は妹の未熟さを、あれになりかわって詫びねばならぬ。どうか妹を許してやって欲しい」
王子の率直さと真摯さがキャロルを感動させた。同時に妹を思いやり、万人に仰がれる存在にしたやりたいと願う兄の心にも、深く心打たれた。
「勿体ない仰せでございます。王子。王女様はわざとなさったのではありません。それに僕が手当を受けている間中、ずっと僕のために泣いてくださった。王女様はご身分に相応しいお優しい方です。
知らぬ顔をすることだってできたでしょうに。僕は王子と王女様のお心をこの上なくありがたく思っております。これからも王女様にお仕えしたいと思っております」

264 :名無し草:02/11/27 18:19
妖しの恋 作家様

なんか性格のよいイズミル王子ですねー。常識的っつーか。
キャロルはやっぱり王子に惚れるんでしょうか?
それともルカ×キャロルでミタムン王女がヒステリー起こすんでしょうか?

265 :名無し草:02/11/27 18:59
「流転の姫君」「妖しの恋」どっちも楽しみに読んでまつ。
続きをこれからもよろしくお願いいたします(ペコリ)。

266 :流転の姫君:02/11/27 21:20
>>226
64
ヒッタイト王の帰国は凱旋のようで、城中がこの雄々しい王の帰国を祝っていた。
出迎えた王妃やイズミル王子と共に並んでいるキャロルの姿を見たときには
王は以前見た時からの変貌振りに舌なめずりした。
以前はただの負けん気の強い、だが流されてしまいそうな儚さをもった姫だったのに
華奢な身体には清浄でありながらも初々しい艶やかさが加わり、
王子に愛された自信からかまるで女神のような神々しさに回りの者は自然と頭を垂れている。
一通り留守居の間の報告を聞くと、王は人払いをした私室にキャロルを呼び寄せた。
キャロルが剣を身に着け、王の待つ部屋へ入っていくと、王は無遠慮な視線をキャロルに向け、
あからさまに「自分ものになれ!」と迫ったのであった。
キャロルは落ち着いた様で剣を鞘から抜き取り、刃を自分の首筋にあてがった。
「私はイズミル王子に見も心もお仕えすると誓った身です。
 国王陛下、王妃様には義理の両親として、またこの国を統べる方々としてお仕えさせていただきますが
 それ以上のご無体をなさるおつもりでいらっしゃるならば、誇りを失う前に自害いたします。」
淡々と述べるキャロルの口調に覚悟の程を見た流石の王も驚愕した。
「そなたが死ねばイズミルはどうするのだ!婚儀の前ぞ!」
「その婚儀の前に私が汚されるような真似ひとつあれば、生きていくつもりなどございません。
 王子ならば私の心を理解してくれるはずですわ。」
キャロルの白く細い首にさらに刃が押し当てられる。
王は普段の冷静沈着なイズミル王子の隠された激情を思い出し、仮にこの姫がこのまま死んだ場合を考えると顔から血の気が引いた。


267 :名無し草:02/11/27 21:34
おぉ!キャロルタソカコイイ

268 :流転の姫君:02/11/27 21:35
65
「ほほほ、お戯れが過ぎましてよ、陛下。
 おふざけになるにしても度が過ぎます、姫、その光り物を直しなさい。」
何処にいたのか、穏やかな笑い声と共に王妃が姿を現し、王は知らぬ間に溜め息をついた。
「あなたの女道楽は存じてますが、お戯れは後宮の女達としてくださいな。
 この姫はそんな女と比べ物にならぬほど得がたい姫。
 このようなつまらぬ真似で失うなどすれば、イズミルがどれほど怒りましょう。
 さあ、陛下、明日は婚儀で御座います、国王の雄々しい姿を民に見せるのも王たる者の勤めですわ。
 今宵はごゆっくりお休みくださいまし。
 姫、そなたも明日の為に休んでおきなさい、もう下がってよいです。」
キャロルは暇を告げた。
王妃の機転に救われた形になった王は、王妃が自分が思う以上にキャロルのことを気に入っているのを感じ取った。
「そうそう、後宮の女を少々入れ替えましたのよ。ご覧になりまして?」
王妃の静かな声音を聞きながら、王はキャロルに手を出す事は容易ではないと改めて思った。
王の帰国と婚儀の準備で王宮内はざわめきながらも夜は更けていく。
皇太子妃として、未来の王妃としての風格は充分だと王も王妃に結局は同意せざるを得なかった。

269 :名無し草:02/11/27 22:53
おおっ!流転の姫君がUPされている!お待ちしておりました〜。
毎日昼間でも会社でこっそり確認しておりましたが、待ち遠しかったです。
妖しの恋も少年愛のような妖しい物語になっていきそうで、目が離せない。
明日も会社でも上司の目を盗んでチェックするぞ〜。

270 :名無し草:02/11/27 22:57
ゲッ、sageしたつもりが s が全角英数になっていたためageされてしまった。

271 :彼の見る夢7:02/11/27 23:20
>>210
「お前ら、あのアンハトホルラーってぼうずどんな育てかたしたんだ?」
ライアンJr.リードはフナヌプに向かってあきれたように質問した。
「王子様としちゃまあ、普通ってやつだと思いますよ。
ひたすら周りが気を使いながら大事に・・・。
ま、あんたの母親の予言のおかげでヒッタイトを征服すること期待され、
ついでにあんたと比較されちゃいじけちゃいましたが。」
その王子様の異母兄はやはりという表情でため息をついた。
「なにを根拠にヒッタイトを滅ぼすって?
ここだけの話だがあそこを滅ぼすのは『海の民』というのが定説だぜ。
とにかくエジプトじゃない。
それに血統が怪しい上にとっくに死んだ王子と比較してどうする。
あの昏主は止めなかったのか?
自分の考えで何かを決定するのをためらう節がある。
あの坊や今のままじゃ為政者として役立たずになるぞ。」
フナヌプは表情を殺した。このかっての上司が企んでいる表情をしている。
なにをする気だ?
それに気付いたライアンjr.の言葉は意外だった。
「心配するなよ、フナヌプ。滞在費代わりの取引がしたいんだ。
俺はあの坊やにラージヘテプと比較されても気に留めないだけの強さをつくる種を播いてやる。
それとここに居る間お前の子供たちに剣の扱い方を教える。」
困惑の表情がでてしまう。
「滞在費なんて今更俺は・・・。しかしあの王子があんたと比較されても平気になれるとは・・・」
「今の俺は臨床心理専攻の学者でカウンセラーというやつだ。心理面での医者みたいなもんさ
あの歳と性格ならまだ誘導はそんなに難しくない。
ここの使用人達や市民の噂聞く限りじゃ、あの王はいつか暴走するし、止められる人間が必要だ。」
暴走の一因はあんたの家出だろ?と言いたいが黙っておく。
実際この男が言っていることを実現してくれるなら自分と妻の将来も安泰だ。
実際アンハトホルラーは侵略されかければ容赦しないが内政優先の王となり、
現世でも後世でも父より高い評価を受けた。


272 :名無し草:02/11/28 13:04
キャロルの子供がカウンセラー!!
ママを直したい一心だったのかなと思うとちょっと切ない。

273 :妖しの恋:02/11/28 14:19
>>263
24
卑屈になるでもなく、世継ぎの王子が自分に頭を下げているという状況に心驕りすることもなく真摯に言葉を返すキャロルには気品があった。
聡明な世継ぎの王子は、キャロルが従僕という己の身分に対する引け目から、ミタムンを庇うような発言をする人間ではないことを瞬時に悟った。
(ふむ、この少年は単に頭の回転が速く、如才ないだけの者ではないな。人の心を読み、思いやることにも長けている)
王子は考えた。普段からあまり自分の感情を露わにしないイズミルが、大事な妹王女が引き起こした騒ぎに動揺し、自分よりはるかに年下の少年
に率直に心の内を語ったわけだが、それに対するキャロルの反応はたいそう真摯で誠実なものだった。
媚びも妙な気遣いもないキャロルの反応が、妹を思う兄の気持ちを的確に読みとり思いやってくれたキャロルの心根が何やら心地よかった。
この人にしては珍しいことだ。自分の心を読まれたのに少しも不快でないとは!

「まこと、そのように思ってくれるか」
王子の誠実な声音にキャロルの心は打ち震えた。これまで出会った古代の人々にこんな感情を抱いたことはなかった。
こんな感情とは・・・尊敬の情。
(ルカがあんなにも王子のことになると熱くなるのは当然だわ。この王子は、人を人としてちゃんと扱ってくれるんですもの。私という人間を
認めた上で真剣に話をしてくれるんですもの!人の心を掴んで離さない人だわ。
・・・この人はすごい人だわ。人の上に立つ人間とはこういうものなのね!)
キャロルは小さく身体が震えるほどの感動を味わった。


274 :妖しの恋:02/11/28 14:20
24.5
「勿体ない仰せでございます。王子」
王子は涙ぐみさえして自分を見上げる子供の率直さに感動すら覚えた。自分に心酔し心から尊敬してくれる人間については幾人か
心当たりがあったが、ここまで率直な者はいなかった。
「・・・礼を申すぞ。今日はもう休むが良い。
それから・・・身体が治ったらまた小姓として仕えてくれるか?無論、いたずら者達には厳しく言い聞かせておく故」
「はい。是非そうさせてください。それから・・・あの・・・一つ王子にお願いが」
「何だ?何なりと申せ」
「は・・・。今日のことは内密に・・・僕が蛙に驚いて怪我をしたなんて知れたら、もう表を歩けません。学校の友達も
従僕仲間もルカ様も笑うでしょう。お願いですから・・・」
王子は暖かく微笑むとキャロルの頭を安心させるように撫で、出ていった。

275 :妖しの恋:02/11/28 14:22
25
「おい、キャロル!頭に怪我でもしたのか?」
学校友達の商人の息子が聞いてきた。3日ぶりに学校に出てきたキャロルは朝から何度同じことを聞かれただろう。ルカの留守中のキャロルの面倒を見てくれている
古参の侍女。ルカの住まう臣下用の住宅の隣近所の人々。従僕仲間はじめたくさんの顔見知り。学校の教師、友人。侍女や、ただすれ違っただけの人。
「うん、うっかり寝ぼけて寝台から転がり落ちてこのざまだ。ルカ様がお帰りになるまでには治しておきたいよ」
キャロルは明るく答えた。
「へえっ、馬鹿だなぁ。ちゃんと気をつけろよ」
聞いてきた本人は親しみ深くキャロルの背中を叩いて帰路に就いた。キャロルは朝から何度も同じようなことを聞かれ、幾度も同じような暖かいからかいを
込めた労りの言葉を受けたことに軽く疲れながら、ルカの部屋に戻った。
それは皆がキャロルを好いているということに他ならないのだが、とにかく目立たぬようにと行動しているキャロルにはいささか気苦労なことだった。
「おや、キャロル、お帰り。さぁ昼食を済ませたら包帯を換えてあげますよ。それから王女様の御許に参上なさい。お前の留守中、幾度お待ちかねとの
お使いが来たことか。お前みたいな半人前には本当に勿体ない畏れ多いことです」
中年の侍女は母親のようにキャロルの世話を焼いた。がさつでもなく礼儀正しいキャロルを気に入ったこの侍女は、人一倍潤沢な愛情と世話好きの
性格を向ける格好の相手を得たというわけだ。

「ミタムン王女様、キャロルが参りました」
ムーラが王女に取り次いだ。
「キャロル・・・!怪我はもういいの・・・?」
さすがに気恥ずかしげに小さな声で王女は尋ねた。側にいる侍女たちも今日は王女お気に入りの悪友兼話し相手といった若い娘達は少なく、
落ち着いた年かさの女性が多いようだ。このぶんでは王女は相当きつくお灸を据えられたらしい。
「はい、おかげさまで。休みをいただいていた間の暖かいお心遣い、心からありがたく思っております。ご迷惑をおかけいたしましたが
今日からは一生懸命励みます」
卑屈になるでもなく、媚びるでもなく、ましてや王女を恨んで皮肉めいたことを言うでもなく堂々と口上を述べるキャロルに王女は
やっと安心したような笑みを浮かべた。

276 :妖しの恋:02/11/28 14:23
26
「そう。お前がそう言ってくれて安心しました。怒ってもう来てくれなかったらどうしようかと思っていたの。お兄さまはお前がそうしても当然だって」
その時、ひときわ厳めしいムーラの声がした。
「ミタムン王女様」
ミタムンは、はっと居住まいを正した。
「あのキャロル。このたびは私の思慮のない振る舞いのせいで本当に済まないことをしました。いくら悪気はなかったとはいえ、お前にひどい怪我を
させてしまったこと、お前にも、お前の主のルカにも詫びの言葉もありません。
どうか私のしたことを許しておくれ」
そして女のように美しく整ったキャロルの顔をまじまじと覗き込みながら言った。
「傷は残るのかしら・・・?侍医は頭の傷は油断がならぬと言ったわ。醜い傷も消えないかもと」
キャロルは我が儘勝ち気なばかりと思っていた王女の、不器用に優しく思いやりに満ちた言葉に微笑を漏らした。大国の王女よと奉られながらも
この王女は厳しく躾けられているらしい。
「王女様。僕は大丈夫です。王女様お差し遣しの侍医殿にちゃんと治療していただきましたし、傷口も丁寧に縫っていただいたから綺麗に治りそうです。
暖かいお心遣いありがとうございます」
ミタムン王女は今度こそ花のように笑った。
「お前に許してもらえて良かったわ!でなきゃ私、お兄さまに許していただけないところだったの。ルカにもあとでちゃんと謝るけれど、
怪我をさせたお前が許してくれるか本当に心配だったのよ。もちろん他の侍女たちもそりゃ心配したわ」
キャロルが部屋に籠もって休んでいる間、菓子類や口当たりの良い食べ物、いかにも女性が徒然に作りましたというような小綺麗な手芸小物が
お見舞いとして山のように贈られてきたが、それは皆ミタムン王女とその侍女たちの心遣いというわけだった。
その時、イズミル王子の訪れが告げられた。王子はキャロルに許してもらえたと嬉しそうに報告する妹に厳めしく微笑んでみせると、
キャロルに暖かい感謝の眼差しを与えた。キャロルは真っ赤になり、鼓動の音が驚くほど大きくなっているのを自覚した。

277 :妖しの恋:02/11/28 14:24
27
キャロルの日常はそれなりに平和に過ぎていった。午前中は学校に行ったり、細々した雑務を片づけたりして過ごした。午後になればミタムン王女の許に行く。
女性達の住まう奥宮殿にはキャロルの他にも女性達に仕える少年達がいた。「侍童」と呼ばれる貴族出身の少年。行儀見習いを兼ねて仕えている少年達だ。そしてキャロルのような「小姓」。
小姓は必ずしも貴族出身ではなかったし、より実務的な仕事を命じられることが多かった。侍童は言ってみれば高い身分の女性達のお飾りのようなもので任期も短く、仕事をするのも毎日というわけではなかった。
今のところ小姓は控えめで腰の低い性格と皆に思われているキャロル一人だったし、他の侍童達はどうやらアランヤの貴族出身の上にイズミル王子やミタムン王女のお覚えもめでたいらしい少年にちょっかいを
出すほど馬鹿ではなかった。キャロルが聞けば驚くだろう勘違いだろうが、それはそれで好都合だ。

ガッシャーン!
キャロルは何かが割れる音に足を止めた。ミタムン王女の居室近辺はいつも賑やかだが今日は特に・・・。
「あ、キャロル!良いところに来たわ。早く王女様の所に行ってちょうだい!今日はムーラ様もおいでにならないの!」
年若い侍女がキャロルの手を引っ張っていった。
(ああ、またミタムン王女様が癇癪をお起しになったというわけね・・・)
果たして王女の部屋はなかなかの壮観であった。食事の盆でもひっくり返したのか、割れた食器やこぼれた食べ物が散乱している。そして部屋の女主は泣きそうな顔をした若い侍女や幼い侍童らに囲まれて、
真っ赤な顔をして仁王立ちになっている。
「! キャロル、何です、下がりなさい!お前のことなど呼んでいませんっ!」
「ですが掃除をしたほうが良いようです。王女様は掃除が済むまでどうか他のお部屋に・・・。それから侍女の方、掃除の道具を貸していただけませんか」
キャロルは王女の癇癪などお構いなしに静かな声で言った。

278 :妖しの恋:02/11/28 14:25
28
「ここは私の部屋です!出ていったりしないんだから!」
「でしたらお召し物が汚れぬよう、少し隅に寄っていただけますか?」
キャロルはてきぱきと見苦しい物を片づけ、床を拭き清めながら言った。どうしようもないほど汚れていた床はあっという間にきれいになった。
途方に暮れていた侍女たちがキャロルに感謝の眼差しを送る。
キャロルは掃除道具を片づけてから、相変わらず仁王立ちの王女の前に畏まって跪いた。
「ど・・・どうしたのです?何か言いたいのではないの?」
沈黙に耐えられなくなった王女が先に口を開いた。
「何か言いたいんでしょっ!た・・・例えばどうして床に食べ物がぶちまけられていたのか、とか!」
「お聞きしてもよろしいのですか?恐れながらあれは夕方の御膳のようでしたが」
「そうよっ!食べたくない物があったから腹が立ったのよ!何回言ってもアレが出るんですものっ!嫌いよっ!どうして皆、意地悪なの?」
我が儘なところもあるが基本的に善良単純な王女は時々、癇癪の発作を起こす。それはたいがい、優れ者よと賞賛される兄イズミルとの比較話が
出たときだと言うことを今のキャロルは知っている。食事の献立云々は副次的な問題なのだろう。
「私、羊肉の干したのは嫌いなのよ。臭いがするもの。それなのに身体に良いからって食べさせようとするのよ!身体に良いからって何よ?
どんなにがんばったって私はお兄さまみたいにはなれないのよ」
「でも王女様・・・お召し上がりにならなくてはいけませんわ。新しい御膳を整えましょう。ね?どうか・・・」
「お黙りっ!」
キャロルは静かに言った。
「王女様はお腹がお空きではないのでしょう。無理にお勧めすることもありますまい」
その途端、育ち盛りの15歳の王女のお腹が鳴った。健啖な彼女にとって一日2度の食事と間食は大きな楽しみだったのだ。
「私が嫌いなのは羊の干し肉だけで・・・あとのナツメヤシの砂糖煮や鳥肉の煮こごり、野菜のスープやクルミ入りのパンなんかは・・・
好きだわよ。お腹は普通に空いているし」

279 :名無し草:02/11/28 15:45
「流転の姫君」「彼の見る夢」「妖しの恋」
揃い踏みに感激ですっ!それぞれ「読ませる」文章なんですよねー。
同じキャロルを書いても、それぞれ「凛々しい」「儚い」「シャイ」。
これからもがんばってください!!!

280 :名無し草:02/11/28 17:21
>278
ん? 「ざ・ちぇんじ!」のパクリ?


281 :名無し草:02/11/28 17:46
>280
糾弾したいの?

282 :名無し草:02/11/28 18:05
まあまあ、ほっとけ。

マターリマターリ

283 :名無し草:02/11/28 19:16
ここまで同じだとね…。

284 :名無し草:02/11/28 19:23
>281
別に。
ただ、パクったんなら、そう書いておいて
くれればいいのになーと思っただけ。


285 :名無し草:02/11/28 20:02
たとえパクリだとしても(小説に限らず多かれ少なかれ、既存のものに影響受けてパクりのようになってるのは多いよ。天河なんてモロじゃん。だけど、王家とは別の面白さがあるからすごいよ)面白かったろいいのよン。
自分的には王子とキャロルの妖しくも危険なシーンが展開されるのではないかと楽しみにしてるのよン。

286 :名無し草:02/11/28 20:12
パクリって・・・。
その平安タイトルも読んだことあるけど、気にならないくらい
おもしろかったYO!!
細かい所まで言ったらほとんどの創作物がパクリになってしまうかと思われ。

287 :名無し草:02/11/28 20:22
しょせん素人のお遊びなんだから、元ネタがあろうがパクリだろうが、
それ自体は気にならないな。面白ければOK。
ま、良心的な作家さんなら、元ネタは○○ですとか書くんだろうけど、
この作家さんはそこまで良心的ではなかった、ということで。

288 :名無し草:02/11/28 20:25
パクリのようには思わなかったけどねえ。
男装してる小説や漫画に、似たような表現やシーンはあるかもしれない。
でもそれをパクリかどうかって言うと、チョト違うと思うんだけど。
ま、感じ方は人それぞれだけどね。

>287
( ゚д゚)ポカーン

289 :名無し草:02/11/28 20:27
>285
影響を受けるのとパクリは違うでしょ
例えばガラかめの作者は「王将」に影響を受けてガラかめを
描いたと公言しているけど、ガラかめが「王将」のパクリだ
とは誰も思わない
全然違う作品になってるからね


290 :名無し草:02/11/28 20:40
えーっと、話題になってる作品のファンです。
(正確には、作者・氷室さんのファン)
「妖しの恋」をずっと読んできて、今まで何とも思いませんでしたが、
>>278だけは「ざ・ちぇんじ!」を真似したんだな・・・とハッキリ分かりました。

「ざ・ちぇんじ!」に出てくる皇太子(帝の妹)がワガママな子で、
自分のきらいな食べ物を出されたことに怒ってブチまけるシーンがあって、
その前後の描写をそのまま使っているからです。
キャロルの応対の仕方も、皇太子付の女官(実は男性)と同じだし、
ミタムンが他のメニューは好きだと答えるところも同じ(メニューは
書き換えてありますが)。

私は「ざ・ちぇんじ!」のこのシーンが好きなので、「妖しの恋」の作者さんが
このシーンが気に入って真似したのなら、それはそれで嬉しいです。
でも、何も説明を書かないで真似してしまうと、作者さんのオリジナルだと
勘違いする人も出てくるかもしれないので、一言書き添えておいてくれれば
良かったのになぁと。

>>288
>男装してる小説や漫画に、似たような表現やシーンはあるかもしれない。
そういうレベルではなくて、そのまま真似してます。

291 :名無し草:02/11/28 20:54
ここまで議論していて「ざ・ちぇんじ」を全く知らずに
書いていたら不憫すぎるな(w

どーでもいいけど、作者が続きを書かなく(書けなく)なりそうで、
そっちの方が怖い。


292 :名無し草:02/11/28 20:54
急にスレが伸びてるから何事かと思った(ニガワラ
なんか、「パクリ」という言葉に過剰反応しているヤシが粘着に
騒いでるだけのような・・・

パクリと指摘してる側は「パクるな」「パクリは良くない」と
言ってるんじゃなくて、「パクったと書いとけばいいのに」と
言ってるだけじゃん。
何がそんなに気に入らないんだ?>過剰反応して騒いでるヤシ

293 :名無し草:02/11/28 20:56
>291
それはさすがにないでしょ<知らずに書いてる
キャロルやミタムンのセリフもまんまだから。


294 :名無し草:02/11/28 21:15
パクリだと指摘

ファン+名無しを装った作者がムキーッとなって反論

喧喧諤諤

作者登場
「お騒がせして申し訳無いのでもう書きません」又は
「こんな私が書き続けていいでしょうか」とカキコ

「そんなこと言わないでください」
「続きを読みたいです」「ずっと待ってます」のレス

作者 誘い受け成功(゚д゚)ウマー

295 :名無し草:02/11/28 21:29
分かる人だけ分かって「にやり」とすればいいんじゃない?
作者もそれくらいの気持ちで書いたんだろう。多分。

296 :名無し草:02/11/28 21:35
以外に「ざ・ちぇんじ」のファンって多いよ。
私も未だに文庫本持ってるけどほんとそのまんま。
それにライトノベルズ板にもし氷室冴子板があって、ここをさられたら
こんなもんじゃないと思う。

297 :名無し草:02/11/28 21:55
>292
そうねえ・・・パクリと言う言葉への印象が人によって違うのかも。
スレによっては犯罪行為のようにその言葉がとらえられてるような所もあるからね。
この作品がパクリなのかどうかはザ・チェンジ読んだことないから私にはなんとも言えないけど。
まあ、そういう言葉で不愉快になる人が多かったってことだろうね。きっと。

と、長々と書いておいてアレですが、パクリ議論はもう十分だと思うんだけど、どうでしょ?
これじゃあ誰も小説をウプしてくれんだろうし・・・(;´Д`)

298 :名無し草:02/11/28 22:27

こんなに人口が多いのに、びっくり。

299 :名無し草:02/11/28 22:32
まあ作者様がこの作品で利益を得てるわけでもなし。兎に角最後まで読ませて下さいな。

300 :名無し草:02/11/28 22:34
>299
私もあの作品好きなんだけど、もう続き読めないんじゃないかと心配でつ・・・・・・


301 :名無し草:02/11/28 23:14
ココってこんなに人がいたんだぁ・・・ある意味ビックリ

302 :名無し草:02/11/28 23:24
ここももう終わりだね

303 :名無し草:02/11/28 23:43
>>302
ナンデそーなる?

304 :名無し草:02/11/28 23:45
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1030814196/l50
ここの出番だ!!

305 :名無し草:02/11/28 23:49
  ☆。:.+: . /■\
   .. :.   ( ´∀`)   なんで終わりなワケ?マターリいこうYO!
     / ̄ヽ/,― 、\ o。。。       
.:☆   | ||三∪●)三mΕ∃.
.:*    \_.へ--イ\  ゚ ゚ ゚
+:..♪.:。゚*.:..  (_)(_)     ☆。:.+:
 ☆。:.+::..   ☆:.°+     .. :
   。*.:☆゚x*+゚。::.☆ο::.+。 *ρ

 「なんでだろ〜♪」   「なんでだろ〜♪」
   /■\   /■\   /■\
  ( ´∀`)  ( ´∀`)  ( ´∀`)
 ⊂    つ⊂    つ⊂    つ
  .人  Y   人  Y   人  Y
  し'(_)   し'(_)   し'(_)


306 :名無し草:02/11/29 00:27
このスレは、書きたい人と読みたい人がいる限りなくなるはずないよん。
マターリいきまひょう。


307 :名無し草:02/11/29 00:44
なごむ〜サンクス!!>305

308 :名無し草:02/11/29 01:24
そうそう、皆さん、マターリしませう〜。。。
ここの作家さまは、善意で書いてくださっているのです。
商業誌や同人誌のように、お金を取るわけでもなく無料なんですから。
ちなみに私も氷室さんの大ファンですが、気になりませんでした。
勿論すぐ気付きましたけどね。
「ざ・ちぇんじ」って漫画版も面白かったですよね。

>305
ホントなごみますね〜。

309 :名無し草:02/11/29 01:51
面白い展開だとわくわくしてたのに、
元ネタがあったのか・・・
いい/わるいではなく、がっかりしてしまった。
ま、こういう人間もいるってことで。

310 :名無し草:02/11/29 02:24
>309
パオパオさ〜ん、続きまだでつか?

311 :名無し草:02/11/29 04:11
うわ・・・なんか急に伸びてると思ったら
パクリという表現はきついのかもしれないけど
「ざ・ちぇんじ」と>>278
「キャラ名と食べ物の名前以外のシチュエイション」がほぼ一緒なのですもの(汗)
わたしもあの作品好きなので「ん?」と思ってしまった

以前にも源氏物語をベースにした作品があったけど、これはベースどころじゃない・・・・・・・・
ぱくりとオマージュの境目ってむつかしひ

312 :名無し草:02/11/29 04:24
誰も突っ込まないので書いとくか

>296
×ライトノベルズ板   ○ライトノベル板
×氷室冴子板   ○氷室冴子スレ
ちなみに、ライトノベル板には氷室スレがある

最近、板とスレを間違うヤシ多いねー
それだけ初心者チャソが増えたってことかな



313 :名無し草:02/11/29 04:34
パオパオさんの続きが読みたひ

314 :名無し草:02/11/29 07:06
>310
>313
パオパオさんの続きは某HPでやっていると思ふ
もうこちらではダメかも?

某天河も好きなんですが、ネタがあまり使われると・・・

315 :名無し草:02/11/29 07:57
パオパオさんが駄目かもというか、
もうここではどの作家さんも書き込みにくかろうというのが、
今のこのスレの状態のような・・・
パクリがどうとかもちょっと止まったかと思ったらまた・・・

316 :名無し草:02/11/29 11:51
ここは叩いた者勝ちのスレですから

317 :名無し草:02/11/29 12:05
王家の小説、投稿できる場所はいっぱいあるのに
あえて2ちゃんを選ぶここの作家様か好きだー







318 :名無し草:02/11/29 13:40
>317
私は5つ話を提供させてもらった事のある者ですが、
匿名だからこその楽しみがあります。
まさかあれとあの話の作者が同一だと誰も思うまいとか、
文章や書き方を変えて投稿するって楽しいですよ。
管理者がいるサイトではHNを出さないといけないので、投稿したことありませんが。
(いや〜、ここも管理者はいることはいるんだけどね・・・)

319 :妖しの恋:02/11/29 14:32
昨日の書き込みでお騒がせしてすみませんでした。
お察しの通り、元ネタは「ざ・ちぇんじ」です。
元ネタがあると昨日書かなかった時点でパクリと言われても仕方なかったと思います。
スレを荒らすようなことになり、多くの方に不快感を与えたことをお詫びします。

もともと、この話は男女の性別勘違い話のつもりで始めたので「ざ・ちぇんじ」「とりかへばや」「リボンの騎士」などに元ネタが分かる部分も多いと思います。
後、これまでの多くの作家様が書いていらっしゃる「源氏物語」「シンデレラ」っぽいところなど。
これからは元ネタがある場合は書きますので、ご容赦ください。

320 :名無し草:02/11/29 14:32
>318
318さんは自由に作風を変えられるんですね。素晴らしい!
私は書いても書いても似たようなのしか出来上がらない。あう〜

321 :妖しの恋:02/11/29 14:35
>>276 >>277以降の別バージョンと言うことでお読みいただければ幸いです。
27(反省ver)
キャロルの日常はそれなりに平和に過ぎていった。午前中は学校に行ったり、細々した雑務を片づけたりして過ごした。午後になればミタムン王女の許に行く。
女性達の住まう奥宮殿にはキャロルの他にも女性達に仕える少年達がいた。「侍童」と呼ばれる貴族出身の少年。行儀見習いを兼ねて仕えている少年達だ。そしてキャロルのような「小姓」。
小姓は必ずしも貴族出身ではなかったし、より実務的な仕事を命じられることが多かった。侍童は言ってみれば高い身分の女性達のお飾りのようなもので任期も短く、仕事をするのも毎日
というわけではなかった。
今のところ小姓は控えめで腰の低い性格と皆に思われているキャロル一人だったし、他の侍童達はどうやらアランヤの貴族出身の上にイズミル王子やミタムン王女のお覚えもめでたいらしい
少年にちょっかいを出すほど馬鹿ではなかった。キャロルが聞けば驚くだろう勘違いだろうが、それはそれで好都合だ。

ガッシャーン!
キャロルは何かが割れる音に足を止めた。ミタムン王女の居室近辺はいつも賑やかだが今日は特に・・・。
「あ、キャロル!良いところに来たわ。早く王女様の所に行ってちょうだい!今日はムーラ様もおいでにならないの!」
年若い侍女がキャロルの手を引っ張っていった。
(ああ、またミタムン王女様が癇癪をお起しになったというわけね・・・)
部屋の中では真っ赤な顔をしたミタムン王女が仁王立ち。おろおろした顔の若い侍女や侍童が取り囲み、当の王女の前では「修身係」と煙たがられている年寄りの侍女が割れたゴブレットの
破片に囲まれ呆然と座り込んでいる。
「私はお兄さまのようにはなれません!私は私、お兄さまはお兄さまでしょっ!それを何です、お前ごときが偉そうに私を愚か者呼ばわりする!
・・・私はお兄さまと同じにはなれません、それはよく分かってるんだから!何よっ、何も知らない年寄りが人を馬鹿にして!」
王女はそう言うと、人々を突き飛ばして部屋の外に驚くようなスピードで走り去っていった。

322 :妖しの恋:02/11/29 14:36
28(反省ver)
「一体・・・」
呟くキャロルに侍女が素早く耳打ちした。
年寄りの侍女は普段から急に説教に現れて王女に煙たがられている。今日のお説教のテーマは先日のキャロルの怪我騒ぎ。散々叱られたその一件を蒸し返して延々と叱られ、
あげく「イズミル王子様はそのようなことをなさいませんでした。同じご兄妹でありながら何と情けない差でしょう。妹君がこうでは王子様もお気の毒に」と言ったそうだ。
「それはひどい・・・」
キャロルは呟いた。我が儘なところもあるが基本的に善良単純な王女は時々、癇癪の発作を起こす。それはたいがい、優れ者よと賞賛される兄イズミルとの比較話が出たときだと
言うことを今のキャロルは知っている。
王女自身、立派な兄を手本と慕い努力していることはキャロルにも分かる。キャロルが兄ライアンを尊敬し慕うのと同じだからだ。
だが奔放で自由な気性の王女が、イズミルと全く同じような人間になれるはずもなく。実際、世継ぎの王子と、その次席にあたる王女とでは期待される役割も違ってくるのだが
王女にはまだそれが十分理解できていないし、周囲の人々も王女の腕白我が儘ぶりに困ってつい兄王子との単純比較をしてしまう。
かわいそうに・・・とキャロルは思った。年寄りの侍女は悪意は無かったのだろうが、ミタムン王女のコンプレックスを直撃するようなことを言って誇りを大きく傷つけたのだ。
(あのお婆さんはこの騒ぎでまたミタムン王女のことを悪く言うのかしら?王女様っていう身分も大変ね。
でも、お婆さんたら本当に馬鹿なことをしてくれたもんだわ。王女は馬鹿でも愚かでもないのに。あんなふうに言われたら誰だって腹が立つわ)
「僕、ミタムン王女様を捜してきます」
キャロルは侍女たちに声をかけると肌寒い風の中に飛び出していった。

323 :妖しの恋:02/11/29 14:37
29(反省ver)
「ミタムン王女様・・・」
キャロルは木の下に座り込んでいるミタムン王女にそっと声をかけた。泣きはらした目をした王女は、キャロルを一瞥するとぷいとそっぽを向いた。
「お前も私を馬鹿だと思ってるんでしょ。お兄さまとルカに言われたから仕方なく小姓になったんでしょう。私に呆れてるんでしょ?」
キャロルは少し迷ったが、王女からちょっと離れた場所に座った。そのまま二人は黙って寒風に揺れる木の枝や波立つ小さな泉を眺めていた。
沈黙。
だが少しも気まずくはない。お互いに落ち着いて自分の心の中を覗き込んでいる。こういう関係は珍しいのではないだろうか?少なくとも
ミタムン王女には初めてのことだった。
「僕・・・王女様がご自分は兄君とは違う人間だってはっきりおっしゃったのを聞いて、馬鹿には言えない言葉だと思いました」
ミタムン王女は唐突に口を開いたキャロルを見て驚いた顔をした。従僕の言葉とは思えない率直さ。王女を捕まえて「馬鹿」はないだろう。
しかしその無防備な率直さゆえに妙な嘘臭さや媚びた同情は感じられない。
「実際、王子様と王女様は違う人間なのだし、性別もご性質・ご性格も違うんですから全く同じように振る舞えたら気持ち悪いですよ」
「・・・そう思う?本当に?」
「人それぞれ違って当たり前ではないですか?少なくとも私は両親や兄達にそう言われて育ちました。もちろん正しい皆に尊敬され愛される
人間にはなって欲しいけれど、ライアンやロディのそっくりさんではキャロルがキャロルで居る価値がないって両親は言ってくれました。
兄たちは歳も離れててすごく立派で・・・私も兄たちのようになろうってずいぶん頑張ったけれど、得手不得手が違ったし、所詮は大人の
兄たちと子供の私ですもの、比べるだけ意味のないことだったのですね・・・」
キャロルはいつの間にか素に戻り「僕」を「私」に言い換えて、家族のことなど話し出していた。ミタムンの口惜しさや焦燥は他人事ではなかったのだ。
ミタムンは先ほどまでの怒り、むくれはどこへやら、黙ってキャロルの言葉に耳を傾けていた。

324 :妖しの恋:02/11/29 14:39
30
「お前は孤児だって聞いたわ。お前の両親はそう言ってくれていたの?兄たちも優しかったのでしょうね」
ミタムンはほうっと息をついた。
「家族のことなんて話させて悪かったかしらね・・・。でも羨ましいわ。そういってもらえたんですものね」
王女は驚くほど率直だった。
「私だって努力しているのよ。でもどんなに頑張ってもお兄さまのようにはなれないし、できないの。皆、私とお兄さまは
同じお母様から生まれたんだから、同じような優れ者で当たり前と思っているのよ。何でもできて当たり前。できなかったら
お兄さまの恥・・・。たまんないわ。
私だって皆が何を考えるかとか、何を期待しているのかとかは分かるのよ?それなのに私が何も分からない馬鹿みたいに好きに取りざたして!
どうせ、私は馬鹿ですよっ!エジプトにやってもらえなかったのも、あんまり馬鹿な子供だから政略結婚の手駒にもならないってことじゃないのっ?!」
ふわっ・・・と優しい手が涙の流れるミタムン王女の頬に触れた。キャロルだ。
「誰も王女様のことを馬鹿だなんて思っていませんよ。王女様のことをよく知らない人が的外れを言っても気になさってはいけません。
ご両親も王子様も、あなた様のことをそれは大切に可愛らしく思っておいでなのですから。あなたのお側仕えの侍女方だってそれは同じです。
・・・エジプトにおいでになれなかったのだって・・・過酷な旅路を思ってのことでしょう。それにどこの世界に大事な娘、妹を政略結婚の
手駒と見る人間がいます?幸せにするために育てた娘でしょう?」
「・・・」
「イズミル王子様はミタムン様のこと、すごく大切に思っていらっしゃいますよ。誰が見たって分かることです。
誰よりも・・・王女様がそれをよくご存じでしょう」
ミタムンは不思議な感動を覚えて目の前の小姓を眺めた。それは彼女が初めて覚えた「友情」だったのだろう。
「・・・ほんとにそうかしら?そう思って良いのかしら?お前が言ってくれたこと信じてもいいかしら?」
キャロルはこくんと頷いた。

325 :妖しの恋:02/11/29 14:40
31
「・・・それにしてもキャロルの顔はずいぶん久しぶりに見るな。傷は痛まぬか?学校はどうだ?ミタムンはよくしてくれるか?」
妹王女と夕食を済ませ、軽く酒を嗜みながら王子は上機嫌で聞いた。
「はい・・・。皆さんにとてもよくしていただきます」
キャロルは隅に隅に隠れるようにして答えた。その恥ずかしがりなところが侍女やミタムン王女にはまた可愛く面白く思えて、
小柄な少年をわざと王子の真ん前に押しだそうとする。
キャロルは何やら面はゆくてまともに王子の顔を見られない。大好きな兄ライアンに容貌も性格も雰囲気もよく似ている。
ということは本人は自覚していないが、王子はキャロルにとって、まぁタイプの男性ということになる。
それに怪我をした折りに抱きかかえられ、家族以外の人間としては初めてと言っていいくらい側近くまで体を、顔を寄せ合った。
それを思い出すたびにキャロルは羞恥でじっとしていられないくらいの気持ちを味わう。
「どうした? 顔が赤いぞ」
王子はひょいと手を伸ばして、キャロルの顎に手をかけた。
「な、何でもありません!」
キャロルは驚いて後ずさった。女性達が賑やかな笑い声を響かせた。
「まぁ、キャロルがすっかり困っておりますよ! 王子様は麗しくていらっしゃるからキャロルのような子供でも面はゆいのでしょう!」
「馬鹿なことを申すでない」

王子は杯を口元に運びながら改めてまじまじとキャロルを見つめた。
(ふん・・・。以前より肌の色が白くなったか? 顔立ちも儚げに優しく粗暴なところは全くない。体つきも相変わらず細い。
乗馬と弓うちを始めたと聞いたが筋肉が付いたようにも見えぬし・・・。
まこと男と言うより、女・・・いや生娘だな。見ていると何やら妖しい気持ちになってくる。男というには華がありすぎるぞ)
王子はほうっとため息をついた。
(私もルカも男を相手にする趣味はないが・・・この分ではよほど気をつけてやらぬとキャロルに良からぬことをする輩が出るかもな。
まことキャロルが女であったなら・・・)
思わず好色なことを考えてしまった王子の体は、ゆったりした衣装の中側で正直に反応した。
(ば、馬鹿なっ!この私が男相手に妖しの恋だと?!)
珍しく感情を乱した様子の王子を見て、キャロルは怪訝に思った。

326 :名無し草:02/11/29 15:21
おーお、律儀にさっそく書き直してるわけね。同情ねらいのいじけ反省文書いてナンチャッテ引きこもりにならんだけマシ(藁)?
いいけどさー。

ここに書いてる妄想小説って言ってみれば皆パクリすれすれのキャラ萌え同人話でしょ?
他の信者サイトのだってそうでしょーが。
今回話題になったのはショタ・ヤオイ話だし、別の原作まんまの話に自分の妄想くっつけて、原作並の大風呂敷拡げただけの放浪話は下手なノベライズ。
唯一、硬派ぶってオリキャラ話書いてる香具師だって、知ったかぶりの風紀委員ぽくて鼻につく。
他のサイトのだって自己満足のさぶいぼモノの話が多い。信者同士だから(管理人がまたタチ悪いし)耳に痛いことは言わないらしいけど。

とまぁ、正直に書いてしまったが思ってることは皆同じだと思うぞ(藁
これでびびって逃げずに最後まで書いてね、作家さん達!

327 :名無し草:02/11/29 15:46
書き直してくれるとは思わなかった・・・
本当に逃げるほうが楽なのに、よく続きウプしてくれたなあ。って思って感心しますた。

>元ネタは「ざ・ちぇんじ」です。
こう書いてくださればそれでもう十分なので、これからまたがんばってください。
続き、楽しみにしてます。

328 :名無し草:02/11/29 16:13
私も続きがあって嬉しい。
>本当に逃げるほうが楽なのに、よく続きウプしてくれたなあ。って思って感心しますた
私も激しく同意です。
昨日の書き込み読んで思わず糾弾した人もマターリ静観を提案した人もそう思いませんか?

実は私も普段はROM専のくせに、こういう祭りがあると盛り上がり、作家は同情ひくような反省文書いて呼び戻してもらうまで引きこもるゾなんて思ってました。
ごめんなさい。
えっと、どの作家さまの作品も楽しみにしてます。これからも続き書いてください。

329 :名無し草:02/11/29 16:18
>>326
あなただけの意見を他のひとも同じ、とか言わないでね。
貴方の言いたい事もわかるけど、タイミングが最悪。
本当に最後まで書いてもらいたいと思っていうの?
このスレは二次創作書きさんがいなければ成り立たないのを分かっているか?

330 :名無し草:02/11/29 16:33
>>327
>元ネタは「ざ・ちぇんじ」です。
こう書いてくださればそれでもう十分なので、これからまたがんばってください。
続き、楽しみにしてます。

偉そうにお前は何様のつもりだと小一時間問いつめたいな。
いるんだよな、風紀委員気取りのヴァカ。

>>326
ショタ・ヤオイは「妖しのざ・ちぇんじ作家」、大風呂敷は「流転の水戸黄門作家」と某信者サイトの「北野大地作家」、知ったかぶりは「彼夢作家」でよろしいか(藁

>>318
文体変えて面白いお話を提供できる私ってスゴイ!と思ってんなら相当おめでたいぞ、ゴルァ!


331 :327:02/11/29 16:40
>330
スレの住人の意見を代表したようなつもりは
なかったのだけど、そうとられても仕方ない書き込みでしたね。
不愉快な思いをさせてしまったようで、ごめんなさい。

332 :名無し草:02/11/29 17:54
王子、おいらが悪かったよ。謝るから余所様のスレに迷惑かけるのはやめてくれ。

333 :名無し草:02/11/29 17:57
藻前ら、モティツケ
     /\⌒ヽペタン
   /  /⌒)ノ ペタン
  ∧_∧ \ (( ∧_∧
 (; ´Д`))' ))(・∀・ ;)
 /  ⌒ノ ( ⌒ヽ⊂⌒ヽ
.(O   ノ ) ̄ ̄ ̄()__   )
 )_)_) (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(



334 :名無し草:02/11/29 18:03
そうそう、よそは卑凹サマ、天蓋サマ、曖サマとキョワイ古参風紀委員さんがいてすぐ飛んでくるからネ!
>>327さんは卑屈同情期待ヤローさん?謙虚なふりして、「いいえアナタは悪くない。悪いのは荒らしよ」と言って欲しくてうずうずしてるんだね(藁

しょせん、ここの作家は皆キャラ萌えパクリ作家ばかり。
「彼夢」作家の文体は某ライノベ作家のパクリくらい。
「妖し」作家

335 :名無し草:02/11/29 18:05
王子、おいらが悪かったよ。謝るから余所様のスレに迷惑かけるのはやめてくれ。

336 :名無し草:02/11/29 18:16
なんだか一人香ばしいのがまざってるが、
この香具師が他のスレでなにかしてきたの?

337 :327:02/11/29 18:21
なんか知らんが、どう言っても一緒なんだろうなあ。

338 :名無し草:02/11/29 18:21
王子、おいらが悪かったよ。謝るから余所様のスレに迷惑かけるのはやめてくれ。

339 :名無し草:02/11/29 18:32
王子、おいらが悪かったよ。謝るから余所様のスレに迷惑かけるのはやめてくれ。

340 :名無し草:02/11/29 18:35
パオパオさん、おいらが悪かったよ。謝るから自分のスレに迷惑かけるのはやめてくれ。

341 :名無し草:02/11/29 18:43
みんなマターリしようよ・・・

王家の紋章番外編が読みたくてここに来てるんでしょ?
根底から不満がある人はもう来なけりゃいいんだし
たのしく読んでる人間だっているんだから
毒吐くのはやめてほしい。

ハイハイ、風紀委員でゴメンネ!


342 :名無し草:02/11/29 20:25
     /\⌒ヽペタン
   /  /⌒)ノ ペタン
  ∧_∧ \ (( 
 (; ´Д`)∧_∧  
 /  ⌒ノ(・∀・ ;)⊂⌒ヽ
.(O   ノ ) ̄ ̄ ̄()__   )
 )_)_) (;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(


おまいら!
もちつけぇェェェっぇェェェェェッェぇぇっぇぇ!!!!
  ___   ガスッ
 |___ミ      ギビシッ
   .||  ヾ ミ 、      グシャッ
   ∩_∧/ヾヽ        
   | ,| ゚∀゚). .|  |;,      ゲシッ
  / ⌒二⊃=|  |∵.
 .O   ノ %`ー‐'⊂⌒ヽ  ゴショッ
   ) ) ) )~ ̄ ̄()__   )
  ヽ,lヽ) (;;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(

343 :名無し草:02/11/29 21:25
うんうん、もちつこう。

344 :名無し草:02/11/29 21:32
もちくれ。

345 :名無し草:02/11/29 21:37
もちあげ。

346 :名無し草:02/11/29 21:37
もぎゅ。

347 :名無し草:02/11/29 21:40
もへもへ。

348 :名無し草:02/11/29 21:41
もげげげげ。

349 :名無し草:02/11/29 21:55
もさもさ。

350 :名無し草:02/11/29 22:04
ふさふさ。

351 :名無し草:02/11/29 22:18
もうだめぽ。

352 :名無し草:02/11/29 22:24
続きが読みたい、ただそれだけです。商売やってるわけじゃないんだからパクってたとしても
いいじゃない。文句があるなら読まなけりゃいい。楽しみにしてる人だって多いんだから
あんまりたたかないで下さい。
創作作家様方、めげないで続きを読ませてください。

353 :名無し草:02/11/29 22:41
続きは読みたい。
妖しの恋作家様の態度は潔いと思う。
でもパクッてもいいとは思わない。
趣味だろうが利益を得てなかろうが、公共の場に上げる以上
最低限のモラルは必要だと自分は思う。

354 :名無し草:02/11/29 23:04
作者さんが認める前はパクリだと書いておいてくれればいいという意見が目立ち、
認めたら認めたで・・・

ちょっとうんざり。全然またーりできないスレだなあ・・・

355 :名無し草:02/11/29 23:14


公共の場ーーーーー!!!!!

なんて素敵な言葉・・・

ココは痰壷、肥溜、この世の果ての2ちゃんねる・・・

ファンサイトか屋風その他に逝ったほうがよいのでわ・・・
あ、煽りじゃないです・・・いやホント。

356 :名無し草:02/11/29 23:18
>354
ほんとうんざりだね。作家さんがどんな態度をとっても、
しょせんイチャモンが返ってくるもんなんかね。

>スレを荒らすようなことになり、多くの方に不快感を与えたことをお詫びします。
>これからは元ネタがある場合は書きますので、ご容赦ください。
作家様はこうやって謝ってるし、作品を書き直してUPもしてるし、
なんでそこまで叩くのかようわからん。

357 :名無し草:02/11/29 23:36
ここでなら「パクってます」って宣言したら、パクってもいいと思ふ。
そもそも二次創作小説を公共の場で発表することがモラル的にヤバイせいか
なんかあんまり固く考えられない。


358 :名無し草:02/11/29 23:37
  ☆。:.+: . /■\
   .. :.   ( ´∀`)   ホントようわからん・・・ハイッ!
     / ̄ヽ/,― 、\ o。。。       
.:☆   | ||三∪●)三mΕ∃.
.:*    \_.へ--イ\  ゚ ゚ ゚
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 「なんでだろ〜♪」   「なんでだろ〜♪」
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  ( ´∀`)  ( ´∀`)  ( ´∀`)
 ⊂    つ⊂    つ⊂    つ
  .人  Y   人  Y   人  Y
  し'(_)   し'(_)   し'(_)


359 :名無し草:02/11/29 23:38
  ☆。:.+: . /■\
   .. :.   ( ´∀`)   作家様も読者様もご一緒に・・・ハイッ!
     / ̄ヽ/,― 、\ o。。。       
.:☆   | ||三∪●)三mΕ∃.
.:*    \_.へ--イ\  ゚ ゚ ゚
+:..♪.:。゚*.:..  (_)(_)     ☆。:.+:
 ☆。:.+::..   ☆:.°+     .. :
   。*.:☆゚x*+゚。::.☆ο::.+。 *ρ

 「なんでだろ〜♪」   「なんでだろ〜♪」
   /■\   /■\   /■\
  ( ´∀`)  ( ´∀`)  ( ´∀`)
 ⊂    つ⊂    つ⊂    つ
  .人  Y   人  Y   人  Y
  し'(_)   し'(_)   し'(_)


360 :名無し草:02/11/29 23:38



                    .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
.∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
                    (\(\_/)   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      .          〜  (\ヽ( ゚Д゚)′< みなさま、マターリマターリ
.    ∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+  〜 (\ (ナフテラ)つ .\__________
                      (____)        .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
.∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+            ∪∪
                             .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
            .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+




361 :360さんお借りします〜:02/11/29 23:43



                    .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
.∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
                    (\(\_/)   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      .          〜  (\ヽ( ゚Д゚)′< わたくしも、なんでだろ〜♪
.    ∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+  〜 (\ (ナフテラ)つ .\__________
                      (____)        .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
.∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+            ∪∪
                             .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+
            .∴・.゚ ゚.・∴..*.☆+


362 :名無し草:02/11/29 23:47
あっははは!

なんでだろーぉ なんでだろー なんでなんでだろぉ ジャンジャン!

〜なごみますた。作家サマたのしみに待ってマス!!

363 :名無し草:02/11/30 00:04
>「妖しの恋」作家様
イズミル×キャロルがどうなるかももちろんですが、
ルカ×ミタムンがどうなるかも楽しみです。
325まで読んでますます面白いです。続きを心からお待ちしています。

364 :名無し草:02/11/30 01:13
>314
>パオパオさんの続きは某HPでやっていると思ふ
べつの人の作品をアレンジして続きを書いたとかなんとかのひとだよね?今某HPでやってるのは
パオパオさん、はたまた原作者さん、どっち?

365 :名無し草:02/11/30 15:33
>364
たぶん原作者(って言葉もヘンですが・・・もとのパロ作者さんってことで)
パオパオさんはその人にことわって書き始めたそうですが、
自分なりのアレンジに行き着くまでにここに来なくなったみたい。

366 :名無し草:02/11/30 20:01
すみません、ココしか見ていない人間にはパオパオさんといわれてもわかりません。
うちわ世間話はいい加減やめてください、オバ厨様がた。

367 :名無し草:02/11/30 20:06
>366
過去ログを見るといいのよ、お嬢ちゃん。

368 :名無し草:02/11/30 20:48
ほほほ。お子ちゃまね〜

369 :名無し草:02/11/30 22:13
この付近しか見てない366ちゃん、パオパオさんはおもいっきりココでの話ですよん。

370 :名無し草:02/11/30 22:21
「某HP」とか、書いているのが世間話って言われてるんじゃないの?
土、日はお話こないね、〜〜

371 :名無し草:02/11/30 22:31
もう二度と話は来ないよ

372 :名無し草:02/11/30 22:39
>パオパオさんといわれてもわかりません
と書いてあるけどな〜369へのレスならズレてないかい?>370

373 :名無し草:02/11/30 22:40
>>371
ナンデダロウ?

374 :名無し草:02/11/30 22:41

┐('▽`;)┌ヤレヤレ...

375 :名無し草:02/11/30 22:47
書き手、どんどん減って行ってるような気がする
スレの寿命が尽きようとしている


376 :名無し草:02/11/30 23:11
面白半分に煽るから、書き手が書きたくても書けなくなるよ。
どうか、叩きや煽りに負けないで、続きを読ませてください。
キャロル2年後の二の舞はしないで。読めなくなってどれだけ
がっかりしているか。
続きをお待ちしています。

377 :名無し草:02/11/30 23:14
>書き手、どんどん減って行ってるような気がする

今は淘汰の過程?
最後には打たれ強い作家様だけが残るのかに。


378 :名無し草:02/11/30 23:18
いらない作家を追い出して自分の好きな作家様だけのスレにしたい
そのための叩きですか

379 :名無し草:02/11/30 23:26
パオパオさんの好きな作家様って誰よ?

380 :名無し草:02/11/30 23:32
某HPってどれだろ?
あれ?それともあっちか?

381 :名無し草:02/11/30 23:34
あれとかあっちじゃ分からないよ。

382 :名無し草:02/11/30 23:40
>いらない作家を追い出して自分の好きな作家様だけのスレに
・・・しようするおっそろしく自己中でシツコイお人がいるんだ。ったく迷惑きわまりないよ。

383 :名無し草:02/11/30 23:46
パオパオさんの好きな作家様って誰なの?

384 :名無し草:02/11/30 23:49
キャロル2年後!まーだ待って待って待ち続けてるんだよぅ!
話を途中でやめられるのは王家の最終回が見えて来んこと以上につらいんじゃ〜〜〜

385 :名無し草:02/11/30 23:50
>>384
某演劇漫画のような苦しみですね。


386 :名無し草:02/11/30 23:52
>383
アフマドがカコイイ話と生への帰還と自分でないの?


387 :名無し草:02/11/30 23:56
ナルホドね

388 :名無し草:02/11/30 23:57
アフマドの話ってどんなの?

389 :名無し草:02/11/30 23:57
自分が好きならオリジナル作品、書けばいいのに

390 :名無し草:02/11/30 23:59
アフマドが鬼畜な話をぶち壊したこと言ってんの?

391 :名無し草:02/12/01 00:01
誰が?

392 :名無し草:02/12/01 00:04
さあ、誰がかはわかんないけど。

393 :名無し草:02/12/01 00:05
強制的に中断させられたアフマドの話の続き、待ってるよ。

394 :名無し草:02/12/01 00:06
Myルール適用したいヤシが常駐してるのは確かだな

395 :名無し草:02/12/01 00:07
アフマドの続きはあたしも待ってるよ!>作家様

396 :名無し草:02/12/01 00:08
>393
待ってるヤシその2です

397 :名無し草:02/12/01 00:12
じゃその3!

398 :名無し草:02/12/01 00:13
いろんな作品が読めるからこそ
ここが好きなんだけどなあ・・・・。
途中でストップされてる作家さんカムバーック!

399 :名無し草:02/12/01 00:16
>>390
そうだよ。

400 :名無し草:02/12/01 00:16
1話うぷしたら最終回まで書く、をお約束に入れてほすぃ

401 :名無し草:02/12/01 00:18
そこまで強制するつもりは無い
いつでも自由に好きな話を書いて欲しい

402 :名無し草:02/12/01 00:20
作家様の都合で中断ならもちろんしかたないけど
読みたくない人がいるから中断というのは悲しい

403 :名無し草:02/12/01 00:23
394さんに同意です。そーゆーのもいるけど、話のつづきとかいろんな作品読みたい人のが多いから作家さん
も構わずどんどん書いてほしいです。


404 :400:02/12/01 00:27
>401
402サマの言われるとおりの意味です、すいません

405 :名無し草:02/12/01 01:34
>「妖しの恋」作家様
いつも楽しみに拝見しておりました。
私は「ちぇんじ」を知りませんので、もとのバージョンも
楽しませていただきましたが、たなぼた式に新バージョンまで
読ませていただいてありがとうございました。
特に29あたりで劣等感に苦しむミタムン王女をキャロルが
なぐさめるシーンにはじーんとしてしまいました。
続きを切に切にお待ち致しております。

406 :名無し草:02/12/01 06:31
>397
4!


407 :名無し草:02/12/01 23:41
それで、某HPってどこなわけ??

408 :名無し草:02/12/02 00:23
個人サイト晒すのは迷惑じゃないか?

409 :名無し草:02/12/02 01:47
このスレはいつからヲチスレになったんだ?
ヲチするなら、他のスレでやって欲しい

410 :名無し草:02/12/02 01:47
ただでさえ土日枯れが寂しいというのに、なんかさらに心細い気持ち。
作家の皆様、また来て来てくださいますよね。おながいです!
平日upをお心から待ちしている熱烈読者でございます。

411 :名無し草:02/12/02 12:32
>「妖しの恋」作家様
今日は続が読めますか?待ち遠しくて仕事が手につきませぬ〜〜

412 :名無し草:02/12/02 12:44
>411
私も同じ気持ちです。
さっきから掃除・洗濯に身が入らない。作家さま〜

413 :名無し草:02/12/02 12:56
>妖しの恋作家様
作品のファンだというのは言うまでもなく、
あなたの対応の潔さ、実に美しかった。
 心からお待ち申し上げております。

414 :名無し草:02/12/02 14:09
>413
禿しく胴囲〜〜!
書き直された作品もまた素敵ですた。

>「妖しの恋」作家様
心配ですが、続きが読めるのをお待ちしています。


415 :名無し草:02/12/02 14:27
>妖しの恋作家様
私も毎日の更新を楽しみにしている者です。
続きお待ちしておりますので、なにとぞ続きを!!
よろしくお願いします!

416 :妖しの恋:02/12/02 15:02
>>325
31
「キャロル、手空きであれば今日は私の手伝いをいたせ」
午後、いつものようにミタムン王女の部屋に参上し雑務をこなしていたキャロルにイズミル王子が声をかけてきた。
「他国に遣わせし者より、書籍類などの献上があった。興味深いので整理してみようと思ってな。お前の勉強の進み具合を見てみるのにも都合良かろう!」
王子はさっさと先に立って歩き出した。ムーラに促され、大急ぎで王子を追うキャロル。

「入れ」
王子はちらっとキャロルを振り返っただけで、さっさと部屋の中に進んだ。
広い部屋だ。壁際には高い棚が並び、粘土板や巻物が詰まっている。棚が途切れた壁には使い込まれ、猛々しい光を放つ武具類が立てかけられている。
だが全体的に質素で実用一点張り、言われなければ世継ぎの王子の部屋とは思わないだろう。
(ふーん・・・。男の人の部屋の典型ね。兄さんの書斎も武器はないけれど、こんなかんじだもの。家宅捜査が今すぐ入っても何も疚しいことはありません、
何も隠していませんって主張しているみたい)
「どうした?早く参れ。これがそなたに頼みたい書物だ」
王子は積み上げられた巻物を指し示した。
「読んでみよ」
王子はキャロルに着座を目顔で促し、巻物を差し出した。


417 :妖しの恋:02/12/02 15:03
31.5
「はい・・・。これは『薬草総覧』『風土・地誌』『本朝口伝』『幾何』『薬学』に『世界図絵』『ギルガメシュ王の事跡』・・・」
キャロルは次々に読み上げ、無意識に分野別に巻物を選り分けた。
(実用書や歴史から神話や詩歌の類まで。とにかく知識を求める王子に手当たり次第に送りつけたってかんじね。でも、これを全部読むことができたら
どんなにすばらしいことかしら?
系統立てて学べばずいぶん役に立つわ。知識を深め、それを元に国を富ませることができる!)
王子は王子で、読み書きを習い始めて日も浅いキャロルがすらすらと文字を読み上げ、あまつさえ巻物をその内容によって選り分けているのに舌を巻いた。
彼は武術や軍事といった事柄と同じくらい、学問を重んじていた。軍事力によって周囲を威嚇し、従わせ版図を拡げることはできても、学問や知識を持った
人々が内政をよくしないことには、せっかくの領土を維持することはできないし、また民の安寧を図ることもできないと考えているのだ。
やがてキャロルは50冊になりなんとする書物の題名を全て読み上げた。
「ふむ・・・。なかなかよく勉強しているようだな。キャロル、そなたはミタムンの小姓だが時々はこのように私の秘書のような役目もいたせ。
お前はそういうことに向いているようだ」

418 :妖しの恋:02/12/02 15:04
32
キャロルは時々、王子の書籍や粘土板の整理に借り出されることになった。細々した整理に妙に才能があり、知識量もなかなかどうして半端ではなかったからだ。
王子は特定の者を贔屓して扱うような人間ではなかった。だから仕えやすい主君と言うことになるのだが、その王子は最近キャロルを妙に意識するようになっていった。
何かの折りにキャロルがどきりとするほど女っぽく見えるのだ。細い指、折れそうな手首、綺麗な横顔のライン、濃い睫に縁取られた青い目。細い骨格。
一度、巻物もろとも踏み台から落ちかけたキャロルを王子が受け止めてやったことがあった。
軽い身体は何やら甘い娘じみた匂いがして、王子は本当に狼狽えた。まるでまだ女を知らない少年のように王子は取り乱してしまったということだ。
(全く・・・男相手に何だ、私は!)
王子はその日は早々にキャロルを仕事から解放した。
一人きりの部屋で政務向きの文章だとか、諸国の動静や気候風土を記した文章に目を通していたが全く頭に入らない。浮かぶのは先ほど抱き留めたキャロルの華奢な体つき、
細いうなじ、形の良い耳朶が深紅に染まった有様、恥じらって潤んだ勿忘草の青い瞳・・・。
(馬鹿馬鹿しいっ!相手は男だぞ、男!私だって男で、女に趣味はあっても男をそういう対象として見るほど倒錯はしておらぬ・・・!)
王子だってそういう性癖の男性がいることは知識として知っていたし、他人の趣味についてとやかくいうような趣味はなかった。だが、自分の中にどうやらそういう要素が
ありそうだとすると・・・?
王子は書物を乱暴にうち捨てると剣を取って練兵場に向かった。体を動かして忘れてしまおうと思ったのだ。

「キャロル?どうしたの?」
自分の居間にやってきたキャロルを見てミタムン王女は不思議そうに声をかけた。以前の短い、しかし深い語らいの後、彼―キャロルのことだ―を信頼に足る相手だと
見なすようになっていた王女である。
「な、何でもございません」
キャロルは短く答えただけだった。先ほどの王子の息づかいや体温、肌の匂い、心配そうに覗き込んでくれた顔がちらついて、とても落ち着いた顔になどなれそうにない。

419 :妖しの恋:02/12/02 15:05
33(ダイジェスト版)
その日、ミタムン王女は献上品の子馬に乗った。20世紀で取った杵柄、乗馬なら少々の心得があるキャロルは馬丁と一緒に王女に付き従った。おとなしい子馬に乗る王女は得意満面。
ところが子馬は初冬の風に飛ばされてきた大きな落ち葉に驚いて暴走してしまう。馬丁の馬も煽られて暴れ、乗り手を振り落としてしまった。
少し離れていたキャロルは単騎、王女を追う。走っている馬から乗り手だけを降ろして、かつ自分の馬に移動させてやるなどキャロルはやったことがない。
案の定、王女を暴れる子馬から降ろすことはできたが、今度はキャロルと王女が一緒に落馬してしまう。当然、というかお約束通りというか下敷きになってキャロルは気絶状態になる
「キャロルっ!しっかりしなさいっ!」
驚いた王女はキャロルに縋って、その身体を揺さぶった。
そして・・・。
王女は自分の縋った「少年」の身体の異変に気づく。小振りながらまろやかに柔らかく隆起しているらしい胸。おそるおそる脚の間を探ればそこは自分と同じで・・・何も「ない」!
深窓のお姫様とはいえ、姦しい侍女に囲まれての日々の生活。実の父親の後宮は華やかだし、侍女の所に恋人が通ってきているのを見かけることもある。自然、耳年増にもなるし、
生物学的な男女、もとい雌雄の違いなどペットの小動物を見ていれば分かる。
「・・・キャロルは・・・女・・・?!」

気が付いたキャロルの許を訪れた王女。人払いをして部屋は二人きりだ。怪訝そうなキャロルに王女は単刀直入に切り出した。
「キャロル、お前は女だったのね。どうして男のふりなんてしていたのかは知らないけれど・・・まさかお前はルカの・・・ルカの恋人なのですか」
愕然として起きあがるキャロル。王女はお前の秘密を知っているのは私だけと薄気味悪いほど静かな口調で告げた後、にわかに感情を爆発させて再度問うた。お前はルカの恋人なのか、と。
キャロルはこのとき、初めて王女のルカに対する想いに気づく。素早く考えを巡らせるキャロル。王女が気にしているのはルカと自分の関係だけだ。この一点さえ納得させられれば、何故、
自分が男のふりをして結果として皆を騙すような仕儀となったかも比較的容易に納得させられるだろう。

420 :妖しの恋:02/12/02 15:06
34(ダイジェスト版)
キャロルはまず、自分は絶対にルカの恋人などではないこと、そもそもキャロルが女であると知ったのは王女が最初であるということを言葉を尽くして語った。そして何故、ルカの側にいることになったかのいきさつも正直に話して聞かせた。
「ルカ様はあの通りの清廉実直なご性質です。私を秘密の恋人として側に置くために男のふりなどさせるような方ではありません。
あの方はご自身、戦争で身内を失い辛酸を舐められたから、家族から離れたった一人の私の身の上に同情して従僕にしてくださったんです。
・・・恩ある方を謀ったような形になったことは本当に申し訳なく思っております。でも私自身、女であることを隠さずにいたらとても今まで無事ではいられなかったでしょう」
説得力と誠意あるキャロルの話に深く頷く王女。
キャロルは女同士である安心感からか初めて、請われるままにアイシスにこの世界に引き込まれたことも語って聞かせた。
よく分からないがどうも自分はメンフィスの命の形代の役割を負わされているらしいこと、自分の命とメンフィスの命が結ばれているのでアイシスはキャロルを一生監禁状態に置くつもりであったらしいこと、自分をちらっと見かけた
メンフィスが興味を引かれたらしいのでアイシスは急遽、キャロルを地下牢に移そうとしたので脱出してきたこと・・・。

とても信じられないでしょうねと言葉を終えたキャロルに王女は首を振った。
「アイシス女王が使ったのは生命転移の秘術でしょう。死にかけた人間の命運や魂を他の誰か元気な人間のそれと同化させて生きながらえさせる術。聞いたことあるわ。お前はきっとそのために転移の術を使って女王の所に呼び寄せられたんだわ。
・・・すごいわね、本当に禁断の魔術を使うなんて!いくら好きな相手のためだからって!言ってみればメンフィス王はもう死人なわけよ。死人を愛せるもの?・・・哀しいわね」
今度はキャロルが驚く番だった。王女はキャロルに様々な不思議を話してやった。古代人の王女には身近な話だ。お返しに20世紀の話をしたり、ルカにしたように珍しい20世紀の物品を見せるキャロル。
二人はいつしかすっかりうち解けていった。やがて王女は言った。
「キャロル。お前は私の小姓におなり。女のお前がルカと同居しているのはおかしいわ。私からお兄さまにお願いするから!」

421 :妖しの恋:02/12/02 15:07
35(ダイジェスト版)
ミタムン王女は兄イズミル王子にキャロルを自分専属の小姓に呉れるよう本当に嘆願した。
さすがに妹に甘い兄王子もこの我が儘に苦い顔をした。キャロルは秘密を打ち明けたミタムンの側の方が今となっては安心かもと思う一方で、王女が自分を身近に置きたがるのはどうも王女がルカを好きなせいらしいとも察する。
ところが結局、ルカの任務―クレタ方面での諜報活動―がエジプトの地中海進出の動きを受けて予想外に延びそうだと分かったため、キャロルの身分は暫くの間、ルカの従僕からミタムン王女の小姓に変わることを余儀なくされる。

王女は大喜び。ついでにキャロルの部屋を奥宮殿に移したいと申し出るが、さすがにこれは受け入れられなかった。
王女はそれからまもなくお忍びでキャロルのいるルカの居室を覗きに来た。驚くキャロルを尻目に室内を珍しそうに眺める王女。台所の一角を仕切っただけの簡素なキャロルの部屋は、とても高級将校が密かに囲っている
「愛人」の部屋には見えず、お転婆な王女もようやく安心するのだった。王女はキャロルに、実はルカが好きなのだと告白する。キャロルはそんな王女のかわいらしさといじらしさを微笑ましく思うのだった。

ハットウシャの冬は深まってきた。古代に来てからずっと健康だったキャロルだったがここに来て疲れが出たのか風邪をひいて寝込んでしまった。周囲の人々は何だかんだとキャロルのことを気にかけてくれるが、病状は、
はかばかしくない。残り少ない薬を惜しんでキャロルはのど飴で病気をごまかす始末だった。
ある満月の真夜中。熱と寝汗で眠れないキャロルは火照った身体を冷やそうと、ふらふらと表に出た。足下をそっとペンライトで照らしつつキャロルはいつかミタムン王女が泣いていた泉のほとりに来た。
(冷たくて気持ちよさそう・・・。少しだけ・・・冷やしてみよう)
胸元を少しはだけ、熱で火照った肌をキャロルは冷たい水に浸した布で拭っていった。白い肌を塗っていた赤土の染料も、髪を染めていたクルミの渋も流れ落ち、本来のキャロルの容姿が露わになった。

一方、深夜にまで及ぶ政務と書見に倦んだイズミル王子も頭を冷やしがてら庭に出てきていた。密かな水音と人の気配を怪しんだ王子が泉をのぞいてみると、そこには月明かりとペンライトの光に照らされた
金髪色白の「少女」がいた。

422 :妖しの恋:02/12/02 15:13
様々なアドバイスやお言葉をくださった皆様、ありがとうございました。
今回は長くなりそうな部分をダイジェスト版ということで書きました。
落馬して気絶したキャロルを介抱(?)するうちに本当の性別に気づく、キャロルの夜中の(しかも冬の)水浴びを隙見してしまう王子などご都合主義てんこもりの展開です。
王女が落馬するという場面からベルばらを連想される方もおいでかも知れません。
あのお話はもちろん大好きですが、剽窃かと言われるとあの名作と自分のご都合主義展開とは違うとしか言えません。
ですが、もし不快に思われた方がおいでになりましたらお詫びします。

423 :名無し草:02/12/02 15:43
流転の姫君作家様、ご降臨をお待ちしています。

424 :名無し草:02/12/02 16:25
妖しの恋 作者さま〜。
待ってましたよう〜。うううう、ナイスな展開です。
いろんな方がいて、嫌な思いもされたと思いますが、私は作者さまのお話が
好きですし、応援しています。これからも楽しみにしていますよう。
たのしいひと時をありがとうございました。


425 :名無し草:02/12/02 16:58
妖しの恋作家様、続きのUP大感激ですぅ!ますます今後の展開が気になります〜。


426 :名無し草:02/12/02 17:58
他の作家は、妖し・・・を盾にして騒ぎが収まるのを待ってるわけ?
それともROM専たちの反応次第で続きを書くかどうかを見てるとか?

どっちでもいいけど、叩かれた作家ちゃんがいぢけ同情欲クレクレ厨じゃなくてヨカッタ。
でもさー、王子×キャロルの妄想(特にエロ系)は酷似したワンパタエロが目立ったけどぱくり論争無かったね(藁
ア。。。作家が皆いっしょとか(藁 藁 藁

427 :名無し草:02/12/02 19:15
叩かれた・・って叩いてるの君だけぢゃないのー?
自分の気にいらないことあると即暴れ出す困ったチャン、スゲー迷惑。
酷似したワンパタエロて何よ?そこまで言うならどの作品にも全く似てない小説書いてみ?
王子がキャロルにキスしただけでパクリだと騒いでやるからさ(w

いちいち反応すんなとクレームもらうの承知のうえで言わしてもらいました。
かりに作家が皆いっしょでもそれのどこがいけないんだよ?関係ないよ。毎度引っ掻き回す
論争好きのバカが鬱陶しくてムカツキまくったもんで。スレ汚しスマソ。逝ってきます!

428 :名無し草:02/12/02 21:19
皆さん、難民板に来たたころのことを思い出しましょう!!!
過去ログを読んでいたらこんなカキコがありました、
☆☆☆王家の紋章番外編2☆☆☆のものデツ。まんま貼ります。

>158 名前: 名無し草 投稿日: 02/03/06 00:47

おや、懐かしいスレが……創作板にいたころに、少々書き手をしていました。
創作板での二次創作論争の時にキャラなりきりに移ったのでしたよね?
わたしはその時見失ったきりでした。

ようこそ難民板へ。
ここは別の板で収容しきれなかったいわゆる「アウトロー」収容板です。
二次創作小説はやはり揉めますね……FF・DQ板でも一時期とても荒れておりました。
一つ一つが長い書き込みであること(この板では、意味もない長文コピペ以外は気にしないで結構です)
続けて投稿の際に割り込みで双方気まずくなること、
小説と感想が繰り返され他の話の余地がなくなる(逆も然り、何かの話題で小説が書き込みづらい等)
これを厳密に分けようとすると、得てしてスレが寂れることが多いようです。
なんでもありの大らかな気持ちで行ってはいかがでしょうか。

煽りはドラ目で生暖かく見守ろり(・▽・)b


>427逝くな。私も同じ気持ちだ。




429 :名無し草:02/12/02 21:32
妖しの恋作家様、大量UPありがとうございます。
叩いたり煽ったりする人はいますが、作品を待っている人たちがたくさんいることも
忘れずに、続きをどんどん読ませてくださいませ。
他の作家様も続きをお待ちしております。

430 :名無し草:02/12/02 22:29
>427
あたしも同意見で苛々してたくせして書く勇気なかったんだ。正直スカッとした。
428のコピペ思い出してまた生暖かく見ていけそう。汚れ役買って出てくれてサンクスです。
逝かないで!
作家様方、これからも作品いっぱいUPして下さいな〜期待してます。

431 :名無し草:02/12/02 23:03
王子、おいらが悪かったよ。謝るから余所様のスレに迷惑かけるのはやめてくれ。

432 :名無し草:02/12/02 23:35
>>431
どこのスレだよ?言ってみて〜

433 :名無し草:02/12/03 00:11
>>432
ここのスレに迷惑かけんなって意味じゃないの?
こっちから見れば一応王子はあっちの人だから


434 :彼の見る夢8:02/12/03 00:13
>>426
単に遅筆な上、筆不精なんですよ。
でも、あのアフマド話だけは現在の文化・風習に偏見を助長しかねないので賛成できません。
女性の扱いに関してもね。
FMGに関するHTMLを紹介しておられた方を尊敬します。
>>271
その後の1ヶ月足らずアンハトホルラーは足繁く異母姉の館に通った。
甥っ子たちに婚約者でもある姪がフナヌプ将軍の昔馴染みの客人に夢中だとあおられて
気になって訪れたのが最初だったがその客人は話しても剣の相手をしても自分を引き込む存在だった。
彼といると余計な荷物をおろしているような気分になる。
ライアンJr.はこの王子をフナヌプに言ったように自立の方向へ誘導していたが、
同時に自分でも今更ながらに気づいてきたことがある。
父と子であってあっても母と子であってもそれぞれ別の人間なのだ。
自分もセベクネフェルウもこのアンハトホルラーも。それぞれで幸福を追求している。
あの王が生物学上の父である自分の存在は母の不幸の一因かもしれない。
それは自分でどうこうできない。
だが自分は確かにアンハトホルラーのコンプレックスやかれの母の不幸の一因となってしまった。
もっともあのヒッタイト皇女はすべてを誰かの所為にして彼女の父や自分の行動など省みなかったが。
どうあれこうあれ自分だって自分のしでかしたことのすべてに蹴りをつけれたわけでもない。
それでも生きて幸福になりたいと思う。
自分の子供ができたらその子もまた自分の幸福を求めていくのだ。
ただ他人を踏みにじってはいけない、やれば大きなしっぺ返しがくることを教えておけばいい。
妻のところへ帰って子供を作ろう。一つの人格を育てるのはきっと楽しい。
彼女の望みでもあるし。
約一ヶ月後、神殿に詣でた異母妹夫妻の一行に紛れ込んだ彼は河底を調べるうち渦に巻き込まれ帰還した。


435 :名無し草:02/12/03 00:16
そ。そして付け加えると431はご本人

436 :名無し草:02/12/03 00:18
とりあえず私はアフマドの話待ってますので。
気が向いたらいつかどこかでまた。

437 :彼の見る夢8:02/12/03 00:19
しまった!
FMGではなくFGMでした。
ああ、恥かき子。

438 :名無し草:02/12/03 00:21
434作家様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

439 :名無し草:02/12/03 00:24
アフマドの続きも読みたい。最初の数話だけで判断するのはどうかと。

440 :名無し草:02/12/03 00:24
>434
マジですか?

441 :名無し草:02/12/03 00:27
何が?>440

442 :名無し草:02/12/03 00:29
とうとう出たか?

443 :名無し草:02/12/03 00:31
何が出たの?

444 :名無し草:02/12/03 00:36
>>441
ライアンJr.が アンハトホルラーのコンプレックスやかれの母の不幸の一因となってしまったことが!

445 :名無し草:02/12/03 00:36
誤爆でつ。

446 :名無し草:02/12/03 00:44


751 名前: 花と名無しさん 投稿日: 02/11/25 10:29 ID:???

初代達と忘年会に行って来ました。(クラブ内で主催する忘年会)
初めて話をしました。彼女SMAPの慎吾が好きだそうです。
私の友人とでなんとか王家の話を持っていくと「何それ?」と
言われてしまいました。予想外の回答にそれ以上話せませんでした。
あんなけ話してたのになぜ今になって〜以上報告でした


初代王子降臨

447 :名無し草:02/12/03 00:48
アフマドの話も続けて欲しかったな。(批判が多ければ中断も仕方ないけど)

448 :名無し草:02/12/03 00:49
だ〜か〜ら〜自分で告白すんなって、王子。

449 :名無し草:02/12/03 00:50
批判は話が完結してからにして欲しかった。つづき読みたいです。

450 :名無し草:02/12/03 00:58
>妖しの恋作者さま
ご都合主義てんこもりマンセー!!!です。萌えポイントの文法がある程度パターン化
しているのは、これは当然だと思いますよ。続きを楽しみにしています。

>彼の見る夢作者さま
あれ、ライアンJr.はもう現代に帰っちゃうのですか。異母弟の心理描写や、アイシス
の悪行暴露など、古代での展開をもう少し多く読みたかった・・・
ライアンJr.は現代でどんな夢を見るんでしょうか。


451 :名無し草:02/12/03 03:54
難民板が移転する予定らしい。
前の移転の時みたいに、焦って新スレ立てないようにね。


>1 :夜勤 ★ :02/11/28 19:22 ID:???
>corn を廃止して hobby2 を作る事にした。
>oyster2 サーバ(●で買ったやつ)のお話です。

>corn は廃止して、hobby2 に入らないのは、cocoa or ton の予定。

「■ hobby2 サーバに入る「板」募集中。。。」スレよりコピペ
http://qb.2ch.net/test/read.cgi/accuse/1038478961/


452 :名無し草:02/12/03 08:51
Jr.はご帰還ですか。
もうちょっと古代編が読みたかったです。
それぞれの人生のその後が気になっていたし。
そろそろ畳んでいかれるんでしょうか。

453 :名無し草:02/12/03 10:05
FGMのリンク貼った人は一人とは限らないと思ふ。
真面目なカキコしてる人と便乗煽りとは分けて考えるべし。

454 :妖しの恋:02/12/03 14:57
>>421
36
(あ・・・?! あれは誰だ? 女・・・? き、金色と白の女?! 馬鹿な・・・まさか水の精か何かか・・・?)
王子は暫く呆然と水辺で身体を拭き清めるキャロルを見つめていた。寝間着の上に毛布を羽織っただけのキャロルは
細い腕をむき出しにして、今は毛布を脇にうっちゃり、薄い毛織りの寝間着がわりのチュニックの胸元もはだけている。
そこからのぞく陰影は、まがう事なき女の形―まろやかな胸の隆起―を予想させる。
蒼白く冴えた月明かりが照らし出す白い肌。冷たい金属の光沢を宿す金色の髪。初めて見る不思議な乙女の足下には
何と星が―それはただのペンライトの微光なのだが古代の夜では驚くほどの光量に見えた―落ちて居るではないか!
やがて水辺の乙女は形良い横顔を王子のほうに向けて、細いうなじのあたりを拭き、その手を胸元に潜り込ませた。
(もう我慢できぬ!)
夢でも見ているのだろうかと暫くキャロルを見つめていた王子は一歩踏み出した。
かさっ。
枯れ草を踏みしだく音は驚くほどの大きさで、キャロルはもとより音を立てた王子も驚いて一瞬固まってしまった。

(! 誰っ! 誰かいるのっ?! 何てこと、どうしよう?)
月明かりとペンライトの光でキャロルの方が闇を見はるかすのには不利だった。恐怖で強ばる身体を叱咤激励して
キャロルは必死に立ち上がろうとするが、王子の動作の素早さの前には無力だった。
「待てっ、そなたは誰だ?」
王子はキャロルの顎に手をかけて自分の方を向かせた。恐怖に見開かれた瞳が・・・月明かりを透かして
透明な水のような碧に輝く瞳が王子に向けられた。
(何と・・・何と碧い目をしている?! 白い肌に碧い瞳、金色の髪の毛?!
初めて見たぞ、こんな・・・!)
王子は抗うキャロルの手首をも無遠慮に掴むと、まじまじと娘を見つめた。
珍しいだけではない、美しささえも兼ね備えた不思議な容貌の娘を。よく知っている誰かにひどくよく似ている娘を。
はしばみ色の瞳に凝視されたキャロルは恐怖のせいで声も出ず、ただがくがくと震えるばかりだった。
(イズミル王子っ?! 何故、こんなところで顔を合わせるの?)

455 :妖しの恋:02/12/03 14:59
37
しばらくの間、二人は見つめ合っていた。先に口を開いたのは王子の方だった。
「そなたは誰だ?人なのか?それとも・・・水の精か?このような冷たい夜更けに水辺で戯れているそなた・・・」
可憐な容貌の娘を見つめながらしゃべっているうちに王子は夢見心地になってきた。娘を近々と引き寄せ、ほのかな月明かりが照らすその白い
―今は緊張と戸惑いで蒼白といっていいくらいの色だ―顔を見つめ、繊細に整った顔立ちを惚れ惚れと見つめた。
「喋れぬのか?私は怪しい者ではない。・・・この奥庭の主ぞ。主に断りもなくここにいるそなたは何者?」
王子に捕らえられた娘の、濃い睫で縁取られた大きな瞳はうっすら涙で潤み、形の良い唇―きっと薔薇色と真珠色が混ざったような色合いだろうと
王子には何故か分かっていた―も強ばったままだ。
(どうしよう、どうしよう?! 王子に捕まってしまうなんて!正体がばれてしまったらどうなるの?)
一方のキャロルはパニックに陥ってしまって、王子もまた狼狽え浮き足立っていることなど分かりはしない。
キャロルの脳裏にこれまで王子が話して聞かせてくれた様々な事柄が去来する。
―国を守ることは民を守ることだ。外国人は我が国に活気をもたらすが、同時に隠密である可能性もある。外国人には用心せねば、な。
―国政に携わる者、常に正直・誠実であれと言われてもそれは無理だ。心殺し、嘘をつき、冷酷になってみせることこそ必要な資質となることも多い。
・・・少しでも怪しいと思った時には・・・殺さねば、な。
(殺される・・・!)
キャロルは、ふるふると震えていた濃い睫を耐えきれずに伏せてしまった。
慧眼の王子は瞬時に自分の正体―ルカの従僕にしてミタムン王女の小姓キャロル。外国人で、しかも女でさえある!―を見抜いたと思ったのだ。
ルカやミタムン王女にうち明けたように様々な事情が重なってこうなってしまったとはいえ、王子は聞く耳を持たないだろう。
王子が常に携行している冷たい鉄剣・・・それが自分に振り下ろされると遠ざかりそうになる意識の奥で覚悟したとき。
王子の吐息が顔にかかったかと思うと、その唇がキャロルのそれに押しつけられた。

456 :妖しの恋:02/12/03 15:00
38
「・・・!・・・」
キャロルは驚いて目を見開き、身体を突っ張らせた。
王子はひしとキャロルを掻き抱き、無我夢中で接吻を贈っていた。本当に・・・まるで初めて女に接吻した少年のように。
物慣れぬ不器用な子供のようなやり方で。まるで噛みつくような激しい接吻。

王子もまた自分のやり方に驚いていた。まさか自分にこんなことができるとは?!真夜中の寒い庭で女を掻き抱いている自分。
たった一粒の星明かりをお供に、月の光に照らされて水晶のような冬の水と戯れていた少女。昼間の明るすぎる光とはまた違う、
ほのかな、しかし冴えた光の許で見た少女の顔は驚くほど美しかった。
無垢な幼子の顔、そして成熟し開花するのを待っている傲慢なまでに潔癖な乙女の顔、知らぬ間に男を誘い狂わせる罪深い女の顔
・・・が同時に王子を驚いたように見つめ、そして懼れるようにわなないた。
何かが王子の中で解き放たれた。これまでだって女が欲しいという衝動を覚えることはあった。でもこれほどまでせっぱ詰まった
欲望を感じたことなどあったろうか?
ほの見えた胸元の白い肌、いかにも未熟な膨らみ、細い身体の線、気持ちよさそうに水を触る表情、全てが仕事に倦み疲れ、
様々に鬱屈した若者の理性を解放した。
(この少女に触れたい、この少女が欲しい!)
半ば夢を見ているような心地で王子は作り物めいた美しさを持った少女を抱き寄せた。水に濡れた肌はひんやりと冷たいのに、
その奥は驚くほど熱い。神々が気まぐれで大理石で作った人形が命を得る瞬間にでも居合わせたのだろうか?

キャロルの驚きをよそに王子の接吻は熱を帯びてきた。押しつけられていた唇はいつの間にか啄むような動きを加え、
固く閉ざされたキャロルの唇を開こうとし始めた。
息苦しさに腕の中の少女が口を開けば、すかさず王子は舌を入れ少女をもっと深く味わい始めた。甘い香り。
(いかにも男慣れしていない・・・)
王子は腕の中のキャロルが動かないのを良いことにますます行為に熱を入れだした。
「そなたが誰でも構わない。そなたが愛しい・・・」
キャロルはただ礼儀正しく謙抑な性格だとばかり思っていた青年の思いがけない行為に硬直するだけだった。


457 :名無し草:02/12/03 19:49
王子・・・萌え

458 :名無し草:02/12/03 19:56
>彼の見る夢 作家様
アップありがとうございます。硬派な展開がいいですね。予想はずしてるかもしれないけど、銀英伝とか読んでると馴染みやすい文体&展開ですね。
あと何気なく作者様の専門知識の深さみたいなのがかいま見えるのも個人的にはイイ!です。
今後の展開楽しみです。

>妖しの恋 作家様
こっちはまた王道をいくというか萌えツボを押さえた展開で安心して読めます。
最大公約数的作品?!
ほんでも意外と情熱的でせっかちさんらしい王子の甲斐性が面白いです。

>流転の姫君 作家様
続きすっごく楽しみにしています。一番好きな作品なので中断はつらいです。読みやすいし、わかりやすいし。
(自分が教養ないだけなんですけど難しい言葉とか出されるとちょっともにょりますね 笑)
復活お待ちしています。流転の先になにがあるのか?!(たぶんハッピーエンドだろうけど)
王子とキャロルの幸せな生活を見せてください!


459 :名無し草:02/12/03 20:02
>例のアフマド作家様
こーいうとこで言うことじゃないかもだけど、続き読みたいです。
まぁ差別偏見を助長するとか、女性の扱いが女性にとって屈辱的で不快だとかの意見もあると思いますが、少なくとも自分はあれはタダのファンタジーだと割り切って読めました。

>パオパオ様
どこかにお引っ越しされたんでしょうか?すっごい目新しい設定だったんで続きというか結末が是非知りたいのです。
あらすじや新しいお引っ越し先でもいいです。教えてください。


460 :名無し草:02/12/03 20:03
つっ、続きがまっ、待てない〜〜ハアハア

461 :名無し草:02/12/03 20:28
>459
>どこかにお引っ越しされたんでしょうか?
・・・・ちゃんと読んでいたの?パオパオ様が書いているわけじゃないと思うが、
某超有名サイトに連載中。

例のアフマド作品、まあいろいろな考え方がある事でしょう。
ファンタジーと読めるところがすごいかも。
続きが再開される事は別段いいのですが、たぶんワタシはとばしてしまうと思う。
前作は読んで暗い気分になったので。
・・・大人になりましょう。

462 :名無し草:02/12/03 20:55
今までレイプシーンはイズミルやメンフィス相手のもいくつかあったけど、
そんなに叩かれなかったよね。
アフマドFGM小説(?)が叩かれたのは、感情もいきさつもなにもかも
すっとばしていきなり突入!なんて即物的なものだったからじゃないのかなと
個人的には思う。
その上笑いながらFGMの想像してるなんてアフマド好きじゃなくても
悪寒がする。
家族や爺やがFGMを強要するのに逆らってキャロルを守るっていうのだったら
まだしもね・・・

463 :名無し草:02/12/03 21:59
>某超有名サイトに連載中。
教えてちゃんと呼ばれようと聞きまつ。ヒントだけでも教えてくれ〜〜
わからんもんはわからん

464 :流転の姫君:02/12/03 22:05
>>268
67
婚儀の後、キャロルとイズミル王子は忙しいながらも
幸福な時間を過ごしていた。
名実共にキャロルを妃とした喜びは大きく、キャロルを貪欲に求め、
キャロルも王子と共に過ごせる時間をどれほど待ち焦がれた事だろう。
だがヒッタイトを取り巻く状勢は刻一刻と変化しているらしく、
国王や将軍を交えてイズミル王子も協議を欠かす事は出来なかった。
リビア王女を妃に据え、リビアの加勢もあり得るエジプトはこの先どうでるのか?
またアイシスを妃にしたバビロニアも侮るわけにはいかぬ。
秘密裏に運ばれてくる情報を元に流石の国王も難しい表情である。
王子は「姫を連れて状勢を調べて参りましょう」と自ら提案した。
新婚の姫に我がヒッタイトと同盟を結んでいる国々や治めている国を見せると言えば
さほど奇異には思われないだろうと。
大げさにならぬ程度に兵を連れ、依然と同じように調査し、打つべき手があれば打ちましょう。
ヒッタイトに戻る直前にメンフィス王がキャロルを連れ去ろうとしたことや
またおぼろげではあるが、カーフラ妃との不仲も囁かれており、
リビア国王の暗殺未遂事件などもあったと未確認であるが報告も入っている。
あの燃え盛る炎のような少年王は次にはどのような手ででてくるのだろう。
自らの婚儀で賑わっている最中、キャロルを拉致監禁し、妻となったアイシスにも明かさなかった
何処となく得体の知れないラガシュ王も油断はならない。
キャロルの機転で城を破壊されたアルゴン王の怒りも相当なもので、反ってキャロルへの執着心も強まったとの話もある。
イズミル王子から出立の話を聞いてもキャロルは何も言わず頷いただけだった。
戦いがはじまる・・・と二人はお互いの瞳の中に確信した。


465 :名無し草:02/12/03 23:06
どんな作風であれ、私はここに掲載される作品全てを平等に応援しています。

466 :妖しの恋:02/12/04 14:04
>>456
39
イズミル王子は無我夢中であった。
いつの間にか接吻だけでは飽きたらず、柔らかな身体をもまさぐる。骨細の華奢な身体。固く細い小鳥のような骨を包む柔らかく薄い肉付き、
すべらかな肌。熱を帯びた身体からは甘い香りが匂い立つ。
「そなたは誰なのだろう・・・。一目見ただけなのに、どうしてこんなに愛しく心惹かれるのだろう・・・」
王子は相手が無抵抗なのを味気なくも、都合良くも思いながら唇をうなじに移していった。これまでだってこういうふうに経験のなさそうな女
を相手にしたことはあった。身分柄、火遊びの相手には不自由しなかったし、非公式とはいえ側室のような立場に置いてある女もいた。
しかし王子にとって、女はただ自分の身分と地位に惹かれて寄ってくるだけの生き物、言葉は悪いが男としての欲望を満たし愉しむだけの存在だった。
それなのに、この不思議な相手はどうだろう? 一目見ただけで切羽詰まった欲望を感じた。いや欲望の一言では済ませまい。愛おしさのような
感情をも覚えたのだ。手元に引き寄せ確かめずにはおれなかった。
たぶん、こういうやり口は最低なのだと理性では分かっていても、本能の方はもう押さえが効かなかった。人外の存在なのかも知れないと
心のどこかで屁理屈を捏ね、それならば自分が人間の世界に引きずり込んでやろうと彼は半ば本気で考えていた。
それは彼が日頃、全くの絵空事、我が身には絶対に起こり得ないと軽蔑混じりの感情と共に考えていた「一目惚れ」という突発事項なのだが
・・・さて彼にその自覚があったかどうか。

押さえたあるか無きかの嗚咽と、細い喉のふるえに王子が気づいたのはどれほどの狂態の後であったのか。喉元に、はだけた胸元に点々と
薔薇色の刻印を押された少女は恐怖に強ばって涙を流していた。
はっとして思わず力を緩める王子。金髪碧眼の少女は、きっと王子を睨み据えると力任せに無体な男の鳩尾を打ち、一目散に駆け出した。

467 :妖しの恋:02/12/04 14:05
40
(どうしよう、どうしよう、どうしようっ・・・!)
明るい朝日が射し込んでくる部屋でキャロルは怒りと屈辱の涙を流していた。
昨夜。
風邪の熱にうかされたキャロルは火照る身体を冷やそうと奥庭の泉に行った。
冷たい水に浸した布で汗ばんで気持ち悪い肌を拭いて本来の肌の色、髪の毛の色がすっかり露わになった時、
たまたま夜更けの散歩をしていたらしいイズミル王子に見つかり・・・女と見破られて・・・抱きすくめられた・・・。
「いやっ!」
昨夜の光景がありありと脳裏に蘇り、キャロルは身震いして頭から布団をかぶった。強引で激しい接吻、弄ぶようにそこここに
押し当てられる男の唇。キャロルに優しく語りかけ、あるいは知識を授けるのと同じ唇から出たおぞましくも身勝手な男の戯言。
昨夜はどうやって自分の寝台まで戻ったものやら。寝台に潜り込んで泣いているうちに張りつめていた気が緩んで半ば気絶するように
眠ってしまったらしい。朝起きれば肌には紛う事なき接吻の跡。死んだ方がましかとも思える屈辱が潔癖なキャロルの心を焼き尽くした。

すっかり日が昇ってから涙も枯れ果てたキャロルは桶の水で身体を拭いた。そうすると少し落ち着いてきた。
(・・・今思えば王子もだいぶ浮き足立っていたような・・・。ひょっとしたら私が“キャロル”だとは思っていないかも。
いえ、それどころか夢か何かかと思っている可能性も・・・)
尊敬もし、また少女らしい心から憎からず思っていた男性に、いきなり辱めるような強引な真似をされたことはショックであったが
今のキャロルには冷静に現状を分析し、今後のことを考えるだけの力もあった。
(もし、もしも正体がばれていないなら闇雲にここから逃げるのは却って危険だわ。だってここ以外に私がどうやらこうやら安全に暮らせる場所ってないもの。
逃げればルカやミタムン王女にも迷惑をかけることになるわ。逃げ出すことで私が他国のスパイだと決めつけられてしまうかも知れないじゃない。
・・・素知らぬ顔をしていようか・・・? あの屈辱は許し難いけれど)

468 :妖しの恋:02/12/04 14:06
41
(昨夜の乙女はまこと水の精か、それとも天女か。金色の髪をして白い・・・大理石のような色合いの肌であったな。それに碧い瞳!
ああ、何故あのままさらってしまわなかった?)
イズミル王子は私室で一人物思いに耽っていた。膝の上には様々な書類、粘土板。だが目はその上を滑るばかり。はしばみ色の目を
捕らえて離さないのは昨晩の少女が残していった不思議な星明かりを閉じこめた銀の筒―もといペンライトだ―。
王子の心は昨夜の不思議な邂逅を繰り返しなぞった。水辺の美しい少女。肌も露わに水と戯れていた。いかにも心地よさそうな
表情はこの上もなく男の好き心をそそるものだった。その表情の主には全くその気はなかったことは充分、分かってはいるけれど。
白い肌を彩る金色の緩やかな巻き毛。王子を見つめた水と同じ色の瞳。いかにも男慣れしていない初な処女の所作。
いや、むしろ子供じみてさえいた。甘い肌の匂い。柔らかな身体。怯えきった無言の涙・・・。
(まことに・・・あのまま寝室にさらっていって私だけのものにしなかったのが惜しまれる)
普段の王子なら嫌がっている、しかも子供っぽい相手を無理矢理抱くような真似は悪趣味の極みと軽蔑しただろう。
元々、女には大して執着がない上に不自由するなどということは無かったのだから。
しかし今回ばかりは違った。釣り逃がした魚は大きいというけれど、見知らぬ少女は本当に美しかった。声はただ一声だけ、
拒絶の言葉を聞いただけだったけれど容貌に釣り合った可憐な声音であったように思える。
王子は少女の忘れ形見のペンライトの突起を押してみた。それはスイッチで押せば小さな明かりが筒先に灯る。
こんなものを見たことのない王子にとってそれは星を閉じこめた不思議な道具だ。
(不思議な乙女の忘れ形見。星のような貴重なる物を忘れて逃げ出すほど狼狽させたのは悪いことをした。
だが・・・あの乙女はきっとこの星を取り返しに来よう。その時こそ、もう逃がしはせぬ)


469 :妖しの恋:02/12/04 14:07
42
「まぁまぁ、キャロル!どうしたのです?まさか今日は学校にも行かなかったの?」
寝台に伏せったままのキャロルにけたたましい声をかけたのは、よく面倒を見に来てくれる年輩の侍女だった。
あれから形ばかり肌の色を濃くごまかし、頭髪を染める気力はなかったのできっちりとターバンで頭を隠したキャロルは思いの外、
時間がたつのが早いのに驚きながら身を起こした。
侍女はキャロルの泣きはらした目と疲れてやつれた顔に驚いたらしかった。
「風邪だと聞いていたけれど、そんなに具合が悪いの?どうして早く言わなかったんです?薬は飲んだの?熱は?」
侍女はキャロルの額に手を当てながら矢継ぎ早に言った。
「熱はないようね。でも今日はミタムン様の所には伺わない方がいいかもしれない。王女様がお前をお召しなのだけれど」
「あ・・・大丈夫です。もういいんです。すぐ身なりを整えて参上します」
キャロルはあわてて起きあがった。
(王女の所に行こう。王子がどうしているか様子を見たいもの)

「キャロル、遅かったのね」
ミタムン王女は目を赤くしたキャロルに驚いたようだった。
「乗馬をしたかったの。お前もついておいで」
そう言いながら王女はさっさとキャロルを連れて外に出て、他の人間に話していることを聞かれないようにしてから改めて尋ねた。
「キャロル、一体どうしたの?泣いたの?風邪気味だって聞いていたけど・・・まさか誰かに無体なことをされたとか
そういうんじゃないでしょうね?」
女だと知っているキャロルに対するぶっきらぼうな気遣いと、女らしく鋭い勘。
(ミタムン王女はまだ何も知らないんだわ)
当然過ぎるほど当然なことに安堵したキャロルは強いて笑みを浮かべた。
「いいえ、何でも。昨夜は風邪で苦しくて少し寝苦しかったのです。ご心配おかけして申し訳ありません」
「・・・そうなの? 私はまた誰か馬鹿な男がお前に無体でも仕掛けたのかとか、誰かが苛めたのかとかそういうことを考えたわ」
「どうしてそんなことをお考えになったのです」
キャロルの声音は正直だった。だが王女は不思議なことにそれ以上、追求しなかった。
「言ったでしょう。私は馬鹿ではないのよ」

470 :妖しの恋:02/12/04 14:09
43
しばらく乗馬を楽しんだ王女達が居間に戻ってみるとイズミル王子が待っていた。
「あら、どうなさったの、お兄さま?おいでになるって知っていたらもっと早くに戻っていたのに」
王女は上機嫌で兄から手土産のラピスラズリの原石を受け取りながら笑った。甘い兄は妹にちょっとした贈り物をして喜ばせてやるのがたいそう上手だった。
「ご用は何?ひょっとしてキャロルかしら?」
その瞬間、キャロルは真っ赤になり顔を伏せた。だが目ざとい王女をごまかしきれるものではない。
イズミル王子もまた、そんなキャロルをいつもより鋭い視線で念入りに見つめた。といっても一瞬のことだ。
(似ている・・・)
王子はやはりな、と胸の内に呟いた。
昨夜来、悶々と眠れなかったのは王子とて同じこと。だがさすがにこの王子はキャロルのように徒に思考を空転させ、涙に暮れるというような
不毛な時間の過ごし方はしなかった。様々に見知らぬ麗しい乙女の顔かたちを思い出すうち、このところ自分を妖しい気持ちにさせてやまなかった
もう一人の麗人―といったところで王子は男だと思っているのだが―キャロルの顔を思い出し、結びつけたというわけだ。

(あの金色と白の少女の顔はキャロルに似ている。そういえばあの少女の瞳もキャロルと同じ珍しい勿忘草色だった。それに抱いたときの身体つきや触り心地だって。
しかし泉の乙女は間違いなく女の身体をしていた。キャロルはいくら似て見えたとはいえ男ではないか。そう男。
・・・・・・・・・・・・・・。
いや、本当にそうか?キャロル・・・。あの身体つき、所作、顔立ち、男にしては華がありすぎるとルカも言っていたぞ。まさか・・・)

矢も盾もたまらず、王子は性急に妹王女の許を訪れたというわけだ。実際にキャロルを確かめるまでは自分の妄想を冷笑していた王子だが、
赤面するキャロルを見ると妄想は確信に変わった。


471 :名無し草:02/12/04 14:25
ああああああああ、こんなところで「続く」だなんて〜〜っっ!
作家様〜っ、続きを〜続きを〜!

472 :妖しの恋:02/12/04 14:26
44
王子はミタムン王女に言った。
「キャロルを少し借りたい。書籍をまた新しく入手したゆえ」
びくっと身を震わせるキャロル。
(ばれている・・・?王子は私を疑っている!)
紅潮していた頬が一転、蒼白になったキャロルを見た王女は言った。
「キャロルはひどい風邪が治ったばかりの病み上がりですの。今日は早くに退出させてやろうと思っていたのよ。
お兄さま、そのご用はまた次でよろしいでしょ?
・・・キャロル、お兄さまのお許しも出たわ。今日はもうお下がり」
「病み上がり」のキャロルを寒い戸外の乗馬に誘ったことなど忘れたかのように王女はそう言うと、お気に入りの小姓を下がらせた。
キャロルはそそくさと自分の部屋に戻っていった。

「・・・キャロルは風邪をひいているのか。そういえば熱でもありそうな顔をしていたな・・・」
人払いをしたミタムン王女の居間で、イズミル王子は呟くように言った。
(そういえば昨夜の娘の肌も驚くほど熱を帯びていたな。瞳が潤んでいたのも、妙に動きが鈍いように思えたのも、
吐息が熱かったのも、熱がある人間のそれだと思えば不思議はない)
王子は自分を凝視する妹王女の視線をよそに思考を彷徨わせた。
王子の記憶力は並外れていた。写真にでも撮るように様々なことを一度に細かいところまで記憶できる王子は昨夜の光景と、
ついさきほど見たキャロルの表情を注意深く比較検討していた。
(全体的な顔立ち、瞳の色合い、身体つき、何よりも私を見たときの表情。あれは何も知らぬ人間のそれではないぞ。
昨日、触れた身体、肌。いつか私が踏み台から落ちるところであったのを抱き留めた身体の感触。誰が忘れたりするものか・・・。
・・・・・してみると、やはり、やはり、ルカが拾った孤児の従僕キャロルは・・・? しかし何故にまた・・・?)
キャロルは女だ、と断定してしまいたいのに―そうしたいのは間違いなく王子の男としての願望故だ―何故、キャロルは
男のふりなどしているのか、何か企みでもあるのではないだろうか、と考えると納得できる答えはでない。
ミタムン王女は兄王子の様子をじっと観察していたが、唐突に切り出した。
「・・・お兄さまはキャロルがお好きですの・・・?」

473 :名無し草:02/12/04 14:33
おいおい、これで続きは酷いぜ、作家さんよぉ。

474 :名無し草:02/12/04 15:09
>「言ったでしょう。私は馬鹿ではないのよ」

ミタムン王女、勘だけは誰よりも鋭い?
じつは今回の話の中でミタムン王女が一番好き。

475 :名無し草:02/12/04 15:55
うわ〜、蛇の生殺し〜ッッ!
続きが見たいですうう。お願いしま〜すッ!

476 :名無し草:02/12/04 19:40
これぞ寸止め〜っ!
続きお待ちしてます。いやマジで。

477 :名無し草:02/12/04 20:44
だから〜〜某サイト教えてよ。

478 :名無し草:02/12/04 20:52
寸止め・・・。やっぱ王子だ。
いや〜ん。寸止めなんて漫画だけにして〜〜〜〜〜

479 :名無し草:02/12/04 20:53
>477 同じく

480 :名無し草:02/12/04 21:32
>彼夢様
んで彼は父王に会わずに還ってしまうんですか?
これで終わりじゃないよね〜!(涙)

>あの王が生物学上の父である自分の存在は母の不幸の一因かもしれない。
これほどの傷が、弟と、甥っ子達とふれあって癒やされた?・・う〜ん。
もう少し付け加えが欲しいよ〜。



481 :名無し草:02/12/04 21:33
>477
某さばくのかぜ

482 :妖しの恋:02/12/05 09:24
>>472
45
ミタムン王女は狼狽えて顔色を変える兄の顔を静かに観察した。侍女たちと徒然に恋の噂話に興じることの多い王女である。
心惹かれ合う男女を見抜く眼力は確かな物だった。
もちろん大きく外すことも多いわけだが、今回は的中間違いナシという妙な確信があった。
(キャロルはお兄さまに話しかけられたり、見つめられたりしてすぐ真っ赤になったわ。子供だから恥ずかしがっているのかとも
思ったけれど、お兄さまは王子で、あの通り美男で頭も良いもの。大抵の女なら参るわね。ましてやキャロルは子供ですもん。免疫がないのよ)
王女は的確なのだか、ただの少女の妄想なのだか分からない考察を行っていた。だがやはり、そこは子供の想像。兄が好きなのは「男としての」
(下品な言い方をするなら「美少年の」)キャロルだと思っていた。昨晩、何があったかなど知る由もないのだ。
(お兄さまも、もし本当にキャロルがお好きならキャロルが実は女だってことを教えて差し上げた方がいいかもしれない。キャロルだって
お兄さまが好きなのでしょう?ルカの側にいるよりも、お兄さまの側室か何かにでもなったほうがいいじゃない?
・・・そうね、キャロルは優しいし、嫌みな気取り屋でもないわ。キャロルならお兄さまのお側に上がっても許せそう)
これまで焼き餅から、兄王子の側にある女性達に散々意地悪・悪戯をした前科者はそんなことまで考えた上で、今回の爆弾発言に及んだというわけだ。

一方、イズミル王子は驚いて言葉を返すどころではなかった。
彼はキャロルが妹に大きな秘密を打ち明けたことは知らない。普段の彼なら耳年増の妹の見当違いの発言を窘めただろうが、昨夜の衝撃が未だ
尾を引いているもので一言も言葉を返せないのだった。
ミタムン王女は静かに兄王子の隣に座り直すと、その耳元にさらに衝撃的な事実を告げた。
「・・・お兄さまもキャロルが気になっておいでだったのですね。思った通りだわ。・・・あのね、キャロルもお兄さまが好きなんですわ。見ていれば分かります」
「ミタムン、戯れもいい加減にせぬか・・・」
「お兄さま、お兄さまにはお教えしますわ。きっとキャロルだって許してくれるでしょう。
・・・・・キャロルは女ですのよ。男の子なんかじゃありません」

483 :妖しの恋:02/12/05 09:26
46
おそらくは生まれて初めて、茫然自失、口も利けないという状態に陥ったイズミル王子のためにミタムン王女は
静かに順序立ててキャロルの秘密を教えてやった。無論、キャロルには無断だ。
(でもいいわ。きっとキャロルだって私に感謝するでしょうよ。だってキャロルはお兄さまが好きらしいし、
お兄さまはといえば間違いなくキャロルを意識しておいでだもの)
ミタムン王女は話した。
キャロルが禁断の呪術のためにエジプト女王アイシスにこの世界に引き込まれた異世界の少女であること。
行われた呪術の強力さと特殊さ故にキャロルは元いた世界に帰れないでいること。アイシスの理不尽なやり方から
逃れる途中、ルカと知り合い、同情したルカの心遣いからその従僕の身分を得たこと。
今まで男のふりをしていたのは、自分の身を守るためで何かの深い企み故ではないこと・・・等々。
「キャロルが私にうち明けてくれたのはごく最近なんです。私の馬が暴走したのを助けてくれたときに偶々、知ったんですもの。
お兄さま、私が言うのも何ですけれどキャロルは決して怪しい輩でも、邪な輩でもありませんわ。どうかキャロルを追い出したりしないで!」
「あまりに急な話だな・・・」
イズミル王子はようやく呟いた。
知らなかったとはいえ、少年としてのキャロルに惹かれていた自分の性癖が至極まともなものであったことへの安堵や、
キャロルと水辺の乙女がどうやら同一人物らしいということの嬉しさも今は感じられない。
(あの、いかにも恥ずかしがり屋のようなキャロルが何故、そのような秘密をじゃじゃ馬のミタムンに打ち明けたのか?
ルカはキャロルが女だということを知っているのではないのか?男なら誰でも欲しくなるような容貌の娘ゆえ・・・)
今、王子の胸の内にあるのは「嫉妬」だった。生まれて初めて感じる・・・。

484 :妖しの恋:02/12/05 09:27
47
兄の戸惑い、無口ぶりをどう勘違いしたものやらミタムン王女はさらに言葉を重ねた。
「本当です。キャロルは本当に心根の良い娘です。優しいし、媚びないし、賢く堂々としているわ。本当よっ!」
いつの間にかミタムン王女はうっすらと涙ぐみさえして、いつぞや「修身係」の老侍女に泣かされた折り、キャロルが親身になって慰めてくれたことを話した。
「自分だって辛い立場にいるのにあの娘は私を気遣ってくれたんです。あんなふうに言ってくれたのはキャロルが初めてです。私、ちっとも不愉快じゃなかったわ。
それに・・・あの・・・男のふりをしてルカの従僕をやっているけれど決してその・・・愛人・・・だとか囲われ者だとか、そういう関係じゃないと思います。
ええ、ホントに」
「何と、愛人!そなた、何という言葉を使うのだ!」
自分でも考えていた露骨で不愉快でふしだらな事柄を表す言葉が、あっさりと15歳の妹の口から出たことで王子はようやく正気に返った。
「ごめんなさいっ、お兄さま。でも、だって男女が同じ部屋で住むならそういうことも考えられるでしょ?
私、実はこっそりルカの宿舎を訪ねてみたの。キャロルの部屋は台所の一隅で、本当にただの従僕部屋だったわ。もし愛人ならそれなりの調度とか服とか
あてがうでしょ?それがないのよ?そもそも、愛人なら寝台を別にしたりはしないんじゃ・・・」
「もう良い、ミタムン。そなたの言いたいことはよく分かったし、疑いなどせぬよ」
王子はそう言って姦しい妹のお喋りを中断させた。
「しかし・・・驚いたな。何故、そのような重大な事柄を私に告げた?他に知っている者はおらぬのか?」
「秘密を知っているのは私とお兄さまだけです。ルカは何も知りません。だいたいキャロルが女だと知ったら一緒には住もうとしないでしょう、ルカなら。
それに先ほども申しましたでしょ。お兄さまはキャロルがお好きのようだと思ったし、キャロルはもう間違いなくお兄さまのことが好きですわ。見ていれば分かります。
・・・キャロルはお兄さまに恋しているんですわ」

485 :妖しの恋:02/12/05 09:28
48
(キャロルが私に恋をしている!)
王子は自分の胸が早鐘のように高鳴っているのを感じた。
(ミタムンの話が本当なら、昨晩の乙女は間違いなくキャロルだ!あのような無体をしてしまったが、
もしまことキャロルが私のことを憎からず思っていてくれるなら・・・私はキャロルを・・・!
いや、拒ませはせぬ。あれは女なのだ。従僕などさせぬ。ルカには悪いが取り上げて私に傅かせ、仕えさせ・・・大切に慈しんで・・・)

「お兄さま・・・?あの・・・びっくりなさった?お怒りになった?」
心配そうに兄の顔を覗き込んでいるミタムン王女。いつも仲の良い気安い侍女たちと話しているような事柄を、つい兄の前で
べらべらやってしまったことが急に気になってきた。
イズミル王子は顔つきを和らげて妹を安心させてやった。
「そうだな、驚くべき話だ。そなたの小姓がよもや女であったとはな。だがよく話してくれた。私も気になってはいたのだ。
・・・良いか、ミタムン。今の話は他言無用ぞ。キャロルの身を守るためにも是非、秘密にしておかねばならぬのだ。ルカには私から折を見て話そう。
これからは私とそなたと二人してキャロルを守らねばならぬのだからな」
ミタムン王女は花のような笑みを浮かべた。
大好きな兄は王女らしからぬ真似をした自分のことを怒ってはいないらしい。
それどころか「二人してキャロルを守る」とは!やはり兄は・・・!まだ恋物語が現実のものと信じていられる幸福な年頃の王女は、
この上ない胸のときめきを覚えた。
「お兄さまはキャロルのことをお好きですのねっ!」
ミタムン王女の断定は王子を狼狽えさせ、腹立ちを覚えさせた。しかし珍しく、本当に珍しく王子は妹の無礼を窘めることができなかったのだ。

イズミル王子は心も軽く、私室に向かった。途中で意味ありげな艶っぽい視線を王子に送る女が何人かいたが、彼はろくに気づきもしなかった。
これからどうしたものかと生まれて初めての緊張する、しかし心楽しい計画を立てていたので。

486 :妖しの恋:02/12/05 09:29
49(ダイジェスト版)
所は変わって、キャロルがそもそも古代に来る羽目になった原因の居るエジプトでは。
アイシスが悶々と心晴れぬ物憂い日々を送っていた。ふとしたことから知った弟メンフィスの短命。その寿命を延ばし、
夫婦として末永い幸福の日々を送るために禁断の「生命転移の秘術」に手を出したのだが。
偶然、金髪碧眼の白人の娘キャロルを見てしまったメンフィスは彼女が自分にとって如何なる存在であるのかを理解せぬままに惹かれていく。
一方、メンフィスの命と魂を宿すための器として呼び寄せたキャロルは、アイシスの手元から失踪してしまった。その行方は杳として知れない。
(もし、キャロルの身の上に何かあったら・・・・メンフィスの身も無事では済まぬ!あれの身体にメンフィスの生命が宿っているというのに!)

それだけではない。
メンフィスは地中海方面にエジプトの勢力範囲を伸ばすためにクレタ王国方面に親征を行う。国内にメンフィスがいれば、まだしも巫女としての
力を使ってその身の安全を守ってやれもするのに、国外に出られてはアイシスもたまらない。
やむを得ず、メンフィスに付き従うアイシス。メンフィスはそんな姉にして妻たる女性の心も知らずに、キャロルのことを話題に上せる。
「あのように美しい乙女は見たことがない。あれこそは我がエジプトにいつか現れると伝えられるハピ女神の娘ではないだろうか?
もしそうなら私の手元に置きたい。姉上の他に、神の娘を娶ること叶えば私の威信はいや増そう」
「メンフィス、そのようなこと。夢でも見たのではないですか?そなたはファラオ。私の最愛の男性にしてエジプトの守護神。まずは現実を弁えてください」
アイシスの嘆願は悲痛だ。彼女はメンフィスの命の形代をキャロルから誰か他の人間、たとえば自分、にすることを目論む。危険きわまりないことだが
今の彼女にはそれ以外の道はないように思えるのだった。

487 :妖しの恋:02/12/05 09:31
50(ダイジェスト版)
一方、イズミル王子の命を受け、クレタ方面で諜報活動を行うルカは。
時々、国元に置いてきたキャロルの身を心配することはあっても―彼はキャロルが金髪碧眼だということは知っていたが、肌の色が透けるように白い
「少女」であることは知らない。彼にとってはキャロルは「弟分」なのだ―、ひたすら忠義に任務をこなしていた。
(ファラオは本格的に地中海方面に版図を伸ばす気でいるらしい。これは早期に牽制せねば。エジプトが砂漠の外に興味を持つことは我がヒッタイトのためにならぬ。
しかし歴代のファラオが少しも国外に興味を持たなかったというのに、何故メンフィスは急に・・・? エジプトの民は生ける神ファラオが、
その治める国土を離れることを不安に思っていると聞くが)

ルカは―そしてアイシスも―知る由もないが、生命転移の秘術で結びつけられた形代と、その宿り主は引かれ合うもの。メンフィスは無意識に
キャロルに宿った己の命と魂に近づこうとしていたわけである。

ある時、ルカはエジプト兵達の駐屯地近くで不思議な歌を聞く。
「誰にこそ告げん。
我がエジプトにソティス星現れるとき、麗しき乙女ナイルの岸に立つ・・・。
・・・・・・そはナイルの女神の産みし娘。我がエジプトに恵みもたらさん・・・」
金色に輝く美しい伝説の乙女の歌を聞き、ルカが思い出したのは金髪のキャロルの姿だった。そういえばキャロルに初めて会ったのは
ナイルの増水期を告げる星の現れる時。
(男にしては華のありすぎる容姿・・・キャロル・・・。不思議な出現、魔法のような道具を持っていた・・・。奇蹟としか
いいようのない方法でイズミル王子のお命を救ってくれた・・・)
ルカもまた主君イズミルと同じ予感にうたれ、戸惑い戦くのだった。

488 :名無し草:02/12/05 09:50
朝覗いたら・・・幸せ。
なんだかすごい展開になってきたぞー

489 :名無し草:02/12/05 14:35
「彼の見る夢」「流転の姫君」「妖しの恋」
ただの萌えだ、ぱくりだ、なんだという雑音はあっても読ませる文章を書ける人が残るんだなぁ・・・・と。
どの話も読者のニーズっていうんですか、それを結構取り入れてるなぁと。

原作もこれくらい素早く展開しないかな・・・・・(涙)

490 :名無し草:02/12/05 17:42
初の801かと思った自分が恥ずかしくもあり、残念でもあり・・・。
王家で801ってやっぱり許されませんか。

491 :妖しの恋:02/12/05 18:19
>>487
51
キャロルの日常はある種、荒らしの前の静けさを帯びた調子で淡々と過ぎていった。
あの衝撃の夜以来、キャロルはイズミル王子と二人きりになることはなかった。
毎日毎日、懼れ戦いて過ごしていたが―といっても10日と経っていない―肌に押された
接吻の跡も薄れ、キャロルが意識的に忌まわしい王子の行為を思い出さないようにしてきたためか、当のキャロル自身あれは夢であったかと思うこともあるほどだ。
キャロルはミタムン王女からルカの任務が長引く旨を知らされ、小姓としてますます重用されるようになっていった。王女はキャロルを気安くこき使ったが、
それは孤児だと思われているキャロルがヒッタイトの王女に分不相応な贔屓を受けていると周囲に思わせないための方策だった。
何しろキャロルは実は女性で、大好きな兄イズミルの想われ人で、しかも兄じきじきに「キャロルを守ってやろう」と言われた相手なのだ。
ミタムン王女はキャロルに好意を抱き、乗馬などにかこつけて、身の上や育った場所などについて聞き出していた。こういうことにかけてはとても巧みなのだ。
そして何気なく兄に新しい情報を伝える。
(キャロルってなかなかの育ちをしているのね。下々の娘ってかんじじゃないわ。もっと詳しく喋ってくれればいいのに上手くはぐらかすんだから)
ミタムンは歯がみした。だが彼女も上流階級の娘達を侍女として身近に召し使う身。キャロルがそんじょそこらの上流の娘に引けを取らないことだけは分かった。

一方、イズミル王子は再度キャロルに近づく機会を狙っていた。
だが急に政務が多忙となり、なかなかその機会は訪れない。深夜、独り寝の寝所でぼんやりとペンライトを弄ぶのが日課となりつつあった。
(全くこれではまるで初恋にのぼせる愚かな子供ではないか)
王子は苦笑した。夢の中では愛しい娘に様々に挑んでいるのだが現実は・・・というわけだ。

492 :妖しの恋:02/12/05 18:20
52
ハットウシャは冬の嵐に見舞われ、寒い日が続いていた。キャロルは学校が終わるとミタムン王女の許に参上して、退屈しきっている王女とそのお付きの侍女たちに様々な物語をするのが日課になってしまった。
古代のお嬢様達はアラビアンナイトもシェイクスピアもグリム、アンデルセンも知らないのだから博識なキャロルは人気者だった。手すきの侍童や男の召使い達までもキャロルの話を聞きに来る始末。

「ここはずいぶんと賑やかだな」
「あらっ、お兄さま!今キャロルに物語などさせていたのよ。いろんな話を知っているから退屈しないわ」
「そうか」
イズミル王子は緊張しているキャロルにわざと気づかぬふりをしていた。ようやく多忙を極めていた政務も一段落、久しぶりにキャロルの顔を見に来たというわけだった。
キャロルは冬になってから、顔に塗る赤土のおしろいの量を減らしているので肌はずいぶん自然な色合いに見えた。しかも冬の乾燥した風がよほど体質に合わないのか毛染めのクルミの渋も髪を傷ませるばかりなので、
今日はターバンで髪の毛を隠したきりだ。
王女は、必死に何気ないふりを装いながら兄王子から目を離せないらしいキャロルを興味津々、観察していた。
(やっぱりキャロルもお兄さまを好きなのね。でもずいぶん恥ずかしがり。普通の娘ならお兄さまの目に留まろうと必死になるのに、避けて逃げようとしてるみたい。変ね・・・?)
「さてミタムン。楽しんでいるところを悪いが・・・」
「またキャロルを借りにみえたのね。仕方ないわ。キャロル、お行きなさい」
ミタムン王女は兄王子にだけ通じる共犯者の視線を送ると、キャロルを促した。
「は・・・い・・・」
冷や汗でしとどに濡れた肌に気づかれませんようにと祈りながら、キャロルは立ち上がった。

493 :名無し草:02/12/05 19:21
>490
意味がよくわからんが・・・。
だれか説明してオクレ。

494 :名無し草:02/12/05 19:56
>490
もしかして801でなくて808の間違い?

495 :名無し草:02/12/05 20:10
>494
801でよいと思われ。
ジツは私もそれを願っていた・・・。

496 :名無し草:02/12/05 20:13
801っていうのは「やおい」と読みます。
「やまなし、おちなし、いみなし」というところから来ているらしいですが・・

同人系の女の人が好むボーイズラブものでつ。けしてホモとは言わないのよ、なぜか
オリジナルも二次創作ものもあります。
一昔前のジュノンだったっけ小説本そのへんから始まってきたんだと言うらしいけど
2チャンにも板があるし、ちょっと検索するとモサモサと出てきまつ。
好きな人は好きだけどダメな人はダメ。よく同人女とたたかれているのはこの辺のヤシ

こんな説明でよいかしら?

497 :名無し草:02/12/05 22:31
↑ だいたい、おっけー。
でも、ジュノンじゃなくてジュネ。まだ健在です。

>490
漏れは、ヤオイスキーだが、王家ではちょっと…。
あえて考えるなら、主従萌えで、王子×ルカ、メンフィス×ウナス。
マイナーカプで、カプター神官×ルカかなあ。

スレ違いスマソ。
ペンライトに頭ぶつけて逝ってきます。

498 :497:02/12/05 22:33
大事なことを忘れていた。

妖しの恋作家様、すばらしいです。
思った以上に、ワイドな展開になってきて、その力量にうっとり。
先がたのしみです〜。


499 :漏れも逝ってヨシか?:02/12/05 22:56
>497
そりゃやっぱ王(王子)セメのウナス(ルカ)ウケですかいな?
下豚ーに瑠香、、、801も読むが、ちょっとそれは、、、(w

500 :名無し草:02/12/05 23:35
>496 >497
サンキュ
あー、やおいのことなのか〜。知らなかった。
まだまだワタシってウブなのね(汗)
そういえば昔、ジュネに載ってた三国志の諸葛亮孔明を主人公にした
小説にはまったな〜(って年がバレルよ。それより知ってる人いるのかな〜)
う〜ん、王家で「やおい」ねぇ・・・。
たとえば・・・メンフィス×イズミルなんてどう?
ふたりともは激しいから、すごいバトルが展開されそう。っていうよりどっちが上?で下?

・・・すいません。逝ってきま〜す。



501 :名無し草:02/12/05 23:50
結局そういう話題に流れるわけだ

502 :名無し草:02/12/05 23:56
イヤ、私はノーマルで時代や政治に翻弄されながら
初恋にうち震える若者が好き。


503 :名無し草:02/12/06 02:54
801は説明なしで分かったが、>>494の808が分からん。


504 :名無し草:02/12/06 04:24
808=八百屋?

505 :名無し草:02/12/06 07:34
>500
うわ、お仲間だ♪
私説三国志リアルタイムでよんでた!(w
でも王家はイズミル×キャロルが好きな私・・・・。
でも原作では絶対でてこない罠。
(キルケーのあやかし編はキャロルの意識がないので不可)
作家さん、期待しています!

506 :妖しの恋:02/12/06 09:40
>>492
53
「どうした?入れ」
イズミル王子はキャロルに入室を促した。
(へ、変に緊張していては却って怪しまれるわ。とにかく私は何も知らないのよ。あの夜のことだって!そうよ、知らぬ存ぜぬで通してしまえばいいの。
私は男の子でルカの従僕ですもの!)
キャロルは覚悟を決めて、黙って部屋に入った。室内は大きく火が焚かれ、暖かな光に柔らかく照らされている。部屋の主がくつろぐ長椅子の前には、
程良く乱雑に取り散らかされた粘土板、書物、酒器と杯。
武器類は相変わらず壁に立てかけてあるし、実用一点張りなだけの部屋だが灯火の光のせいか、以前に比べると何とはなしに親しみ深く見える。
「このところ多忙でな。目を通さねばならない書物がずいぶん溜まってしまった。また整理を頼みたい。まぁ、その辺に座れ」
イズミル王子の声音はあくまで落ち着いていて穏やかに優しい。「従僕」の少年キャロルに接するその態度は以前と少しも変わらない。真夜中の泉のほとりで
熱に浮かされたように激しく、身勝手な男の欲望を剥き出しにした口説を繰り返したのと同じ人間とは思えない。
(気づいて・・・いない・・・?)
キャロルは油断無く王子の様子をうかがいながら、長椅子の側の床に座った。
(そうなのかしら?・・・そうよね・・・! だいたい王子ともあろう人があんな夢みたいな出会いにいつまでも拘るわけないじゃない?兄さんと同じ超リアリストよ、
この人は。もし怪しまれていたとしても、知らん顔でいればいいのよ。男女の取り違えなんて馬鹿馬鹿しすぎるって)
キャロルは客観的な判断するより、自分の希望的観測に飛びつくことにしたようだ。
キャロルは王子に促されるままに、書物の題名を読み上げて内容別に整理し、積み重ねていった。今回は地図や地誌関係のものが多いようだ。
「そうそう。今回は書物だけでなく珍しき品もあるのだ」
イズミル王子は全く落ち着き払った声で言った。だが胸は早鐘のように高鳴っている。
「これだ。星を籠めた珍しき筒ぞ。このようなものは初めてだ。・・・もっとも、そなたは知っておろうがな」
王子はキャロルの目の前にペンライトを差し出した。

507 :妖しの恋:02/12/06 09:42
54
(!)
キャロルはひゅっと音を立てて息を吸い込んだ。
知っているも何も目の前にあるのはキャロルのペンライトではないか!
パニックに陥って王子の無体から逃げ出したキャロルが忘れていった20世紀の品! 
あの夜以来、大事な品々を収めた小袋の中身を確かめることも忘れていた。つまりキャロルは今初めて、
自分がしでかした大きな大きな失敗に気づいたわけだ。
「どうした?これは・・・そなたのものであろう?」
相変わらず相手を包み込み、安心させるような余裕ある優しさを漂わす声で王子は問うた。
先ほどまでの「何があってもしらばっくれて逃げ切る」という決意はどこへやら。キャロルの顔はさっと紅潮し、
続いて蒼白になり、冷たい汗が全身から噴きだし、息づかいはひどく荒くなった。
「こ・・・れは・・・」
キャロルの声はひどくしゃがれていたが、「少年」の声を装うことを忘れ果てているので、間違いなく
「少女」の声になっていた。
王子は内心、にんまりした。しっかりした賢い少年として振る舞っていても、所詮は子供だ、と。
あまりに正直すぎる反応にこちらが拍子抜けするほどだ。もっと巧みにしらばっくれ、手こずらされると思っていたので。
「これ・・・は・・・ペンライ・・・私・・・忘れて・・・? いえ!」
キャロルは目の前の男性の憎たらしいほど余裕綽々の顔を見つめた。
いけない!何とかしなくては!相手の思い通りになるようなことがあってはいけないのだ!
「どうした?そなたが忘れし星であろう?ペンライという名の星なのか?
あの夜、私とそなたは出会ったではないか。よもや忘れたとは言わせぬ。私は片時もそなたのことを忘れなかったぞ」
「お・・・おっしゃることが分かりません。こんなものは初めて見ます」
キャロルは必死に言い募った。だが王子は一転、厳しい表情を浮かべ逃れようとする細い手首をしっかりと捕まえてしまった。
「嘘だ」

508 :妖しの恋:02/12/06 09:43
55
「嘘なんかじゃありません。僕は知りませんっ!・・・だいたい私、夜中に庭に出るようなことしませんものっ!」
語るに落ちたとはこのことだろう。キャロルはイズミル王子を睨み据えたが、王子から返ってきたのはいかにも愉快そうな笑い声だった。
(あら・・・? この人、こんなふうに声をあげて楽しそうに笑えるの?)
一瞬、キャロルがこう考えてしまうほど磊落な笑い声。
「ほう?泉の乙女よ、夜中に庭で我らが会ったことを何故、一介の従僕に過ぎぬ“キャロル”が知っているのかな?
風邪が治りきっておらぬか?いつもの賢さはどうした?」
王子の顔がずいっと近づいてきた。いかにも面白そうな色を湛えたはしばみ色の瞳。
(怖いっ!)
あの夜の恐怖が蘇ってきてキャロルはぎゅっと目を瞑った。そうすれば嫌なことは全て自分とは無関係のことになるとでもいうように。
だが。
王子はただ、こつんと額を合わせて来ただけだった。強引な真似をされて辱められるのではないかと思っていたキャロルは思わず目を見開いた。
「ふむ、熱はないようだな」
「え・・・?」
優しい微笑。ライアンを思い出させる怜悧な顔に浮かぶ暖かな笑みに、キャロルの強ばらせていた身体から一気に力が抜ける。
その一瞬の隙を待ちかまえていたかのように、王子の大きな手がキャロルのターバンに伸びた。
(え?)
何が起こったのやら充分に理解できぬままにキャロルは髪を隠していた布を奪われ、艶やかな金色の髪の毛が細い肩にこぼれ落ちた。
すかさず王子の手は濡らした布を掴み、小さな顔をごしごしと擦った。赤っぽい色が落ち、本来の白い肌が露わになる。
「おお・・・!」
王子は感嘆と喜びの声をあげた。目の前にいるのは間違いなくあの夜、月明かりのもとで見た金色と白の乙女だ!
「そなただ。間違いなく私の探していた娘だ!」

509 :妖しの恋:02/12/06 09:46
56
「あ・・・ああ・・・あ・・・」
キャロルは涙ぐみ、竦んで動けぬままに圧倒的に力の差のある男性を見つめた。隠し切れぬ恐怖と、毅然と目の前の敵に立ち向かおうとする決意
という相反する感情を湛えた表情はこの上なく男心をそそるものだった。
(どうしよう・・・どうしよう・・・。私、どうなるの?怖い、怖い・・・!どうして王子の部屋になんかのこのこ入り込んだの。
誰か助けて!兄さん、ママ、神様っ!)

王子は怯えて声も出ない少女に、この上ない愛おしさを覚えた。自分が強引にキャロルの正体を暴いたことにひどく嫌悪感を感じた。
今この瞬間まで王子はキャロルを抱いて我がものとすることだけを考えていた。そうするのが自分の望みであったし、ヒッタイトの王子たる
自分に熱望されて抱かれることはキャロルにとってもこの上ないことと思っていたのだ。
だが恐怖のあまり気絶しそうになっている異世界の少女を見ていると、そのような身勝手下劣な欲望は急速に薄れ、ただ自分を恐れないで欲しい、
愛しいと思う心を知って欲しいという初めて味わう感情が萌してきたのである。



510 :妖しの恋:02/12/06 09:46
56.5
王子はそっと指を白い頬に伸ばし、涙を拭った。
「泣かないでくれ・・・。そなたを泣かせるつもりはなかったのだ。怖がらせるつもりはなかったのだ。泣かないでくれ。頼む・・・」
自分を見つめる勿忘草の瞳をじっと見つめ、心を込めて語りかける。
「私はただ、そなたが、泉のほとりで出会ったそなたが忘れられなかったのだ。水の精か、はたまた天女かと思う相手がよもやミタムンの側に
居たと知ったときの嬉しさと驚きを察して欲しい」
王子は優しく金髪を撫でた。泣き虫の妹王女を幾度と無く慰め、笑顔を取り戻させてやった兄の仕草と声はいかにも穏やかに思いやりに満ち、
強ばったキャロルの心に少しずつ染み込んでいった。
「怖がらないでくれ。もう無体をしてそなたを怖がらせるようなことはせぬ。
泣かないでくれ。怖がらせたのなら謝る。
私はただ、初めて会ったときから愛しいと思ったそなたにもう一度会いたかったのだ。星を忘れていった天女にもう一度会いたかったのだ」
王子の声は催眠術のようだ。いつしかキャロルの身体の闇雲な緊張は去り、詰めていた息づかいも穏やかになる。
「信じて欲しい・・・」
キャロルは・・・自分でも気づかぬうちに、こくんと頷いていた!


511 :妖しの恋:02/12/06 09:48
57
にっこりと本当に嬉しそうにイズミル王子は微笑んだ。強引に想いを遂げようとしなくて良かったと心から思えた。
(私はこの娘の・・・キャロルの心が欲しい。身体ではない。心が欲しいのだ)
キャロルの青い瞳を見つめながら彼は悟っていた。今まで相手にしていた女達とは全く違う娘。これまでは男だと思い、口説いて征服する相手だとは考えていなかった。
何とか自分の気に入られようと媚びたり、蓮っ葉なふりをしたり、泣いたり笑ったりみせたりする女達の媚態に食傷し、深く知り合うのを避けてきたイズミル王子だったが、
キャロルはまず「少年」として彼の前に現れた。王子は何の先入観も持たずに少年を観察する機会に恵まれたというわけだった。
頭も良く如才なく振る舞い、恥ずかしがりらしく、とにかく控えめで腰が低くて―キャロルにしてみれば下手に目立ったりすることは避けねばならないだから当然だ―、
しかし人の心を思いやる繊細な優しさも持ち合わせているらしい少年。
それだけではない、顔立ちも非常に整っている。キャロルを男だとばっかり思っていたイズミル王子が、自分はよもや男色趣味があるのだろうかと
本気で心配になったくらい凛々しくも楚々とした美貌の持ち主だったのだ。
(まことにまぁ、冗談のように男の理想に叶った少女だ)
王子がこう考えて苦笑したほどに。
とにかく。
王子は一目でキャロルという一人の娘に恋をして、今まで父王ほどおおっぴらではないにせよ、散々女性相手の火遊びを繰り返してきた若者らしからぬ純情さで
初めて自分の方から好きになった娘の心を得ようとしているわけだった。

キャロルもまた、年相応の娘らしいときめきを押さえることはできなかった。
古代に来て、ライアンに雰囲気の似たところのあるヒッタイトの王子は何となく心惹かれる存在であった。その声を聞くと我知らず顔が赤らみ、
書物の整理などしているときにふと息づかいを感じたり、手が触れたりすると鼓動は独りでに早くなった。
つまり彼女の方も初めてライアン以外の人間に本格的な恋心を感じていたわけだが、古代での暮らしへの不安やストレスが先に立って
気づくこともなかったということだ。

512 :名無し草:02/12/06 10:34
お約束とはいえ・・・うれしい展開。
日々ここを覗くのが幸せです。

513 :名無し草:02/12/06 11:29
妖しの恋作家様・・・(゚Д゚ )モエー!モエー!
王子が恋の奴隷になるなんて、最高ッス!
続きが待ち遠しい〜〜

514 :名無し草:02/12/06 14:14
王子、一気に押し倒す甲斐性のないオトナなあなたが好きっす。
でもはやいとこ宿願果たして欲しいです。
でないとヤホヒィ説が復活してしまいまつ(笑)。

515 :名無し草:02/12/06 14:51
>514
隠し続けた純情だと言ってくれ〜〜! もっとこっぱずかしい展開キヴォンヌ<イッテヨシ

516 :名無し草:02/12/06 15:12
>>511
58
王子はごく自然にキャロルを抱き寄せた。いわゆる欲望といった感情は覚えなかった。ただ目の前の娘が愛しく、
昔、ミタムンにしていてやったように背中を優しく撫でて安心させてやりたかったのだ。
女というにはあまりに幼い、少女の身でありながらこれまでよく耐えてきたことよとその気丈さを褒め、
もう必要以上に緊張して突っ張ってみせる必要はないのだと教えてやりたかった。
キャロルは一瞬、身を固くした。だが王子の優しい手つきは彼女に懐かしい思いを抱かせた。
(・・・兄さんの手と一緒・・・。暖かくて気持ちのいい・・・安心できる)
キャロルは静かに吐息をついた。それは古代に来て初めて漏らす安堵の吐息であったかもしれない。

「そなたの話を聞きたいな。私は従僕で小姓の“キャロル”しか知らぬ」
王子は名残惜しげにキャロルから離れ、長椅子で楽な姿勢をとった。これ以上、側近い距離にいては理性が
持たないと思ったのだ。ゆったりした衣装の内側では男の体が痛みを感じるほどに熱くなっているのが分かる。
キャロルはそんな王子の苦労を知ってか知らずか、子供っぽい元気な動作で王子の胸の中から離れると
―少しは名残惜しげにしっとりとした風情を見せて離れて欲しいところだと王子は思った―、長椅子から少し離れた敷物の上に座り直した。
「どこからお話すればいいのか・・・。ミタムン王女様は何をどこまで話されたのでしょう」
「最初から全て、そなたの口から聞きたいな」


517 :名無し草:02/12/06 15:13
58.5
キャロルは王子に見守られながら自分の物語を語り始めた。
アイシスの不思議な力によってこの世界に引き込まれたこと、少年のなりをしてアイシスの許から逃げ出す途中でルカに助けられ、
ヒッタイトにやって来たこと、ミタムン王女に秘密を打ち明けたこと・・・。
「そして今、私にもうち明けてくれたのだな」
話し終えたキャロルに王子は言った。妹王女からも話を聞いていた王子は、キャロルが妹に話していないことまで自分に打ち明けて
くれたことに気づいていた。
それはルカとの奇妙な、でも静かな生活のことなどだ。キャロルは王子にあらぬ誤解をしてほしくなかったということになる。
押さえた話しぶりながら、男女のことは何もなかったと力説するキャロルは何とも愛らしく思えた。
(ふむ・・・。世慣れぬ子供のような有様ながら、ひょっとしてこのキャロルは私のことを憎からず思っていてくれるのか?)
王子は内心、呟いた。いつかは20世紀に帰るつもりのキャロルの想いなど、この青年には考え及びもつかないのだ。

518 :妖しの恋:02/12/06 15:20
すみませぬ、調子に乗って書き込んでしまいましたが>>516 >>517は「妖しの恋」です。

519 :名無し草:02/12/06 15:37
>>515
私もこっぱずかしい展開を熱烈キヴォンヌだ!一人で逝くなー!
恥ずかしい、キザ、尻こそばい・・・・王家はタカラヅカと一緒なんだからそーいうお約束のクササがなきゃ!

520 :名無し草:02/12/06 15:48
違う話でスマソ
前にあったまとめサイト、結局誰も引き継がなかったのかな?
名乗り出てた人がいたと思ったけど、更新ストップしたままだよね。

521 :名無し草:02/12/06 18:50
>520
そうだね。名乗り出た人、見てたらどうするのか教えて欲しいな。
返事ナシorやっぱやめるなら代わりに一からつくってもいいぞって人いない?

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